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ウェス編
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それからと言うもの、俺は抜け殻のように過ごした。市井に降ってからは、俺を見下す人も汚らわしそうに見てくる人もいない。
だが…
(ディニス様もいない…)
生活は以前より安穏としているはずなのに、その一点だけで俺の心はずっと落ち込んだままだった。
もうあの人に会うことはできない。
そう思うと生きていることが無意味に思えた。
近所に住む低級魔族たちが心配して食料や傷薬を分けてくれる。その優しさをありがたく思いつつ、生きる気にならない自分を申し訳なかく思った。
いっそここからも消えてしまおうか、そう考え始めた頃、ソロン様が訪ねてきた。
「やあウェス。元気…ではなさそうだね」
「ソロン様、なぜこんなところに?」
「君のことが気になってね」
そう言った彼はお土産を手渡し部屋へと入ってきた。
「なかなかいい家じゃないか。その後落ち着いたかい?」
「はあ…そうですね…のんびりさせてもらっています」
何もやることがなくただ生きているだけだが、と心の中で付け加える。
「その、ディニス様は…お元気ですか?何か、俺のことを話したりは…」
ふと気になったことを口にしてみる。自分で尋ねておいてなんだが、正直答えを聞くのは怖い。
「ああ、ディニス様は…今は忙しくされていてね。君については特に…」
「そう、ですか…」
分かりきっていたことなのに、もしかしたらと思ってはまた落ち込んでしまう自分がいる。
もうあの人の中に自分はいないのだと思うと胸が苦しい。
「あー…気を落とさないでくれ。魔王軍の情勢が良くなくてね。ディニス様も大変なんだ」
「それは、どういう…」
「ディニス様が出陣せざるを得ない状況が近づいている。それに、勇者たちは力を増していてディニス様でも勝てるかどうか…」
「そ、そんな…ディニス様が負けるはずありません」
俺の言葉にソロン様は溜息を吐いた。
「私もそう信じたいが、相手も強いからね。まあでも、ディニス様を信じるしかないな」
そう言って彼は少し疲れたように微笑んだ。
「すまない、こんな話を君にしたところで仕方がないのに」
「いえ…」
その言葉は、まるで俺に言ったところでどうにもならないと言われたようで俺の心を抉った。
「それで、勇者一行は今どの辺りに?」
「ああ、まもなくベルケンシュトック領に入るよ」
「そんなところまで進行してきて…」
ベルケンシュトックといえば魔王城の目と鼻の先だ。確かに、ディニス様とぶつかる日も近いのかもしれない。
あの人なら大丈夫だ。そう思っているのに不安が拭いきれない。
「こんな話をするために来たわけじゃなかったのだが、すまないね…暗くしてしまって。君は気にせず穏やかに暮らしてくれ。きっとディニス様もそれを望んでいる」
「いえ。ありがとう、ございます」
俺は複雑な気持ちでそう返事をした。
ーーー
ソロン様が帰ってから俺は考えた。
つい数ヶ月前、惨敗して爵位を剥奪されたばかりの俺に何ができるのかと思うが、ディニス様が危ないかもしれないと思うとじっとしていられなかった。
(俺は…こんな時もディニス様の役に立てないのか)
そう思うと自分自身に怒りが湧いてくる。
もう生きていても仕方ないのだから、せめて相打ちでも構わないから勇者たちを倒せないだろうか。
そう考えた俺は、人間に関する本を読み漁り勝ち筋を探り出した。
毒、人質、禁忌の魔法…様々なものについて調べた。それは到底戦いと言えるものではなく、酷い手だと自分でも分かっている。
だが、弱くて頭も悪い俺が彼らに勝つには卑怯だからと言って手段を選んではいられなかった。
幸いベルケンシュトックはここからも近い。彼らの手が魔王城に届く前に俺が止める。
うまくいけば、最後にはディニス様ももう一度俺を褒めてくれるかもしれない。
あの優しさにもう一度触れられるなら…
その願望が俺を突き動かした。
だが…
(ディニス様もいない…)
生活は以前より安穏としているはずなのに、その一点だけで俺の心はずっと落ち込んだままだった。
もうあの人に会うことはできない。
そう思うと生きていることが無意味に思えた。
近所に住む低級魔族たちが心配して食料や傷薬を分けてくれる。その優しさをありがたく思いつつ、生きる気にならない自分を申し訳なかく思った。
いっそここからも消えてしまおうか、そう考え始めた頃、ソロン様が訪ねてきた。
「やあウェス。元気…ではなさそうだね」
「ソロン様、なぜこんなところに?」
「君のことが気になってね」
そう言った彼はお土産を手渡し部屋へと入ってきた。
「なかなかいい家じゃないか。その後落ち着いたかい?」
「はあ…そうですね…のんびりさせてもらっています」
何もやることがなくただ生きているだけだが、と心の中で付け加える。
「その、ディニス様は…お元気ですか?何か、俺のことを話したりは…」
ふと気になったことを口にしてみる。自分で尋ねておいてなんだが、正直答えを聞くのは怖い。
「ああ、ディニス様は…今は忙しくされていてね。君については特に…」
「そう、ですか…」
分かりきっていたことなのに、もしかしたらと思ってはまた落ち込んでしまう自分がいる。
もうあの人の中に自分はいないのだと思うと胸が苦しい。
「あー…気を落とさないでくれ。魔王軍の情勢が良くなくてね。ディニス様も大変なんだ」
「それは、どういう…」
「ディニス様が出陣せざるを得ない状況が近づいている。それに、勇者たちは力を増していてディニス様でも勝てるかどうか…」
「そ、そんな…ディニス様が負けるはずありません」
俺の言葉にソロン様は溜息を吐いた。
「私もそう信じたいが、相手も強いからね。まあでも、ディニス様を信じるしかないな」
そう言って彼は少し疲れたように微笑んだ。
「すまない、こんな話を君にしたところで仕方がないのに」
「いえ…」
その言葉は、まるで俺に言ったところでどうにもならないと言われたようで俺の心を抉った。
「それで、勇者一行は今どの辺りに?」
「ああ、まもなくベルケンシュトック領に入るよ」
「そんなところまで進行してきて…」
ベルケンシュトックといえば魔王城の目と鼻の先だ。確かに、ディニス様とぶつかる日も近いのかもしれない。
あの人なら大丈夫だ。そう思っているのに不安が拭いきれない。
「こんな話をするために来たわけじゃなかったのだが、すまないね…暗くしてしまって。君は気にせず穏やかに暮らしてくれ。きっとディニス様もそれを望んでいる」
「いえ。ありがとう、ございます」
俺は複雑な気持ちでそう返事をした。
ーーー
ソロン様が帰ってから俺は考えた。
つい数ヶ月前、惨敗して爵位を剥奪されたばかりの俺に何ができるのかと思うが、ディニス様が危ないかもしれないと思うとじっとしていられなかった。
(俺は…こんな時もディニス様の役に立てないのか)
そう思うと自分自身に怒りが湧いてくる。
もう生きていても仕方ないのだから、せめて相打ちでも構わないから勇者たちを倒せないだろうか。
そう考えた俺は、人間に関する本を読み漁り勝ち筋を探り出した。
毒、人質、禁忌の魔法…様々なものについて調べた。それは到底戦いと言えるものではなく、酷い手だと自分でも分かっている。
だが、弱くて頭も悪い俺が彼らに勝つには卑怯だからと言って手段を選んではいられなかった。
幸いベルケンシュトックはここからも近い。彼らの手が魔王城に届く前に俺が止める。
うまくいけば、最後にはディニス様ももう一度俺を褒めてくれるかもしれない。
あの優しさにもう一度触れられるなら…
その願望が俺を突き動かした。
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