7 / 28
ウェス編
7
しおりを挟む
その後のことはよく覚えていない。
俺はふらつく足取りで部屋へと戻った。
この部屋も貴族専用に割り当てられた部屋なので、早めに引き払わなくては…
そんなことを考えながらベッドに倒れ込む。流れた血がシーツに滲んでいくが気にしていられなかった。
ディニス様に失望されてしまった。嫌われてしまった。そう思うと悲しくて消えてしまいたくなる。
何年も前のことを思い出す。彼が自分の母親になってくれた日のことを。
あの頃に戻りたい。もう一度愛おしそうに頭を撫でてほしい。
いっそ、あの頃の関係に戻れないのなら死んでしまいたかった。
爵位も愛情も、取り上げられてしまうなら最初から与えてくれなければ良かったのに…
変に期待してしまった。その言葉や行動には意味があるのだと。自分への愛情が隠されているのだと。
だが違った。ディニス様にそんなものは残っていなかった。
俺への関心は既に失われており、醜く育った悪魔を視界に入れたくないという気持ちが今日の態度で分かった。
俺は…もうディニス様の前を去るしかない。彼の目の届かないところでひっそり生きよう。
ふと目から涙が溢れる。それは止まることを知らず次々と溢れ出し、気づけば落ちるように眠っていた。
ーーー
夢の中で、誰かの温もりを感じた。
昔手のひらに乗せて遊んでくれたディニス様のような温もりが…
そして懐かしい気持ちになりながら目を覚ます。顔に触れ、乾いた涙の跡を拭う。するとおかしなことに気づいた。
「顔の傷が、治ってる?」
跡こそ残っているが既に傷口は塞がって状態も落ち着いていた。他に破れた羽も元に戻っている。
誰かが治療してくれたのだろうか。でも一体誰が…もしかしてディニス様が…?
そう思ったところで扉が開いた。
「やあ、ウェス。調子はどうだい?」
「ソロン様?俺は…大丈夫です」
「そうか、傷はできる限り治したのだけど、神聖力の籠った攻撃による傷は完全には治らなかったんだ。すまないね」
そう言った彼に、傷を治してくれたのがソロン様だったと知り、有難いのにがっかりしている自分がいる。
「ソロン様が傷を…ありがとうございました」
「いや、いいよ。それより…急で悪いけど君にはここを出ていってもらわないと」
「はい…すぐに準備します」
自分でも出て行かなければと思っていたが、まさか昨日の今日で追い出されるとは。
あまりに無慈悲な対応にまた涙が出そうになる。
「ウェス、そう落ち込むな。市井でも元気でな」
ソロン様は珍しく俺のことを悪く言わない方で、同情するようね表情でポンっと肩に手を置いた。
「はい、ソロン様にはお世話になりました。ディニス様にも…そうお伝えください」
「ああ。分かった」
そうして俺は荷物をまとめて短い期間だったが自室だったその部屋を後にした。
城の出口に向かっていると、会いたくない人物に出くわしてしまった。
「お前、城を去るのか」
「はい…」
声をかけてきたのはレヴォン様だ。結局彼には馬鹿にされたまま見返すこともできなかった。
「なに、そう落ち込むことはない。誰もお前が何かしてくれるなんて期待していなかったからな」
俺が肩を落としているのを見て、笑みを浮かべながらレヴォン様はそう言った。
その言葉は真実なので俺には何も言い返すことができない。
「チッ、これからはディニス様のことは忘れ、身の程に合った生活をしろ」
するとつまらないと思ったのか、彼は舌打ちをして去っていった。
俺はふらつく足取りで部屋へと戻った。
この部屋も貴族専用に割り当てられた部屋なので、早めに引き払わなくては…
そんなことを考えながらベッドに倒れ込む。流れた血がシーツに滲んでいくが気にしていられなかった。
ディニス様に失望されてしまった。嫌われてしまった。そう思うと悲しくて消えてしまいたくなる。
何年も前のことを思い出す。彼が自分の母親になってくれた日のことを。
あの頃に戻りたい。もう一度愛おしそうに頭を撫でてほしい。
いっそ、あの頃の関係に戻れないのなら死んでしまいたかった。
爵位も愛情も、取り上げられてしまうなら最初から与えてくれなければ良かったのに…
変に期待してしまった。その言葉や行動には意味があるのだと。自分への愛情が隠されているのだと。
だが違った。ディニス様にそんなものは残っていなかった。
俺への関心は既に失われており、醜く育った悪魔を視界に入れたくないという気持ちが今日の態度で分かった。
俺は…もうディニス様の前を去るしかない。彼の目の届かないところでひっそり生きよう。
ふと目から涙が溢れる。それは止まることを知らず次々と溢れ出し、気づけば落ちるように眠っていた。
ーーー
夢の中で、誰かの温もりを感じた。
昔手のひらに乗せて遊んでくれたディニス様のような温もりが…
そして懐かしい気持ちになりながら目を覚ます。顔に触れ、乾いた涙の跡を拭う。するとおかしなことに気づいた。
「顔の傷が、治ってる?」
跡こそ残っているが既に傷口は塞がって状態も落ち着いていた。他に破れた羽も元に戻っている。
誰かが治療してくれたのだろうか。でも一体誰が…もしかしてディニス様が…?
そう思ったところで扉が開いた。
「やあ、ウェス。調子はどうだい?」
「ソロン様?俺は…大丈夫です」
「そうか、傷はできる限り治したのだけど、神聖力の籠った攻撃による傷は完全には治らなかったんだ。すまないね」
そう言った彼に、傷を治してくれたのがソロン様だったと知り、有難いのにがっかりしている自分がいる。
「ソロン様が傷を…ありがとうございました」
「いや、いいよ。それより…急で悪いけど君にはここを出ていってもらわないと」
「はい…すぐに準備します」
自分でも出て行かなければと思っていたが、まさか昨日の今日で追い出されるとは。
あまりに無慈悲な対応にまた涙が出そうになる。
「ウェス、そう落ち込むな。市井でも元気でな」
ソロン様は珍しく俺のことを悪く言わない方で、同情するようね表情でポンっと肩に手を置いた。
「はい、ソロン様にはお世話になりました。ディニス様にも…そうお伝えください」
「ああ。分かった」
そうして俺は荷物をまとめて短い期間だったが自室だったその部屋を後にした。
城の出口に向かっていると、会いたくない人物に出くわしてしまった。
「お前、城を去るのか」
「はい…」
声をかけてきたのはレヴォン様だ。結局彼には馬鹿にされたまま見返すこともできなかった。
「なに、そう落ち込むことはない。誰もお前が何かしてくれるなんて期待していなかったからな」
俺が肩を落としているのを見て、笑みを浮かべながらレヴォン様はそう言った。
その言葉は真実なので俺には何も言い返すことができない。
「チッ、これからはディニス様のことは忘れ、身の程に合った生活をしろ」
するとつまらないと思ったのか、彼は舌打ちをして去っていった。
96
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
【8話完結】どんな姿でも、あなたを愛している。
キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。
声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。
「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」
ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。
失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。
全8話
『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。
春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。
チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。
……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ?
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――?
見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。
同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる