【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

文字の大きさ
305 / 430
番外編 後日談

15. 古代遺跡の調査

しおりを挟む
結局ハクさんの用意してくれたところで二日間お世話になり、食事を一緒にしながらいろいろとサビオニアの国のことを聞くことが出来た。人の不幸を喜ぶわけではないが、やはりモクニク国の内乱のおかげでかなり経済が潤ったらしい。特に鉱石関係の需要が大きかったようだ。
ただ、それも鉱山の権利をタイカン国に渡さずにすんだ古代通路の発見がかなり大きかったみたいで、改めてお礼を言われてしまったよ。

そうは言ってもやはりまだ貧困層もいるので今後はどのように対策していけばいいのか考えているようだが、以前よりも生活のレベルは間違いなく向上していると言っていた。
貴族の特権はなくなったが、善政を敷いていた領地についてはそのまま代官としてその地を治めてもらっているみたいで、それがうまく機能しているようだ。やはり統治者としての人材不足はどうしようもないからね。


この後の予定は、タイカン国へ向かう古代通路の入口となるオカロニアで待ち合わせをすることにしていったん自分たちはタニアの町へ行ってみることにした。オカロニアではロンさんが来てくれるみたいなので、日程については余裕を持って調整しておいた。



移動は車で走っていったんだが、ヤーマンほどではないが車の走っている数は大分増えていた。以前はかなり少なかったからなあ。それだけ車が普及してきているのだろう。ただちょっと古い車が多いのは中古車がメインで流通しているせいだろうな。
途中の町にも寄っていったんだが、以前よりも大分発展しているし、住んでいる人たちの生活レベルも大分上がっているように思えた。着ている服とかが違うからね。お店に置いている商品もかなり充実しているので流通関係もきちんと出来ているのだろう。


タニアの町にやってくると、入口に「アムダの英雄に救われた町タニア」とか書かれた看板が目に入った。なんか気恥ずかしい・・・。
アムダの英雄とは確定していないはずなんだが、もう事実として受け入れられているみたいだな。まあハクさんとかには話したからなあ。

観光案内所のようなところがあったので話を聞いてみる。いくつかアムダの英雄に関連するところが名所になっていて、見学コースが紹介されていた。さすがに一時期ほど観光客は多くないようだが、それでも一定数の観光客がやって来て名所巡りをしているらしい。

「折角だから見ていくか?」

「ええ、そうね。ちょっと恥ずかしい気もするけどね。」

コースで自分たちが治療した教会や使った井戸は分かるんだが、食事をした場所や宿泊した場所などが書かれている。

「なあ、自分たちってここでは食事も宿泊もしてないよな?」

「ええ。でも冒険譚を読んだ感じでは救ってくれたお礼にパーティーが行われて何泊かしていったという話になっていたわよ。」

「まあいろいろと話は作られていくものだから仕方が無いのかな・・・。」


案内に従って見て回ると、教会は新しいものが建てられていたが、昔の教会はそのまま残っていた。内部は公開されていて、治療をした場所や食事をした場所などの説明が書かれていた。
井戸には町の住人とのやりとりが書いてあり、そこはかなりオブラートに包まれていたがかなり真実に近い説明が書かれていた。
他にも食事や宿泊した場所と書かれているところがあったが、もちろん記憶には無い。まあ治療の後すぐに出て行ったし、その後の話も入口付近でやったからなあ。打ち合わせ場所については石碑のようなものがあったけどね。
観光客に町の中をある程度見て回るように配置したんだろうか?昔の町のエリア全体を回るようになっているからね。

ちょうど講演のようなことが行われていたのでちょっと見ていくことにした。他にも10名ほどの人が講演を聴いているようだ。「アムダの英雄について」と書かれている。

「・・・・
あのとき、私は他の友人達と町の広場で遊んでいました。楽しかったその場に突然悲劇が訪れたのです。
魔獣の咆吼と悲鳴が聞こえてきて、気がついたときには目の前に大きな魔獣がやって来ていました。逃げなきゃと思いながらも足がすくんで動けませんでした。そして私はいったんそこで記憶が途絶えました。

目を覚ましたときには顔にひどい痛みを感じました。ほほからあごにかけて肉がえぐり取られていたのです。鏡で自分の顔をみて絶望しました。
簡単治療をしていただけましたが、あくまで止血だけでした。もう私は一生その姿で生きていくのだとかなり落ち込みました。

そのときあの二人が現れたのです。多くの方を順番に治療し、私も治療をしてくださいました。そのときの言葉は今でも耳に残っています。

『必ず助ける。絶対に傷跡もなく治してみせる。だからがんばれ!!』

そして徐々に顔の痛みが消え、次に目を覚ましたときには顔の傷は綺麗になくなっていたのです。二人から分けていただいた食事は今でも忘れられません。
そのあと・・・・。」

しばらく話をされた後、講演は終了となった。
あのとき顔を怪我した女の子だったのか。特に後遺症もなかったようで良かったなあ。



来た道を引き返してオカロニアへと向かい、ロンさんと合流してこのあとの対応について話をする。
タイカンとランタクの担当者にはすでに話を伝えているらしく、遺跡の発見如何に関わらず連絡方法を確認する。一応おおよその場所は伝えておいたので、担当者は近くの町に滞在してくれているらしい。他にもいろいろと細かく説明を受けてから古代通路の調査へ。

以前と違ってすでに通路は公開されているので連絡通路までの道は綺麗に整備されていた。通路の入口にはゲートがあり、身分証明証のチェックがされている。自動認識で犯罪歴などの確認を行ったあと、身分証明証の確認となるんだが、ロンさんが説明してくれて何事もなく通過することができた。

ここからは車に乗って通路をぬけてタイカンへと入るが、こちらのゲートはほぼノーチェックで通過できた。車に通行許可証のようなものを掲示していたせいだろうね。

通路の出口側にあるロニアの町から北上し、モクニクとの連絡通路で大きく発展したムニアの町へ。今は連絡通路が封鎖されているので以前ほどではないらしいが、まだサビオニアとランタクの流通のルートになっているので活気はそこそこあった。


街道から外れて北上していくと、徐々に森が深くなってきた。ここからは車を収納して走って行くことにしたが、あまり速度は上げられない。さすがにこの辺りは魔素が濃くなってきているのか、魔獣の気配を感じるからね。

前は索敵でどのような魔獣かある程度分かったんだが、時間が経っているので魔獣の種類まではっきりとは分からなくなった。ただかなりの大型の魔獣なので上階位と思われる魔獣は牙猪や大角牛、良階位と思われる魔獣は巨猪や巨角牛あたりだろう。小さな魔獣はこっちにきて狩っていたんだが、大型の魔獣を狩るのは前の転生の時以来だな。

索敵で魔獣の位置を確認しながら、目視できたところで魔法で攻撃していく。こっちに来てから魔法の威力が格段に上がっていたので風弾や水弾の魔法だけでほとんどを仕留めることが出来た。やっぱり魔素の絶対量が違うんだろうなあ。解体は後回しにして倒した魔獣はすべて収納していく。

森の中を進んでいくと、徐々に優階位の魔獣の気配を感じるようになってきた。大きなもので突猪や突牛、隠密系では魔山猫などがいた。
さすがに良階位や優階位だと魔法だけでは仕留められず、しかも遠くからの攻撃だと気配を察知してよけられてしまう。ある程度近距離まで引き寄せて土魔法で足止めしたところに風弾を撃ち込む。このあとは防御に徹しながら風弾と風斬で攻撃していくと無事に倒すことが出来た。

「いい感じだね。」

「ええ、魔法の威力が地球にいたときよりも段違いにいいわね。ちょっと魔力が大きくて操作が慣れていないせいで精度がいまいちだけど、まあこれは剣と一緒で徐々に慣れていくしかないわ。」

「今の感じだと、優階位上位でもなんとか倒すことが出来そうだなあ。まあ後のことを考えてもここの辺りの魔獣は出来るだけ倒しておいた方がいいからね。」

「連絡通路が見つかっても優階位の魔獣がうろうろしていたらさすがに使えないからね。そのあたりは課題になるかもしれないわね。」

さすがに優階位の出るところでは見張りを置かないわけにはいかないので、夜は小さい方の拠点を出してから交代で見張りをする。


森に入って4日目にやっと遺跡のあると思われる場所までやって来た。このあたりは魔素が若干薄くなってきており、魔獣の階位も下がってきた。やはり古代遺跡に何か秘密があるんだろうな。

道しるべの玉で位置を確認すると、遺跡の入口は完全に土に覆われているようだった。土が覆い被さっていてかなり大きな木が植わっている。これは普通は見つけられないよなあ・・・。

土魔法を使って土砂を取り除いていくとやっと遺跡らしきものが見えてきた。中にも魔獣の気配があるのでしばらく待って出てきたところを仕留める。中に入ると魔獣石が結構落ちていた。おそらくここで沸いて死んでいったものだろう。結構な量になっていたが、階位は並~上階位レベルの魔獣のようだった。


内部の空気はよどんでいないのでどこかに空気孔があるのかもしれない。中に入った後は入口は埋め戻しておく。魔獣に入ってこられるとやっかいだからね。

広さは他の連絡通路よりも少し狭い感じだが、十分車は離合できるレベルだ。途中数カ所土砂が落ちて埋もれているところがあったが、補強すれば何とかなりそうだ。途中少し広いペースが作られていて休むことが出来るようになっていた。前の二つの古代通路よりも長いために休憩所を作っているのかもしれない。
途中の土を収納しながら進んでいき、かなり歩いた先で土砂を除くと外から明かりが見えた。やっと出口か?


外の気配を探ってみたが、いるのは初~並階位の魔獣で強い魔獣の気配はない。少し歩くと道が見つかり、地図と位置からだいたいの場所を把握する。すぐ近くにランタクのニルクの町があるようなのでそこに行ってみることにした。


~あとがき~
すみません。この話を一気にアップする予定でしたが間に合いませんでした。内容もかなり長くなってしまったので二つに分けます。
来週もアップ予定ですが、もしアップできてなかったら落としてしまったと思ってください。そうならないようにがんばります。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。 そして、ショック死してしまう。 その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。 屋敷を逃げ出すのであった――。 ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。 スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

処理中です...