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ウェス編
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その後のことはよく覚えていない。
俺はふらつく足取りで部屋へと戻った。
この部屋も貴族専用に割り当てられた部屋なので、早めに引き払わなくては…
そんなことを考えながらベッドに倒れ込む。流れた血がシーツに滲んでいくが気にしていられなかった。
ディニス様に失望されてしまった。嫌われてしまった。そう思うと悲しくて消えてしまいたくなる。
何年も前のことを思い出す。彼が自分の母親になってくれた日のことを。
あの頃に戻りたい。もう一度愛おしそうに頭を撫でてほしい。
いっそ、あの頃の関係に戻れないのなら死んでしまいたかった。
爵位も愛情も、取り上げられてしまうなら最初から与えてくれなければ良かったのに…
変に期待してしまった。その言葉や行動には意味があるのだと。自分への愛情が隠されているのだと。
だが違った。ディニス様にそんなものは残っていなかった。
俺への関心は既に失われており、醜く育った悪魔を視界に入れたくないという気持ちが今日の態度で分かった。
俺は…もうディニス様の前を去るしかない。彼の目の届かないところでひっそり生きよう。
ふと目から涙が溢れる。それは止まることを知らず次々と溢れ出し、気づけば落ちるように眠っていた。
ーーー
夢の中で、誰かの温もりを感じた。
昔手のひらに乗せて遊んでくれたディニス様のような温もりが…
そして懐かしい気持ちになりながら目を覚ます。顔に触れ、乾いた涙の跡を拭う。するとおかしなことに気づいた。
「顔の傷が、治ってる?」
跡こそ残っているが既に傷口は塞がって状態も落ち着いていた。他に破れた羽も元に戻っている。
誰かが治療してくれたのだろうか。でも一体誰が…もしかしてディニス様が…?
そう思ったところで扉が開いた。
「やあ、ウェス。調子はどうだい?」
「ソロン様?俺は…大丈夫です」
「そうか、傷はできる限り治したのだけど、神聖力の籠った攻撃による傷は完全には治らなかったんだ。すまないね」
そう言った彼に、傷を治してくれたのがソロン様だったと知り、有難いのにがっかりしている自分がいる。
「ソロン様が傷を…ありがとうございました」
「いや、いいよ。それより…急で悪いけど君にはここを出ていってもらわないと」
「はい…すぐに準備します」
自分でも出て行かなければと思っていたが、まさか昨日の今日で追い出されるとは。
あまりに無慈悲な対応にまた涙が出そうになる。
「ウェス、そう落ち込むな。市井でも元気でな」
ソロン様は珍しく俺のことを悪く言わない方で、同情するようね表情でポンっと肩に手を置いた。
「はい、ソロン様にはお世話になりました。ディニス様にも…そうお伝えください」
「ああ。分かった」
そうして俺は荷物をまとめて短い期間だったが自室だったその部屋を後にした。
城の出口に向かっていると、会いたくない人物に出くわしてしまった。
「お前、城を去るのか」
「はい…」
声をかけてきたのはレヴォン様だ。結局彼には馬鹿にされたまま見返すこともできなかった。
「なに、そう落ち込むことはない。誰もお前が何かしてくれるなんて期待していなかったからな」
俺が肩を落としているのを見て、笑みを浮かべながらレヴォン様はそう言った。
その言葉は真実なので俺には何も言い返すことができない。
「チッ、これからはディニス様のことは忘れ、身の程に合った生活をしろ」
するとつまらないと思ったのか、彼は舌打ちをして去っていった。
俺はふらつく足取りで部屋へと戻った。
この部屋も貴族専用に割り当てられた部屋なので、早めに引き払わなくては…
そんなことを考えながらベッドに倒れ込む。流れた血がシーツに滲んでいくが気にしていられなかった。
ディニス様に失望されてしまった。嫌われてしまった。そう思うと悲しくて消えてしまいたくなる。
何年も前のことを思い出す。彼が自分の母親になってくれた日のことを。
あの頃に戻りたい。もう一度愛おしそうに頭を撫でてほしい。
いっそ、あの頃の関係に戻れないのなら死んでしまいたかった。
爵位も愛情も、取り上げられてしまうなら最初から与えてくれなければ良かったのに…
変に期待してしまった。その言葉や行動には意味があるのだと。自分への愛情が隠されているのだと。
だが違った。ディニス様にそんなものは残っていなかった。
俺への関心は既に失われており、醜く育った悪魔を視界に入れたくないという気持ちが今日の態度で分かった。
俺は…もうディニス様の前を去るしかない。彼の目の届かないところでひっそり生きよう。
ふと目から涙が溢れる。それは止まることを知らず次々と溢れ出し、気づけば落ちるように眠っていた。
ーーー
夢の中で、誰かの温もりを感じた。
昔手のひらに乗せて遊んでくれたディニス様のような温もりが…
そして懐かしい気持ちになりながら目を覚ます。顔に触れ、乾いた涙の跡を拭う。するとおかしなことに気づいた。
「顔の傷が、治ってる?」
跡こそ残っているが既に傷口は塞がって状態も落ち着いていた。他に破れた羽も元に戻っている。
誰かが治療してくれたのだろうか。でも一体誰が…もしかしてディニス様が…?
そう思ったところで扉が開いた。
「やあ、ウェス。調子はどうだい?」
「ソロン様?俺は…大丈夫です」
「そうか、傷はできる限り治したのだけど、神聖力の籠った攻撃による傷は完全には治らなかったんだ。すまないね」
そう言った彼に、傷を治してくれたのがソロン様だったと知り、有難いのにがっかりしている自分がいる。
「ソロン様が傷を…ありがとうございました」
「いや、いいよ。それより…急で悪いけど君にはここを出ていってもらわないと」
「はい…すぐに準備します」
自分でも出て行かなければと思っていたが、まさか昨日の今日で追い出されるとは。
あまりに無慈悲な対応にまた涙が出そうになる。
「ウェス、そう落ち込むな。市井でも元気でな」
ソロン様は珍しく俺のことを悪く言わない方で、同情するようね表情でポンっと肩に手を置いた。
「はい、ソロン様にはお世話になりました。ディニス様にも…そうお伝えください」
「ああ。分かった」
そうして俺は荷物をまとめて短い期間だったが自室だったその部屋を後にした。
城の出口に向かっていると、会いたくない人物に出くわしてしまった。
「お前、城を去るのか」
「はい…」
声をかけてきたのはレヴォン様だ。結局彼には馬鹿にされたまま見返すこともできなかった。
「なに、そう落ち込むことはない。誰もお前が何かしてくれるなんて期待していなかったからな」
俺が肩を落としているのを見て、笑みを浮かべながらレヴォン様はそう言った。
その言葉は真実なので俺には何も言い返すことができない。
「チッ、これからはディニス様のことは忘れ、身の程に合った生活をしろ」
するとつまらないと思ったのか、彼は舌打ちをして去っていった。
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