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7. 異世界9日目 最後の異世界を楽しむ
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7. 異世界9日目 最後の異世界を楽しむ
いつも通りに起きてから朝食を食べに行く。朝食はスクランブルエッグとソーセージ、パンにサラダと珈琲だ。材料が一緒か分からないが、こっちにもちゃんと珈琲や紅茶があり、味は一緒みたいな感じ。まあ植生が一緒だったら使い方に気がつく人もいるだろうね。
食事の後は荷物の確認をしてから宿を出る。今日は高級宿を予約してから町を観光、それから宿に早めに入って宿を堪能。夜は目的の場所に出かけるという感じかな?
折角なら町一番の高級宿に泊まるつもりだったんだけど、残念ながらそういうところはその宿を使っている人からの紹介やある程度の身分がないとは入れないようだ。一見さんお断りというやつだろう。よくわからない客を泊めて常連客に迷惑をかけられると困るという事らしいので仕方がないかな。
最高級とはいえないが、紹介とかがなくても泊まることのできる高級な宿は確認していたのでとりあえずその宿に行ってみることにした。問題は部屋が開いているかなんだけど、昨日の夜になって早めに予約だけでもしておけば良かったんだと気がついたんだよなあ。
目的の宿は”オールフロー”というところなんだけど、町の中心付近にも係わらず結構な敷地にある5階建ての建物だ。敷地の入口には門番が立っており、気軽に入れない雰囲気だ。
泊まるつもりなので気にしないで門番の横を抜けて建物に近づくとドアマンと思われる人がドアを開けてくれた。そのままフロントへと誘導される。ロビーはかなり広くて天井も高い。さすがに普通は泊まることはないレベルのところだな。
「ようこそお越しくださいました、宿泊の予約でしょうか?」
かなり美人のスタッフが受付をしていた。貧乏そうな格好だが特に偏見を持った対応ではないので安心する。内心はわからないけどね。
「すみません、実は今日泊まりたいのですが大丈夫でしょうか?」
「今日ですか?えっと・・・部屋は通常部屋しか開いていませんが、大丈夫ですか?」
泊まれる部屋は上級と通常の2種類あるみたいなんだけど、上級の部屋はやはり紹介がないと泊まれないらしい。
「通常部屋でいいのですが、一人でも泊まることは出来ますか?」
「それは問題ありません。朝食は宿泊代に含まれますが、一人で一泊6000ドールとなります。」
結構な値段だけど、お金は足りるからまあいいか。
「大丈夫です。その金額でお願いします。何時から部屋に入ることができますか?」
「部屋には入れるのは4時からとなります。」
「わかりました。それまで荷物を預かってもらうことはできますか?」
「えっと、宿泊予定の方の分であれば大丈夫ですが・・・申し訳ありません、宿泊されるご本人様でしょうか?」
「そうですけど、だめですか?」
「!いえ、問題ありません。予約となりますので先に1000ドールの予約金を入れてもらう必要がありますが、よろしいでしょうか?」
「わかりました。」
どうも自分は予約にやってきた使用人か何かと思われていたような気がする。まあ年齢や服装を見るとそれはしょうがないか。1000ドール支払うと、引き換えに番号の書かれたカードを渡された。荷物を預かってもらってから宿を出る。
昨日で狩りは終わりの予定だったけど、時間的にも余裕があったのでもう一度狩りに行くことにした。昨日も行ったエリアへと足を伸ばして適当に狼もどきを狩っていると、木の上に大蜘蛛を発見。自分の頭よりも少し大きいくらいの蜘蛛で麻痺毒をもっている肉食の蜘蛛である。さすがに大きいのでかなり見た目がグロい。
それなりにすばしっこいようなんだけど、かみつき攻撃さえ気をつければそこまで恐れることはないようだ。少し離れたところから風魔法で攻撃すると足の半分をつぶすことができたのであっさりと倒すことができた。
先に見つけることができたのでよかったけど、気がつかずに木の下を通っていたら危ないところだったかもしれない。こういうときに索敵スキルがあると便利なんだろう。
残念ながら素材になるような部位はないので討伐実績のみである。足は食べることができるみたいだけど、あえて食べなくてもいいよね。2時間ほどして町に戻り、6匹の狼もどきの牙を買い取ってもらう。
お昼をどうしようかと店を探していると先日魔法の訓練で一緒になったユータとカナと会ったので、一緒に昼食をとることにした。
「訓練の方はどんな感じ?」
「とりあえずこの間話をした後、ある程度形が決めたのでしばらくはそのスタンスでやろうと思っているんだ。俺は魔法を補助として前衛、カナは魔法使いとして後衛だな。魔法はまだまだ使えるレベルじゃないけどな。」
「私は弓を使うことも考えたんだけど、弓と魔法を一緒にと言うのが厳しいのよね。弓を使うとそのあとの魔法攻撃が間に合わなくなるからね。二人だけなので魔法以外には短剣での格闘の方を重視してるわ。」
たしかに弓を使った後、すぐに魔法を使うというのはかなり慣れてこないと難しいかもしれないね。それに魔法がちゃんと使えるようになれば弓の必要は無くなりそうだし。魔法が効きにくい相手には弓は使えることもあるけど、全部を習得すると中途半端になりそうだ。
「いざと言うことを考えるとある程度全部こなさないといけないから、短剣を重視するのはいいかもしれないね。」
「スタイルとしてはクラーエルの二人に近いのでいろいろと助言をもらってるんだけど、アマニエルさんからも短剣か杖とかで近接戦闘も出来るようにしておかないと言われてるのよね。」
他にもいろいろと話をしながら食事を取り、二人と別れる。
このあといろいろと店を見て回り、チェックインができる時間になったところで宿へ向かう。支払いを済ませると、部屋まで案内してくれた。さすがに値段が高いだけあってかなり豪華だった。エレベーターもあったしね。
おそらく地球のような動力ではなく、魔法で動くものだろうけど、使い方は地球のエレベーターと同じだ。部屋のドアはオートロックになっているので出るときには注意するように言われる。
部屋は全部で3部屋あり、リビング、簡単な台所、寝室になっている。ベッドもかなりふわふわだ。トイレと意味ないくらい立派な洗面台とお風呂はあるんだけど、共同の大きなお風呂があると聞いていたのでちょっと楽しみだ。
ちなみにこっちの世界では浄化の魔法というもので身体を綺麗にするというものがあった。ただ浄化の魔法と言っても体の表面のゴミを取り除くといった感じなので、シャワーやお風呂が使える場合は使うらしい。
宿やある程度の家庭にはシャワー設備があり、お風呂は高級宿や金持ちだけが使っている感じのようだ。とはいえ、お風呂がそこまで好きではないと言う人も多いようで、国によってはお風呂がないところもあるみたい。まあ地球でもお風呂をそこまで好きな民族って日本ぐらいのような気もするね。
さっそく準備をしてから地下にあると言うお風呂へと向かう。広めの脱衣所にロッカーのようなものがいくつも並んでいた。ロッカーには鍵がついておりここに荷物を入れる。お風呂の案内を見ると、裸もしくは湯浴み衣を着て入るようになっている。湯浴み衣は薄い布のパンツのようなものだった。
浴室に入ると、20人くらいは入れそうな石造りの大きな湯船と5人くらいの小さな湯船があった。小さな湯船は温度が高いみたい。洗い場もシャワー付きで並んでいてスーパー銭湯という感じだな。地下と言うこともあり、露天風呂はないのが残念だ。まあ町中なのであまり意味が無いか。
さすがにこの時間には他のお客もいないので貸し切り気分だ。早速体を洗ってから湯船に浸かってお風呂を堪能。温泉でないのは残念だけど、大きなお風呂はいいねえ・・・。
年に数回は家族旅行で温泉とかに行っていたからなあ。最近は自分も妹もあまり一緒に行かなくなってきたので両親二人で楽しんでいたようだけどね。
部屋に戻ってから一息ついたところで宿に併設している食堂へ。夕食はコース料理となっているのでちょっと場違いな感じだったけど気にしないことにした。とりあえず宿泊客であればドレスコートまでは必要ないらしいけど、さすがに少し見栄えのする服に着替えていく。
スープにサラダ、メインにお肉と続いているが、やはり魚は出ないのは内陸のせいかな?デザートのケーキもなかなかおいしくて助かった。劇甘のケーキとか出たらしゃれにならないからなあ。
そしてこれがメインイベントとなるんだけど、宿屋の横にある併設の店に移動。「ここでは成人、ここでは成人。」と言い聞かせながら中に入る。時間がまだ早いせいかお客はほとんどいない。
スタッフに案内されてボックスになったソファーに案内されると、ちょっときわどい格好をしたお姉さんが二人やってきた。一人はかわいい感じでちょっとスレンダー系の女性で自分とあまり年齢が変わらない感じだ。もう一人は20代前半という感じの美人で胸が・・・。
ちなみにちょっとしたおさわりはいいらしいが、店ではあまり羽目を外さないように釘を刺されていた。
自分の両側に魅力的な女性が二人。もちろんこんなところに慣れていないので挙動不審になってしまう。さすがにプロなのか、いろいろと話題を振ってくれたのでなんとか落ち着いてきたんだけど、ボディータッチをしてくるとそれだけでもう興奮状態になってしまう。
かなり軽めに作ってもらったお酒を少し飲んでテンションも上がってきて、胸を触らせてもらったりとかはしたんだけど・・・それ以上はだめでした。へたれと言われてもしょうがない。
そういうこともオッケーというお店というのも確認していたし、一応そのためのお金は残っていたんだけどね。がんばるつもりだったんだけどね。大人の階段は上れなかったよ。まあ、これだけでも結構なお金を取られたけど、至福の時間は味わえたので後悔はない。
異世界最後の夜と言っても徹夜してまでやりたいことがあるわけではない。というか夜出歩くにはあまりにもリスクが高すぎるのでベッドに入るとすぐに眠りに落ちていった。
いろいろとあったけど、今日で異世界旅行も最終日だ。さすがに他の町に行くのにはちょっと厳しかったので結局この町の周辺くらいしか体験できなかったなあ。
エッチな体験もなんかいきそびれてしまったし・・・。まあエルフや獣人なんていなかったから異世界だからこその体験ではないんだけどね。
でも魔法の体験や魔獣の討伐など結構異世界の体験はできたと思う。目がよくなったのはもとの世界に戻っても効果があるみたいだしね。
ちなみに治癒魔法を覚えた後、何度か試したんだけど、残念ながら完全に視力がよくなるわけではなかった。それでもコンタクトや眼鏡なしでも最低限の生活はできるレベルにはなったので十分だ。
残り時間を考えるとお昼には召喚されるのでそれまでは適当に時間を潰すかな。装備などはすべてなくなると思うけど、売っても意味が無いし、最後まで異世界気分を味わうつもりでこのままでいよう。もしかしたらなにか持って帰れるものもあるかもしれないし。ちなみに残金は8000ドールと少々という感じだ。余裕と思っていたのに結構使ったなあ。
朝食は事前予約した時間に行くようになっていて、この世界では初めてのバイキング形式だった。ただ自分でとるわけではなく、メニューに載っている食べたいものを言うとスタッフが盛り付けて運んでくれるというものだ。せっかくだからといろいろなものに手を出してみた。おかげでおなかがはち切れんばかりになってしまったよ。
このあと部屋に戻ってチェックアウトぎりぎりまでくつろいでから宿を出る。これで最後なので武器屋や魔道具の店を見てまわり、役場で少し知り合った人たちに声をかけたりする。残り30分くらいになったところでこちらの世界にやってきた公園へと移動した。
ベンチに座ってカウントダウンを眺める。表示は0日:00時:00分30秒となっている。もう少しでもとの世界に戻って記憶もなくなるんだなあ。少しでもこっちのことを覚えていたらいいのに・・・。
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・・・・・・・
あれ?なんで時間が増えていっているんだ?
なんで転移されないの?
え?どういうこと?ちょ、ちょっとまって・・・。えっ?
しばらく呆然と時刻を刻んでいくガイド本の表紙を眺めていたが、いつまで待っても何も起こらない。
どうすればいいんだ?
小説だったら神様とのチャンネルが開いて事情を聞くこともできそうだが、そんな手段は全くない。
どうするんだ・・・?
実は戻れるという話し自体が嘘だったのか?
そうだったらこのままこの世界で生きていかなければならないのか?
10日間だけだったからなんとかなったけど、自分はこの世界で生きていけるのか?
しばらく自問自答していたんだが、答えが出るものでもない。とりあえず行動を起こさなければどうしようもないので、まずは泊まるところを確保することにした。
前に泊まった宿カイランに行き、部屋を確保する。これで泊まるところがないという事にはならないけど、期間がどのくらいかも分からないのでお金のことも考えないといけないな。
まずはダメ元で教会へ行き、神様に祈ってみることにした。
「異世界からやってきて今日でもとの世界に戻る約束だったんですが、どうなっているのでしょうか?もしこの声が聞こえるのでしたら応えてください。」
・・・
・・
・
反応はない。
まあ当然か・・・。
神様とササミさんは関係ない感じだったからなあ。それに普通に考えても神頼みとかやってもそうそう話は聞いてくれないか。いくらもとの世界より神様が身近になっているとは言ってもね。
でもこのくらいしか確認する方法もないので教会通いは続けることにするか。教会でなくても声は届くのかねえ?それともなにか特別な場所でないと声は届かないのだろうか?
まあこの世界では神様もいることだし、ガイド本という訳の分からないものもあるくらいだし、正直なところ理解の範疇を超えているよ。
宿に戻ってから今後のことを考えてみる。嘆いていても仕方が無いし、前向きに考えるしかないからね。
元の世界に戻る時間を過ぎていると言うことはいつになったらもとの世界に戻れるのか、本当に戻れるのかは正直言って分からない。もしかしたらあの説明は建前でもともと戻ることができないのかもしれない。そう考えるとこの世界で生きていくことを考えておかなければならないということだ。
この世界での知り合いと言っても10日間に知り合った人たちだけなので手助けを頼むわけにもいかない。異世界からやってきたと言ってもそもそも信じてもらえるかも分からないし、信じる人がいたとしても手助けしてもらえる可能性は低い。
下手すれば知識だけとられて一生飼い殺しという状況になってしまう可能性もある。ササミさんもそんなことを言っていたし・・・。
やっぱり昔からの知り合いがいないというのはつらいよな・・・。
・・・・
あれ?そういえば、一緒にあそこにやって来ていた彼女はどうなったんだろうか?
正直、ササミさんから聞いた彼女の情報自体が本当なのかは分からないけど、彼女のことを調べてみるのも一つかもしれないな。もし彼女がちゃんとこの世界にやって来ていていなくなったというのであれば元の世界に戻っている可能性もあるし、もしまだこの世界にいるというのであればお互いになにか協力できることがあるかもしれない。
えっと、たしか前に移動にどのくらいかかるか調べていたはずだったけど、どこに書いていたかな?ああ、あった、あった。これだ。
季節によって変動はあるとは言っていたけど、普通のバスで3千ドール、指定席のあるバスだと9千ドールで15日間、高速の直通バスだと2万5千ドールで5日間か。
途中の食事代や宿代もかかるみたいだから1日800ドールくらいかかるとして15日間で12000ドールくらいか。普通のバスで移動するにしても最低限15000ドールはほしいところだな。
彼女の方も元の世界に戻れなくてこちらのことを気にしていたとしたらすれ違いになってしまう可能性もあるけど、それを言い出したら何もできなくなるから、そこは割り切るしかないだろう。どっちにしろ行ってみたら何かしら情報が入るかもしれないしね。
とりあえずお金を貯めて会いに行ってみるという方針は決まったけど、問題はそのお金をどうやって稼ぐかだな。こんなことなら最後に贅沢とかしなければ良かったよ。あれだけで1万ドールくらい使ったからなあ。
知識チートで稼ぐというのはここ10日間で見て回った限りでは難しそう。大体のものは魔道具であるし、それ以上のものはとてもではないけど自分で作ったり構造を説明したりは無理なものばかりだった。まあそもそも何かを作るにしてもそれを売るにしても伝もないし、元手もない。
手に入れることが出来れば金儲けには使えそうなスキルはあるけど、スキルを手に入れるのもスキルレベルを上げるのもかなり時間がかかってしまうからなあ。治癒魔法とかもねえ・・・。
ちゃんと就職すれば月に10000~20000ドールくらい手に入るみたいだけど、見習い期間もあるし、そうそうよい働き口があるようには思えない。ずっと務めるわけでもないからねえ。
以前役場の職業斡旋を少し見てみたけど、求人数がそんなに多くない上に競争率も高そうなのですぐに決まる可能性は低いように思う。短期的なバイトのようなものはある程度経験していることが前提のものがほとんどだし、自分はすぐれた技術があるわけでもないし。
だといって冒険者の収入はもっとひどい感じだ。初階位レベルだと1日かなり頑張ったとしても500ドールくらいと聞いているし、実際に狩りをやってみた感触としてもそのくらいだ。しかも怪我とかした時点で収入が途絶えてしまうと言うリスクもある。
パーティーを組んで並階位の魔獣を中心に狩れば効率は上がるかもしれないけど、短期間でパーティーメンバーを探すのも厳しいし、知識とかの面からいろいろ不都合も出そうなんだよなあ。
そうは言っても他に方法もないし、とりあえず目標の稼ぎを一日500ドールとしてスキルのレベルアップも併せてあげていくことで頑張ってみるかな。怪我をしても治療は一応できるわけだし、お金はかからないはずだ。
元の世界に戻れるかは分からないけど、今後この世界で生きて行かなければならなくなってしまうことを考えると地道にでもスキルは身につけておいて損はないからね。
今の全財産が8000ドールくらいなのであと7000ドールとなると一日100ドールずつためて70日かかる計算だけど、スキルなどを手に入れてペースが良くなればその分短縮はできるはず。
この辺りは四季があるので今は2月で春と言うことは2ヶ月近くここにいたとしても初夏ぐらいに移動できるだろう。冬になると雪が降るらしいけど、雪で移動できないとか言うことはなさそうだ。
お金を稼ぎながら自分の能力も上げていかないといけないから出来るだけ効率よくやっていかないといけないな。
この世界にやって来たときに取得していたスキルはガイド本に書かれていたけどこのくらいか。
戦学-1、武学-2、防学-1
片手剣-1、両手剣-2、刀剣-1
睡眠耐性-1
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-1、工作-1、料理-2、裁縫-1
算学-3、自然科学-3、社会科学-3、生物学-3、植物学-3、地学-3、神学-1、医学-3、天文学-1、言語学-3
日本語-4、英語-1、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5
思考強化-1
商人-1
採掘-1、採取-1
ガイド本-1
片手剣、両手剣、刀剣は剣道の関係だと思うし、睡眠耐性は一時期はまったゲームで徹夜とかの関係か?あとは学校の授業で得られた知識だと思うんだが、思ったよりもスキルレベルが高いような気もする。漫画とかでの知識も影響しているのかもしれない。他は趣味とか家でやっていたことなどで大工とかがあるんだろうな。まあ生物学とか植物学とかがこっちの知識とは大分違っているとは思うけどね。
これ以外にこっちに来てから魔法系の知識と一般魔法と風魔法と治癒魔法は取得していると思う。まあわざわざお金払ってまで鑑定する気も無いけどね。
魔獣狩りに必要なスキルとして武器関係では片手剣と、あとは短剣になるだろう。短剣はサブ武器として最低限使えるようになっておきたい。もしもの時のために打撃系の武器もほしいけど、それは先の話だな。
剣や短剣については講習会である程度基本を習ってあとは実践と自己鍛錬かな?さすがに何回も習いに行くほど金銭的に余裕はないからね。
魔法に関しては全般的に鍛えていくという感じか?魔法関係は風魔法の習得を考えるとゲームや漫画でイメージしやすいみたいなのでスキルの習得は結構早いかもしれない。まずは自分なりに考えてやってみてだめだったら講習を考えよう。
他には解体スキルとできれば魔法解体スキルまで手に入れたいところだ。解体に必要な学識系のスキルは十分っぽいので、あとは解体スキルを実践で鍛えていく感じだろう。
治癒魔法は一応できるようになっているけど、状態異常を治す回復魔法についてはいったん状態異常にならないといけないので試すのはちょっと怖い。習うにはお金が厳しいからとりあえず薬で対処か?そうは言っても必要になる魔獣にあうこともそうそうないだろう。
治癒魔法のレベルアップはどう考えてもイメージで対応できそうなのでお金を払ってまで習う必要はないと思っている。ただ回復魔法も毒や麻痺の原因の除去なのでイメージはなんとなく分かるんだけど、実践と言ってもなあ・・・。
あと強化系や耐性系、索敵などもほしい気もするけど、これは後回しかなあ。索敵は早めにはほしいけど、魔法関係のスキルを上げないといけないのですぐに手に入れるのは厳しそうだ。
そして是非ともほしいのは鑑定や収納魔法の使える次元魔法なんだけど、まずは鑑定からかな?次元魔法は取得条件が今のところ厳しすぎる。どっちも習得方法が一般には知られていないけど、ガイド本にある程度の情報が書かれていたので助かった。
次元魔法はある程度魔法が使えるようになってくれば持っていても問題ないくらいだろう。高階位の冒険者とかで持っている人もいるみたいだからね。
鑑定についてはやはり取得しても公にはしない方が良さそうだ。過去には人物の鑑定ができた人がいたらしいと言うレベルなのにそれができるとなったらどうされるかわかったものではない。
とりあえず今後の方針としてはだいたいこんな感じにするとして、あとは無理のない範囲でがんばっていくしかないな。死んでしまったらそこで終わりだからね。
~転移後の異次元課にて~
ここは転移の途中で案内された場所である。新たにできた世界の状況確認、滅びてしまった世界の後始末、次元の隙間にはまってしまった人の送還など、多くの業務に追われている。生命体と言っていいのか不明であるが、職員たちにも自我があり、感情もある。
その中の異次元課はある世界から別の世界へ渡ってしまう生物を元の世界に戻す仕事をしている部署である。一つの世界ではそんなに頻繁に起こることではないが、世界の数が数だけにそれなりに忙しい。
転移者への説明もある程度基本の資料はあるとはいえ、元の世界と移動先の世界を元に説明書を準備しなければらないし、説明も必要だ。そして元に戻す手配まで、いろいろと書類の認可をとらなければならない。システム化されたとはいえ、それでもやることが多く面倒なのはしょうがない。
今回は二人も同時に同じ世界から同じ世界に召喚されという珍しいことがあったので部署の中でも少し話題になった。
ササミは処理を済ませて上司に承認手続きを終えた。承認が下りた後はシステムが自動でやってくれるのでこれでこの仕事はほぼ終了だ。席に戻ると同僚のタイラが声をかけてきた。
「今回二人同時に同じ世界から同じ世界に転移があったんだって。」
「そうなんだよ。かなり珍しいよね。別々で来るより書類の作成労力が半分くらいですむ分楽なんだけど、説明はさすがに面倒だよ。」
「そうみたいね。大変そうだったもんね。」
珍しいことについて話をしているが、ササミが言っているのは自分が処理した二人のことであり、タイラが言っているのは別の係員が行った二人のことだ。珍しい二人同時転移がほぼ同じタイミングで2ケース起きてしまっていたのである。
承認手続きをする上司は珍しいことがあるなあ・・・と思いながらもほぼ同時刻にほぼ同じ内容で出ていた申請書をみて先に出ていた一つは承認したが、もう一つを間違いだと思って保留にしてしまったのである。あとで確認しようと思っていたが、他の仕事に忙殺されて確認が忘れられてしまったようだ。
保留された書類に書かれていた名前は「大岡純一郎」、「ジェニファー・クーコ」だった。
いつも通りに起きてから朝食を食べに行く。朝食はスクランブルエッグとソーセージ、パンにサラダと珈琲だ。材料が一緒か分からないが、こっちにもちゃんと珈琲や紅茶があり、味は一緒みたいな感じ。まあ植生が一緒だったら使い方に気がつく人もいるだろうね。
食事の後は荷物の確認をしてから宿を出る。今日は高級宿を予約してから町を観光、それから宿に早めに入って宿を堪能。夜は目的の場所に出かけるという感じかな?
折角なら町一番の高級宿に泊まるつもりだったんだけど、残念ながらそういうところはその宿を使っている人からの紹介やある程度の身分がないとは入れないようだ。一見さんお断りというやつだろう。よくわからない客を泊めて常連客に迷惑をかけられると困るという事らしいので仕方がないかな。
最高級とはいえないが、紹介とかがなくても泊まることのできる高級な宿は確認していたのでとりあえずその宿に行ってみることにした。問題は部屋が開いているかなんだけど、昨日の夜になって早めに予約だけでもしておけば良かったんだと気がついたんだよなあ。
目的の宿は”オールフロー”というところなんだけど、町の中心付近にも係わらず結構な敷地にある5階建ての建物だ。敷地の入口には門番が立っており、気軽に入れない雰囲気だ。
泊まるつもりなので気にしないで門番の横を抜けて建物に近づくとドアマンと思われる人がドアを開けてくれた。そのままフロントへと誘導される。ロビーはかなり広くて天井も高い。さすがに普通は泊まることはないレベルのところだな。
「ようこそお越しくださいました、宿泊の予約でしょうか?」
かなり美人のスタッフが受付をしていた。貧乏そうな格好だが特に偏見を持った対応ではないので安心する。内心はわからないけどね。
「すみません、実は今日泊まりたいのですが大丈夫でしょうか?」
「今日ですか?えっと・・・部屋は通常部屋しか開いていませんが、大丈夫ですか?」
泊まれる部屋は上級と通常の2種類あるみたいなんだけど、上級の部屋はやはり紹介がないと泊まれないらしい。
「通常部屋でいいのですが、一人でも泊まることは出来ますか?」
「それは問題ありません。朝食は宿泊代に含まれますが、一人で一泊6000ドールとなります。」
結構な値段だけど、お金は足りるからまあいいか。
「大丈夫です。その金額でお願いします。何時から部屋に入ることができますか?」
「部屋には入れるのは4時からとなります。」
「わかりました。それまで荷物を預かってもらうことはできますか?」
「えっと、宿泊予定の方の分であれば大丈夫ですが・・・申し訳ありません、宿泊されるご本人様でしょうか?」
「そうですけど、だめですか?」
「!いえ、問題ありません。予約となりますので先に1000ドールの予約金を入れてもらう必要がありますが、よろしいでしょうか?」
「わかりました。」
どうも自分は予約にやってきた使用人か何かと思われていたような気がする。まあ年齢や服装を見るとそれはしょうがないか。1000ドール支払うと、引き換えに番号の書かれたカードを渡された。荷物を預かってもらってから宿を出る。
昨日で狩りは終わりの予定だったけど、時間的にも余裕があったのでもう一度狩りに行くことにした。昨日も行ったエリアへと足を伸ばして適当に狼もどきを狩っていると、木の上に大蜘蛛を発見。自分の頭よりも少し大きいくらいの蜘蛛で麻痺毒をもっている肉食の蜘蛛である。さすがに大きいのでかなり見た目がグロい。
それなりにすばしっこいようなんだけど、かみつき攻撃さえ気をつければそこまで恐れることはないようだ。少し離れたところから風魔法で攻撃すると足の半分をつぶすことができたのであっさりと倒すことができた。
先に見つけることができたのでよかったけど、気がつかずに木の下を通っていたら危ないところだったかもしれない。こういうときに索敵スキルがあると便利なんだろう。
残念ながら素材になるような部位はないので討伐実績のみである。足は食べることができるみたいだけど、あえて食べなくてもいいよね。2時間ほどして町に戻り、6匹の狼もどきの牙を買い取ってもらう。
お昼をどうしようかと店を探していると先日魔法の訓練で一緒になったユータとカナと会ったので、一緒に昼食をとることにした。
「訓練の方はどんな感じ?」
「とりあえずこの間話をした後、ある程度形が決めたのでしばらくはそのスタンスでやろうと思っているんだ。俺は魔法を補助として前衛、カナは魔法使いとして後衛だな。魔法はまだまだ使えるレベルじゃないけどな。」
「私は弓を使うことも考えたんだけど、弓と魔法を一緒にと言うのが厳しいのよね。弓を使うとそのあとの魔法攻撃が間に合わなくなるからね。二人だけなので魔法以外には短剣での格闘の方を重視してるわ。」
たしかに弓を使った後、すぐに魔法を使うというのはかなり慣れてこないと難しいかもしれないね。それに魔法がちゃんと使えるようになれば弓の必要は無くなりそうだし。魔法が効きにくい相手には弓は使えることもあるけど、全部を習得すると中途半端になりそうだ。
「いざと言うことを考えるとある程度全部こなさないといけないから、短剣を重視するのはいいかもしれないね。」
「スタイルとしてはクラーエルの二人に近いのでいろいろと助言をもらってるんだけど、アマニエルさんからも短剣か杖とかで近接戦闘も出来るようにしておかないと言われてるのよね。」
他にもいろいろと話をしながら食事を取り、二人と別れる。
このあといろいろと店を見て回り、チェックインができる時間になったところで宿へ向かう。支払いを済ませると、部屋まで案内してくれた。さすがに値段が高いだけあってかなり豪華だった。エレベーターもあったしね。
おそらく地球のような動力ではなく、魔法で動くものだろうけど、使い方は地球のエレベーターと同じだ。部屋のドアはオートロックになっているので出るときには注意するように言われる。
部屋は全部で3部屋あり、リビング、簡単な台所、寝室になっている。ベッドもかなりふわふわだ。トイレと意味ないくらい立派な洗面台とお風呂はあるんだけど、共同の大きなお風呂があると聞いていたのでちょっと楽しみだ。
ちなみにこっちの世界では浄化の魔法というもので身体を綺麗にするというものがあった。ただ浄化の魔法と言っても体の表面のゴミを取り除くといった感じなので、シャワーやお風呂が使える場合は使うらしい。
宿やある程度の家庭にはシャワー設備があり、お風呂は高級宿や金持ちだけが使っている感じのようだ。とはいえ、お風呂がそこまで好きではないと言う人も多いようで、国によってはお風呂がないところもあるみたい。まあ地球でもお風呂をそこまで好きな民族って日本ぐらいのような気もするね。
さっそく準備をしてから地下にあると言うお風呂へと向かう。広めの脱衣所にロッカーのようなものがいくつも並んでいた。ロッカーには鍵がついておりここに荷物を入れる。お風呂の案内を見ると、裸もしくは湯浴み衣を着て入るようになっている。湯浴み衣は薄い布のパンツのようなものだった。
浴室に入ると、20人くらいは入れそうな石造りの大きな湯船と5人くらいの小さな湯船があった。小さな湯船は温度が高いみたい。洗い場もシャワー付きで並んでいてスーパー銭湯という感じだな。地下と言うこともあり、露天風呂はないのが残念だ。まあ町中なのであまり意味が無いか。
さすがにこの時間には他のお客もいないので貸し切り気分だ。早速体を洗ってから湯船に浸かってお風呂を堪能。温泉でないのは残念だけど、大きなお風呂はいいねえ・・・。
年に数回は家族旅行で温泉とかに行っていたからなあ。最近は自分も妹もあまり一緒に行かなくなってきたので両親二人で楽しんでいたようだけどね。
部屋に戻ってから一息ついたところで宿に併設している食堂へ。夕食はコース料理となっているのでちょっと場違いな感じだったけど気にしないことにした。とりあえず宿泊客であればドレスコートまでは必要ないらしいけど、さすがに少し見栄えのする服に着替えていく。
スープにサラダ、メインにお肉と続いているが、やはり魚は出ないのは内陸のせいかな?デザートのケーキもなかなかおいしくて助かった。劇甘のケーキとか出たらしゃれにならないからなあ。
そしてこれがメインイベントとなるんだけど、宿屋の横にある併設の店に移動。「ここでは成人、ここでは成人。」と言い聞かせながら中に入る。時間がまだ早いせいかお客はほとんどいない。
スタッフに案内されてボックスになったソファーに案内されると、ちょっときわどい格好をしたお姉さんが二人やってきた。一人はかわいい感じでちょっとスレンダー系の女性で自分とあまり年齢が変わらない感じだ。もう一人は20代前半という感じの美人で胸が・・・。
ちなみにちょっとしたおさわりはいいらしいが、店ではあまり羽目を外さないように釘を刺されていた。
自分の両側に魅力的な女性が二人。もちろんこんなところに慣れていないので挙動不審になってしまう。さすがにプロなのか、いろいろと話題を振ってくれたのでなんとか落ち着いてきたんだけど、ボディータッチをしてくるとそれだけでもう興奮状態になってしまう。
かなり軽めに作ってもらったお酒を少し飲んでテンションも上がってきて、胸を触らせてもらったりとかはしたんだけど・・・それ以上はだめでした。へたれと言われてもしょうがない。
そういうこともオッケーというお店というのも確認していたし、一応そのためのお金は残っていたんだけどね。がんばるつもりだったんだけどね。大人の階段は上れなかったよ。まあ、これだけでも結構なお金を取られたけど、至福の時間は味わえたので後悔はない。
異世界最後の夜と言っても徹夜してまでやりたいことがあるわけではない。というか夜出歩くにはあまりにもリスクが高すぎるのでベッドに入るとすぐに眠りに落ちていった。
いろいろとあったけど、今日で異世界旅行も最終日だ。さすがに他の町に行くのにはちょっと厳しかったので結局この町の周辺くらいしか体験できなかったなあ。
エッチな体験もなんかいきそびれてしまったし・・・。まあエルフや獣人なんていなかったから異世界だからこその体験ではないんだけどね。
でも魔法の体験や魔獣の討伐など結構異世界の体験はできたと思う。目がよくなったのはもとの世界に戻っても効果があるみたいだしね。
ちなみに治癒魔法を覚えた後、何度か試したんだけど、残念ながら完全に視力がよくなるわけではなかった。それでもコンタクトや眼鏡なしでも最低限の生活はできるレベルにはなったので十分だ。
残り時間を考えるとお昼には召喚されるのでそれまでは適当に時間を潰すかな。装備などはすべてなくなると思うけど、売っても意味が無いし、最後まで異世界気分を味わうつもりでこのままでいよう。もしかしたらなにか持って帰れるものもあるかもしれないし。ちなみに残金は8000ドールと少々という感じだ。余裕と思っていたのに結構使ったなあ。
朝食は事前予約した時間に行くようになっていて、この世界では初めてのバイキング形式だった。ただ自分でとるわけではなく、メニューに載っている食べたいものを言うとスタッフが盛り付けて運んでくれるというものだ。せっかくだからといろいろなものに手を出してみた。おかげでおなかがはち切れんばかりになってしまったよ。
このあと部屋に戻ってチェックアウトぎりぎりまでくつろいでから宿を出る。これで最後なので武器屋や魔道具の店を見てまわり、役場で少し知り合った人たちに声をかけたりする。残り30分くらいになったところでこちらの世界にやってきた公園へと移動した。
ベンチに座ってカウントダウンを眺める。表示は0日:00時:00分30秒となっている。もう少しでもとの世界に戻って記憶もなくなるんだなあ。少しでもこっちのことを覚えていたらいいのに・・・。
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なんで転移されないの?
え?どういうこと?ちょ、ちょっとまって・・・。えっ?
しばらく呆然と時刻を刻んでいくガイド本の表紙を眺めていたが、いつまで待っても何も起こらない。
どうすればいいんだ?
小説だったら神様とのチャンネルが開いて事情を聞くこともできそうだが、そんな手段は全くない。
どうするんだ・・・?
実は戻れるという話し自体が嘘だったのか?
そうだったらこのままこの世界で生きていかなければならないのか?
10日間だけだったからなんとかなったけど、自分はこの世界で生きていけるのか?
しばらく自問自答していたんだが、答えが出るものでもない。とりあえず行動を起こさなければどうしようもないので、まずは泊まるところを確保することにした。
前に泊まった宿カイランに行き、部屋を確保する。これで泊まるところがないという事にはならないけど、期間がどのくらいかも分からないのでお金のことも考えないといけないな。
まずはダメ元で教会へ行き、神様に祈ってみることにした。
「異世界からやってきて今日でもとの世界に戻る約束だったんですが、どうなっているのでしょうか?もしこの声が聞こえるのでしたら応えてください。」
・・・
・・
・
反応はない。
まあ当然か・・・。
神様とササミさんは関係ない感じだったからなあ。それに普通に考えても神頼みとかやってもそうそう話は聞いてくれないか。いくらもとの世界より神様が身近になっているとは言ってもね。
でもこのくらいしか確認する方法もないので教会通いは続けることにするか。教会でなくても声は届くのかねえ?それともなにか特別な場所でないと声は届かないのだろうか?
まあこの世界では神様もいることだし、ガイド本という訳の分からないものもあるくらいだし、正直なところ理解の範疇を超えているよ。
宿に戻ってから今後のことを考えてみる。嘆いていても仕方が無いし、前向きに考えるしかないからね。
元の世界に戻る時間を過ぎていると言うことはいつになったらもとの世界に戻れるのか、本当に戻れるのかは正直言って分からない。もしかしたらあの説明は建前でもともと戻ることができないのかもしれない。そう考えるとこの世界で生きていくことを考えておかなければならないということだ。
この世界での知り合いと言っても10日間に知り合った人たちだけなので手助けを頼むわけにもいかない。異世界からやってきたと言ってもそもそも信じてもらえるかも分からないし、信じる人がいたとしても手助けしてもらえる可能性は低い。
下手すれば知識だけとられて一生飼い殺しという状況になってしまう可能性もある。ササミさんもそんなことを言っていたし・・・。
やっぱり昔からの知り合いがいないというのはつらいよな・・・。
・・・・
あれ?そういえば、一緒にあそこにやって来ていた彼女はどうなったんだろうか?
正直、ササミさんから聞いた彼女の情報自体が本当なのかは分からないけど、彼女のことを調べてみるのも一つかもしれないな。もし彼女がちゃんとこの世界にやって来ていていなくなったというのであれば元の世界に戻っている可能性もあるし、もしまだこの世界にいるというのであればお互いになにか協力できることがあるかもしれない。
えっと、たしか前に移動にどのくらいかかるか調べていたはずだったけど、どこに書いていたかな?ああ、あった、あった。これだ。
季節によって変動はあるとは言っていたけど、普通のバスで3千ドール、指定席のあるバスだと9千ドールで15日間、高速の直通バスだと2万5千ドールで5日間か。
途中の食事代や宿代もかかるみたいだから1日800ドールくらいかかるとして15日間で12000ドールくらいか。普通のバスで移動するにしても最低限15000ドールはほしいところだな。
彼女の方も元の世界に戻れなくてこちらのことを気にしていたとしたらすれ違いになってしまう可能性もあるけど、それを言い出したら何もできなくなるから、そこは割り切るしかないだろう。どっちにしろ行ってみたら何かしら情報が入るかもしれないしね。
とりあえずお金を貯めて会いに行ってみるという方針は決まったけど、問題はそのお金をどうやって稼ぐかだな。こんなことなら最後に贅沢とかしなければ良かったよ。あれだけで1万ドールくらい使ったからなあ。
知識チートで稼ぐというのはここ10日間で見て回った限りでは難しそう。大体のものは魔道具であるし、それ以上のものはとてもではないけど自分で作ったり構造を説明したりは無理なものばかりだった。まあそもそも何かを作るにしてもそれを売るにしても伝もないし、元手もない。
手に入れることが出来れば金儲けには使えそうなスキルはあるけど、スキルを手に入れるのもスキルレベルを上げるのもかなり時間がかかってしまうからなあ。治癒魔法とかもねえ・・・。
ちゃんと就職すれば月に10000~20000ドールくらい手に入るみたいだけど、見習い期間もあるし、そうそうよい働き口があるようには思えない。ずっと務めるわけでもないからねえ。
以前役場の職業斡旋を少し見てみたけど、求人数がそんなに多くない上に競争率も高そうなのですぐに決まる可能性は低いように思う。短期的なバイトのようなものはある程度経験していることが前提のものがほとんどだし、自分はすぐれた技術があるわけでもないし。
だといって冒険者の収入はもっとひどい感じだ。初階位レベルだと1日かなり頑張ったとしても500ドールくらいと聞いているし、実際に狩りをやってみた感触としてもそのくらいだ。しかも怪我とかした時点で収入が途絶えてしまうと言うリスクもある。
パーティーを組んで並階位の魔獣を中心に狩れば効率は上がるかもしれないけど、短期間でパーティーメンバーを探すのも厳しいし、知識とかの面からいろいろ不都合も出そうなんだよなあ。
そうは言っても他に方法もないし、とりあえず目標の稼ぎを一日500ドールとしてスキルのレベルアップも併せてあげていくことで頑張ってみるかな。怪我をしても治療は一応できるわけだし、お金はかからないはずだ。
元の世界に戻れるかは分からないけど、今後この世界で生きて行かなければならなくなってしまうことを考えると地道にでもスキルは身につけておいて損はないからね。
今の全財産が8000ドールくらいなのであと7000ドールとなると一日100ドールずつためて70日かかる計算だけど、スキルなどを手に入れてペースが良くなればその分短縮はできるはず。
この辺りは四季があるので今は2月で春と言うことは2ヶ月近くここにいたとしても初夏ぐらいに移動できるだろう。冬になると雪が降るらしいけど、雪で移動できないとか言うことはなさそうだ。
お金を稼ぎながら自分の能力も上げていかないといけないから出来るだけ効率よくやっていかないといけないな。
この世界にやって来たときに取得していたスキルはガイド本に書かれていたけどこのくらいか。
戦学-1、武学-2、防学-1
片手剣-1、両手剣-2、刀剣-1
睡眠耐性-1
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-1、工作-1、料理-2、裁縫-1
算学-3、自然科学-3、社会科学-3、生物学-3、植物学-3、地学-3、神学-1、医学-3、天文学-1、言語学-3
日本語-4、英語-1、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5
思考強化-1
商人-1
採掘-1、採取-1
ガイド本-1
片手剣、両手剣、刀剣は剣道の関係だと思うし、睡眠耐性は一時期はまったゲームで徹夜とかの関係か?あとは学校の授業で得られた知識だと思うんだが、思ったよりもスキルレベルが高いような気もする。漫画とかでの知識も影響しているのかもしれない。他は趣味とか家でやっていたことなどで大工とかがあるんだろうな。まあ生物学とか植物学とかがこっちの知識とは大分違っているとは思うけどね。
これ以外にこっちに来てから魔法系の知識と一般魔法と風魔法と治癒魔法は取得していると思う。まあわざわざお金払ってまで鑑定する気も無いけどね。
魔獣狩りに必要なスキルとして武器関係では片手剣と、あとは短剣になるだろう。短剣はサブ武器として最低限使えるようになっておきたい。もしもの時のために打撃系の武器もほしいけど、それは先の話だな。
剣や短剣については講習会である程度基本を習ってあとは実践と自己鍛錬かな?さすがに何回も習いに行くほど金銭的に余裕はないからね。
魔法に関しては全般的に鍛えていくという感じか?魔法関係は風魔法の習得を考えるとゲームや漫画でイメージしやすいみたいなのでスキルの習得は結構早いかもしれない。まずは自分なりに考えてやってみてだめだったら講習を考えよう。
他には解体スキルとできれば魔法解体スキルまで手に入れたいところだ。解体に必要な学識系のスキルは十分っぽいので、あとは解体スキルを実践で鍛えていく感じだろう。
治癒魔法は一応できるようになっているけど、状態異常を治す回復魔法についてはいったん状態異常にならないといけないので試すのはちょっと怖い。習うにはお金が厳しいからとりあえず薬で対処か?そうは言っても必要になる魔獣にあうこともそうそうないだろう。
治癒魔法のレベルアップはどう考えてもイメージで対応できそうなのでお金を払ってまで習う必要はないと思っている。ただ回復魔法も毒や麻痺の原因の除去なのでイメージはなんとなく分かるんだけど、実践と言ってもなあ・・・。
あと強化系や耐性系、索敵などもほしい気もするけど、これは後回しかなあ。索敵は早めにはほしいけど、魔法関係のスキルを上げないといけないのですぐに手に入れるのは厳しそうだ。
そして是非ともほしいのは鑑定や収納魔法の使える次元魔法なんだけど、まずは鑑定からかな?次元魔法は取得条件が今のところ厳しすぎる。どっちも習得方法が一般には知られていないけど、ガイド本にある程度の情報が書かれていたので助かった。
次元魔法はある程度魔法が使えるようになってくれば持っていても問題ないくらいだろう。高階位の冒険者とかで持っている人もいるみたいだからね。
鑑定についてはやはり取得しても公にはしない方が良さそうだ。過去には人物の鑑定ができた人がいたらしいと言うレベルなのにそれができるとなったらどうされるかわかったものではない。
とりあえず今後の方針としてはだいたいこんな感じにするとして、あとは無理のない範囲でがんばっていくしかないな。死んでしまったらそこで終わりだからね。
~転移後の異次元課にて~
ここは転移の途中で案内された場所である。新たにできた世界の状況確認、滅びてしまった世界の後始末、次元の隙間にはまってしまった人の送還など、多くの業務に追われている。生命体と言っていいのか不明であるが、職員たちにも自我があり、感情もある。
その中の異次元課はある世界から別の世界へ渡ってしまう生物を元の世界に戻す仕事をしている部署である。一つの世界ではそんなに頻繁に起こることではないが、世界の数が数だけにそれなりに忙しい。
転移者への説明もある程度基本の資料はあるとはいえ、元の世界と移動先の世界を元に説明書を準備しなければらないし、説明も必要だ。そして元に戻す手配まで、いろいろと書類の認可をとらなければならない。システム化されたとはいえ、それでもやることが多く面倒なのはしょうがない。
今回は二人も同時に同じ世界から同じ世界に召喚されという珍しいことがあったので部署の中でも少し話題になった。
ササミは処理を済ませて上司に承認手続きを終えた。承認が下りた後はシステムが自動でやってくれるのでこれでこの仕事はほぼ終了だ。席に戻ると同僚のタイラが声をかけてきた。
「今回二人同時に同じ世界から同じ世界に転移があったんだって。」
「そうなんだよ。かなり珍しいよね。別々で来るより書類の作成労力が半分くらいですむ分楽なんだけど、説明はさすがに面倒だよ。」
「そうみたいね。大変そうだったもんね。」
珍しいことについて話をしているが、ササミが言っているのは自分が処理した二人のことであり、タイラが言っているのは別の係員が行った二人のことだ。珍しい二人同時転移がほぼ同じタイミングで2ケース起きてしまっていたのである。
承認手続きをする上司は珍しいことがあるなあ・・・と思いながらもほぼ同時刻にほぼ同じ内容で出ていた申請書をみて先に出ていた一つは承認したが、もう一つを間違いだと思って保留にしてしまったのである。あとで確認しようと思っていたが、他の仕事に忙殺されて確認が忘れられてしまったようだ。
保留された書類に書かれていた名前は「大岡純一郎」、「ジェニファー・クーコ」だった。
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