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第一章『性なる力に目覚めた勇者!?』
第27話 旅の始まり
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「ぎゃあああああああああっ!」
幽霊でも見たかのように叫ぶのはユーマの方。
対して、ヒミカは勇者として覚醒した魔力を再び練り上げる。
「ワシが憎いかぇ? ヒミカたんの純潔を奪ったワシが」
殺気を込めて睨みつつも、返答に窮する。
先ほどの情事を思い出して、顔が火で炙ったかのように熱い。
(一八年間、好きな人のために守ってきた初めてを、こんなスケベジジイに捧げたのは死にたくなるほど憎いわよ。でも……)
最後は開き直っていた。むしろ、自ら腰を振って精液を搾り取っていた。
喉から奏でた嬌声は、犯されているにも関わらず艶が乗っていた。
気持ちよさを十分に堪能し、さらには結果的に勇者としての力も覚醒した。
(まさか、王様って)
「ほっほっほ。申し訳なかったのぉ。ええんじゃよ、憎んだままで。結局のところ、ワシはてめえの目的を達するためだけにヒミカたんを呼んだわけじゃからのぉ」
パチン、と指を鳴らすとふらふらと起き上がった騎士がどこからか包みを取り出してきた。
「魔王を打倒す旅の餞別じゃ。持っていきなさい」
はらり、と包みを開いたそこには。
「って、やっぱり銅の扇じゃないの!」
「げふっ」
(あれ?)
王様の顔に叩きつけた扇の下には、綺麗な布が畳んであることに気づく。
両手で広げると、深紅に染まったドレスだった。
「綺麗…………って、スケスケじゃない! それに上半身は胸当てだけだし! 王様の趣味なの!?」
ぐぎぎーっ! と引裂いてやろうと思ったが、繊維は少しもちぎれない。
「これは真紅のベラと呼ばれるドレスでな。ワシと先代勇者が旅の途中で見つけた逸品モノじゃ。性能については保証するぞい」
「へぇ。早速売りに行こうかしら」
「ヒミカたんが着た方がお金になるぞい」
自信たっぷりに言うものだから、改めてじっくり眺めてみる。
確かにミルキィフラワーのステージ衣装とは比較にならない程、高品質な衣装だった。
床を埋め尽くすレッドカーペットよりも鮮やかな赤。
露出と透け具合こそ大胆なものの、不思議と品も兼ね備えている。
生地はサテン、つるつる滑るような触り心地。
たった今卸したかのようにキラキラとしていて、痛みや染みついた匂いは全くない。
(多分、魔力でコーティングされてるんだ)
「どうじゃ? ヒミカたんにお似合いじゃろう?」
「わかった。もらっておく」
「よきかな、よきかな。……で?」
「で?」
「着ないのかえ? ワシの前で見せてもらえんか。次代勇者の晴れ姿、記念すべき門出を」
「いいわ」
すぽーん! と脱いだシャツは一旦ユーマに返却。
「ごめん、ちょっと持ってて」
シャツを着たまま光の速さで着替える。
踊り子……いや、女の子の基本スキルを発動。
踊るようにパンツを履いて、一瞬の隙も見せずに胸当てを装着し、最後に王冠のようなティアラをかぶる。
「お、おおっ!」
「すごい、です」
王様とユーマの目が見開く。
真紅のベラを身にまとったヒミカ。
天に向かって手を広げると、その場で軽く一回転。
ふわり、と繊細な風魔法を使ったかのようにパンツの裾が柔らかく持ち上げられる。
もう、ただの娼婦ではない。
最上級クラスの踊り子。
世界を救うプリンシパルにして、闇夜に輝くエトワール。
役立たずだったヒミカが、名実ともに勇者となった瞬間だった。
「さ、最高じゃあっ! ワシの愚息が、再び子を孕めと叫んで──ごふぅっ」
カエルのように飛び跳ねて襲い掛かってきた王様の睾丸を蹴り上げて、撃沈。
「ほっ……おっ……おぅ、ヒミカ、たん。がくっ」
「このドレスは素敵だけど、こんなもので私の処女を奪ったこと、許してないし」
ハジメテはいつか結ばれる王子様と。
ぼんやりと、幼少期の眩しい記憶がよぎる。
唇だけは未だ誰にも奪われていないことが、唯一の救いだった。
「ユミカを危険な目に遭わせてたことは、もっと許せないから」
王様はもう何も喋らなかった。
王族護衛騎士だけが知る抜け道を通って、ヒミカと、ユミカを背負ったユーマは城を脱出した。
城下町を行き交う人々は城で何があったかなんで知る由もなく、気の抜けたような雰囲気で、空も明るかった。
「あららぁ、ユーマ! おかえり……ってまさか、か、彼女ができたの!?」
唇をわなわなと震わせたのはユーマの姉、ユーリだ。ここはユーマの姉の家で、普段は城の食堂で働いてるとのこと。今日はたまたま休みらしい。
「いや、違うよ……それより、この子を。ユミカちゃんって言うんだけど」
「もう子供までいるの!?」
「だから違うって!」
随分と思い込みが激しい姉のようだ。かなり綺麗で若く見えるけれど。
「最近はユーマがなかなか帰ってこなくて寂しいからね。預かるのはいいんだけど、そこの綺麗なお嬢さんは一体誰なの?」
「はじめまして、ヒミカです」
「彼女は、勇者だよ。僕は、勇者様と一緒に魔王を討伐しに行くんだ」
「勇者ぁ?」
訝しむようにヒミカとユーマを交互に見るユーリ。
けれど、すぐ納得したようにうんうん、と頷いた。
「わわっ。お姉ちゃん……?」
ぎゅうっとユーリに抱きしめられていた。
「ユーマ! 勇者を守る騎士になるって夢、叶えたんだね」
「ううん、まだこれからだよ」
「家のことは心配しなくていいから、行っておいで。ヒミカさんも、妹さんのことは心配しないで、ユーマをどうかよろしくね」
「いえ、私なんて。今もこうして助けてもらってるのに。私と妹を助けてくれたこと、どうお礼を返していいか……」
「いいの、いいの。ユーマはお姉ちゃんっ子だから、そろそろ一人立ちしないとだめって思ってたところなのよ。今は強がってるけど、すぐヒミカさんに甘えそうで心配だわ」
「お姉ちゃん!」
ヒミカとユミカのように、中の良い姉弟で、微笑ましくなった。
「とりあえず、お風呂入ってきなさいな。理由は聞かないけど、すごい匂いしてるわよ」
「えっ!?」
ユーリさんのお言葉に甘え、お風呂と食事までご馳走になってしまった。
★
深夜。
「ユミカ、またね。ユーリさんと仲良くね。お姉ちゃん、必ず世界を平和にして帰ってくるから」
そろそろ魔法の効力が切れて、目が覚めるはずだ。
だからこそ、朝を待たず、深夜の内に出発しなきゃならない。
起きてたら、きっとヒミカを引き留めるだろうから。
真紅のベラの上にユーリからもらった旅用のローブを羽織って、城下町から去る。
ユーマが操縦する馬車に乗って、堂々と城下町の門をくぐる。
既に王様から話は聞いていたのだろう。門番の騎士は何も言わなかった。
目指すのは北。不毛の渓谷地帯・タラウフラス。
先代魔王の居城が廃墟となって聳え立っている。
世界を滅ぼす災害は決まって北からやってくる。
つまり、次代の魔王もやはり廃墟に現れるだろうとのことだ。
「タラウフラスまでの道中は、小さな街と村が点々としています。まずは、街に向かって情報収集をしましょう」
「じゃあ、まずは途中のアグリナ街ね」
「はい、ただ」
手綱を握るユーマが言い淀む。
「街までは遠くて険しく、また何もないんですよね」
「それってつまり……」
「僕達、どうやって生活していけばいいんでしょうね」
幽霊でも見たかのように叫ぶのはユーマの方。
対して、ヒミカは勇者として覚醒した魔力を再び練り上げる。
「ワシが憎いかぇ? ヒミカたんの純潔を奪ったワシが」
殺気を込めて睨みつつも、返答に窮する。
先ほどの情事を思い出して、顔が火で炙ったかのように熱い。
(一八年間、好きな人のために守ってきた初めてを、こんなスケベジジイに捧げたのは死にたくなるほど憎いわよ。でも……)
最後は開き直っていた。むしろ、自ら腰を振って精液を搾り取っていた。
喉から奏でた嬌声は、犯されているにも関わらず艶が乗っていた。
気持ちよさを十分に堪能し、さらには結果的に勇者としての力も覚醒した。
(まさか、王様って)
「ほっほっほ。申し訳なかったのぉ。ええんじゃよ、憎んだままで。結局のところ、ワシはてめえの目的を達するためだけにヒミカたんを呼んだわけじゃからのぉ」
パチン、と指を鳴らすとふらふらと起き上がった騎士がどこからか包みを取り出してきた。
「魔王を打倒す旅の餞別じゃ。持っていきなさい」
はらり、と包みを開いたそこには。
「って、やっぱり銅の扇じゃないの!」
「げふっ」
(あれ?)
王様の顔に叩きつけた扇の下には、綺麗な布が畳んであることに気づく。
両手で広げると、深紅に染まったドレスだった。
「綺麗…………って、スケスケじゃない! それに上半身は胸当てだけだし! 王様の趣味なの!?」
ぐぎぎーっ! と引裂いてやろうと思ったが、繊維は少しもちぎれない。
「これは真紅のベラと呼ばれるドレスでな。ワシと先代勇者が旅の途中で見つけた逸品モノじゃ。性能については保証するぞい」
「へぇ。早速売りに行こうかしら」
「ヒミカたんが着た方がお金になるぞい」
自信たっぷりに言うものだから、改めてじっくり眺めてみる。
確かにミルキィフラワーのステージ衣装とは比較にならない程、高品質な衣装だった。
床を埋め尽くすレッドカーペットよりも鮮やかな赤。
露出と透け具合こそ大胆なものの、不思議と品も兼ね備えている。
生地はサテン、つるつる滑るような触り心地。
たった今卸したかのようにキラキラとしていて、痛みや染みついた匂いは全くない。
(多分、魔力でコーティングされてるんだ)
「どうじゃ? ヒミカたんにお似合いじゃろう?」
「わかった。もらっておく」
「よきかな、よきかな。……で?」
「で?」
「着ないのかえ? ワシの前で見せてもらえんか。次代勇者の晴れ姿、記念すべき門出を」
「いいわ」
すぽーん! と脱いだシャツは一旦ユーマに返却。
「ごめん、ちょっと持ってて」
シャツを着たまま光の速さで着替える。
踊り子……いや、女の子の基本スキルを発動。
踊るようにパンツを履いて、一瞬の隙も見せずに胸当てを装着し、最後に王冠のようなティアラをかぶる。
「お、おおっ!」
「すごい、です」
王様とユーマの目が見開く。
真紅のベラを身にまとったヒミカ。
天に向かって手を広げると、その場で軽く一回転。
ふわり、と繊細な風魔法を使ったかのようにパンツの裾が柔らかく持ち上げられる。
もう、ただの娼婦ではない。
最上級クラスの踊り子。
世界を救うプリンシパルにして、闇夜に輝くエトワール。
役立たずだったヒミカが、名実ともに勇者となった瞬間だった。
「さ、最高じゃあっ! ワシの愚息が、再び子を孕めと叫んで──ごふぅっ」
カエルのように飛び跳ねて襲い掛かってきた王様の睾丸を蹴り上げて、撃沈。
「ほっ……おっ……おぅ、ヒミカ、たん。がくっ」
「このドレスは素敵だけど、こんなもので私の処女を奪ったこと、許してないし」
ハジメテはいつか結ばれる王子様と。
ぼんやりと、幼少期の眩しい記憶がよぎる。
唇だけは未だ誰にも奪われていないことが、唯一の救いだった。
「ユミカを危険な目に遭わせてたことは、もっと許せないから」
王様はもう何も喋らなかった。
王族護衛騎士だけが知る抜け道を通って、ヒミカと、ユミカを背負ったユーマは城を脱出した。
城下町を行き交う人々は城で何があったかなんで知る由もなく、気の抜けたような雰囲気で、空も明るかった。
「あららぁ、ユーマ! おかえり……ってまさか、か、彼女ができたの!?」
唇をわなわなと震わせたのはユーマの姉、ユーリだ。ここはユーマの姉の家で、普段は城の食堂で働いてるとのこと。今日はたまたま休みらしい。
「いや、違うよ……それより、この子を。ユミカちゃんって言うんだけど」
「もう子供までいるの!?」
「だから違うって!」
随分と思い込みが激しい姉のようだ。かなり綺麗で若く見えるけれど。
「最近はユーマがなかなか帰ってこなくて寂しいからね。預かるのはいいんだけど、そこの綺麗なお嬢さんは一体誰なの?」
「はじめまして、ヒミカです」
「彼女は、勇者だよ。僕は、勇者様と一緒に魔王を討伐しに行くんだ」
「勇者ぁ?」
訝しむようにヒミカとユーマを交互に見るユーリ。
けれど、すぐ納得したようにうんうん、と頷いた。
「わわっ。お姉ちゃん……?」
ぎゅうっとユーリに抱きしめられていた。
「ユーマ! 勇者を守る騎士になるって夢、叶えたんだね」
「ううん、まだこれからだよ」
「家のことは心配しなくていいから、行っておいで。ヒミカさんも、妹さんのことは心配しないで、ユーマをどうかよろしくね」
「いえ、私なんて。今もこうして助けてもらってるのに。私と妹を助けてくれたこと、どうお礼を返していいか……」
「いいの、いいの。ユーマはお姉ちゃんっ子だから、そろそろ一人立ちしないとだめって思ってたところなのよ。今は強がってるけど、すぐヒミカさんに甘えそうで心配だわ」
「お姉ちゃん!」
ヒミカとユミカのように、中の良い姉弟で、微笑ましくなった。
「とりあえず、お風呂入ってきなさいな。理由は聞かないけど、すごい匂いしてるわよ」
「えっ!?」
ユーリさんのお言葉に甘え、お風呂と食事までご馳走になってしまった。
★
深夜。
「ユミカ、またね。ユーリさんと仲良くね。お姉ちゃん、必ず世界を平和にして帰ってくるから」
そろそろ魔法の効力が切れて、目が覚めるはずだ。
だからこそ、朝を待たず、深夜の内に出発しなきゃならない。
起きてたら、きっとヒミカを引き留めるだろうから。
真紅のベラの上にユーリからもらった旅用のローブを羽織って、城下町から去る。
ユーマが操縦する馬車に乗って、堂々と城下町の門をくぐる。
既に王様から話は聞いていたのだろう。門番の騎士は何も言わなかった。
目指すのは北。不毛の渓谷地帯・タラウフラス。
先代魔王の居城が廃墟となって聳え立っている。
世界を滅ぼす災害は決まって北からやってくる。
つまり、次代の魔王もやはり廃墟に現れるだろうとのことだ。
「タラウフラスまでの道中は、小さな街と村が点々としています。まずは、街に向かって情報収集をしましょう」
「じゃあ、まずは途中のアグリナ街ね」
「はい、ただ」
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