【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です

ナポ

文字の大きさ
3 / 13

3.王子、異国のモフモフにチヤホヤされる

しおりを挟む

 ガタン、ガコン、ドシャア。

「……あのさ、最後の揺れ、絶対なんか落としたよね」

「車輪の音だろう」

「その音、人の悲鳴混じってなかった!?」

 そんな不穏な振動を最後に、馬車はついに停止した。

 ここが俺の“研修地”……獣人の国リュクス領。
 大臣がよこした手紙では、“風光明媚ふうこうめいび(自然の景色が美しく、眺めがいいこと)で心洗われる”らしいが。

「……目の前に立ってるの、どう見ても斧持った熊だけど?」

「歓迎のつもりかもしれん」

「優しさの基準がハードだな!?」

 しかし、熊(立派な獣人だった)だけじゃなかった。
 次々に現れる、尻尾・耳・牙を備えた獣人たち。

 耳がふさふさな狐族、長身で色気のある豹族、ちんまりとしたウサギ族まで……
 やたらとビジュアル偏差値が高い。

 そしてなぜか、彼らは口を揃えてこう言った。

「「ようこそ、我らが“姫”!!」」

「俺、王子!!!!!」

 それでも歓迎ムードは止まらない。

「この子、顔がいいぞ」
「髪がさらさらしてる!」
「指が細い! 細い指は良い文明!」

 ラクス王子はなんと、獣人国の理想造形にドンピシャだった。

「ちょ、待って、これなんか違う! 俺は研修に来ただけで!」

「研修!? 結婚の間違いじゃなくて!?」

「“け”しか合ってないわ!!」

 こうして始まるラクス王子のなぜか愛されライフ。

 彼の見た目と気さくな性格は、獣人たちにバカ受けだった。

 昼には果物が盛られ、夜には毛布が三重に追加され、朝起きたら誰かが髪を結ってくれている

「おかしい、王宮より生活レベルが高い……」

 だがしかし。順調すぎる話にトラブルは付き物。

「おい、そこの王子」

「……ん?」

 目の前に立ちはだかったのは、やたら鋭い眼差しの虎族の青年だった。

 背が高くて筋肉がついていて、顔がいい。顔がいいのがむかつく。
 そして手には獣人製の長剣を携えていた。

「お前、ルークに近づきすぎだ」

「……誰?」

「俺の許嫁だ!!!!」

「ちょっ……初耳!!?」

 その日、ラクス王子は悟った。

「顔がいいだけで生まれる敵もある」と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

娼館で死んだΩですが、竜帝の溺愛皇妃やってます

めがねあざらし
BL
死に場所は、薄暗い娼館の片隅だった。奪われ、弄ばれ、捨てられた運命の果て。けれど目覚めたのは、まだ“すべてが起きる前”の過去だった。 王国の檻に囚われながらも、静かに抗い続けた日々。その中で出会った“彼”が、冷え切った運命に、初めて温もりを灯す。 運命を塗り替えるために歩み始めた、険しくも孤独な道の先。そこで待っていたのは、金の瞳を持つ竜帝—— 「お前を、誰にも渡すつもりはない」 溺愛、独占、そしてトラヴィスの宮廷に渦巻く陰謀と政敵たち。死に戻ったΩは、今度こそ自分自身を救うため、皇妃として“未来”を手繰り寄せる。 愛され、試され、それでも生き抜くために——第二章、ここに開幕。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!

木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。 この話は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...