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ブレスレットの魔法
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隣の席の男子が立ち上がり飛びかかってきたので、妾はとっさに払いのけようとした。
いや、本当に軽くいなそうとしただけなのじゃ。
もともと暴力というものを毛嫌いしておるからの。
だがしかしーーー。
相手に触れそうになった直後、左の手首に異常な痛みが走った。
「ァアッ!」
手首を押さえてうずくまる。
ツノ男子が驚いて飛びかかるのを中断してくれなければ、そのまま突き飛ばされていたはずじゃ。
骨が砕けそうなギシギシ、という音がして、妾の目から涙が溢れた。
「痛い痛い痛い!」
必死に服をまくると、左の手首にはめたブレスレットが肉に食い込んでいた。
金色のブレスレットの表側に魔術文字が刻まれている。
その文字が白く光っていた。
そこにはこう書かれている。
『ルナ✳︎クオア ハ✳︎チーカー』
訳するとーーー。
「赤い血は青くなる?」
目の前のツノ男子がブレスレットの文字を凝視しながら呟いた。
ポロポロ涙を落とす妾の手を取ると、ブレスレットを外そうと掴んでくる。
「や、やめるのじゃ!」
ブレスレットを強引に引っ張られ、さらに妾の手首がもげそうになる。
「うあああッ! 痛い~~ッ! ぎゃあああッ!!」
あまりの悲鳴に男子も手を離した。
そのときーーー。
「離れなさい!」
教壇にいた先生がツノ男子を押しのけ、妾の手を掴み、もう片方の手で杖を振った。
「✳︎クダージュ✳︎」
妾の手首を千切らんばかりに縮まっていたブレスレットが緩んだ。
そのまま手より大きくなり、するりと抜けてカランと床に落ちる。
「あぅぅ・・・・・・」
泣きながら手首を押さえている妾を、先生がひょいと抱き上げた。
「みんな静かに。彼女を保健室に連れて行くので、しばらくそのまま待機していなさい」
女の先生にお姫様抱っこされ(まあ、本物の姫なんじゃが)教室を出て行く。
すると、なぜかツノ男子もついて来た。
先生が戻るように言ったが、無視して後ろを歩いている。
まだ手首がジンジン痛くて、妾は涙が止まらなかった。
保健室にはひげ面で巨大のもっさりした養護教諭がいた。
手首に治癒の魔術をかけてくれたので痛みは引いたが、真っ赤に腫れ上がったままだ。
「折れてしもうたに違いないぞ」
妾が涙声で言うと、もっさり先生が笑った。
「大丈夫だぞ、バーミリオン様。少し腫れてるが冷やしておけば治る。ただ赤みは二、三日残るだろうがな」
「本当か?」
なぜか妾ではなく、ツノ男子が聞き返した。
こやつなぜいるんじゃ?
真剣に聞いている男子を疑念の目で見つめる。
「こんなに泣いているだろう。骨が砕けていたらどうする!」
「触診したが骨折はしてないぞ」
「そ、そうか。ちゃんと治るんだな」
「大事はないということですね」
「ああ」
ツノ男子も担任教師もホッとしたようじゃ。
妾もちょっと安心したので涙が止まった。
「では教室に戻りましょう」
と、その前にーーー。
先生がさっき拾ったのであろう妾のブレスレットを差し出してきた。
本当ならこんな物捨ておきたいところじゃが、そうもいかぬ。
これは父上から頂いた大事なブレスレットじゃからな。
しかも、これがないと妾は強制的に王宮に戻されてしまう。
金のブレスレットは呪いを感知する魔術がかけられているからじゃ。
妾の生まれながらにかけられている呪いは誰にも解くことはできぬ。
ただ、体内の魔力の動きで感知することはできるらしく、このブレスレットをしていれば呪いが発動する前に縮まり、手首をギュッと締めて教えてくれる。
それで呪いの発動を抑制するのじゃ。
感情の昂りを激痛で静めるとか、まあ、西遊記のサルの額当てみたいでいい気はしないが。
他の者を呪って魔力を奪うわけにはいかぬからな。
さっきの激痛を思い出して、おそるおそるブレスレットをはめる。
すると、ツノ男子が横から口を出してきた。
「おい、なんでまたそれをしてるんだ?」
「なぜと言われても」
他人に呪いをかけるわけにはいかぬじゃろう。
妾が怪訝そうに見返すと、ツノ男子はブレスレットを睨みつけて「そんなもの捨てろよ」と奪い取ろうとしてきた。
「ダメじゃ!」
「なんでだよ! またあんなことになりたいのか!? 痛がってただろ」
「そ、それはそうなんじゃが・・・・・・」
まさかこやつ、妾のこと知らぬのか?
呪われた九番目の子を知らぬやつなどこの国にはいないはずじゃぞ。
そこでハッとした。
こやつは東の国から来た留学生らしいし、本当に知らぬのかも。
そのとき、前を歩いていた先生が立ち止まった。
「シェン君、ヘデスさんはここドラゴニア帝国の皇女なんですよ」
「そんなことは知っている」
むっとした様子でツノ男子ーーーシェンという名前らしいーーーが言い返す。
「彼女は皇帝の九番目の子で呪いを受けているのです」
女教師のごまかしのないスッパリとした言いように妾は少し感心した。
この事については大抵の大人は口を濁し、あれやこれやと遠回しに言いがちだからだ。
ツノ男子は目をぱちくりさせ、妾を見返した。
鳩が豆鉄砲を食ったようとはこの事かもしれぬ。
驚いた顔はちょっと面白かった。
いや、本当に軽くいなそうとしただけなのじゃ。
もともと暴力というものを毛嫌いしておるからの。
だがしかしーーー。
相手に触れそうになった直後、左の手首に異常な痛みが走った。
「ァアッ!」
手首を押さえてうずくまる。
ツノ男子が驚いて飛びかかるのを中断してくれなければ、そのまま突き飛ばされていたはずじゃ。
骨が砕けそうなギシギシ、という音がして、妾の目から涙が溢れた。
「痛い痛い痛い!」
必死に服をまくると、左の手首にはめたブレスレットが肉に食い込んでいた。
金色のブレスレットの表側に魔術文字が刻まれている。
その文字が白く光っていた。
そこにはこう書かれている。
『ルナ✳︎クオア ハ✳︎チーカー』
訳するとーーー。
「赤い血は青くなる?」
目の前のツノ男子がブレスレットの文字を凝視しながら呟いた。
ポロポロ涙を落とす妾の手を取ると、ブレスレットを外そうと掴んでくる。
「や、やめるのじゃ!」
ブレスレットを強引に引っ張られ、さらに妾の手首がもげそうになる。
「うあああッ! 痛い~~ッ! ぎゃあああッ!!」
あまりの悲鳴に男子も手を離した。
そのときーーー。
「離れなさい!」
教壇にいた先生がツノ男子を押しのけ、妾の手を掴み、もう片方の手で杖を振った。
「✳︎クダージュ✳︎」
妾の手首を千切らんばかりに縮まっていたブレスレットが緩んだ。
そのまま手より大きくなり、するりと抜けてカランと床に落ちる。
「あぅぅ・・・・・・」
泣きながら手首を押さえている妾を、先生がひょいと抱き上げた。
「みんな静かに。彼女を保健室に連れて行くので、しばらくそのまま待機していなさい」
女の先生にお姫様抱っこされ(まあ、本物の姫なんじゃが)教室を出て行く。
すると、なぜかツノ男子もついて来た。
先生が戻るように言ったが、無視して後ろを歩いている。
まだ手首がジンジン痛くて、妾は涙が止まらなかった。
保健室にはひげ面で巨大のもっさりした養護教諭がいた。
手首に治癒の魔術をかけてくれたので痛みは引いたが、真っ赤に腫れ上がったままだ。
「折れてしもうたに違いないぞ」
妾が涙声で言うと、もっさり先生が笑った。
「大丈夫だぞ、バーミリオン様。少し腫れてるが冷やしておけば治る。ただ赤みは二、三日残るだろうがな」
「本当か?」
なぜか妾ではなく、ツノ男子が聞き返した。
こやつなぜいるんじゃ?
真剣に聞いている男子を疑念の目で見つめる。
「こんなに泣いているだろう。骨が砕けていたらどうする!」
「触診したが骨折はしてないぞ」
「そ、そうか。ちゃんと治るんだな」
「大事はないということですね」
「ああ」
ツノ男子も担任教師もホッとしたようじゃ。
妾もちょっと安心したので涙が止まった。
「では教室に戻りましょう」
と、その前にーーー。
先生がさっき拾ったのであろう妾のブレスレットを差し出してきた。
本当ならこんな物捨ておきたいところじゃが、そうもいかぬ。
これは父上から頂いた大事なブレスレットじゃからな。
しかも、これがないと妾は強制的に王宮に戻されてしまう。
金のブレスレットは呪いを感知する魔術がかけられているからじゃ。
妾の生まれながらにかけられている呪いは誰にも解くことはできぬ。
ただ、体内の魔力の動きで感知することはできるらしく、このブレスレットをしていれば呪いが発動する前に縮まり、手首をギュッと締めて教えてくれる。
それで呪いの発動を抑制するのじゃ。
感情の昂りを激痛で静めるとか、まあ、西遊記のサルの額当てみたいでいい気はしないが。
他の者を呪って魔力を奪うわけにはいかぬからな。
さっきの激痛を思い出して、おそるおそるブレスレットをはめる。
すると、ツノ男子が横から口を出してきた。
「おい、なんでまたそれをしてるんだ?」
「なぜと言われても」
他人に呪いをかけるわけにはいかぬじゃろう。
妾が怪訝そうに見返すと、ツノ男子はブレスレットを睨みつけて「そんなもの捨てろよ」と奪い取ろうとしてきた。
「ダメじゃ!」
「なんでだよ! またあんなことになりたいのか!? 痛がってただろ」
「そ、それはそうなんじゃが・・・・・・」
まさかこやつ、妾のこと知らぬのか?
呪われた九番目の子を知らぬやつなどこの国にはいないはずじゃぞ。
そこでハッとした。
こやつは東の国から来た留学生らしいし、本当に知らぬのかも。
そのとき、前を歩いていた先生が立ち止まった。
「シェン君、ヘデスさんはここドラゴニア帝国の皇女なんですよ」
「そんなことは知っている」
むっとした様子でツノ男子ーーーシェンという名前らしいーーーが言い返す。
「彼女は皇帝の九番目の子で呪いを受けているのです」
女教師のごまかしのないスッパリとした言いように妾は少し感心した。
この事については大抵の大人は口を濁し、あれやこれやと遠回しに言いがちだからだ。
ツノ男子は目をぱちくりさせ、妾を見返した。
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驚いた顔はちょっと面白かった。
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