窓のない部屋の、陽だまりみたいな君

MisakiNonagase

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第20章:地下一階の共犯者

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​ 月曜日の午後三時。
 地下一階のメール室に、聞き慣れた足音が響く。
 けれど、その足音はいつもより少しだけ速く、迷いがないように聞こえた。
​ 扉が開くと同時に、冷たい廊下の空気が流れ込む。
 入ってきた隼人さんは、ネクタイを少し緩め、息を整える間もなく僕のデスクへと歩み寄ってきた。
​「風巻さ……っ、」
 挨拶をしようとした僕の言葉は、彼の手によって遮られた。
 隼人さんは僕の腕を掴むと、そのまま入り口からは見えない、大型の仕分け棚の影へと僕を押し込んだ。
​「……電話で、言っただろう。月曜日が待ち遠しかったと」
​ 至近距離で見つめてくる彼の瞳は、熱く、何かに飢えているようだった。
 背中には硬い棚の感触。目の前には、完璧なスーツに身を包んだ、けれど余裕をかなぐり捨てた「男」の顔。
​「困らなかった……というのは、本当か。あの時、裕香さんが来なければ、俺が何をしても、君は拒まなかったのか」
​ 昼間のオフィスだというのに、彼の声は低く、ひどく扇情的だ。
 僕は震える指先で、彼のワイシャツの胸元を握りしめた。
​「……拒む理由が、ありません」
​ その瞬間、彼の理性が音を立てて崩れるのが分かった。
 
 隼人さんの顔が、視界を塞ぐほど近づく。
 今度は鼻先で止まったりしない。
 
 重なった唇は、驚くほど熱く、貪欲だった。
 
 何度も角度を変えて、確かめ合うような、深いキス。
 窓のないこの部屋は、今や二人だけの「共犯の檻」になった。
 オフィスの喧騒や、二十二階のエースという肩書き、そんなものはすべて、この熱の前に溶けていく。
​「……智之、もう限界だ」
​ 唇を離した隼人さんが、僕の首筋に顔を埋めて囁く。
 その肩は微かに震えていた。
 
「君を、地下一階に置いておきたくない。……でも、誰の目にも触れさせたくない」
​ 独占欲が、言葉となって溢れ出す。
 僕たちはまだ、五分間という「秘密の時間」の中にいる。けれど、その境界線はもう、修復不可能なほどに踏み越えられてしまった。
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