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番外編 後日談
14. サビオニアへ
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クリスさんの家に世話になりながらサクラの町の散策を楽しんだ。折角なので自分たちが作った料理を食べてもらったんだが、やはり珍しいみたいでかなり驚いていた。向こうで作ってきたものを温めただけなんだけどね。
いくつかレシピを教えておいたのでいずれはクリスさんのお店で提供されるようになるかもしれない。まあもしかしたら他の国では同じような物はあるのかもしれないけど、珍しいには変わりないしね。
いろいろと果物も出していたんだが、ナンホウ大陸で仕入れた果物にかなり驚いていた。向こうの大陸に行けばまだちょっと高いくらいで手に入っていたものなんだけど、今はほとんど手に入らないものらしい。
モクニク国の東の地域で栽培されているものだったが、モクニク国との国交が断絶したせいでほとんど入ってこなくなってしまったらしい。ランタク国で栽培が一部始まっているようだが、まだまだ流通するには時間がかかるようだ。
冒険者達にかなり配ったというとあきれられてしまったんだが、知らなかったから仕方が無いよ。
3日後に大使館のようなところに行き、入口で事前にもらって置いた招待状を見せるとすぐに中に入れてくれた。建物に入るとロンさんが出迎えてくれたんだが、さすがに場違いな感じがする。
『お越しくださってありがとうございます。』
事前に聞いていたんだが、かなり丁寧な対応をしてくるのに違和感を受ける。というのも外交官の使節団に随行するとなると、それなりの理由や立場が必要となるらしいので、わざと大業にやっているみたい。
『いえ、いえ、ご招待ありがとうございます。準備は終わっていますのでいつでも出発は出来ますよ。』
簡単な挨拶の後、同行する人たちに紹介されることになった。
『こちらの二人が先に説明した二人だ。容姿に驚いているとは思うが、ハク主席とも親交のある方で、我が国からも特別勲章を受けている。さらに今回重大な任務を受けてくれることとなったので、その当たりを十分に理解して対応してほしい。』
『初めまして、イチといいます。隣が妻のジェンです。いろいろと縁があり、今回同行させていただくことになりました。ロン外交官があのようにおっしゃいましたが、出来れば気さくに接してくれると助かります。』
挨拶の後、さっそく飛行艇に乗り込んで出発することになった。名前はイチとジェンにしているが、ジュンイチとジェニファーだとさすがにまずいかもしれないと言うことでこうなった。
移動中の世話係になったのはダツランという30歳くらいの男性だ。もちろん外交官の一人として随行してきているだが、何かあったときの連絡係をやってくれるらしい。
飛行艇とは言え、どのようなルートで行くのかと思ったんだが、サクラから南下したムライの町の南に新しく港町のムイーラが出来ており、そこからサビオニアに向けた海上のルートとなるようだ。日程は12日ほどで到着できるみたい。
モクニク国との国交が断絶した後、どうにか直接ホクサイ大陸への交易ルートがないかと海路の調査が行われたようだ。地球だったら普通に船で行けばいいと思うが、こっちでは魔獣が多く発生するところが多く、航路の確立にはかなりの手間と時間がかかるらしい。
船に穴を開けてくるような魔獣が一番の問題らしく、それが大量に発生するところはまず航路としては使えないみたい。討伐してもすぐに沸いてくるエリアがあるのでそこを含めて調査を行うようだ。
10年以上かかってしまう事業かもしれないと思われたが、革命前の貴族の一部が密売のために秘密裏に調査を行っていた資料が見つかったことで時間が短縮できたようだ。
出発してから3日ほどでムイーラの町に到着し、そこで一泊した後は24時間体制で飛び続けることになるようだ。
ムイーラの町は山間に作られた港町で港もそれほど大きくはない。もともとは小さな漁村だったが大きな船を着けるには十分の浸水があったことと、サビオニアからの航路と国内の流通の関係からこの場所が選ばれたらしい。
人が集まるのでそれなりには発展しているようだが、土地もそこまで広くないのでこれ以上の発展は厳しいような印象だ。荷物を置く大きな倉庫が建ち並んでおり、宿や食堂が多い印象だ。基本的に船員や労働者が多いという印象だな。
飛行艇なのでそこまで大きなスペースはないが、一応食事は交代でテーブル席で食べるようになっている。食事をするのはダツランさんとロンさんの4人で食べることが多い。海上に出てからしばらくしてやっとダツランさんとも打ち解けてきた。
「私はサビオニアの南の町の出身でして、あのアムダの英雄が救ったと言われるタニアの出身なんです。私自身、あの英雄から救っていただいたんですよ。」
サビオニアの国の話になったときに、ダツランさんが言ってきた。
「え?アムダの英雄って・・・。」
「実際にあの二人という確証はないのですが、伝え聞いている二人の話からそのように言われています。二人の伝記の多くにその話は書かれていますよ。
まあ正直なところ、今のサビオニアの国の正当性をアピールするのに使われたという側面は否定できませんけどね。」
あのときの子供の一人かな?
「そうなのですね。」
「ええ。今でもはっきりと覚えています。必死に励ましてくれながら治療してくれたことを・・・。そのあとに再会できてほんとに良かったです。あのとき治療をしてくれた足は今でも全く問題ないんですよ。」
「ああ、あのときの足を治療した・・・。あ、え、治療を受けた人の一人なんですね。本で読んだことがありますよ。」
あぶない、あぶない。またつい言ってしまうところだった。でもよかった。治療はうまくいったんだな。
なぜかロンさんが苦笑いしながらこっちを見ている。そういえば遺跡の調査の時にあの村のことを話したような気がするな。
「ご存知でしたか。おかげで普通に生活を送ることが出来るようになりました。もしあの二人がアムダの英雄ではなかったとしてもあのとき救われた人たちにとっては英雄には変わりないのです。」
「そうなのですね・・・。」
「そのあと国の役に立ちたいと必死に勉強してなんとかこのような職に就くことが出来たんです。」
あのとき救うことが出来て本当に良かったな。
「今もその村の人たちは元気にしているんですか?」
「ええ、今はそのときよりも大分発展してますよ。アムダの英雄が救った村と言うことで観光地にもなりましたからね。
そのときに集まった資金で近くに鉱山も開発することが出来て、多くの人が集まって町も大きくなっています。国の改革のおかげもありますが、以前よりもかなり良い生活が出来るようになっています。これもあの二人のおかげだと思っていますよ。」
そうか、よかった・・・。ジェンもかなりうれしそうにしていた。
途中特に魔獣に襲われたりすることもなく、無事にサビオニアの港町アカルニアに到着した。ここでいったん飛行艇の整備をしてから王都サビオニアへ。
昼過ぎに到着したんだが、すぐにハクさんに会うことになった。隣の部屋で待機していると、話し声が聞こえてきた。
「首相、事前に話しました通りヤーマンとの契約をまとめて参りました。」
「ご苦労。事前に話は聞いているが、例の古代通路の調査をする人間を見つけたというのは本当なのか?」
「ええ、若い冒険者なんですが、古代遺跡の造詣が深く、調査には最適だと思います。多くの遺跡を発見した実績もありますので彼ら以上の人材はいないと思います。」
「そこまでの人材なのか?まるであの二人のようなことを言うな。」
「ええ、あの二人以上の能力があると思っていますよ。」
「あの二人以上だと?アムダの英雄を超える二人とはよっぽど自信があるんだな?」
「それは保証しますよ。もし自分の言葉に嘘があったらなんでもおごってあげますよ。」
「すごい自信だな。まあお前がこういう賭け事を言ってくるというのも久しぶりだな。」
「ええ、私もちょっと昔に戻った気持ちになったので・・・。入ってきてください。」
なにやら口調がだんだん昔の言い方になってきているような気がする。
声がかかったので部屋に入ると、大分年をとっているが、ハクさんがそこにいた。かなり驚いた顔をしているように見える。
「え?・・・」
ハクさんは気がついたのかな?
「ジュンイチさんとジェニファーさん?え?・・・ロン、どういうことだ?いくらなんでもあの二人にそっくりだからといって二人の能力以上という冗談はやめろよな。」
「いえ、そっくりでなのではありません。アースの二人のジュンイチさんとジェニファーさんです。時を超えてやってこられました。本人だと言うことはヤーマンのクリストフ王爵も認めておられます。」
「お、おまえっ!!ふざけるなよ!
なんでそんな重要なことを全く報告書に入れてなかったんだ!!そのくらいの報告は出来たはずだろうが!!」
「それはもちろん驚かせるために決まっているでしょう。まああまり口外できる話でもないので直接話すべきことだとは思いますけどね。それより、口調が昔に戻ってますよ。」
「おま、っく・・・。」
「ロンさんの胸ぐらをつかもうとするのを押しとどめてこちらに向かってきた。
「ロンがこういうと言うことは間違いなく本人と言うことなんでしょう。ジュンイチさん、ジェニファーさんお久しぶりです。」
「お久しぶりです。元気そうで何よりです。」
「ロン、ちゃんと順番に説明してもらうぞ!!」
とりあえずアムダの討伐の後の話をしたあと、いろいろと当時の話をするとハクさんも納得してくれたようだ。
自分たちの英雄譚にはサビオニアの革命のことがかなり入っており、サビオニアでは二人のことはかなり英雄視されているらしい。もちろんもと貴族の関係者には恨まれているらしいけどね。まあ半分くらいは事実だけど、半分くらいは誇張されている感じだった。
この日はハクさんとロンさんの他にカルバトスさんも一緒に会食をすることになった。かなり高級な店の個室で秘密裏での会食という感じになったが、3人の役職を考えると仕方が無いのかもしれないね。
宿泊は海外からの賓客のために用意されている宿を提供してもらえたんだが、結局宿に戻ったのは明け方だったので結構きつかったよ。
~ジェンSide~
こっちの世界にやって来てから毎日が本当に充実している。向こうの世界でもイチとは仲良くやっていたけど、なかなか一緒にいることも少なかったからね。こっちではずっと一緒だけど、ずっといてもお互いに負担にならない関係というのはとてもいいわね。
クリストフ殿下にコーランさんと懐かしい人に会ったのだけど、スレインさん達にも会えて本当に良かった。最初に二人が亡くなったと聞いたときはかなり悲しかったものね。
だけどのあのときの子供達がもうあんなに大きくなっているとはね。私達の子供達と同じくらいだからどうもかわいく思えてしまうのよねえ。しかも子供達には剣の使い方とか教える機会が無かったから余計にね。
コーランさんは相変わらず元気にやっていて良かったわ。身体が言うことを聞かなくなってきていると言っていたけど、あの年齢であの元気があれば十分よね。私達の話を食い入るように聞いていたものね。まだまだ本格的な引退はしそうにないわ。
後継者も十分に立派だけど大変かもしれないわね。私達も地球であとは任せてきたけどきっと大丈夫よね。まあそれなりに教育はしてきたと思うから子供達もなんとかやるでしょ。
話の流れでサビオニアに行くことになったけど、あのとき助けた子供が立派になっていて驚いたわ。私達のことを書いた伝記は読んだけど、基本めでたしめでたしで終わる感じだったから、そのあと本当に幸せになれたかは分からないのよね。
ハクセンやアルモニアにしても国の思惑も入っているような感じもするんだけどね。サビオニアもそうなんだろうな。まあそこまでの悪意は無いと思うけど、亡くなっているからということで英雄視している一面もあるからね。
今まであった人たちは本当に喜んでくれているけど、その当たりは注意しておかないといけないわよね。
いくつかレシピを教えておいたのでいずれはクリスさんのお店で提供されるようになるかもしれない。まあもしかしたら他の国では同じような物はあるのかもしれないけど、珍しいには変わりないしね。
いろいろと果物も出していたんだが、ナンホウ大陸で仕入れた果物にかなり驚いていた。向こうの大陸に行けばまだちょっと高いくらいで手に入っていたものなんだけど、今はほとんど手に入らないものらしい。
モクニク国の東の地域で栽培されているものだったが、モクニク国との国交が断絶したせいでほとんど入ってこなくなってしまったらしい。ランタク国で栽培が一部始まっているようだが、まだまだ流通するには時間がかかるようだ。
冒険者達にかなり配ったというとあきれられてしまったんだが、知らなかったから仕方が無いよ。
3日後に大使館のようなところに行き、入口で事前にもらって置いた招待状を見せるとすぐに中に入れてくれた。建物に入るとロンさんが出迎えてくれたんだが、さすがに場違いな感じがする。
『お越しくださってありがとうございます。』
事前に聞いていたんだが、かなり丁寧な対応をしてくるのに違和感を受ける。というのも外交官の使節団に随行するとなると、それなりの理由や立場が必要となるらしいので、わざと大業にやっているみたい。
『いえ、いえ、ご招待ありがとうございます。準備は終わっていますのでいつでも出発は出来ますよ。』
簡単な挨拶の後、同行する人たちに紹介されることになった。
『こちらの二人が先に説明した二人だ。容姿に驚いているとは思うが、ハク主席とも親交のある方で、我が国からも特別勲章を受けている。さらに今回重大な任務を受けてくれることとなったので、その当たりを十分に理解して対応してほしい。』
『初めまして、イチといいます。隣が妻のジェンです。いろいろと縁があり、今回同行させていただくことになりました。ロン外交官があのようにおっしゃいましたが、出来れば気さくに接してくれると助かります。』
挨拶の後、さっそく飛行艇に乗り込んで出発することになった。名前はイチとジェンにしているが、ジュンイチとジェニファーだとさすがにまずいかもしれないと言うことでこうなった。
移動中の世話係になったのはダツランという30歳くらいの男性だ。もちろん外交官の一人として随行してきているだが、何かあったときの連絡係をやってくれるらしい。
飛行艇とは言え、どのようなルートで行くのかと思ったんだが、サクラから南下したムライの町の南に新しく港町のムイーラが出来ており、そこからサビオニアに向けた海上のルートとなるようだ。日程は12日ほどで到着できるみたい。
モクニク国との国交が断絶した後、どうにか直接ホクサイ大陸への交易ルートがないかと海路の調査が行われたようだ。地球だったら普通に船で行けばいいと思うが、こっちでは魔獣が多く発生するところが多く、航路の確立にはかなりの手間と時間がかかるらしい。
船に穴を開けてくるような魔獣が一番の問題らしく、それが大量に発生するところはまず航路としては使えないみたい。討伐してもすぐに沸いてくるエリアがあるのでそこを含めて調査を行うようだ。
10年以上かかってしまう事業かもしれないと思われたが、革命前の貴族の一部が密売のために秘密裏に調査を行っていた資料が見つかったことで時間が短縮できたようだ。
出発してから3日ほどでムイーラの町に到着し、そこで一泊した後は24時間体制で飛び続けることになるようだ。
ムイーラの町は山間に作られた港町で港もそれほど大きくはない。もともとは小さな漁村だったが大きな船を着けるには十分の浸水があったことと、サビオニアからの航路と国内の流通の関係からこの場所が選ばれたらしい。
人が集まるのでそれなりには発展しているようだが、土地もそこまで広くないのでこれ以上の発展は厳しいような印象だ。荷物を置く大きな倉庫が建ち並んでおり、宿や食堂が多い印象だ。基本的に船員や労働者が多いという印象だな。
飛行艇なのでそこまで大きなスペースはないが、一応食事は交代でテーブル席で食べるようになっている。食事をするのはダツランさんとロンさんの4人で食べることが多い。海上に出てからしばらくしてやっとダツランさんとも打ち解けてきた。
「私はサビオニアの南の町の出身でして、あのアムダの英雄が救ったと言われるタニアの出身なんです。私自身、あの英雄から救っていただいたんですよ。」
サビオニアの国の話になったときに、ダツランさんが言ってきた。
「え?アムダの英雄って・・・。」
「実際にあの二人という確証はないのですが、伝え聞いている二人の話からそのように言われています。二人の伝記の多くにその話は書かれていますよ。
まあ正直なところ、今のサビオニアの国の正当性をアピールするのに使われたという側面は否定できませんけどね。」
あのときの子供の一人かな?
「そうなのですね。」
「ええ。今でもはっきりと覚えています。必死に励ましてくれながら治療してくれたことを・・・。そのあとに再会できてほんとに良かったです。あのとき治療をしてくれた足は今でも全く問題ないんですよ。」
「ああ、あのときの足を治療した・・・。あ、え、治療を受けた人の一人なんですね。本で読んだことがありますよ。」
あぶない、あぶない。またつい言ってしまうところだった。でもよかった。治療はうまくいったんだな。
なぜかロンさんが苦笑いしながらこっちを見ている。そういえば遺跡の調査の時にあの村のことを話したような気がするな。
「ご存知でしたか。おかげで普通に生活を送ることが出来るようになりました。もしあの二人がアムダの英雄ではなかったとしてもあのとき救われた人たちにとっては英雄には変わりないのです。」
「そうなのですね・・・。」
「そのあと国の役に立ちたいと必死に勉強してなんとかこのような職に就くことが出来たんです。」
あのとき救うことが出来て本当に良かったな。
「今もその村の人たちは元気にしているんですか?」
「ええ、今はそのときよりも大分発展してますよ。アムダの英雄が救った村と言うことで観光地にもなりましたからね。
そのときに集まった資金で近くに鉱山も開発することが出来て、多くの人が集まって町も大きくなっています。国の改革のおかげもありますが、以前よりもかなり良い生活が出来るようになっています。これもあの二人のおかげだと思っていますよ。」
そうか、よかった・・・。ジェンもかなりうれしそうにしていた。
途中特に魔獣に襲われたりすることもなく、無事にサビオニアの港町アカルニアに到着した。ここでいったん飛行艇の整備をしてから王都サビオニアへ。
昼過ぎに到着したんだが、すぐにハクさんに会うことになった。隣の部屋で待機していると、話し声が聞こえてきた。
「首相、事前に話しました通りヤーマンとの契約をまとめて参りました。」
「ご苦労。事前に話は聞いているが、例の古代通路の調査をする人間を見つけたというのは本当なのか?」
「ええ、若い冒険者なんですが、古代遺跡の造詣が深く、調査には最適だと思います。多くの遺跡を発見した実績もありますので彼ら以上の人材はいないと思います。」
「そこまでの人材なのか?まるであの二人のようなことを言うな。」
「ええ、あの二人以上の能力があると思っていますよ。」
「あの二人以上だと?アムダの英雄を超える二人とはよっぽど自信があるんだな?」
「それは保証しますよ。もし自分の言葉に嘘があったらなんでもおごってあげますよ。」
「すごい自信だな。まあお前がこういう賭け事を言ってくるというのも久しぶりだな。」
「ええ、私もちょっと昔に戻った気持ちになったので・・・。入ってきてください。」
なにやら口調がだんだん昔の言い方になってきているような気がする。
声がかかったので部屋に入ると、大分年をとっているが、ハクさんがそこにいた。かなり驚いた顔をしているように見える。
「え?・・・」
ハクさんは気がついたのかな?
「ジュンイチさんとジェニファーさん?え?・・・ロン、どういうことだ?いくらなんでもあの二人にそっくりだからといって二人の能力以上という冗談はやめろよな。」
「いえ、そっくりでなのではありません。アースの二人のジュンイチさんとジェニファーさんです。時を超えてやってこられました。本人だと言うことはヤーマンのクリストフ王爵も認めておられます。」
「お、おまえっ!!ふざけるなよ!
なんでそんな重要なことを全く報告書に入れてなかったんだ!!そのくらいの報告は出来たはずだろうが!!」
「それはもちろん驚かせるために決まっているでしょう。まああまり口外できる話でもないので直接話すべきことだとは思いますけどね。それより、口調が昔に戻ってますよ。」
「おま、っく・・・。」
「ロンさんの胸ぐらをつかもうとするのを押しとどめてこちらに向かってきた。
「ロンがこういうと言うことは間違いなく本人と言うことなんでしょう。ジュンイチさん、ジェニファーさんお久しぶりです。」
「お久しぶりです。元気そうで何よりです。」
「ロン、ちゃんと順番に説明してもらうぞ!!」
とりあえずアムダの討伐の後の話をしたあと、いろいろと当時の話をするとハクさんも納得してくれたようだ。
自分たちの英雄譚にはサビオニアの革命のことがかなり入っており、サビオニアでは二人のことはかなり英雄視されているらしい。もちろんもと貴族の関係者には恨まれているらしいけどね。まあ半分くらいは事実だけど、半分くらいは誇張されている感じだった。
この日はハクさんとロンさんの他にカルバトスさんも一緒に会食をすることになった。かなり高級な店の個室で秘密裏での会食という感じになったが、3人の役職を考えると仕方が無いのかもしれないね。
宿泊は海外からの賓客のために用意されている宿を提供してもらえたんだが、結局宿に戻ったのは明け方だったので結構きつかったよ。
~ジェンSide~
こっちの世界にやって来てから毎日が本当に充実している。向こうの世界でもイチとは仲良くやっていたけど、なかなか一緒にいることも少なかったからね。こっちではずっと一緒だけど、ずっといてもお互いに負担にならない関係というのはとてもいいわね。
クリストフ殿下にコーランさんと懐かしい人に会ったのだけど、スレインさん達にも会えて本当に良かった。最初に二人が亡くなったと聞いたときはかなり悲しかったものね。
だけどのあのときの子供達がもうあんなに大きくなっているとはね。私達の子供達と同じくらいだからどうもかわいく思えてしまうのよねえ。しかも子供達には剣の使い方とか教える機会が無かったから余計にね。
コーランさんは相変わらず元気にやっていて良かったわ。身体が言うことを聞かなくなってきていると言っていたけど、あの年齢であの元気があれば十分よね。私達の話を食い入るように聞いていたものね。まだまだ本格的な引退はしそうにないわ。
後継者も十分に立派だけど大変かもしれないわね。私達も地球であとは任せてきたけどきっと大丈夫よね。まあそれなりに教育はしてきたと思うから子供達もなんとかやるでしょ。
話の流れでサビオニアに行くことになったけど、あのとき助けた子供が立派になっていて驚いたわ。私達のことを書いた伝記は読んだけど、基本めでたしめでたしで終わる感じだったから、そのあと本当に幸せになれたかは分からないのよね。
ハクセンやアルモニアにしても国の思惑も入っているような感じもするんだけどね。サビオニアもそうなんだろうな。まあそこまでの悪意は無いと思うけど、亡くなっているからということで英雄視している一面もあるからね。
今まであった人たちは本当に喜んでくれているけど、その当たりは注意しておかないといけないわよね。
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