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9.誤解でもいいから
しおりを挟む「じゃあ……俺にだけは、祈っていいよ」
ぽつりと呟いたラクスの言葉に、カイルの心臓がドクンと跳ねた。
「……それ、どういう意味だ」
「さあ? 祈ったらわかるかもよ?」
にやりと笑う王子の顔は、完全に煽っている。
けれど、その目の奥は本気が伺えた。
*
イベントのあと、ラクスとカイルは村の見回りをしていた。
「……星、綺麗だな」
「王子、危ない。道に出てる木の根に足が――」
その瞬間、ラクスの足元が崩れ、倒れそうになった――
カイルが支える。
ラクスの身体がカイルの腕におさまる。
自然と、顔が近づく。
ふたりの間に、ほんの指先ひとつ分だけの距離が残った。
「……あ……」
木陰から聞こえたのは、ルークの声だった。
その隣にはカグラ、そしてなぜか村の子どもたちまで。
「き、キスしてる!!」
「恋愛神ラクス様が、神様じゃなくて、恋してる側だった!!」
「違う、してない、今のは未遂――!」
カイルが反射的に否定するも、ラクスが止めた。
「……ま、どっちでもいいじゃん。否定しても、結局誤解されるだけだし」
「ラクス……」
「それに……俺は“誤解”のままでも、別にいいけどね。お前になら」
「……ふざけるな」
静かな声で、けれど震えるように、カイルが言った。
「誤解でいいわけないだろ。……お前が、誰とどう見られるかなんて、俺が一番気にしてる」
「……じゃあさ」
ラクスが、ぐっとカイルの服を掴む。
目の前で微笑んだ。
「お前がちゃんと、“誤解じゃなくして”みろよ」
\キャーーーーーーーーーー!!!!/
\今の聞いた!? 聞いた!?/
\王子さま、攻め!? それとも受け!?(議論分かれる)/
\新たな俳句:「口づけを 誤解と呼ぶな 恋の先」!!/
「ラクス……お前、本気で言ってるのか」
「うん。俺はお前になら、“祈ってもいい”と思ってる」
「俺……口下手で、不器用で、お前に似合う男じゃ――」
「うるさい。言い訳の代わりに、キスしてから帰れ」
「っ……!!」
カイルはその夜、そっとラクスの髪に触れて目を閉じた。
「……そのうち、する。覚悟しとけ」
「はーい。期待して寝るわ」
その夜、ラクスはちゃんと夢でキスされた。
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