【R-18】踊り子なのに世界を救えと命令されて? ~勇者として魔王を逝(イ)かせる旅に出ます~

湊零

文字の大きさ
89 / 95
第四章『魔王城で婚活を!?」

第89話 守ることすらできない騎士は

しおりを挟む
 少し前。

「くそっ……城の中が複雑すぎる。玉座に一直線どころか、まるで迷路じゃないか! おまけにどこもかしこも薄暗いしジメジメしてるし、セントエルディア城の方がよっぽど快適だ」

 魔界戦線でラミアに攫われてから、一体どれだけの時間が経過しただろうか。
 ヒミカの安否が分からない今、高鳴る心臓が不安でズキズキと痛む。

「落ち着け……落ち着け、僕」

 目を閉じ、微かな気配や匂い(悪く言えば変態的執着)を感じ取り、再び歩みだす。

「ここ、なのか……?」

 金の装飾があしらわれた、他と雰囲気が違う一部屋。
 ごくり、と唾を呑み込んで乾いた喉を湿らせ、そっと耳を冷たい扉に当てる。

『は、アん♡ イイ、よぉ♡ ヒミカ、気持ちいい、のぉ♡』

「は? え?」

 何をしているのか、なんて想像するまでもない。
 迷宮のような城内を迷わず突き進んだユーマは正しかった。
 しかし、何もかもが遅すぎた。

 そして、現在に至る。

「そん、な」

 がっくりと、疲れを訴えた足が折れて膝をつく。

『おっ!? おちん×んがぁっ♡ まだ大きくなりゅっ♡ 子宮なんてとっくに貫通して、奥の壁ごつんごつんって叩いてりゅっ♡』

 重く分厚い鉄扉でさえも遮断しきれずに漏れ出た、探し求めた愛する人の声。
 何度聞き間違い、幻聴、精神系魔法の類と思い込もうとしても、鼓膜にこびりついて剥がれない。
 大淫婦ラミアの魔眼のせいだったらどれだけよかっただろう。

「ヒミカさん……っ!」

 艶の乗った嬌声を聞くのも、一糸纏わぬ艶姿を目にしたのも、もう数えきれない。
 そしてほとんどの場合、ユーマは眺める側(・・・)の存在だった。
 
 でも、それで良かった。
 だって、それは勇者が相手をヘロヘロに骨抜きにしてしまうからだ。

『……はい、ヒミカは魔王ブレド様と結婚し、性奴隷として奉仕します♡♡♡』

「ヒミカさん!!」
 
 もはや返事すらなく。

(……身の程を知れって、ことか?)
 
 最初からユーマはいてもいなくても変わらない。
 この程度の扉、壁を破ることのできないただの騎士には、勇者を救う資格も、想い人として選ぶ権利もないと?
 
 よろよろと立ち上がって後ずさる。
 不甲斐なくテントを張っているかと思った股間はピクリともせず冷え切っていた。

「くそっ!」

 背を向け、逃げるように駆け出した。
 悔しさで訳の分からないことを叫びながら、手近にあった窓に体当たりして外に出る。

「崖……」

 魔王城は谷底のせり出た岩場に構えているため、外に出れば目も眩むような黒い壁に覆われる。
 首が痛くなるほど見上げれば、上空は瘴気に囲まれていて高さが分からない。 

 ユーマは身に着けたガントレット、グリーヴ以外の全ての鎧を脱ぎ捨てると、躊躇いなく岩肌に手をかけた。
 幸い、崖の表面は凸凹しており、登れないということはない。

「はぁっ……はぁっ……」

 魔王城の一階部分を越え、二階部分を越え、高く聳えた尖塔をも越えていく。

 地面が遠ざかる。
 ユーマは逃げる。
 けれど、汗で滲む瞳は、失意に沈んでなどいなかった。

「諦めて……たまるか」

 早くも感覚を失い始めた指先に、強引に力を込める。
 動かない足に動けと、無理やりでも命じる。
 この程度の断崖絶壁で諦めて、全て見て見ぬフリをするのなら。

「最初から、ヒミカさんを好きになってなんかない!」

 己を奮い立たせるように叫び、さらに登り続けた。
 魔王城が漏れ出す瘴気しか見えなくなるほどに。
 けれど、無情にも左足をかけた突起があっさりと砕けて、支えを失ってしまう。

「うわ? あああああっ!?」

 為す術もなく、身体が真っ逆さまに落ちていく。
 それでもユーマは叫んだ。

「誰でもいい! 僕じゃなくていい! 誰か、誰かヒミカさんを助けて! ガイさん! ババロアさん! ムースさん! セントエルディアのクソ王様!!」

「呼んだかの?」

 虚空から誰かの腕に力強く引かれた。

「あなたは……いや、あなたたちは……?」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

囚われの姫君の♥♥♥な舞台裏

AIに♥♥♥な質問
ファンタジー
清楚で可憐な王女、魔物を操る敵国に幽閉、肉体改造。何も起きないはずがなく…。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

金髪女騎士の♥♥♥な舞台裏

AIに♥♥♥な質問
ファンタジー
高貴な金髪女騎士、身体強化魔法、ふたなり化。何も起きないはずがなく…。

処理中です...