【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です

ナポ

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10.吐いて笑って、誓った恋


 その日は朝から村の祭りでにぎわっていた。
 屋台が立ち並び、ラクスはうきうきと三本目の蜂蜜団子を頬張っていた。

「王子、それ以上食べると……」

「うっ……ごめ、ちょっと、これ……うぷっ……」

「ほら言わんこっちゃない!!」

 その直後、王子は顔面蒼白でトイレへダッシュ。
 護衛カイルは無言で背中をさすっていた。

「うぅ……俺って……ほんと、王子の威厳ないよな……」

「お前に威厳は最初から求めてない。大丈夫だ、似合ってる」

「それ褒めてないから……!」

 そんなラクスが、ようやく落ち着いてきたところで馬車が村に入った。

「王都の紋章……!?」
「まさか、婚約者候補!?」

 降りてきたのは、キラッキラの金髪をなびかせた、社交界の貴公子エリオット・セレスト。

「やあラクス!久しぶりだね!突然だけど、君を迎えに来たよ!」

「ええええええええ!!!??」

 その瞬間、ラクスの横にいたカイルの気配が……変わった。

 まるで剣のように鋭く、冷たい。けれど、声は冷静だった。

「申し訳ありませんが、王子には既に……“結婚を約束した相手”がいます」

 場が静まり返る。

ラクス:「えっ」  
ルーク:「えっ」  
カグラ:「は?」  
子ども:「キャー!! ご結婚ー!!」

カイルは一歩、ラクスの前に出た。
そして、ぐるりと集まった視線をものともせず、ラクスの手を、握った。

「こいつは……俺が生涯、命をかけて守る男だ」

 顔を真っ赤にして俯いたまま、
 それでも声はまっすぐだった。

「護衛だからとか、立場がどうとか、全部取っ払って――俺は、こいつを愛してる」

「お前さあ……ほんと、不器用だよな……」

 ラクスは呆れたように、けれど優しく笑った。
 そして、ぎゅっとカイルの手を握り返した。

「だったらちゃんと、言ってやるよ」

「俺も、お前が好き。お前以外、いらない」

「それと」

 ラクスはきっぱりと、王都から来た美形貴族に向き直って言い放った。

「俺は結婚するからな。相手はカイルだ。文句ある?」

「……ない……!!(※むしろ感動して泣きかけてるエリオット)」

こんなに愛し合ってるのに、邪魔んなて出来ないっ!と貴族らしくない熱烈な宣言に感銘を受けていた。

 その日の夜、ラクスはぽつりとカイルに言った。

「結婚の約束って、いつからだったんだ?」

「さっき、咄嗟に言った」

「やっぱりかよ!!」

「……嫌じゃなかったけどな」

「俺も」

 ふたりはそっと、指を絡めた。
 村の夜空には、花火が上がった。


 嘔吐から始まり、恋が実ったこの日。
王子ラクスと護衛カイルの物語は――ここから、夫婦編に突入するのである。多分。
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