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76. 異世界940日目 結婚式
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76. 異世界940日目 結婚式
結婚式の日程が近づいてきてぼちぼちと参列者が王都にやってきた。地球にいたときは時間がかかっても数日あれば世界中のだいたいのところに行ける感じだったんだけど、こっちではそういうわけではないのである程度余裕を持った行程でやってくることが普通のようだ。
それでもかなり強行軍でやってきているようなので結構大変そうだった。まさかそこまで参加してくれるとは思ってなかったからなあ・・・。
他にも案内を出した人からの手紙も届いている。参加したかったけどやっぱり日程の問題などもあり来ることができなかったと書かれている。まあそれはしょうが無いだろう。移動だけで1ヶ月とかかかってしまうところもあるからね。
最初にやってきたのはラクマニア様だった。到着したとの連絡が入ったので宿泊している宿にお邪魔することにしたんだけど、さすがは要人が泊まっている宿屋だけあって立派なところだった。建物自体はシルバーフローとそこまで変わらない感じだったけど、内装が豪華だし、警備もしっかりしている。まあ今の警備はさらに特別なんだろうけどね。
建物の敷地に入るところから警備が厳しくて、身分証明証の提示を求められてしまう状態だ。この後フロントで連絡を取ったけど、そこでもかなり待たされることになってしまった。確認が取れた後は、係の案内で部屋まで移動してやっと会うことができたという感じだ。
部屋に入ると、久しぶりに会う孫のソラニアくんと娘のクリスティファの二人が飛びついてきて大変だった。結局このあとも話が長くなり、夕食まで一緒に食べることになってしまったよ。
あの後のことを聞くと、対立していたハックツベルト上位爵も若干歩み寄りを見せてきたらしく、国の改革が前に進み始めたらしい。大きな派閥の二つが平民の登用を前向きに進める意向を示したため、他の派閥も反対できなくなってきたらしい。
おそらく自分たちのことが意識が変わった要因の一つだろうとお礼を言われてちょっと照れくさかったよ。まあ時代の流れを考えるとある程度妥協していかないと落ちぶれてしまうのは反対していた人達になるだろうからね。
その二日後にはアルモニア国の一行もやってきたようなんだけど、ジョニーファン様がいきなりうちにやってかなり驚いた。本当は王宮に挨拶に行くはずだったらしいのに、一行から離れてやってきたみたい。いいのか?
結局この日はずっと話をしていたせいで夕食も一緒に食べて夜になってから帰って行った。普通に自分たちが食べるものを出したんだけど良かったのかな?
このときジョニーファン様の護衛についていたのは北の遺跡の調査の時の隊長のサルマン・クリファーさんと副官のデイストリフさん、ヤルマンさんの3人だった。遺跡の調査が終わった後は王都に戻り、ジョニーファン様と一緒にいろいろと遺跡の調査結果の整理をしていたらしい。
今回のヤーマン国への移動の時の警護にこの3人がつくことになったらしいけど、ジョニーファン様からの話だと普通の兵士だと学術的な話ができなくて退屈だからと言うことだった。
あと驚いたのはサルマンさんとデイストリフさんが結婚していたことだ。ヤルマンさんからこっそり聞いた話だと、ずっと慕っていたデイストリフさんから告白して付き合うことになったみたいだ。そのあとはトントン拍子に話が進んで結婚することになったようだ。お祝いを言うとかなり照れている二人がなんとも・・・。
さらに翌日はラクマニア様から再度呼び出されてジョニーファン様を含めていろいろと話をすることになってしまった。二人がそろうと話が終わらず、かなり遅くなってしまったこともあり、結局その日は泊まっていくことになってしまったよ。近いからいいと断っても、明日の朝もまだ話したいと言われてはどうしようもない。
その階を全部借り切っていたみたいで、自分とジェニファーはかなり立派な部屋の鍵を渡される。いかにも高級ホテルのスイートルームという感じなんだが、寝るだけというのがちょっともったいない感じだ。
せっかくなのでお風呂を堪能し、夜景を見ながらジェンと話をしてくつろいだけどね。こういうところに泊まることもそうそう無いだろうからね。さすがに制約はしたよ・・・。
ちなみにこの会合は国王陛下も知ることとなったらしく、あとで説明を求められてしまった。「建国祭を出汁にされたのか?」とちょっと落ち込んでいたみたい。ジョニーファン様が建国祭にやってくるというのはかなりの誉れだったようだったからね。彼が国から出ることがほぼ無かったらしく、今回は”あの”ジョニーファン様がわざわざやってきていると話題になっていたようだ。
ジョニーファン様も認識阻害の魔道具や魔法を使っているみたいで行動は把握されていなかったようなのでまだ大丈夫だったけど、うちにやってきたとばれてたらしゃれにならないよ。
そのあと風の翼達の護衛とともにオカニウムのカサス商会の支店長フラールさんやアーマトの支店長のユニスさん、アキラさんやマラルさんもやってきてジェンは久しぶりの再会に喜んでいた。
驚いたのはメイサンさんとルミナさん夫妻も一緒にやってきたことだ。案内は出していたんだけど、宿は知り合いにお願いしてやってきてくれたらしい。これにはジェンはかなり感激していた。
本人達はこんな時くらいしか王都にやってくる機会もないからと決断したようだ。移動費はカサス商会が持ってくれるということもあってやってきたらしい。
結局今回の結婚式に参加するのはかなりの人数になってしまった。
王都からはクリスさん関係の5人(クリス、スレイン、アルド、イント、デルタ)、カサス商会の5人(コーラン、サクラ支店長カルニア、魔道具部門のトルイト、錬金部門のカルク、調合部門のサルファニー)。
アルモニアからはジョニーファン様、護衛の3人(サルマン、デイストリフ、ヤルマン)。
ハクセンからはラクマニア様の家族6人(ラクマニア、奥さんのスレンダ、次男のルイアニア、奥さんのタスマール、息子のソラニア、娘のクリスティファ)と護衛の2人(面識はあるくらいの人だが、護衛のために参加)。
他のカサス商会から3人(オカニウム支店長フラール、アーマト支店長ユニス、ルイサレム支店長ステファー)。
オカニウムから4人(アキラ、マラル、メイサン、ルミナ)。
アーマトからは風の翼の3人(フェルマー、カルマ、ニック)、クラーエルの2人(クーラスト、アマニエル)。
あと、式の護衛をかねて参加してもらったのは王家の剣の4人(ランドリア、マルニキア、デルミスト、ミスカルト)だ。
実は国王陛下と王妃殿下も参加したいようなことを言っていたらしいけど、さすがにそれは断らせてもらった。いくら形式上の爵位があると言ってもそれはちょっとまずいよ・・・。
なので基本的に結婚式は非公式に行っている。まあ一般人の結婚式という装いなんだけどね。なので警備をお願いしている冒険者とかにも詳細はふせている状態だ。
皆が来る前に結婚式の準備はほぼ終わらせておいてよかった。ただ結婚式でやることをいくつかお願いしていたのでその段取りだけは説明しておいたけどね。ラクマニア様の孫のソラニア君とクリスティファちゃんには結構重要な役をお願いしたからね。
そしてついに結婚式の日がやってきた。二日前まで雨が降っていたので心配だったんだけど、今日はいい天気になって良かった。青空に雲が少し広がって秋晴れという感じ。気温もちょっと涼しいという位なのでちょうどいい。
いろいろと考えて準備はしてきたけど、こっちの結婚式とは進行が違うのでトラブルがあるかもしれないけど、それはそれでしょうが無いと思うしかない。地球の結婚式の内容を加えたのでこっちの人にはなじみはないだろうけどまあなんとかなるかな?
式では通常は神父が決まった方法で取り仕切っているんだけど、簡単な流れの説明や誘導をしてもらう人を準備してもらった。神父もかなり前向きに考えてくれたので良かったよ。
ただ結婚式の内容については自分が知っている内容とジェンの知っている内容で違いがあったので色々と話をしてやるものを決めていった。やっぱり国によってやる内容が違っているのはしょうが無いところかな?自分も親戚の結婚式に数回しか出たことがないからねえ。教会式に出たのも2回だけだ。
今回式を行うのはサクラでは結構な大きさの教会だ。普通はなかなか借りることはできないんだけど、一応爵位もあるのでなんとかなった感じ。もちろん寄付という名目の使用料を支払わなければならなかったけどね。
150人くらいは入れそうな教会なので、正直ここまで大きくなくてもという気もするんだけど、警備のことを考えると結局この規模になってしまった。数十人の規模のところだと建物内も狭くなるし、建物も隣接しているからね。これはクリスさんたちにも相談して決めたので間違いは無いだろう。
教会は5柱の神を信仰しているところで、神殿の正面には高さ5キヤルドくらいの大きさの5柱の神の像が設置されている。神の序列はないので、並んでいる順番は定期的に入れ替えられるらしい。壁にはいろいろな神話に関する彫刻とか絵画が設置されていてかなり荘厳な感じ。
地球の教会にあるようなステンドグラスはないけど、小さな窓がいくつも作られていてそれが模様のようになって綺麗だ。窓から直接日が差すようにはなっていなくて、壁や天井を照らすようになっているのでまぶしいというわけでもない。
式典にも使われるせいか、全体的にスペースがかなり広くとられており、中央に5キヤルドくらいの幅の広めの通路があり、祭壇の前もかなり広いスペースが作られている。席は5人くらいは十分に座ることのできる席が中央の通路の両側に設置されていて、壁側にもかなりのスペースがある。人が多いときにはイスを追加できるらしい。
兵士には建物の廊下や出入口を警備してもらい、冒険者の人達には敷地の周りの警備をお願いしている。車で来る参列者は建物の入口まで入ってもらい、テントの中で受付をしてもらうようにしているので誰が来たのかはすぐにはわからないようにした。
それほど人数がいないこともあり、受付は自分が行っている。男の方の準備はそれほどかからないからね。2時頃にやってくるように言っていたので、車や歩きでやってきた参列者を出迎えていく。みんなちゃんとした正装を準備してくれていたようだ。
参列者の人達には参加する人達のことは話したけど、さすがにかなり驚いていた。クリスさんたちのことでもかなり驚いていたけど、ジョニーファン様の名前を聞いたときはかなり青ざめていたからね。
ジョニーファン様やラクマニア様にも失礼があるかもしれないことを説明したところ、この式に参加する時点で無礼講と考えているから問題ないとは言われている。
ジェンの髪のセットや衣装の着付けは専門の人にお願いした。そしてそれとは別にジェンはアキラとマラルにも手伝いをお願いしていた。二人にはこっちで用意した衣装に着替えてもらっていろいろとやってもらうらしい。アメリカではそんな風に友人にいろいろやってもらうことが多いようだ。
やってきた人達には簡単な軽食を準備した部屋で待機してもらう。ここの準備はクリスさんの店から手伝いに来てもらった。ただ何かあっても大変なので、事前準備だけで給仕はなしという仕様だ。これは参列者の人達にも了解を取っている。
全員の受け付けを終了したところで、自分も準備を済ませてから教会の中庭へ。どうもファーストルックと言われるもので、ジェンが花嫁姿を先に見せてくれるようだ。参列者達は建物の窓から見ているんだけど、こっちは後ろ向きに立って待つように言われているのでかなり緊張する。
しばらく待っていると、少し足音が聞こえてきた。
「イチ、こっち向いていいよ。」
振り返ると純白のウエディングドレスを着たジェンの姿が目に入ってきた。スカートはふんわりした形のもので細かな刺繍が色々と入っている。ベールはかなり長くてマラルさんとアキラさんが裾を持っている。ちなみにマラルさんとアキラさんは薄いピンクのおそろいのドレスに着替えていた。
「・・・・」
きれいだ・・・。今日、こんな綺麗な人と夫婦になれるんだな・・・。
「どう?」
「うん・・・とても似合ってる。
とても・・・
自分の妻になってくれる人がこんな綺麗な人とか・・・」
「あ、ありがとう。」
ついキスをしようとして止められてしまった。
「みんなが見てるし、するのはこの後でしょ!!」
そうだった・・・いかんいかん、我を忘れてしまいそうになっていた。
遠くから見ていたみんなが、「まだ早いぞ~~~!!」と突っ込んできた。マラルさんとアキラさんも苦笑いしている。
このあと参列者には教会に移動してもらい、自分たちは教会正面の扉の前に移動する。このときにかわいく着飾ったソラニアくんとクリスティファちゃんの他にマラルさんとアキラさんにも一緒に来てもらう。
パパパパーーーーン!!パパパパーーーーン!!!
ドアの中から聞いたことのある音楽が流れてきたところでドアが開いた。教会にはパイプオルガンのような楽器があり、ジェンが知り合いになった演奏家の人に弾いてもらっている。
こっちではもちろんなじみのない音楽なんだけど、自分たちにはなじみのある曲だ。こっちとは音程が若干違うので編曲するのが結構大変だったようだけど、かなり近い感じに仕上がったようだ。
自分としては「タンタッカタ~ン」(ワーグナーの結婚行進曲)で始まる方が印象にあったんだけど、ジェンからそれは悲劇だからと反対されて「パパパパーン」(メンデルスゾーンの結婚行進曲)で始まる音楽になったのである。
先頭にアキラさんが歩き、そのうしろにクリスティファちゃんが花びらを蒔きながら歩いてもらい、マラルさんは自分たちの後ろ、そのあとにソラニア君が自分たち二人の結婚指輪を納めた箱を持ってきてもらう。
席には一人または二人ずつが通路に沿って立っており、拍手をしながら自分たちを祝福してくれた。その中には着飾った孫達を見てかなり顔が緩んでいるラクマニア様の姿があった。
ゆっくりと歩いて祭壇の上までやってきたところでアキラさんとマラルさんはジェンのドレスやベールの手入れをしてから子ども達と一緒に席に戻ってもらう。
神父からの説教があるが、前にも聞いたように朗読方法がちょっと特殊なので正直何を言っているのかわからない。ほんとにお経みたいだよなあ・・・。
このあと運んでもらった指輪を手に取りジェンの指にはめるが、こっちの作法に則ってジェンに声をかける。
「ジェン、これからもよろしくね。これからも二人で楽しんでいこう。」
そのあとジェンから自分の指に指輪をはめてもらう。
「イチ、もう絶対に私から逃げられないからね。覚悟してよ。」
なんかジェンがちょっと怖い感じなんだけど、気のせいだよね?
このあとこちらの様式にのっとり宣誓をする。
「「私たちは永遠の愛を神の前に誓います!!」」
宣誓をするとなぜかあたりが明るくなった。驚いていると祭壇にあったカムヒ様の像が光っていた。どういうこと?
「カムヒ様から祝福を受けたようです。二人の結婚は間違いなく神に認められました。」
神父からの言葉の後、参列者から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。どうやら神様が祝福をくれたらしい。あとで聞いたところ、すべてではないが、結婚した二人にカムヒ様からの祝福がもらえることがあるらしい。
「それでは誓いの口づけを。」
神父さんの宣言に後、ジェンと向かい合ってからベールを上げでジェンにキスをする。こっちではないイベントなので、みんながちょっと驚いているようだ。
一通り式が終わったところで、中央の通路を抜けて退場する時に全員からフラワーシャワーを受けながらドアから外に出る。そして教会の中庭に移動してからブーケトスを行うこととなった。
もちろんこっちではない風習なので参列者の人達に説明してから独身の女性に参加してもらうことになった。ただ独身の女性はそれほどいないけどね。アキラさんとマラルさんともうすぐ結婚する予定の王家の剣のミスカルトさんとマルニキアの4人だけだ。
ジェンがブーケを投げるとアキラさんがしっかりとキャッチしていた。「次は私か~~~!!」とうれしそうにしていた。他の3人には小さなブーケをプレゼントする。
少し参列者の人達と話をした後、バスのような車に分乗してからクリスさんの店に移動する。店でも先に皆に会場に入ってもらい、会場の入口で案内を待つ。
しばらくすると中からコーランさんの声が聞こえてきた。披露宴の進行で誰かいい人がいないかとコーランさんに尋ねたら「私がしますよ。」と立候補してくれたのでそのままお願いしたのである。
「本日結婚いたしましたジュンイチさん、ジェニファーさんが入場しますので、盛大な拍手をお願いします。」
ここでもアキラさんとマラルさんに先導してもらって入場。一段高いところに用意してもらった席に着くとコーランさんからの案内が始まる。
「それではこれよりジュンイチさん、ジェニファーさんの結婚披露宴を始めさせてもらいます。僭越ながら司会は私、カサス商会のコーランが務めさせていただきます。」
まずはコーランさんから簡単な祝辞の後、ジョニーファン様からも簡単な祝辞と乾杯の発声をしてもらう。
それから事前にお願いしていたスピーチという感じで自分のことはクリスさん、ジェンのことはルミナさんに少し話してもらう。出会ったときの印象などを聞いていると、そんなこともあったなあ・・・と懐かしく思ってしまった。
一通りの祝辞などが終わったところで皆に見守られながらケーキカットを行い、ファーストバイトという恥ずかしいイベントまでやってしまったよ。ジェンがノリノリだったからね。みんな何事かと思っていたようだが、趣旨がわかってかなり盛り上がっていた。ジェンにはちゃんと食べさせたんだけど、ジェンは予想通り半端ないほどのケーキを載せてきてしゃれにならなかったよ。
ケーキを配った後、同じようなことをしている夫婦もいたのは見なかったことにしておいた。うん、仲がいいね。
このあといったん退場はしなかったけど、キャンドルサービスなどもやってみた。これも何事かと驚いていたようだ。最後に席にある大きなハート型になる蝋燭に火をつけてキャンドルサービスも無事に終了した。
途中参列者の人達と色々話をしたりしていたんだけど、披露宴に参加された人たちにも何か余興をしてもらおうとお願いすると、王家の剣のメンバーが剣舞をやってくれたり、アキラさんとマラルさんが歌ってくれたりと結構盛り上がった。あまりこういう余興をやることはないようだったのでかなり珍しいのだろう。
ジョニーファン様は魔法を使った隠し芸のようなことをやってくれて皆驚いていた。それに対抗意識を燃やしたらしいラクマニア様も見事な魔法を披露していた。
最後に皆への挨拶で締めて、2時間近くの披露宴を終了する。出口でお礼のお菓子を渡してから全員を見送った。残ったクリスさんたちにお礼を言ってから自分たちは予約しておいたシルバーフローに移動する。
部屋に戻ってから服を着替えてやっと落ち着くことができた。これで晴れて夫婦になったんだなあ・・・とかなり感慨深い。
そのあとはとても甘い夜を過ごしたよ。うん、気がついたら朝だったというのは気のせいにしておこう。治癒魔法を駆使したのは秘密だ。
ちなみに結婚が認められたことで、身分証明証の婚姻のところにジェニファーの名前が書かれていた。なんか気恥ずかしいな。
そしてスキルにカムヒの祝福が追加され、そのせいもあって神の祝福のレベルがさらに上がっていた。効果は”物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2”である。
能力吸収上昇といってもいままでの経験から考えるとそれほど強力なものではない感じなので急に能力が上がるわけではないんだよね。まあ魔術関係はカムヒの祝福との相乗効果で今までよりは上がりやすくはなっているというくらいに考えておいた方がいいだろう。
~ジェンSide~
今日は私たちの結婚式だ。いろいろ大変だったけど、イチと一緒に色々と考えるのも楽しかった。教会の人達やクリスさんの店の人達、コーランさんたちも色々協力してくれて助かったわ。コーランさんは自分たちが言う内容にかなり驚いていたけどね。いろいろと詳しく聞いていたのできっと何か商売にするつもりね。
教会に着いてからアキラとマラルにも手伝ってもらって準備に取りかかった。アキラとマラルにも衣装は準備していたので着替えてもらったんだけど、なかなかいい感じに似合っていて良かった。あとでその衣装はそのまま持って帰っていいというとかなり驚いていたけどね。手伝ってもらうお礼だよ。
ファーストルックは日本ではなじみがなかったみたいでイチは「何のこと?」って言っていたんだよね。でも私の姿を見て「自分の妻になってくれる人がこんな綺麗な人とか・・・」と言われたときはうれしかったわ。でもそのままキスしようとしたのはだめよね。
入場の音楽は知り合いの音楽家の人にお願いしたけどこっちは大変だったわ。音階が若干ずれるのでやっぱり聞いていて違和感があるのでそれをどう調整するかだったんだけど、さすがにプロの人達だと思ったわ。
自分がある程度のイメージで弾いてから話をした後、アレンジしてもらったんだけど、その時点でかなりの完成度だったからね。そのあと細かな調整をしてもらって納得いく感じになったんだよね。
どのくらいお礼をすればいいのかわからなかったんだけど、この曲を他でも使わせてもらえるのならお金はいらないと言われたのよね。さすがにある程度は払ったけど、ありがたかったわ。
ただイチはワーグナーの結婚行進曲を言ってきたのはちょっと驚いたわ。日本では使う人も結構いるらしいみたいだけど、あまり内容は意識していないのかしらね。
当日は参列者のことはさすがにふせておいたわ。なので入場のところだけ曲を弾いてもらって後は退出してもらったのよね。
あと、指輪交換の時の言葉を忘れないでよね、イチ。元の世界に戻っても絶対に忘れないから。なぜかイチが身震いしていたようなのは気のせいかな?
結婚式ではさらに神様の祝福をもらって驚いたわ。でもそれだけ祝福してくれたってことなのよね。イチと結婚できたことが神様に認めてもらえるというのはかなりうれしいわ。
披露宴ではルミナさんのスピーチはちょっと恥ずかしかったけど、そんなことがあったなあと懐かしかった。最初にあの二人に会わなかったらきっと違った人生になっていたかもしれないわ。今回来てくれてほんとにうれしかったわ。
そのあとの余興もかなり楽しかった。参列者の人達も最初はかなり緊張していたみたいだけど、最後の方はかなり打ち解けていたので良かった。まあ普通はなかなか会えない人も多かったから緊張するのも仕方が無いことだけどね。
でも夕べはかなり疲れたのよね。治癒魔法を使っていたとはいえ、まさか朝までとは思わなかったわ。まあ私も一緒に求めてしまったからしょうが無いんだけどね。
結婚式の翌日に改めて参加してもらった人達に挨拶に行った。いろいろとやったのでどうかと思ったんだけど、みんなとても楽しめたと言われてほっとしている。みんな建国祭まではこちらに滞在してから国や町に戻るようだ。
建国祭まではみんなと一緒に買い物や食事、祭りを楽しんだ。かなりの人数になるので全員と一緒に行動はできなかったけど、久しぶりに皆と色々と話ができて良かったよ。
さすがにクリスさん達や、ラクマニア様達、ジョニーファン様達は忙しそうだったので無理だったけどね。それなのに結婚式に参加してもらってほんとに申し訳なかったと思っている。
だけど、結婚式をやってほんとに良かった。こっちの世界に来て色々知り合った人たちに祝福してもらえるのは本当にうれしかった。そして結婚指輪を見てジェンと出会うことが出来て本当に良かったと思う。元の世界に戻ったとしてもまたジェンと巡り会いたいと思う。
~ルミナSide~
今回ジェニファーがジュンイチさんと結婚するという話をアキラとマラルから聞いて驚いたと同時に「やっとなのね。」と思ったのは私達だけじゃなかったはず。メイサンだけでなく二人も同じようなこと言っていたからね。
二人は結婚式には行くつもりみたいで、ジェニファーと連絡を取っているようだった。私たちもできれば行って直接祝福してあげたいのだけど、宿のことと費用がねえ。宿の運営をメイサン一人に任せるわけにもいかないし、行くのだったらメイサンも一緒に行きたいと思うのよね。
せっかくなのでお祝いの品だけでも渡してもらおうかと思っていたんだけど、マラルから一緒に行くなら移動の費用はかからないと言われてかなり悩んでしまうこととなった。さらにジェニファーからは宿は向こうで準備してくれると言われていると聞いてメイサンと相談する。
「そういえば一緒になって一度も旅行なんて行ったことがなかったな。式も簡単に挙げただけだったし、せっかくの機会だから行ってみるか?」
メイサンはかなり前向きに考えてくれたので、その間の宿の営業のことをどうするかという話になった。長期宿泊の人もいるので勝手に休むというわけにもいかないと悩んでいたら、その間だけは他の宿に移るけど戻ってきたらサービスしてくれよなと言ってくれた。ありがたいことだわ。まあ彼らもジェニファーのことは知っていたので、お祝いの言葉を伝えることになったのだけどね。
結局1ヶ月近くの収入がなくなるし、費用もかかるけど、そのくらいの蓄えは十分にあるので行くことに決めてからはすぐに準備に取りかかった。
結構な強行軍での移動だったみたいだけど、初めてこんなに遠くに出かけるせいか何もかもが目新しくて楽しかったわ。しかも一緒に行った人達はジェニファー達の知り合いが多かったことから話題も尽きなかったしね。途中の大きな町のアーマトを経由してからサクラの町まで一気に移動することになったけど、それほど退屈することもなかったわ。
サクラに到着すると、私たちが来たことに二人はかなり驚いていた。連絡してもらっているかと思ったのにどうやら詳細は秘密にしていたらしい。二人の幸せそうな様子を見てやってきて良かったと思ったわ。
宿も手配してくれていたのだけど、かなり豪華なところでちょっと驚いてしまった。もっと安いところでいいと言っても私の恩人だからかまわないと言って譲ってくれなかったのよね。せっかくなのでサクラの町の滞在を楽しむことにしたわ。
始めてこんなに大きな町に来たのでメイサンと二人で色々と見て回って色々と食べて回ってみた。宿屋の料理について色々と参考になったわ。
参加するだけだと思っていたのだけど、ジェンから「結婚式のパーティーで私のことについて思い出を話してほしい。」と言われてちょっと驚いたわ。私なんかでいいの?と思ったけど、「私がこっちに来て困ったときに一番助けてくれたのだからルミナしかいない。」と言われたらしょうが無いわね。おかげで考えるのに一日費やしてしまったわ。
結婚式とパーティーは驚きの連続だったわ。参列者の顔ぶれを見るととても場違いな感じがしたのだけど、頑張ってジェニファーとの思い出を話したわ。ジェニファーは泣きながら笑ってくれた。
参列者の方達もかなり身分の高そうな人もいたのだけど、かなり親しくしてくれてとても楽しかったわ。終わった後で参加した人達の肩書きを聞いて正直気を失いそうになってしまったのよね。どうやらあまり詳しく言うと遠慮してしまいそうだったと言うことで教えてくれなかったみたいなのよね。
メイサンなんかお酒を一緒に飲み交わしていた人がまさかハクセンの貴族様やカサス商会の偉い人達とは思っていなかったみたいでどうしようとかなり焦っていたのよね。だって、オカニウムに来たらうちの宿に泊めてやるからいつでもやってこいとか言っていたみたい。
あとでジェニファーに相談したら、そのあたりは気にしない人達だから大丈夫と言われて少し落ち着いていたけど、もし来たときはちゃんと泊めてやってくださいよと言われて顔を青くしていたのはちょっと面白かったわね。心配しなくてもうちなんかには来ないわよ。
建国祭もやっぱりオカニウムとは比べものにならないくらいの規模だったわ。始めて国王陛下の姿を見たけど立派な方だった。そういえば式に参加していたクリスさんと呼ばれていた方は元王子殿下だったのよね。そんなに気安く呼んでいるジュンイチさんには驚きだわ。
今回はちょっと無理してでもやってきて良かったわ。普通ではできないような経験がたくさんできたものね。この年になってこんなに色々新しい経験できるなんてなかなか無いと思うわ。
~マラルSide~
ジェンからやっと結婚するという連絡が入って驚いたと同時にやっとなのねと思ってしまったことはアキラも同意していた。せっかくだから時間がかかっても行ってみようと言うことになり、アキラと計画を立てていたら、父も結婚式に参加するという話を聞いて驚いた。どうやらカサス商会のメンバーも結婚式に参加するみたいで、それと合わせて支店長会議を行うことになったようだ。
せっかくなので一緒に行ってもかまわないと言われて正直助かったわ。やっぱり金額が結構な額になってくるからね。メイルミの宿の二人にも話をしたら一緒に行くことになったのよね。
サクラについてからせっかくだから用意していると言って連れてこられた宿は町でも高級な宿と言われるシルバーフローというところだった。私たちのために予約までしてくれていたみたい。
良階位の冒険者になったし、カサス商会とも特別契約して報酬をもらっているという話は聞いていたけど、ほんとに立派になったんだね。他にも護衛でやってきた冒険者やメイルミの二人も一緒に泊まることになって驚いていた。
このあとジェンから結婚式で手伝いをしてほしいと言われたけどもちろんすぐに承知したわ。何をするのかと思ったんだけど、最初にしたことは採寸だったので驚いた。結婚式ではジェンの結婚式衣装に合わせたものに着替えてほしいということみたい。
最初はどういうことなのかわからなかったけど、やることを聞いていくうちにこんなことをやるんだと驚きとともにわくわくしてきた。かなりの大役なので頑張らないといけないわねとアキラと二人で話していた。
用意してくれた衣装は正直このまま花嫁衣装になるんじゃないかと思うようなものだった。薄いピンクのドレスで、レースには細かな刺繍が施されていた。もちろんジェンが着る予定の服よりはランクは落ちるみたいだけどそれでも十分なものだ。
結婚式の後でその衣装をプレゼントされたときは正直驚いたわ。もし結婚するときはそのままこれを使うことができるわよね?
結婚式の当日は私たちも着飾ってからジェンのサポートをやった。かなり緊張したけどとても誇らしい気持ちだったわ。結婚式のイベントはとても楽しいものだった。ファーストルックと言ってジュンイチさんに花嫁衣装を見せたときはかなり面白かったわ。ジュンイチさんが言葉を失っていたからね。でもジェンに手を出そうとしてのはだめよね。気持ちはわかるけどね。
このあとの結婚式は聞いていたものとは全く違ったものだった。ブーケトスは残念ながらアキラにとられちゃったけど、代わりに小さなブーケをもらうことができた。私にも結婚相手は見つかるかなあ?
パーティーもとても楽しいものだった。なかなかこういうパーティーは行うことはしないんだけど、やったときの話を聞くとスピーチや参列者の紹介など堅苦しいものというものだった。
でも今回の結婚式は全く違っていた。ケーキカットにケーキバイトってお互いに支えあっていく決意みたいだけど、とてもうらやましかったわ。キャンドルサービスというのもとても神秘的で良かった。
あと驚いたのは参列者に余興をやってもらうことなのよね。私たちもジェンに伴奏を弾いてもらって歌を披露したけど、かなり偉い人みたいな人がやった魔法がすごくうまかったわ。
最後の方で一部は酒盛りになっていたけどね。なんかかなり貴重なお酒がいっぱい出てきたらしく、目の色を変えた人が結構いたのよね。
そうそう、クリストフ元王子殿下がいたのにもかなり驚いたわ。しかも彼がジュンイチさんの親友と言っていることが信じられないくらいだわ。王子と親友ってどんなことがあったのかしら。
結婚式の後はサクラのヤーマン建国祭まで楽しむことができてとても良かったわ。宿屋の料理も美味しかったし、部屋もとても素敵だった。もう一生の記念になるイベントだったわ。
~コーランSide~
今回のジュンイチさんたちの結婚式はなかなかすごかった。事前に進行の打ち合わせで話を聞いたときから衝撃を受けていたのだけれど、実際の内容を見てこれは絶対に商売になると確信した。
このような内容を専門に扱う部署を立ち上げて徐々に浸透させていけば十分な需要が出るのではないかと思う。もちろんこれだけの規模のパーティーをする需要はまだ少ないと思うが、小さなものでも需要はあるはずだ。
今回私がやった司会についても結構なスキルが必要だし、事前に色々と打ち合わせも必要だ。それを助言するだけでも十分な需要が見込めるだろう。
今回の結婚式ではせっかくだからと要所要所で撮影もさせてもらったのでそれを見せればイメージもしやすいだろう。
しかし二人の交友関係には驚いた。クリストフ王爵のことは知っていたんだが、まさか他の国の貴族達にもここまでの伝ができていたとは・・・。アルモニアのジョニーファン様なんて会えるだけでもかなりの名誉と言われている人なのに、そんな人が結婚式に参列してさらに余興まで披露するなんてとんでもないことだ。他に参加していた支店長達も最初は目を疑っていたからな。
さらにハクセンのラクマニア上位爵といえばハクセンでは5指に入る重鎮だ。それが家族で参加し、しかもその孫の二人が結婚式のイベントの手伝いをするなんて普通では考えられない。しかもラクマニア様本人が余興までやってくれるというのはおそらく他では見られないのではないだろうか?
ジュンイチさんから言われていたように、今回の参列者のことは基本的に秘密にしなければならないし、結婚式中の売り込みは御法度ということで自重しなければならなかったのは残念だったが、カサス商会のことを簡単にでも紹介できただけでも十分価値があるだろう。
それに式では簡単な挨拶もできたから十分だ。二人にはまず挨拶をすることすらできないからな。まさか一緒に酒を酌み交わすことまでできるとは思わなかった。しかし、あのお酒は美味しかったな。
結婚式の後の支店長会議でもかなり話が盛り上がった。参加できなかった支店長はちょっと悔しがっていたが、それはしょうが無いだろう。
支店長会議の後、二人と打ち合わせも行って、今後の方針も色々と決めることができた。特許料についての見直しや魔道具の価格についても良い条件で見直しができた。
インスタントラーメンはもう少しで特許期間が終わってしまうので他の参入が行われるのはわかっているが、かなりの地位を得られているのでまだしばらくは安泰だろう。調理道具などについても価格は安いがかなりの人気具合だ。
重量軽減バッグについては完全に独占状態となったのでまだ十分な利益は得られるだろう。これは他の魔道具の売り上げにもかなり貢献しているのでありがたい商品だ。
また今回の結婚式のことについても許可がもらえたのは大きい。この分野もまだ誰も手をつけていないことなので先行すればかなりの利益を得ることが期待できる。食事の提供と併せてクリストフ王爵とも提携してやってみるのもいいかもしれないな。
ほんとにジュンイチさんに知り合えてよかった。あのとき声をかけられていなかったら、もしジュンイチさんを利用しようと考えてしまっていたらおそらくここまでの関係は築けなかっただろう。今の関係を築けたことに感謝しなければならないな。
~クリストフ王爵Side~
今回のジュンイチ達の結婚式は楽しかった。結婚式や披露パーティーというのは儀式という面が多く、結婚するということはうれしいが、それほど楽しいというイベントではなかったんだが、それとは全く違っていた。
結婚式にもいろいろなイベントがあり、見ている私たちも楽しませてくれた。披露パーティーについてはさらに驚いた。主賓の二人が皆を楽しませるようにしており、さらに参列者も余興をすることで楽しませるということはすごい発想だったな。
スレイン達も「私たちもこんな感じでやりたかったなあ・・・」と言っていたくらいだからね。まあ反対意見を言う人もいるかもしれないけど、おそらくこのような結婚式は今後増えていくような気もする。カサス商会のメンバーが参加していたからね。
ただその場合の披露宴会場とか料理の提供についてはカサス商会と手を組むのは一つかもしれないな。今回の結婚式の料理はいろいろと参考になることが多かったからな。今度時間を作って話をしてみるかな。おそらくもう動いているはずだろうからね。
デルタは結婚式で出てきたお酒に目を輝かせていたな。今まで飲んでみたかったと思っていたお酒がかなり出てきていたらしいからね。最後はあのジョニーファン様やラクマニア様ともお酌しあって飲んでいたことを後で話すと青ざめていたのはおかしかった。
でもあの二人も全く気にしない感じで楽しんでいたのは驚きだ。とても聞いていた人物像とは違っていたからね。まああくまで私的なパーティーだったのでこのことを他で話すことは無粋というものだろう。
~ラクマニアSide~
今回の結婚式は初めて見る体験だった。今までの結婚式とは堅苦しいものばかりだったんだが、今回はほんとうに楽しかった。
孫二人の着飾った姿はほんとにかわいかったな。最初に二人にお願いがあると聞いたときは何をやらせるのかと思ってしまったぞ。二人はかなり緊張していたが、それでも後で聞いたときにはこんな大役を任せてもらって良かったと喜んでいた。着ていた服をもらえるとわかったときはかなりうれしそうにしていたからな。
披露宴の余興も良かったな。ファンのやつがあんなことをやるから対抗してこっそりとやっていた魔法のショーを披露することになってしまったではないか。まあ見ていた人達からもかなり好評だったからやった甲斐はあったがな。
出されたお酒も美味しかった。私でもなかなか手に入れられないお酒をあれだけ用意するというのもすごいことだ。お酒好きのルイアニアのやつもかなり興奮していたからな。
やつも平民とこんな感じで酒を酌み交わすなんて初めての経験だっただろう。「オカニウムに来たらうちに泊まりに来いよ。」と誘われましたよとおかしそうに言っていたからな。
肩書きを忘れてこんなに楽しめたのは久しぶりだな。昔ファンとはいつもこんな感じだったが、これだけハメを外して楽しめたのはもしかしたら学生時代以来かもしれないな。
~フェルマーSide~
今回ジュンイチが結婚するという話を聞いてどうするか悩んでいたところ、コーランさんから護衛依頼が入ってきた。護衛があるならやはり結婚式は無理かなと思っていたんだが、なんとオカニウムからサクラまでの護衛依頼だった。どうやら俺たちも結婚式に参加するか悩んでいるみたいだったので護衛を依頼してきたようだ。引退したクラーエルの二人にも声がかかったようだ。
もちろん断る理由もないので大急ぎで準備をしてオカニウムに護衛で移動した。このあとすぐに準備をしてオカニウムを出発し、アーマトでクラーエルの二人も合流してからサクラに向かった。
今回の宿はジュンイチ達が準備してくれた宿に泊まることになったんだが、たまに贅沢しようというときに泊まるところで驚いた。
結婚式に出て驚いたのは参加メンバーだ。憧れの優階位の冒険者である王家の剣のメンバーがいた。どうやら護衛を兼ねているという話だったんだが、他にも優階位のレベルと思われる人達もかなりいた。
どうもアルモニアとハクセンでもかなり重要な人物らしく、護衛の人達を見たときにはこれはかなわないと思ってしまう感じだった。
しかも建物の中は兵士が護衛についているし、建物の周りには良階位レベルの冒険者が護衛をしていたことにも驚いた。正直なところかなり場違い感を受けてしまったが、クラーエルの二人と一緒に割り切ることにした。
式やパーティーはとても楽しかった。王家の剣のメンバーの剣舞はすごかったし、魔法を使ったショーもかなり見応えがあった。結婚式ってこんなんだったか?という印象を受けたが、周りに聞いてもこんなのは初めて見ると言っていた。どうやらジュンイチ達が考えた内容らしい。
さすがにここまでは無理だけど、こんな感じの結婚式やパーティーならやってきた人も楽しめるかもしれないな。今度相談してみよう。そう思っていると他の二人も同じことを考えていたらしい。
~クーラストSide~
ジュンイチから結婚の話を聞いて驚いた。結婚を祝ってあげたい気持ちはあるんだが、やはり費用の問題が・・・。そう思っていると、なぜか役場から連絡が入ったのでアマニエルと二人で行ってみることにした。
話を聞くと、どうも護衛依頼が入ったようだ。カサス商会と言うことを聞いてどういうことかと思っていると、風の翼のフェルマーがやってきて説明してくれた。どうやらカサス商会の支店長達も結婚式に出るらしく、一緒に行くなら護衛としてついてこないかと言うことだった。願ってもないことだったのですぐに了承する。
風の翼がオカニウムから戻ってくるのを待って一緒にサクラを目指すことになった。嫁さんにはサクラのお土産を買って帰らないといけないな。
結婚式は正直驚きの連続だった。俺たちもこんな結婚式をすれば良かったと思ってしまったのは内緒だ。結婚式をする人も、参列者も楽しい結婚式というのはいいものだな。
ジュンイチとジェニファーもとても幸せそうだった。二人には治療をしてもらった恩もあるし、ちゃんとお祝いを言えて良かったよ。
式の後はサクラの観光をしていろいろとお土産も買っていくことができた。これで埋め合わせにはならないかもしれないけど、ジュンイチ達の幸せそうな話をするだけでも納得してくれるだろう。
~デイストリフSide~
北の遺跡の調査の後、ジョニーファン様に何度か調査結果の報告にいった。今回の調査結果にはかなり興味を引かれており、以前ジュンイチさんたちからの報告書と合わせて色々と議論を行っていた。ジョニーファン様とこれだけ色々と話ができるというのはとても名誉なことだったわ。
ある日突然、今度ヤーマン国の建国祭に行くので護衛についてきてくれと言われて驚いた。ジョニーファン様が?国外へ?
もともと行く予定ではなかったんだけど、反対する理由もないためすぐに行くことが決定した。まあジョニーファン様の言うことを反対できる人がそもそもそんなにいないからね。移動中も調査結果の話をしたいと言うことで3人が護衛につくこととなったようだ。
飛行艇なので思ったよりも早く到着できたのだけど、なぜかサクラに到着すると、王宮に行く前に別行動をすると言って出て行かれてしまった。慌てて追いかけると、認識阻害の魔道具を使って何やら小さなアパートへと入って行った。
そして部屋の前に立ってノックをすると、中から見たことがある顔が現れた。前に遺跡の調査でやってきたジュンイチだった。かなり驚いていたが、周りの目を気にしたのかすぐに部屋に入れてくれた。
どうやら今回この二人が結婚することになったらしく、その結婚式に参加することが本当の目的だったようだ。さすがにジョニーファン様と数日にわたり話をしただけのことはあるわね。あのあとでジョニーファン様から話を聞いたときは驚いたものだわ。
結婚式ではなんとジョニーファン様が余興と言って魔法を見せていた。正直かなり驚いたわ。こんな姿はおそらく私たち以外誰も見たことがないのではないかな?そして長年のライバルであり同士であると言われていたハクセンのラクマニア様までが同じように余興をやっていたのにはさらに驚いた。
このパーティーでは正直身分や立場なんてものはなく皆が平等に楽しんでいた。こんな空間を作る二人はどれだけすごいのだろう?
~ラクマニア護衛Side~
正直言って何が起きたのか分からなかった。目の前のラクマニア様は本物なのだろうか?もう一人一緒に参加した護衛も驚いて固まっている。
確かに好々爺なラクマニア様は見たことがある。しかし、それ以外では近寄り難い雰囲気を身に纏っているのが普通だ。
目の前にいるのは余興を披露し、ただの平民と思われる者たちとも一緒になってお酒を酌み交わし、今回結婚する二人の話をしている。平民にも偏見なく対応することは知っているが、このような姿は初めてだ。
パーティの後で今回のことは他言無用で頼むと言われたが言っても誰も信じないだろう。そもそも名誉爵位はあるとはいえ、他国の一平民の結婚式に出たと言う時点で「そんなことがあるわけがない」と笑われてしまうよな。
食事はさせてもらったが、残念ながら護衛のこともあるのでお酒は飲めなかった。ただ式の後で、これは非番の時に飲んで下さいとお酒をもらうことができてとてもうれしかった。しかももらったお酒はなかなか手に入らないレベルのものだった。
結婚式の日程が近づいてきてぼちぼちと参列者が王都にやってきた。地球にいたときは時間がかかっても数日あれば世界中のだいたいのところに行ける感じだったんだけど、こっちではそういうわけではないのである程度余裕を持った行程でやってくることが普通のようだ。
それでもかなり強行軍でやってきているようなので結構大変そうだった。まさかそこまで参加してくれるとは思ってなかったからなあ・・・。
他にも案内を出した人からの手紙も届いている。参加したかったけどやっぱり日程の問題などもあり来ることができなかったと書かれている。まあそれはしょうが無いだろう。移動だけで1ヶ月とかかかってしまうところもあるからね。
最初にやってきたのはラクマニア様だった。到着したとの連絡が入ったので宿泊している宿にお邪魔することにしたんだけど、さすがは要人が泊まっている宿屋だけあって立派なところだった。建物自体はシルバーフローとそこまで変わらない感じだったけど、内装が豪華だし、警備もしっかりしている。まあ今の警備はさらに特別なんだろうけどね。
建物の敷地に入るところから警備が厳しくて、身分証明証の提示を求められてしまう状態だ。この後フロントで連絡を取ったけど、そこでもかなり待たされることになってしまった。確認が取れた後は、係の案内で部屋まで移動してやっと会うことができたという感じだ。
部屋に入ると、久しぶりに会う孫のソラニアくんと娘のクリスティファの二人が飛びついてきて大変だった。結局このあとも話が長くなり、夕食まで一緒に食べることになってしまったよ。
あの後のことを聞くと、対立していたハックツベルト上位爵も若干歩み寄りを見せてきたらしく、国の改革が前に進み始めたらしい。大きな派閥の二つが平民の登用を前向きに進める意向を示したため、他の派閥も反対できなくなってきたらしい。
おそらく自分たちのことが意識が変わった要因の一つだろうとお礼を言われてちょっと照れくさかったよ。まあ時代の流れを考えるとある程度妥協していかないと落ちぶれてしまうのは反対していた人達になるだろうからね。
その二日後にはアルモニア国の一行もやってきたようなんだけど、ジョニーファン様がいきなりうちにやってかなり驚いた。本当は王宮に挨拶に行くはずだったらしいのに、一行から離れてやってきたみたい。いいのか?
結局この日はずっと話をしていたせいで夕食も一緒に食べて夜になってから帰って行った。普通に自分たちが食べるものを出したんだけど良かったのかな?
このときジョニーファン様の護衛についていたのは北の遺跡の調査の時の隊長のサルマン・クリファーさんと副官のデイストリフさん、ヤルマンさんの3人だった。遺跡の調査が終わった後は王都に戻り、ジョニーファン様と一緒にいろいろと遺跡の調査結果の整理をしていたらしい。
今回のヤーマン国への移動の時の警護にこの3人がつくことになったらしいけど、ジョニーファン様からの話だと普通の兵士だと学術的な話ができなくて退屈だからと言うことだった。
あと驚いたのはサルマンさんとデイストリフさんが結婚していたことだ。ヤルマンさんからこっそり聞いた話だと、ずっと慕っていたデイストリフさんから告白して付き合うことになったみたいだ。そのあとはトントン拍子に話が進んで結婚することになったようだ。お祝いを言うとかなり照れている二人がなんとも・・・。
さらに翌日はラクマニア様から再度呼び出されてジョニーファン様を含めていろいろと話をすることになってしまった。二人がそろうと話が終わらず、かなり遅くなってしまったこともあり、結局その日は泊まっていくことになってしまったよ。近いからいいと断っても、明日の朝もまだ話したいと言われてはどうしようもない。
その階を全部借り切っていたみたいで、自分とジェニファーはかなり立派な部屋の鍵を渡される。いかにも高級ホテルのスイートルームという感じなんだが、寝るだけというのがちょっともったいない感じだ。
せっかくなのでお風呂を堪能し、夜景を見ながらジェンと話をしてくつろいだけどね。こういうところに泊まることもそうそう無いだろうからね。さすがに制約はしたよ・・・。
ちなみにこの会合は国王陛下も知ることとなったらしく、あとで説明を求められてしまった。「建国祭を出汁にされたのか?」とちょっと落ち込んでいたみたい。ジョニーファン様が建国祭にやってくるというのはかなりの誉れだったようだったからね。彼が国から出ることがほぼ無かったらしく、今回は”あの”ジョニーファン様がわざわざやってきていると話題になっていたようだ。
ジョニーファン様も認識阻害の魔道具や魔法を使っているみたいで行動は把握されていなかったようなのでまだ大丈夫だったけど、うちにやってきたとばれてたらしゃれにならないよ。
そのあと風の翼達の護衛とともにオカニウムのカサス商会の支店長フラールさんやアーマトの支店長のユニスさん、アキラさんやマラルさんもやってきてジェンは久しぶりの再会に喜んでいた。
驚いたのはメイサンさんとルミナさん夫妻も一緒にやってきたことだ。案内は出していたんだけど、宿は知り合いにお願いしてやってきてくれたらしい。これにはジェンはかなり感激していた。
本人達はこんな時くらいしか王都にやってくる機会もないからと決断したようだ。移動費はカサス商会が持ってくれるということもあってやってきたらしい。
結局今回の結婚式に参加するのはかなりの人数になってしまった。
王都からはクリスさん関係の5人(クリス、スレイン、アルド、イント、デルタ)、カサス商会の5人(コーラン、サクラ支店長カルニア、魔道具部門のトルイト、錬金部門のカルク、調合部門のサルファニー)。
アルモニアからはジョニーファン様、護衛の3人(サルマン、デイストリフ、ヤルマン)。
ハクセンからはラクマニア様の家族6人(ラクマニア、奥さんのスレンダ、次男のルイアニア、奥さんのタスマール、息子のソラニア、娘のクリスティファ)と護衛の2人(面識はあるくらいの人だが、護衛のために参加)。
他のカサス商会から3人(オカニウム支店長フラール、アーマト支店長ユニス、ルイサレム支店長ステファー)。
オカニウムから4人(アキラ、マラル、メイサン、ルミナ)。
アーマトからは風の翼の3人(フェルマー、カルマ、ニック)、クラーエルの2人(クーラスト、アマニエル)。
あと、式の護衛をかねて参加してもらったのは王家の剣の4人(ランドリア、マルニキア、デルミスト、ミスカルト)だ。
実は国王陛下と王妃殿下も参加したいようなことを言っていたらしいけど、さすがにそれは断らせてもらった。いくら形式上の爵位があると言ってもそれはちょっとまずいよ・・・。
なので基本的に結婚式は非公式に行っている。まあ一般人の結婚式という装いなんだけどね。なので警備をお願いしている冒険者とかにも詳細はふせている状態だ。
皆が来る前に結婚式の準備はほぼ終わらせておいてよかった。ただ結婚式でやることをいくつかお願いしていたのでその段取りだけは説明しておいたけどね。ラクマニア様の孫のソラニア君とクリスティファちゃんには結構重要な役をお願いしたからね。
そしてついに結婚式の日がやってきた。二日前まで雨が降っていたので心配だったんだけど、今日はいい天気になって良かった。青空に雲が少し広がって秋晴れという感じ。気温もちょっと涼しいという位なのでちょうどいい。
いろいろと考えて準備はしてきたけど、こっちの結婚式とは進行が違うのでトラブルがあるかもしれないけど、それはそれでしょうが無いと思うしかない。地球の結婚式の内容を加えたのでこっちの人にはなじみはないだろうけどまあなんとかなるかな?
式では通常は神父が決まった方法で取り仕切っているんだけど、簡単な流れの説明や誘導をしてもらう人を準備してもらった。神父もかなり前向きに考えてくれたので良かったよ。
ただ結婚式の内容については自分が知っている内容とジェンの知っている内容で違いがあったので色々と話をしてやるものを決めていった。やっぱり国によってやる内容が違っているのはしょうが無いところかな?自分も親戚の結婚式に数回しか出たことがないからねえ。教会式に出たのも2回だけだ。
今回式を行うのはサクラでは結構な大きさの教会だ。普通はなかなか借りることはできないんだけど、一応爵位もあるのでなんとかなった感じ。もちろん寄付という名目の使用料を支払わなければならなかったけどね。
150人くらいは入れそうな教会なので、正直ここまで大きくなくてもという気もするんだけど、警備のことを考えると結局この規模になってしまった。数十人の規模のところだと建物内も狭くなるし、建物も隣接しているからね。これはクリスさんたちにも相談して決めたので間違いは無いだろう。
教会は5柱の神を信仰しているところで、神殿の正面には高さ5キヤルドくらいの大きさの5柱の神の像が設置されている。神の序列はないので、並んでいる順番は定期的に入れ替えられるらしい。壁にはいろいろな神話に関する彫刻とか絵画が設置されていてかなり荘厳な感じ。
地球の教会にあるようなステンドグラスはないけど、小さな窓がいくつも作られていてそれが模様のようになって綺麗だ。窓から直接日が差すようにはなっていなくて、壁や天井を照らすようになっているのでまぶしいというわけでもない。
式典にも使われるせいか、全体的にスペースがかなり広くとられており、中央に5キヤルドくらいの幅の広めの通路があり、祭壇の前もかなり広いスペースが作られている。席は5人くらいは十分に座ることのできる席が中央の通路の両側に設置されていて、壁側にもかなりのスペースがある。人が多いときにはイスを追加できるらしい。
兵士には建物の廊下や出入口を警備してもらい、冒険者の人達には敷地の周りの警備をお願いしている。車で来る参列者は建物の入口まで入ってもらい、テントの中で受付をしてもらうようにしているので誰が来たのかはすぐにはわからないようにした。
それほど人数がいないこともあり、受付は自分が行っている。男の方の準備はそれほどかからないからね。2時頃にやってくるように言っていたので、車や歩きでやってきた参列者を出迎えていく。みんなちゃんとした正装を準備してくれていたようだ。
参列者の人達には参加する人達のことは話したけど、さすがにかなり驚いていた。クリスさんたちのことでもかなり驚いていたけど、ジョニーファン様の名前を聞いたときはかなり青ざめていたからね。
ジョニーファン様やラクマニア様にも失礼があるかもしれないことを説明したところ、この式に参加する時点で無礼講と考えているから問題ないとは言われている。
ジェンの髪のセットや衣装の着付けは専門の人にお願いした。そしてそれとは別にジェンはアキラとマラルにも手伝いをお願いしていた。二人にはこっちで用意した衣装に着替えてもらっていろいろとやってもらうらしい。アメリカではそんな風に友人にいろいろやってもらうことが多いようだ。
やってきた人達には簡単な軽食を準備した部屋で待機してもらう。ここの準備はクリスさんの店から手伝いに来てもらった。ただ何かあっても大変なので、事前準備だけで給仕はなしという仕様だ。これは参列者の人達にも了解を取っている。
全員の受け付けを終了したところで、自分も準備を済ませてから教会の中庭へ。どうもファーストルックと言われるもので、ジェンが花嫁姿を先に見せてくれるようだ。参列者達は建物の窓から見ているんだけど、こっちは後ろ向きに立って待つように言われているのでかなり緊張する。
しばらく待っていると、少し足音が聞こえてきた。
「イチ、こっち向いていいよ。」
振り返ると純白のウエディングドレスを着たジェンの姿が目に入ってきた。スカートはふんわりした形のもので細かな刺繍が色々と入っている。ベールはかなり長くてマラルさんとアキラさんが裾を持っている。ちなみにマラルさんとアキラさんは薄いピンクのおそろいのドレスに着替えていた。
「・・・・」
きれいだ・・・。今日、こんな綺麗な人と夫婦になれるんだな・・・。
「どう?」
「うん・・・とても似合ってる。
とても・・・
自分の妻になってくれる人がこんな綺麗な人とか・・・」
「あ、ありがとう。」
ついキスをしようとして止められてしまった。
「みんなが見てるし、するのはこの後でしょ!!」
そうだった・・・いかんいかん、我を忘れてしまいそうになっていた。
遠くから見ていたみんなが、「まだ早いぞ~~~!!」と突っ込んできた。マラルさんとアキラさんも苦笑いしている。
このあと参列者には教会に移動してもらい、自分たちは教会正面の扉の前に移動する。このときにかわいく着飾ったソラニアくんとクリスティファちゃんの他にマラルさんとアキラさんにも一緒に来てもらう。
パパパパーーーーン!!パパパパーーーーン!!!
ドアの中から聞いたことのある音楽が流れてきたところでドアが開いた。教会にはパイプオルガンのような楽器があり、ジェンが知り合いになった演奏家の人に弾いてもらっている。
こっちではもちろんなじみのない音楽なんだけど、自分たちにはなじみのある曲だ。こっちとは音程が若干違うので編曲するのが結構大変だったようだけど、かなり近い感じに仕上がったようだ。
自分としては「タンタッカタ~ン」(ワーグナーの結婚行進曲)で始まる方が印象にあったんだけど、ジェンからそれは悲劇だからと反対されて「パパパパーン」(メンデルスゾーンの結婚行進曲)で始まる音楽になったのである。
先頭にアキラさんが歩き、そのうしろにクリスティファちゃんが花びらを蒔きながら歩いてもらい、マラルさんは自分たちの後ろ、そのあとにソラニア君が自分たち二人の結婚指輪を納めた箱を持ってきてもらう。
席には一人または二人ずつが通路に沿って立っており、拍手をしながら自分たちを祝福してくれた。その中には着飾った孫達を見てかなり顔が緩んでいるラクマニア様の姿があった。
ゆっくりと歩いて祭壇の上までやってきたところでアキラさんとマラルさんはジェンのドレスやベールの手入れをしてから子ども達と一緒に席に戻ってもらう。
神父からの説教があるが、前にも聞いたように朗読方法がちょっと特殊なので正直何を言っているのかわからない。ほんとにお経みたいだよなあ・・・。
このあと運んでもらった指輪を手に取りジェンの指にはめるが、こっちの作法に則ってジェンに声をかける。
「ジェン、これからもよろしくね。これからも二人で楽しんでいこう。」
そのあとジェンから自分の指に指輪をはめてもらう。
「イチ、もう絶対に私から逃げられないからね。覚悟してよ。」
なんかジェンがちょっと怖い感じなんだけど、気のせいだよね?
このあとこちらの様式にのっとり宣誓をする。
「「私たちは永遠の愛を神の前に誓います!!」」
宣誓をするとなぜかあたりが明るくなった。驚いていると祭壇にあったカムヒ様の像が光っていた。どういうこと?
「カムヒ様から祝福を受けたようです。二人の結婚は間違いなく神に認められました。」
神父からの言葉の後、参列者から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。どうやら神様が祝福をくれたらしい。あとで聞いたところ、すべてではないが、結婚した二人にカムヒ様からの祝福がもらえることがあるらしい。
「それでは誓いの口づけを。」
神父さんの宣言に後、ジェンと向かい合ってからベールを上げでジェンにキスをする。こっちではないイベントなので、みんながちょっと驚いているようだ。
一通り式が終わったところで、中央の通路を抜けて退場する時に全員からフラワーシャワーを受けながらドアから外に出る。そして教会の中庭に移動してからブーケトスを行うこととなった。
もちろんこっちではない風習なので参列者の人達に説明してから独身の女性に参加してもらうことになった。ただ独身の女性はそれほどいないけどね。アキラさんとマラルさんともうすぐ結婚する予定の王家の剣のミスカルトさんとマルニキアの4人だけだ。
ジェンがブーケを投げるとアキラさんがしっかりとキャッチしていた。「次は私か~~~!!」とうれしそうにしていた。他の3人には小さなブーケをプレゼントする。
少し参列者の人達と話をした後、バスのような車に分乗してからクリスさんの店に移動する。店でも先に皆に会場に入ってもらい、会場の入口で案内を待つ。
しばらくすると中からコーランさんの声が聞こえてきた。披露宴の進行で誰かいい人がいないかとコーランさんに尋ねたら「私がしますよ。」と立候補してくれたのでそのままお願いしたのである。
「本日結婚いたしましたジュンイチさん、ジェニファーさんが入場しますので、盛大な拍手をお願いします。」
ここでもアキラさんとマラルさんに先導してもらって入場。一段高いところに用意してもらった席に着くとコーランさんからの案内が始まる。
「それではこれよりジュンイチさん、ジェニファーさんの結婚披露宴を始めさせてもらいます。僭越ながら司会は私、カサス商会のコーランが務めさせていただきます。」
まずはコーランさんから簡単な祝辞の後、ジョニーファン様からも簡単な祝辞と乾杯の発声をしてもらう。
それから事前にお願いしていたスピーチという感じで自分のことはクリスさん、ジェンのことはルミナさんに少し話してもらう。出会ったときの印象などを聞いていると、そんなこともあったなあ・・・と懐かしく思ってしまった。
一通りの祝辞などが終わったところで皆に見守られながらケーキカットを行い、ファーストバイトという恥ずかしいイベントまでやってしまったよ。ジェンがノリノリだったからね。みんな何事かと思っていたようだが、趣旨がわかってかなり盛り上がっていた。ジェンにはちゃんと食べさせたんだけど、ジェンは予想通り半端ないほどのケーキを載せてきてしゃれにならなかったよ。
ケーキを配った後、同じようなことをしている夫婦もいたのは見なかったことにしておいた。うん、仲がいいね。
このあといったん退場はしなかったけど、キャンドルサービスなどもやってみた。これも何事かと驚いていたようだ。最後に席にある大きなハート型になる蝋燭に火をつけてキャンドルサービスも無事に終了した。
途中参列者の人達と色々話をしたりしていたんだけど、披露宴に参加された人たちにも何か余興をしてもらおうとお願いすると、王家の剣のメンバーが剣舞をやってくれたり、アキラさんとマラルさんが歌ってくれたりと結構盛り上がった。あまりこういう余興をやることはないようだったのでかなり珍しいのだろう。
ジョニーファン様は魔法を使った隠し芸のようなことをやってくれて皆驚いていた。それに対抗意識を燃やしたらしいラクマニア様も見事な魔法を披露していた。
最後に皆への挨拶で締めて、2時間近くの披露宴を終了する。出口でお礼のお菓子を渡してから全員を見送った。残ったクリスさんたちにお礼を言ってから自分たちは予約しておいたシルバーフローに移動する。
部屋に戻ってから服を着替えてやっと落ち着くことができた。これで晴れて夫婦になったんだなあ・・・とかなり感慨深い。
そのあとはとても甘い夜を過ごしたよ。うん、気がついたら朝だったというのは気のせいにしておこう。治癒魔法を駆使したのは秘密だ。
ちなみに結婚が認められたことで、身分証明証の婚姻のところにジェニファーの名前が書かれていた。なんか気恥ずかしいな。
そしてスキルにカムヒの祝福が追加され、そのせいもあって神の祝福のレベルがさらに上がっていた。効果は”物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2”である。
能力吸収上昇といってもいままでの経験から考えるとそれほど強力なものではない感じなので急に能力が上がるわけではないんだよね。まあ魔術関係はカムヒの祝福との相乗効果で今までよりは上がりやすくはなっているというくらいに考えておいた方がいいだろう。
~ジェンSide~
今日は私たちの結婚式だ。いろいろ大変だったけど、イチと一緒に色々と考えるのも楽しかった。教会の人達やクリスさんの店の人達、コーランさんたちも色々協力してくれて助かったわ。コーランさんは自分たちが言う内容にかなり驚いていたけどね。いろいろと詳しく聞いていたのできっと何か商売にするつもりね。
教会に着いてからアキラとマラルにも手伝ってもらって準備に取りかかった。アキラとマラルにも衣装は準備していたので着替えてもらったんだけど、なかなかいい感じに似合っていて良かった。あとでその衣装はそのまま持って帰っていいというとかなり驚いていたけどね。手伝ってもらうお礼だよ。
ファーストルックは日本ではなじみがなかったみたいでイチは「何のこと?」って言っていたんだよね。でも私の姿を見て「自分の妻になってくれる人がこんな綺麗な人とか・・・」と言われたときはうれしかったわ。でもそのままキスしようとしたのはだめよね。
入場の音楽は知り合いの音楽家の人にお願いしたけどこっちは大変だったわ。音階が若干ずれるのでやっぱり聞いていて違和感があるのでそれをどう調整するかだったんだけど、さすがにプロの人達だと思ったわ。
自分がある程度のイメージで弾いてから話をした後、アレンジしてもらったんだけど、その時点でかなりの完成度だったからね。そのあと細かな調整をしてもらって納得いく感じになったんだよね。
どのくらいお礼をすればいいのかわからなかったんだけど、この曲を他でも使わせてもらえるのならお金はいらないと言われたのよね。さすがにある程度は払ったけど、ありがたかったわ。
ただイチはワーグナーの結婚行進曲を言ってきたのはちょっと驚いたわ。日本では使う人も結構いるらしいみたいだけど、あまり内容は意識していないのかしらね。
当日は参列者のことはさすがにふせておいたわ。なので入場のところだけ曲を弾いてもらって後は退出してもらったのよね。
あと、指輪交換の時の言葉を忘れないでよね、イチ。元の世界に戻っても絶対に忘れないから。なぜかイチが身震いしていたようなのは気のせいかな?
結婚式ではさらに神様の祝福をもらって驚いたわ。でもそれだけ祝福してくれたってことなのよね。イチと結婚できたことが神様に認めてもらえるというのはかなりうれしいわ。
披露宴ではルミナさんのスピーチはちょっと恥ずかしかったけど、そんなことがあったなあと懐かしかった。最初にあの二人に会わなかったらきっと違った人生になっていたかもしれないわ。今回来てくれてほんとにうれしかったわ。
そのあとの余興もかなり楽しかった。参列者の人達も最初はかなり緊張していたみたいだけど、最後の方はかなり打ち解けていたので良かった。まあ普通はなかなか会えない人も多かったから緊張するのも仕方が無いことだけどね。
でも夕べはかなり疲れたのよね。治癒魔法を使っていたとはいえ、まさか朝までとは思わなかったわ。まあ私も一緒に求めてしまったからしょうが無いんだけどね。
結婚式の翌日に改めて参加してもらった人達に挨拶に行った。いろいろとやったのでどうかと思ったんだけど、みんなとても楽しめたと言われてほっとしている。みんな建国祭まではこちらに滞在してから国や町に戻るようだ。
建国祭まではみんなと一緒に買い物や食事、祭りを楽しんだ。かなりの人数になるので全員と一緒に行動はできなかったけど、久しぶりに皆と色々と話ができて良かったよ。
さすがにクリスさん達や、ラクマニア様達、ジョニーファン様達は忙しそうだったので無理だったけどね。それなのに結婚式に参加してもらってほんとに申し訳なかったと思っている。
だけど、結婚式をやってほんとに良かった。こっちの世界に来て色々知り合った人たちに祝福してもらえるのは本当にうれしかった。そして結婚指輪を見てジェンと出会うことが出来て本当に良かったと思う。元の世界に戻ったとしてもまたジェンと巡り会いたいと思う。
~ルミナSide~
今回ジェニファーがジュンイチさんと結婚するという話をアキラとマラルから聞いて驚いたと同時に「やっとなのね。」と思ったのは私達だけじゃなかったはず。メイサンだけでなく二人も同じようなこと言っていたからね。
二人は結婚式には行くつもりみたいで、ジェニファーと連絡を取っているようだった。私たちもできれば行って直接祝福してあげたいのだけど、宿のことと費用がねえ。宿の運営をメイサン一人に任せるわけにもいかないし、行くのだったらメイサンも一緒に行きたいと思うのよね。
せっかくなのでお祝いの品だけでも渡してもらおうかと思っていたんだけど、マラルから一緒に行くなら移動の費用はかからないと言われてかなり悩んでしまうこととなった。さらにジェニファーからは宿は向こうで準備してくれると言われていると聞いてメイサンと相談する。
「そういえば一緒になって一度も旅行なんて行ったことがなかったな。式も簡単に挙げただけだったし、せっかくの機会だから行ってみるか?」
メイサンはかなり前向きに考えてくれたので、その間の宿の営業のことをどうするかという話になった。長期宿泊の人もいるので勝手に休むというわけにもいかないと悩んでいたら、その間だけは他の宿に移るけど戻ってきたらサービスしてくれよなと言ってくれた。ありがたいことだわ。まあ彼らもジェニファーのことは知っていたので、お祝いの言葉を伝えることになったのだけどね。
結局1ヶ月近くの収入がなくなるし、費用もかかるけど、そのくらいの蓄えは十分にあるので行くことに決めてからはすぐに準備に取りかかった。
結構な強行軍での移動だったみたいだけど、初めてこんなに遠くに出かけるせいか何もかもが目新しくて楽しかったわ。しかも一緒に行った人達はジェニファー達の知り合いが多かったことから話題も尽きなかったしね。途中の大きな町のアーマトを経由してからサクラの町まで一気に移動することになったけど、それほど退屈することもなかったわ。
サクラに到着すると、私たちが来たことに二人はかなり驚いていた。連絡してもらっているかと思ったのにどうやら詳細は秘密にしていたらしい。二人の幸せそうな様子を見てやってきて良かったと思ったわ。
宿も手配してくれていたのだけど、かなり豪華なところでちょっと驚いてしまった。もっと安いところでいいと言っても私の恩人だからかまわないと言って譲ってくれなかったのよね。せっかくなのでサクラの町の滞在を楽しむことにしたわ。
始めてこんなに大きな町に来たのでメイサンと二人で色々と見て回って色々と食べて回ってみた。宿屋の料理について色々と参考になったわ。
参加するだけだと思っていたのだけど、ジェンから「結婚式のパーティーで私のことについて思い出を話してほしい。」と言われてちょっと驚いたわ。私なんかでいいの?と思ったけど、「私がこっちに来て困ったときに一番助けてくれたのだからルミナしかいない。」と言われたらしょうが無いわね。おかげで考えるのに一日費やしてしまったわ。
結婚式とパーティーは驚きの連続だったわ。参列者の顔ぶれを見るととても場違いな感じがしたのだけど、頑張ってジェニファーとの思い出を話したわ。ジェニファーは泣きながら笑ってくれた。
参列者の方達もかなり身分の高そうな人もいたのだけど、かなり親しくしてくれてとても楽しかったわ。終わった後で参加した人達の肩書きを聞いて正直気を失いそうになってしまったのよね。どうやらあまり詳しく言うと遠慮してしまいそうだったと言うことで教えてくれなかったみたいなのよね。
メイサンなんかお酒を一緒に飲み交わしていた人がまさかハクセンの貴族様やカサス商会の偉い人達とは思っていなかったみたいでどうしようとかなり焦っていたのよね。だって、オカニウムに来たらうちの宿に泊めてやるからいつでもやってこいとか言っていたみたい。
あとでジェニファーに相談したら、そのあたりは気にしない人達だから大丈夫と言われて少し落ち着いていたけど、もし来たときはちゃんと泊めてやってくださいよと言われて顔を青くしていたのはちょっと面白かったわね。心配しなくてもうちなんかには来ないわよ。
建国祭もやっぱりオカニウムとは比べものにならないくらいの規模だったわ。始めて国王陛下の姿を見たけど立派な方だった。そういえば式に参加していたクリスさんと呼ばれていた方は元王子殿下だったのよね。そんなに気安く呼んでいるジュンイチさんには驚きだわ。
今回はちょっと無理してでもやってきて良かったわ。普通ではできないような経験がたくさんできたものね。この年になってこんなに色々新しい経験できるなんてなかなか無いと思うわ。
~マラルSide~
ジェンからやっと結婚するという連絡が入って驚いたと同時にやっとなのねと思ってしまったことはアキラも同意していた。せっかくだから時間がかかっても行ってみようと言うことになり、アキラと計画を立てていたら、父も結婚式に参加するという話を聞いて驚いた。どうやらカサス商会のメンバーも結婚式に参加するみたいで、それと合わせて支店長会議を行うことになったようだ。
せっかくなので一緒に行ってもかまわないと言われて正直助かったわ。やっぱり金額が結構な額になってくるからね。メイルミの宿の二人にも話をしたら一緒に行くことになったのよね。
サクラについてからせっかくだから用意していると言って連れてこられた宿は町でも高級な宿と言われるシルバーフローというところだった。私たちのために予約までしてくれていたみたい。
良階位の冒険者になったし、カサス商会とも特別契約して報酬をもらっているという話は聞いていたけど、ほんとに立派になったんだね。他にも護衛でやってきた冒険者やメイルミの二人も一緒に泊まることになって驚いていた。
このあとジェンから結婚式で手伝いをしてほしいと言われたけどもちろんすぐに承知したわ。何をするのかと思ったんだけど、最初にしたことは採寸だったので驚いた。結婚式ではジェンの結婚式衣装に合わせたものに着替えてほしいということみたい。
最初はどういうことなのかわからなかったけど、やることを聞いていくうちにこんなことをやるんだと驚きとともにわくわくしてきた。かなりの大役なので頑張らないといけないわねとアキラと二人で話していた。
用意してくれた衣装は正直このまま花嫁衣装になるんじゃないかと思うようなものだった。薄いピンクのドレスで、レースには細かな刺繍が施されていた。もちろんジェンが着る予定の服よりはランクは落ちるみたいだけどそれでも十分なものだ。
結婚式の後でその衣装をプレゼントされたときは正直驚いたわ。もし結婚するときはそのままこれを使うことができるわよね?
結婚式の当日は私たちも着飾ってからジェンのサポートをやった。かなり緊張したけどとても誇らしい気持ちだったわ。結婚式のイベントはとても楽しいものだった。ファーストルックと言ってジュンイチさんに花嫁衣装を見せたときはかなり面白かったわ。ジュンイチさんが言葉を失っていたからね。でもジェンに手を出そうとしてのはだめよね。気持ちはわかるけどね。
このあとの結婚式は聞いていたものとは全く違ったものだった。ブーケトスは残念ながらアキラにとられちゃったけど、代わりに小さなブーケをもらうことができた。私にも結婚相手は見つかるかなあ?
パーティーもとても楽しいものだった。なかなかこういうパーティーは行うことはしないんだけど、やったときの話を聞くとスピーチや参列者の紹介など堅苦しいものというものだった。
でも今回の結婚式は全く違っていた。ケーキカットにケーキバイトってお互いに支えあっていく決意みたいだけど、とてもうらやましかったわ。キャンドルサービスというのもとても神秘的で良かった。
あと驚いたのは参列者に余興をやってもらうことなのよね。私たちもジェンに伴奏を弾いてもらって歌を披露したけど、かなり偉い人みたいな人がやった魔法がすごくうまかったわ。
最後の方で一部は酒盛りになっていたけどね。なんかかなり貴重なお酒がいっぱい出てきたらしく、目の色を変えた人が結構いたのよね。
そうそう、クリストフ元王子殿下がいたのにもかなり驚いたわ。しかも彼がジュンイチさんの親友と言っていることが信じられないくらいだわ。王子と親友ってどんなことがあったのかしら。
結婚式の後はサクラのヤーマン建国祭まで楽しむことができてとても良かったわ。宿屋の料理も美味しかったし、部屋もとても素敵だった。もう一生の記念になるイベントだったわ。
~コーランSide~
今回のジュンイチさんたちの結婚式はなかなかすごかった。事前に進行の打ち合わせで話を聞いたときから衝撃を受けていたのだけれど、実際の内容を見てこれは絶対に商売になると確信した。
このような内容を専門に扱う部署を立ち上げて徐々に浸透させていけば十分な需要が出るのではないかと思う。もちろんこれだけの規模のパーティーをする需要はまだ少ないと思うが、小さなものでも需要はあるはずだ。
今回私がやった司会についても結構なスキルが必要だし、事前に色々と打ち合わせも必要だ。それを助言するだけでも十分な需要が見込めるだろう。
今回の結婚式ではせっかくだからと要所要所で撮影もさせてもらったのでそれを見せればイメージもしやすいだろう。
しかし二人の交友関係には驚いた。クリストフ王爵のことは知っていたんだが、まさか他の国の貴族達にもここまでの伝ができていたとは・・・。アルモニアのジョニーファン様なんて会えるだけでもかなりの名誉と言われている人なのに、そんな人が結婚式に参列してさらに余興まで披露するなんてとんでもないことだ。他に参加していた支店長達も最初は目を疑っていたからな。
さらにハクセンのラクマニア上位爵といえばハクセンでは5指に入る重鎮だ。それが家族で参加し、しかもその孫の二人が結婚式のイベントの手伝いをするなんて普通では考えられない。しかもラクマニア様本人が余興までやってくれるというのはおそらく他では見られないのではないだろうか?
ジュンイチさんから言われていたように、今回の参列者のことは基本的に秘密にしなければならないし、結婚式中の売り込みは御法度ということで自重しなければならなかったのは残念だったが、カサス商会のことを簡単にでも紹介できただけでも十分価値があるだろう。
それに式では簡単な挨拶もできたから十分だ。二人にはまず挨拶をすることすらできないからな。まさか一緒に酒を酌み交わすことまでできるとは思わなかった。しかし、あのお酒は美味しかったな。
結婚式の後の支店長会議でもかなり話が盛り上がった。参加できなかった支店長はちょっと悔しがっていたが、それはしょうが無いだろう。
支店長会議の後、二人と打ち合わせも行って、今後の方針も色々と決めることができた。特許料についての見直しや魔道具の価格についても良い条件で見直しができた。
インスタントラーメンはもう少しで特許期間が終わってしまうので他の参入が行われるのはわかっているが、かなりの地位を得られているのでまだしばらくは安泰だろう。調理道具などについても価格は安いがかなりの人気具合だ。
重量軽減バッグについては完全に独占状態となったのでまだ十分な利益は得られるだろう。これは他の魔道具の売り上げにもかなり貢献しているのでありがたい商品だ。
また今回の結婚式のことについても許可がもらえたのは大きい。この分野もまだ誰も手をつけていないことなので先行すればかなりの利益を得ることが期待できる。食事の提供と併せてクリストフ王爵とも提携してやってみるのもいいかもしれないな。
ほんとにジュンイチさんに知り合えてよかった。あのとき声をかけられていなかったら、もしジュンイチさんを利用しようと考えてしまっていたらおそらくここまでの関係は築けなかっただろう。今の関係を築けたことに感謝しなければならないな。
~クリストフ王爵Side~
今回のジュンイチ達の結婚式は楽しかった。結婚式や披露パーティーというのは儀式という面が多く、結婚するということはうれしいが、それほど楽しいというイベントではなかったんだが、それとは全く違っていた。
結婚式にもいろいろなイベントがあり、見ている私たちも楽しませてくれた。披露パーティーについてはさらに驚いた。主賓の二人が皆を楽しませるようにしており、さらに参列者も余興をすることで楽しませるということはすごい発想だったな。
スレイン達も「私たちもこんな感じでやりたかったなあ・・・」と言っていたくらいだからね。まあ反対意見を言う人もいるかもしれないけど、おそらくこのような結婚式は今後増えていくような気もする。カサス商会のメンバーが参加していたからね。
ただその場合の披露宴会場とか料理の提供についてはカサス商会と手を組むのは一つかもしれないな。今回の結婚式の料理はいろいろと参考になることが多かったからな。今度時間を作って話をしてみるかな。おそらくもう動いているはずだろうからね。
デルタは結婚式で出てきたお酒に目を輝かせていたな。今まで飲んでみたかったと思っていたお酒がかなり出てきていたらしいからね。最後はあのジョニーファン様やラクマニア様ともお酌しあって飲んでいたことを後で話すと青ざめていたのはおかしかった。
でもあの二人も全く気にしない感じで楽しんでいたのは驚きだ。とても聞いていた人物像とは違っていたからね。まああくまで私的なパーティーだったのでこのことを他で話すことは無粋というものだろう。
~ラクマニアSide~
今回の結婚式は初めて見る体験だった。今までの結婚式とは堅苦しいものばかりだったんだが、今回はほんとうに楽しかった。
孫二人の着飾った姿はほんとにかわいかったな。最初に二人にお願いがあると聞いたときは何をやらせるのかと思ってしまったぞ。二人はかなり緊張していたが、それでも後で聞いたときにはこんな大役を任せてもらって良かったと喜んでいた。着ていた服をもらえるとわかったときはかなりうれしそうにしていたからな。
披露宴の余興も良かったな。ファンのやつがあんなことをやるから対抗してこっそりとやっていた魔法のショーを披露することになってしまったではないか。まあ見ていた人達からもかなり好評だったからやった甲斐はあったがな。
出されたお酒も美味しかった。私でもなかなか手に入れられないお酒をあれだけ用意するというのもすごいことだ。お酒好きのルイアニアのやつもかなり興奮していたからな。
やつも平民とこんな感じで酒を酌み交わすなんて初めての経験だっただろう。「オカニウムに来たらうちに泊まりに来いよ。」と誘われましたよとおかしそうに言っていたからな。
肩書きを忘れてこんなに楽しめたのは久しぶりだな。昔ファンとはいつもこんな感じだったが、これだけハメを外して楽しめたのはもしかしたら学生時代以来かもしれないな。
~フェルマーSide~
今回ジュンイチが結婚するという話を聞いてどうするか悩んでいたところ、コーランさんから護衛依頼が入ってきた。護衛があるならやはり結婚式は無理かなと思っていたんだが、なんとオカニウムからサクラまでの護衛依頼だった。どうやら俺たちも結婚式に参加するか悩んでいるみたいだったので護衛を依頼してきたようだ。引退したクラーエルの二人にも声がかかったようだ。
もちろん断る理由もないので大急ぎで準備をしてオカニウムに護衛で移動した。このあとすぐに準備をしてオカニウムを出発し、アーマトでクラーエルの二人も合流してからサクラに向かった。
今回の宿はジュンイチ達が準備してくれた宿に泊まることになったんだが、たまに贅沢しようというときに泊まるところで驚いた。
結婚式に出て驚いたのは参加メンバーだ。憧れの優階位の冒険者である王家の剣のメンバーがいた。どうやら護衛を兼ねているという話だったんだが、他にも優階位のレベルと思われる人達もかなりいた。
どうもアルモニアとハクセンでもかなり重要な人物らしく、護衛の人達を見たときにはこれはかなわないと思ってしまう感じだった。
しかも建物の中は兵士が護衛についているし、建物の周りには良階位レベルの冒険者が護衛をしていたことにも驚いた。正直なところかなり場違い感を受けてしまったが、クラーエルの二人と一緒に割り切ることにした。
式やパーティーはとても楽しかった。王家の剣のメンバーの剣舞はすごかったし、魔法を使ったショーもかなり見応えがあった。結婚式ってこんなんだったか?という印象を受けたが、周りに聞いてもこんなのは初めて見ると言っていた。どうやらジュンイチ達が考えた内容らしい。
さすがにここまでは無理だけど、こんな感じの結婚式やパーティーならやってきた人も楽しめるかもしれないな。今度相談してみよう。そう思っていると他の二人も同じことを考えていたらしい。
~クーラストSide~
ジュンイチから結婚の話を聞いて驚いた。結婚を祝ってあげたい気持ちはあるんだが、やはり費用の問題が・・・。そう思っていると、なぜか役場から連絡が入ったのでアマニエルと二人で行ってみることにした。
話を聞くと、どうも護衛依頼が入ったようだ。カサス商会と言うことを聞いてどういうことかと思っていると、風の翼のフェルマーがやってきて説明してくれた。どうやらカサス商会の支店長達も結婚式に出るらしく、一緒に行くなら護衛としてついてこないかと言うことだった。願ってもないことだったのですぐに了承する。
風の翼がオカニウムから戻ってくるのを待って一緒にサクラを目指すことになった。嫁さんにはサクラのお土産を買って帰らないといけないな。
結婚式は正直驚きの連続だった。俺たちもこんな結婚式をすれば良かったと思ってしまったのは内緒だ。結婚式をする人も、参列者も楽しい結婚式というのはいいものだな。
ジュンイチとジェニファーもとても幸せそうだった。二人には治療をしてもらった恩もあるし、ちゃんとお祝いを言えて良かったよ。
式の後はサクラの観光をしていろいろとお土産も買っていくことができた。これで埋め合わせにはならないかもしれないけど、ジュンイチ達の幸せそうな話をするだけでも納得してくれるだろう。
~デイストリフSide~
北の遺跡の調査の後、ジョニーファン様に何度か調査結果の報告にいった。今回の調査結果にはかなり興味を引かれており、以前ジュンイチさんたちからの報告書と合わせて色々と議論を行っていた。ジョニーファン様とこれだけ色々と話ができるというのはとても名誉なことだったわ。
ある日突然、今度ヤーマン国の建国祭に行くので護衛についてきてくれと言われて驚いた。ジョニーファン様が?国外へ?
もともと行く予定ではなかったんだけど、反対する理由もないためすぐに行くことが決定した。まあジョニーファン様の言うことを反対できる人がそもそもそんなにいないからね。移動中も調査結果の話をしたいと言うことで3人が護衛につくこととなったようだ。
飛行艇なので思ったよりも早く到着できたのだけど、なぜかサクラに到着すると、王宮に行く前に別行動をすると言って出て行かれてしまった。慌てて追いかけると、認識阻害の魔道具を使って何やら小さなアパートへと入って行った。
そして部屋の前に立ってノックをすると、中から見たことがある顔が現れた。前に遺跡の調査でやってきたジュンイチだった。かなり驚いていたが、周りの目を気にしたのかすぐに部屋に入れてくれた。
どうやら今回この二人が結婚することになったらしく、その結婚式に参加することが本当の目的だったようだ。さすがにジョニーファン様と数日にわたり話をしただけのことはあるわね。あのあとでジョニーファン様から話を聞いたときは驚いたものだわ。
結婚式ではなんとジョニーファン様が余興と言って魔法を見せていた。正直かなり驚いたわ。こんな姿はおそらく私たち以外誰も見たことがないのではないかな?そして長年のライバルであり同士であると言われていたハクセンのラクマニア様までが同じように余興をやっていたのにはさらに驚いた。
このパーティーでは正直身分や立場なんてものはなく皆が平等に楽しんでいた。こんな空間を作る二人はどれだけすごいのだろう?
~ラクマニア護衛Side~
正直言って何が起きたのか分からなかった。目の前のラクマニア様は本物なのだろうか?もう一人一緒に参加した護衛も驚いて固まっている。
確かに好々爺なラクマニア様は見たことがある。しかし、それ以外では近寄り難い雰囲気を身に纏っているのが普通だ。
目の前にいるのは余興を披露し、ただの平民と思われる者たちとも一緒になってお酒を酌み交わし、今回結婚する二人の話をしている。平民にも偏見なく対応することは知っているが、このような姿は初めてだ。
パーティの後で今回のことは他言無用で頼むと言われたが言っても誰も信じないだろう。そもそも名誉爵位はあるとはいえ、他国の一平民の結婚式に出たと言う時点で「そんなことがあるわけがない」と笑われてしまうよな。
食事はさせてもらったが、残念ながら護衛のこともあるのでお酒は飲めなかった。ただ式の後で、これは非番の時に飲んで下さいとお酒をもらうことができてとてもうれしかった。しかももらったお酒はなかなか手に入らないレベルのものだった。
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