【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった

ゆう

文字の大きさ
9 / 28
ウェス編

9

しおりを挟む
そして、俺は数日のうちに急いで準備を整えた。

上空から降らせる毒を集め、戦士職の男の妻子を人質に取り勇者たちを裏切らせる約束をした。そして最後の手段として、自分の命を糧に発動する禁忌魔法も仕込んだ。

ここまでしても不安は拭えない。それでも勇者一行の数人でも減らすことができればディニス様の負担が軽くなるはずだ。

そう思ってベルケンシュトック領を超えた彼らの前に立ちはだかった。

「こいつ、前に戦った悪魔だ!」
「まずは重力魔法で落とせ!」

人間たちの声が聞こえる。俺は同じ手は食らうものかと、彼らの魔力が及ばない上空まで飛び上がり毒をばら撒いた。

「これは…!?」
「皆!この粉を吸うな!」

下で人間たちが慌てているが、既に3分の1は動かなくなっている。

(やった…!)

そう思ったのも束の間、聖女の力でまだ息絶えていなかった面々は完全回復されてしまう。

俺は舌打ちしそうになるのを堪えて攻撃を続けた。
そしてそろそろだと思い合図を送る。

すると勇者の後ろにいた戦士が仲間を裏切り勇者を切りつけた。

「な、何を…!?」
「す、すまない…妻と子が…人質に…せめてあの2人だけは助けてくれ…」

勇者は斬られたのにも関わらず、顔を苦悶の表情に歪めたかと思うと戦士を切り捨てた。

「卑怯な悪魔め!さっさと降りてこい!」

彼がそう叫んでいるのが聞こえる。

重力魔法を避け高いところから攻撃を仕掛けているため、奴らの攻撃は当たらないが、俺の攻撃も威力が落ちる。
このままではジリ貧だと思った俺は最後の手段に出ることにした。

「ぐっ!」

勇者の放った攻撃に当たったフリをして地面に転落する。

「やったぞ!」

そんな人々の声が聞こえ、地面に落ちた俺に我先にと留めを刺そうとやってくる。

(今だっ!)

俺はその瞬間に、自身に仕込んだ禁忌魔法を発動させて周囲一体を燃やし尽くした。

「やったか…?」

俺は辺りを見渡した。防壁を張ったとはいえ、自身の生命力を使った魔法で俺自身の消耗も激しい。
なんとか生き残ったが、これ以上戦うことはできないだろう。

そして周りに動くものがないかを確かめる。
…誰もいない。

「やった…!やったぞ、俺が勇者一行を倒し…」

そこまで言ったところで何かが俺の心臓を貫いた。

「え…?」

体が燃えるように熱い。そして痛い。

一体何が起きたというのか。
そして攻撃が来た方を振り返ると、そこにはソロン様が立っていた。

「まさか本当に勇者一行を倒すとは。やりますね、ウェス」
「な、んで…ソロン様が俺を…」

いまだに状況の理解が追いつかない。俺はソロン様に攻撃されたのか?

「馬鹿なウェス。今の一撃で死んでおけばまだ幸せだったものを」

そう言ってソロン様は見たこともない醜悪な笑顔で笑った。

「私があんな話をすれば君はもう一度勇者たちに戦いを挑むと思っていました。まあ、勝つとは夢にも思いませんでしたが…これはこれで行幸です」

ソロン様はゆっくりと俺に歩み寄ると、羽を思い切り踏んづけた。

「ぐっ!何を…」

踏まれた羽は折れ、おかしな方向に曲がっていた。

「これで魔王城には戻れませんね。まあ、戻る間もなく息絶えそうですが…念には念を入れておかないと。では、私はディニス様にと報告に行かないといけませんので」

そうにっこり笑った彼は転移魔法で消えていった。

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【8話完結】どんな姿でも、あなたを愛している。

キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。 声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。 「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」 ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。 失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。 全8話

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

処理中です...