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77. 異世界961日目 新婚旅行?
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77. 異世界961日目 新婚旅行?
ヤーマンの建国祭が終わり、参列者の人達はそれぞれの町や国に戻って行くのを見送る。ラクマニア様やジョニーファン様は帰る前には何度か会って挨拶はしていたけど、さすがに見送りはできなかった。しかし問題は今回の話がどこまで広まるかなんだよなあ。いくら秘密にしていたとはいってもね。
今回の結婚式には全部で100万ドール以上かかってしまった。人数は少なかったとはいえ、教会への寄付や衣装代、食事代や護衛代など結構払わないといけないことが多かったからね。
サクラに来てから依頼を受けていないし、訓練の費用などもかかっているけど、重量軽減バッグ用の魔符核を二種類定期的に納めているのと、特許代も入ってくるのでまだよかった。魔符核だけで一回の納品で100万ドールほど収入があるからね。まあ今後の装備とかの更新を考えるとちゃんとお金も貯めておかないといけない。
見送りも終わってやっと一段落したところでジェンに思いついたことを話してみた。
「なあ、せっかくだから新婚旅行にでもいってみないか?」
「ハネムーン?こっちにそういう風習ってあった?」
「いや、それはないけど、別にこっちの慣例に従わなくてもいいだろ?ジョニーファン様達のせいもあって周りがうるさいくなるような気もするからいったんサクラから離れた方がいいと思うんだ。」
「まあ、確かにそうよね。でも、行き先はあるの?」
「一応避暑地という場所が少し南にあるみたいなんだよね。そこには温泉もあるらしいし、冬になる前に戻ってくることも十分できると思うんだ。」
「それならそこにしようか。」
行き先が決まったところでクリスさんやコーランさんたちだけに連絡してからすぐに出発することにした。途中の宿泊用にベッドなどは収納バッグに入れていったりする必要はあったけど、改めて準備するものはなかったから楽だった。
サクラを出てから4日ほどかかってリリアという町に到着する。ここはそれほど人口が多いわけではないけど、サクラから避暑にやってくる人も多く、魔獣の討伐もかなり進んでいて町の郊外でも比較的安全な地域が広がっているところだ。
夏の暑いときやこれから冬になる間はここで過ごす人達も多いみたいだけど、今はちょうどその間でまだ結構すいている時期だ。
町に入ってからまずはアルモニアの温泉宿のオーナーのハスカルさんに聞いていた宿へと行ってみることにした。ここの宿のオーナーはかなり親しいらしく、もし行くことがあったらこの手紙を渡してと言われていたところだ。
受付で預かっていた手紙を渡してから宿泊の手続きを進める。部屋はまだ十分開いているようだったので今回も部屋に温泉がついている部屋を選ぶことにした。
1泊4000ドールするがまあこのくらいはしょうが無いだろう。とりあえず10泊でお願いすることにした。なんて贅沢!!
部屋に入れるのは4時半からと言われたので町の中でも散歩しようと思っていると、年配の男性が必死の形相でやってきた。何があったんだ?と思っているとなにやら受付と話をしている。
「こ、この手紙を持ってきた方はどうした?」
「え、えっと、あちらにいる方です。」
そう聞こえたと思ったらすごい形相でこっちに迫ってきた。
「ハスカルからの手紙を読みました。いきなりで申し訳ありませんが、少し話をさせてもらえないでしょうか?」
あまりの迫力に頷くことしか出来なかった。
どうやらここの宿のオーナーみたいなんだけど、ハスカルさんとは飲み仲間らしく、例のお酒のことが書かれていたらしい。
失礼を承知でお酒を飲ませてくれないかと言われたのでジェンに了解を取る。今すぐと言うわけにもいかないので夕方に分けてあげることになった。どうやらハスカルさんたちと同類のようである。
ただ今回もお礼ということで宿代はただにしてくれることになった。ありがたいことだ。あとここの名物の料理も出してくれるみたい。
部屋にはすぐに通してくれたので早速お風呂に入ってくつろぐ。前と違ってジェンと一緒に入ってまったりだ。もちろん前みたいに水着とかじゃないよ。ただ、こんな明るいうちから励むことはなく、スキンシップくらいで抑えておいた。
夕食の時にジェンは渡された小さな容器にお酒を移して取りに来たオーナーに渡していた。その時に開けていたお酒にもめざとく反応していたのでこちらも分けてあげることにしたようだ。
特別料理は山の中なのに珍しい魚料理だった。見てみると、海の魚ではなく、アユみたいな川魚の塩焼きや山菜料理で日本料理を彷彿させるものだった。特に魚は炭火でじっくり焼かれたみたいで骨まで柔らかくて美味しかった。信州で食べた料理を思い出すなあ・・・。
食事を堪能した後、いろいろと励んだけど、流石に疲れもあったので早めに寝ることにした。とはいえ移動中はお預けだったので結構激しかったけどね。
翌日からは温泉街を散策したり、部屋でゆっくりくつろいだり、温泉を堪能したりする。町の郊外にも散策するいい場所もあったので出かけると紅葉が綺麗だった。温泉も部屋のお風呂だけではなく、宿の大浴場や他の宿のお風呂にも入りに行った。
日本の温泉街にもあったんだけど、宿泊客は一日の回数制限はあるけど、他の宿の温泉にも入ることができるのである。温泉宿は土足ではないので日本の宿っぽくてちょっとほっとする。
新婚旅行らしく、甘い夜を過ごし、久々にのんびりした日々となった。さすがにこの旅行中の鍛錬はやめておいたからね。ただジェンはあまりに怠惰な日を過ごすと太ってくるからと軽く体を動かしていた。
十分にリフレッシュしてから10泊の休養を終えて宿を後にする。オーナーからはお酒のことでかなり感謝されたが、こっちもただで泊めてもらったので十分だ。
ただジェンがもう残りのお酒の数が半分を切ってしまったなあとぼやいていた。まあ結婚式で10本も開けてしまったしね。それでも残り20本以上あるんだからまだいいんじゃないのかね?「またどこかで見つからないかしら。」とか無理なことをぼやいていた。
新婚旅行から戻ってきてからは再び鍛錬に日々を費やすこととなった。武術だけでなくいろいろと勉強などにも力を入れた。
さすがに冬になると徐々に気温も下がってきて雪が降る日も増えてきた。雪は積もるがすぐに除雪というか溶雪というか、町中の雪はすぐに溶かされるので、町の中では特に生活に困ることはない。魔道具や魔法を使って溶かすようだ。
他の都市との物流もある程度は行われているけど、やっぱり必要最低限となっているのはしょうが無いところか。まあそのために十分な食料が備蓄されているんだけどね。
今年の年末は二人でのんびりと過ごすことにした。教会に行ってお祈りを捧げると、急に声が聞こえてきた。
「聞こえますか?」
「「??もしかしてアミナ様?」」
ジェンも驚いてこっちを見ていた。
「そのとおりです。今の状況をお話しますのでそのまま聞いて下さい。」
「わかりました。」
「まずは連絡が遅くなって申し訳ありませんでした。あなた方のことをやっとすすめることができました。すぐに何かの対応があるわけではありませんが、ちゃんと処理を行ってくれるはずです。」
「処理を行ってくれると言うことは元の世界に戻れると言うことでしょうか?」
「そうなるはずです。ただ少なくとも今までと同じくらいの時間はかかると思って下さい。」
「ということは少なくとも3年ほどはかかると言うことなのでしょうか?」
「おそらくそうなるだろうと言うことしか今の時点ではいえません。今回は今までとは状況が異なりますので、戻るタイミングや時期についてどうなるのかについては正直わかりません。おそらく何かしらの説明があるのではないかと思っています。
また今回の処理については色々と不手際があったと思われますので、戻ることになった際には私たちも協力できることは協力したいと思っています。」
「人の時間では長いかもしれませんが、それまで無事であることを祈っています。」
「「・・・」」
神様のお告げってほんとにいきなりだよなあ。まあ向こうも状況は見ているとは思うからい戦闘中とかではなかったからいいけどね。今回も教会で祈っていたので話をしてきたんだろう。
いつ戻れるかははっきりしないけど、少なくとも3年はあるってことはまたいろいろとジェンと一緒にいろいろと行ってみてもいいかもしれないな?このままここで暮らしていっても確かに一緒にいる時間は長くて思い出にはなるけど、強烈な記憶と言うことにはならないだろう。
「お金はあるからこのままサクラで暮らして行けるとは思うけど、お互いのことをできるだけ記憶に残るようにするならいろいろな経験をした方がいいと思うんだ。」
「たしかにそうよね。出会ってから2年ちょっとになるけど、やっぱり最初の頃とかいろいろと行ったことの方が印象には残っているものね。結婚式とかはもちろんだけど、ここ最近は平穏な生活過ぎてあまり印象にはないと言われれば確かにそうなのよね。」
「それじゃあ、温かくなってきたらまた旅に出てみるか?」
「そうね。せっかくこの1年頑張ったんだしね。」
「どっちにしろしばらくは動けないからどこに行くのかをしっかり決めていくことにしよう。3年というのもどこまで本当かもわからないからね。」
~???~
ここでは多くの人が多くの情報と格闘していた。多くの作業は自動で処理が行われるようになっているが、やはりすべてを自動で処理することはできないため、人の手による作業もかなり多くあるのだ。
手につながったコンソールで浮かんだ情報の確認作業を行い、問題点があった箇所を修正していく。このシステム本体の修正や日々更新される多くの情報の整理、調整などを行っている。
いくつか大きな問題点については詳細がまとめられてその上司と思われる人へ報告がなされていた。
「・・・以上が今回挙げられた問題点です。」
「ご苦労さま。」
「ああ、あと、今回の次元統括本部への報告はちゃんと行えたのかしら?」
「うちの部署であげる内容については事前に確認していただいた内容を最終確認して送付しています。特に懸案であった異世界からの訪問の件は特記事項としてあげています。」
「わかりました。本当はうちがおこなう案件でもなかったのだけど、迷惑をかけたわね。あとは向こうの処理待ちということね。」
「はい、その通りです。」
「わかりました。この件については以上でいったん終了とします。」
「わかりました。」
そう言うと報告者は部屋から退出していった。
「とりあえず報告をあげたけど、今までのことから考えると対応は早くて3年後かしらね?同じような世界からの訪問であればそこまで問題なかったのだけど、科学文明の発達した世界からと言うのがちょっとまずいわね。
せっかくここまで育ててきた世界をまた破壊させるわけにはいかないわ。でも異世界からやってきた生命に手出しをするというのは規約違反になってしまう。
唯一の救いは二人が自制してくれているということかしらね。そうでなければ規約に触れたとしても特例として処理をしなければならなかったところだわ。
とりあえず二人にもちゃんと報告しておいてあげないといけないかしらね。報告を見るとかなり好感が持てる二人だし、ちょっと応援してあげたくなってしまうわ。」
~~~~~
新年は毎年のように朝日を拝んでいたんだけど、今年は残念ながら天気が悪くて見ることができなかった。朝早めには起きたんだけどね。今年も新年の挨拶とともにジェンからキスをしてもらえた。軽いキスじゃなくて結局そのまま・・・。うん、朝から元気だ。
今年のプレゼントはお出かけの時に使うバッグを買ってみた。結構値段がするものだったけど、前に買い物に行ったときにジェンが「こっちでは使う機会もないからねえ」と言っていたものだ。せっかくだから使ってねと渡す。
ジェンからもらったのは同じくバッグだった。お互いに同じことを考えていたようだ。やはり収納魔法とかがあると無くてもいいんだけど、気分の問題だね。
今年はせっかくだからとお雑煮のようなものを作ってみた。うちのお雑煮はレンコンやゴボウや白菜などの野菜がいっぱい入った鶏ガラのスープで作る物なんだけど、似たような感じになんとか仕上げることができた。
いろいろな野菜がかなり入っているので一杯でおなかがいっぱいになる。ちなみにお餅はここではそれほど取り扱いはないけど、普通に売っていたタイガ国でちゃんと仕入れてきていたので問題は無い。
朝食をとった後は今日は一日家でゆっくりと過ごす。夕方には同じ建物の人と新年パーティーをやることになっていたので参加すると、全員ではないんだが、8割くらいの人が参加していた。自分たちが入居した後、歓迎パーティーやバーベキューをしたりとかいろいろと催しをやったりもしているのでそこそこのつきあいという感じだ。
さすがにいないのに家賃を払い続けるのももったいないので旅に出るときには宿は引き払わないといけないよなあ・・・。まあそのときはまあそのときだ。収納はできるから荷物とかも気にならないからねえ。
翌日はクリスさんの家に行ってパーティーとなった。自分たちの他には王家の剣のメンバーとよく知った冒険者の数名だけなので気を遣わなくていいのはありがたい。王族の人達はさすがに挨拶関係で動けないらしいからね。
「スレインさん、かなりおなかが大きくなって来ましたね。大丈夫ですか?」
「ああ、やっと落ち着いてだいぶ楽になってきたところだ。イントはまだちょっとしんどそうだけどな。」
スレインさんとイントさんの二人が妊娠したことがわかって少しおなかが目立ってきていた。自分たちの結婚式のちょっと後で妊娠したのがわかったらしい。今年の4月頃には生まれるようなことを言っていた。
「こんな状態だから体を動かせなくてな。正直なところ体がなまってしょうがないんだ。」
「子供が生まれるまでは無理しちゃだめですよ。」
「そうそう、スレインは隙を見て体を動かそうとするからな。イントはこれ幸いとだらけすぎているのも問題かもしれんが・・・」
クリスさんがやってきてちょっと不満を言っている。
「二人とも経過が順調そうで良かったですね。」
「まあな。おまえ達はまだ子供は考えていないのか?」
「ええ、今のところ冒険者としての活動が楽しいですからね。1年近くいろいろと鍛錬していたのでもう少ししたらまた旅に出ようと思っているんですよ。」
まあよく言われるんだが、子供はできないと思うからねえ。
「そうなのか。まあ無理だけはするなよ。」
「安全第一でやっているので無理はするつもりはないですよ。それで今はどこに行くかと色々と調べているところなんです。」
このあと国内や他の国の状況など色々と聞いて情報を集めていく。ナンホウ大陸についてはスレインさんたちから色々と聞いてみたけど、最近の情報ではないのでなんとも言えないらしい。このあたりは王家の剣やクリスさんたちが詳しいんだけど、あまり詳しくしゃべることはできないというのが残念なところだ。
夕方からはカサス商会にも顔を出していく。カサス商会の店としてのパーティーではなく、ごくごく身内だけのパーティーなのでこっちもそこまで気を遣う必要が無い。少し商売の話もしてからおいとまする。
どっちにしろ動くことができるのは雪がなくなってからだからまだ先の話だ。ナンホウ大陸かタイガ国に行くならオカニウムからの船旅になるし、トウセイ大陸に渡るならルイサレムからの船旅だ。アルモニアだと雪がなくなるのが遅くなるのでもっと後になるからね。
ヤーマンの建国祭が終わり、参列者の人達はそれぞれの町や国に戻って行くのを見送る。ラクマニア様やジョニーファン様は帰る前には何度か会って挨拶はしていたけど、さすがに見送りはできなかった。しかし問題は今回の話がどこまで広まるかなんだよなあ。いくら秘密にしていたとはいってもね。
今回の結婚式には全部で100万ドール以上かかってしまった。人数は少なかったとはいえ、教会への寄付や衣装代、食事代や護衛代など結構払わないといけないことが多かったからね。
サクラに来てから依頼を受けていないし、訓練の費用などもかかっているけど、重量軽減バッグ用の魔符核を二種類定期的に納めているのと、特許代も入ってくるのでまだよかった。魔符核だけで一回の納品で100万ドールほど収入があるからね。まあ今後の装備とかの更新を考えるとちゃんとお金も貯めておかないといけない。
見送りも終わってやっと一段落したところでジェンに思いついたことを話してみた。
「なあ、せっかくだから新婚旅行にでもいってみないか?」
「ハネムーン?こっちにそういう風習ってあった?」
「いや、それはないけど、別にこっちの慣例に従わなくてもいいだろ?ジョニーファン様達のせいもあって周りがうるさいくなるような気もするからいったんサクラから離れた方がいいと思うんだ。」
「まあ、確かにそうよね。でも、行き先はあるの?」
「一応避暑地という場所が少し南にあるみたいなんだよね。そこには温泉もあるらしいし、冬になる前に戻ってくることも十分できると思うんだ。」
「それならそこにしようか。」
行き先が決まったところでクリスさんやコーランさんたちだけに連絡してからすぐに出発することにした。途中の宿泊用にベッドなどは収納バッグに入れていったりする必要はあったけど、改めて準備するものはなかったから楽だった。
サクラを出てから4日ほどかかってリリアという町に到着する。ここはそれほど人口が多いわけではないけど、サクラから避暑にやってくる人も多く、魔獣の討伐もかなり進んでいて町の郊外でも比較的安全な地域が広がっているところだ。
夏の暑いときやこれから冬になる間はここで過ごす人達も多いみたいだけど、今はちょうどその間でまだ結構すいている時期だ。
町に入ってからまずはアルモニアの温泉宿のオーナーのハスカルさんに聞いていた宿へと行ってみることにした。ここの宿のオーナーはかなり親しいらしく、もし行くことがあったらこの手紙を渡してと言われていたところだ。
受付で預かっていた手紙を渡してから宿泊の手続きを進める。部屋はまだ十分開いているようだったので今回も部屋に温泉がついている部屋を選ぶことにした。
1泊4000ドールするがまあこのくらいはしょうが無いだろう。とりあえず10泊でお願いすることにした。なんて贅沢!!
部屋に入れるのは4時半からと言われたので町の中でも散歩しようと思っていると、年配の男性が必死の形相でやってきた。何があったんだ?と思っているとなにやら受付と話をしている。
「こ、この手紙を持ってきた方はどうした?」
「え、えっと、あちらにいる方です。」
そう聞こえたと思ったらすごい形相でこっちに迫ってきた。
「ハスカルからの手紙を読みました。いきなりで申し訳ありませんが、少し話をさせてもらえないでしょうか?」
あまりの迫力に頷くことしか出来なかった。
どうやらここの宿のオーナーみたいなんだけど、ハスカルさんとは飲み仲間らしく、例のお酒のことが書かれていたらしい。
失礼を承知でお酒を飲ませてくれないかと言われたのでジェンに了解を取る。今すぐと言うわけにもいかないので夕方に分けてあげることになった。どうやらハスカルさんたちと同類のようである。
ただ今回もお礼ということで宿代はただにしてくれることになった。ありがたいことだ。あとここの名物の料理も出してくれるみたい。
部屋にはすぐに通してくれたので早速お風呂に入ってくつろぐ。前と違ってジェンと一緒に入ってまったりだ。もちろん前みたいに水着とかじゃないよ。ただ、こんな明るいうちから励むことはなく、スキンシップくらいで抑えておいた。
夕食の時にジェンは渡された小さな容器にお酒を移して取りに来たオーナーに渡していた。その時に開けていたお酒にもめざとく反応していたのでこちらも分けてあげることにしたようだ。
特別料理は山の中なのに珍しい魚料理だった。見てみると、海の魚ではなく、アユみたいな川魚の塩焼きや山菜料理で日本料理を彷彿させるものだった。特に魚は炭火でじっくり焼かれたみたいで骨まで柔らかくて美味しかった。信州で食べた料理を思い出すなあ・・・。
食事を堪能した後、いろいろと励んだけど、流石に疲れもあったので早めに寝ることにした。とはいえ移動中はお預けだったので結構激しかったけどね。
翌日からは温泉街を散策したり、部屋でゆっくりくつろいだり、温泉を堪能したりする。町の郊外にも散策するいい場所もあったので出かけると紅葉が綺麗だった。温泉も部屋のお風呂だけではなく、宿の大浴場や他の宿のお風呂にも入りに行った。
日本の温泉街にもあったんだけど、宿泊客は一日の回数制限はあるけど、他の宿の温泉にも入ることができるのである。温泉宿は土足ではないので日本の宿っぽくてちょっとほっとする。
新婚旅行らしく、甘い夜を過ごし、久々にのんびりした日々となった。さすがにこの旅行中の鍛錬はやめておいたからね。ただジェンはあまりに怠惰な日を過ごすと太ってくるからと軽く体を動かしていた。
十分にリフレッシュしてから10泊の休養を終えて宿を後にする。オーナーからはお酒のことでかなり感謝されたが、こっちもただで泊めてもらったので十分だ。
ただジェンがもう残りのお酒の数が半分を切ってしまったなあとぼやいていた。まあ結婚式で10本も開けてしまったしね。それでも残り20本以上あるんだからまだいいんじゃないのかね?「またどこかで見つからないかしら。」とか無理なことをぼやいていた。
新婚旅行から戻ってきてからは再び鍛錬に日々を費やすこととなった。武術だけでなくいろいろと勉強などにも力を入れた。
さすがに冬になると徐々に気温も下がってきて雪が降る日も増えてきた。雪は積もるがすぐに除雪というか溶雪というか、町中の雪はすぐに溶かされるので、町の中では特に生活に困ることはない。魔道具や魔法を使って溶かすようだ。
他の都市との物流もある程度は行われているけど、やっぱり必要最低限となっているのはしょうが無いところか。まあそのために十分な食料が備蓄されているんだけどね。
今年の年末は二人でのんびりと過ごすことにした。教会に行ってお祈りを捧げると、急に声が聞こえてきた。
「聞こえますか?」
「「??もしかしてアミナ様?」」
ジェンも驚いてこっちを見ていた。
「そのとおりです。今の状況をお話しますのでそのまま聞いて下さい。」
「わかりました。」
「まずは連絡が遅くなって申し訳ありませんでした。あなた方のことをやっとすすめることができました。すぐに何かの対応があるわけではありませんが、ちゃんと処理を行ってくれるはずです。」
「処理を行ってくれると言うことは元の世界に戻れると言うことでしょうか?」
「そうなるはずです。ただ少なくとも今までと同じくらいの時間はかかると思って下さい。」
「ということは少なくとも3年ほどはかかると言うことなのでしょうか?」
「おそらくそうなるだろうと言うことしか今の時点ではいえません。今回は今までとは状況が異なりますので、戻るタイミングや時期についてどうなるのかについては正直わかりません。おそらく何かしらの説明があるのではないかと思っています。
また今回の処理については色々と不手際があったと思われますので、戻ることになった際には私たちも協力できることは協力したいと思っています。」
「人の時間では長いかもしれませんが、それまで無事であることを祈っています。」
「「・・・」」
神様のお告げってほんとにいきなりだよなあ。まあ向こうも状況は見ているとは思うからい戦闘中とかではなかったからいいけどね。今回も教会で祈っていたので話をしてきたんだろう。
いつ戻れるかははっきりしないけど、少なくとも3年はあるってことはまたいろいろとジェンと一緒にいろいろと行ってみてもいいかもしれないな?このままここで暮らしていっても確かに一緒にいる時間は長くて思い出にはなるけど、強烈な記憶と言うことにはならないだろう。
「お金はあるからこのままサクラで暮らして行けるとは思うけど、お互いのことをできるだけ記憶に残るようにするならいろいろな経験をした方がいいと思うんだ。」
「たしかにそうよね。出会ってから2年ちょっとになるけど、やっぱり最初の頃とかいろいろと行ったことの方が印象には残っているものね。結婚式とかはもちろんだけど、ここ最近は平穏な生活過ぎてあまり印象にはないと言われれば確かにそうなのよね。」
「それじゃあ、温かくなってきたらまた旅に出てみるか?」
「そうね。せっかくこの1年頑張ったんだしね。」
「どっちにしろしばらくは動けないからどこに行くのかをしっかり決めていくことにしよう。3年というのもどこまで本当かもわからないからね。」
~???~
ここでは多くの人が多くの情報と格闘していた。多くの作業は自動で処理が行われるようになっているが、やはりすべてを自動で処理することはできないため、人の手による作業もかなり多くあるのだ。
手につながったコンソールで浮かんだ情報の確認作業を行い、問題点があった箇所を修正していく。このシステム本体の修正や日々更新される多くの情報の整理、調整などを行っている。
いくつか大きな問題点については詳細がまとめられてその上司と思われる人へ報告がなされていた。
「・・・以上が今回挙げられた問題点です。」
「ご苦労さま。」
「ああ、あと、今回の次元統括本部への報告はちゃんと行えたのかしら?」
「うちの部署であげる内容については事前に確認していただいた内容を最終確認して送付しています。特に懸案であった異世界からの訪問の件は特記事項としてあげています。」
「わかりました。本当はうちがおこなう案件でもなかったのだけど、迷惑をかけたわね。あとは向こうの処理待ちということね。」
「はい、その通りです。」
「わかりました。この件については以上でいったん終了とします。」
「わかりました。」
そう言うと報告者は部屋から退出していった。
「とりあえず報告をあげたけど、今までのことから考えると対応は早くて3年後かしらね?同じような世界からの訪問であればそこまで問題なかったのだけど、科学文明の発達した世界からと言うのがちょっとまずいわね。
せっかくここまで育ててきた世界をまた破壊させるわけにはいかないわ。でも異世界からやってきた生命に手出しをするというのは規約違反になってしまう。
唯一の救いは二人が自制してくれているということかしらね。そうでなければ規約に触れたとしても特例として処理をしなければならなかったところだわ。
とりあえず二人にもちゃんと報告しておいてあげないといけないかしらね。報告を見るとかなり好感が持てる二人だし、ちょっと応援してあげたくなってしまうわ。」
~~~~~
新年は毎年のように朝日を拝んでいたんだけど、今年は残念ながら天気が悪くて見ることができなかった。朝早めには起きたんだけどね。今年も新年の挨拶とともにジェンからキスをしてもらえた。軽いキスじゃなくて結局そのまま・・・。うん、朝から元気だ。
今年のプレゼントはお出かけの時に使うバッグを買ってみた。結構値段がするものだったけど、前に買い物に行ったときにジェンが「こっちでは使う機会もないからねえ」と言っていたものだ。せっかくだから使ってねと渡す。
ジェンからもらったのは同じくバッグだった。お互いに同じことを考えていたようだ。やはり収納魔法とかがあると無くてもいいんだけど、気分の問題だね。
今年はせっかくだからとお雑煮のようなものを作ってみた。うちのお雑煮はレンコンやゴボウや白菜などの野菜がいっぱい入った鶏ガラのスープで作る物なんだけど、似たような感じになんとか仕上げることができた。
いろいろな野菜がかなり入っているので一杯でおなかがいっぱいになる。ちなみにお餅はここではそれほど取り扱いはないけど、普通に売っていたタイガ国でちゃんと仕入れてきていたので問題は無い。
朝食をとった後は今日は一日家でゆっくりと過ごす。夕方には同じ建物の人と新年パーティーをやることになっていたので参加すると、全員ではないんだが、8割くらいの人が参加していた。自分たちが入居した後、歓迎パーティーやバーベキューをしたりとかいろいろと催しをやったりもしているのでそこそこのつきあいという感じだ。
さすがにいないのに家賃を払い続けるのももったいないので旅に出るときには宿は引き払わないといけないよなあ・・・。まあそのときはまあそのときだ。収納はできるから荷物とかも気にならないからねえ。
翌日はクリスさんの家に行ってパーティーとなった。自分たちの他には王家の剣のメンバーとよく知った冒険者の数名だけなので気を遣わなくていいのはありがたい。王族の人達はさすがに挨拶関係で動けないらしいからね。
「スレインさん、かなりおなかが大きくなって来ましたね。大丈夫ですか?」
「ああ、やっと落ち着いてだいぶ楽になってきたところだ。イントはまだちょっとしんどそうだけどな。」
スレインさんとイントさんの二人が妊娠したことがわかって少しおなかが目立ってきていた。自分たちの結婚式のちょっと後で妊娠したのがわかったらしい。今年の4月頃には生まれるようなことを言っていた。
「こんな状態だから体を動かせなくてな。正直なところ体がなまってしょうがないんだ。」
「子供が生まれるまでは無理しちゃだめですよ。」
「そうそう、スレインは隙を見て体を動かそうとするからな。イントはこれ幸いとだらけすぎているのも問題かもしれんが・・・」
クリスさんがやってきてちょっと不満を言っている。
「二人とも経過が順調そうで良かったですね。」
「まあな。おまえ達はまだ子供は考えていないのか?」
「ええ、今のところ冒険者としての活動が楽しいですからね。1年近くいろいろと鍛錬していたのでもう少ししたらまた旅に出ようと思っているんですよ。」
まあよく言われるんだが、子供はできないと思うからねえ。
「そうなのか。まあ無理だけはするなよ。」
「安全第一でやっているので無理はするつもりはないですよ。それで今はどこに行くかと色々と調べているところなんです。」
このあと国内や他の国の状況など色々と聞いて情報を集めていく。ナンホウ大陸についてはスレインさんたちから色々と聞いてみたけど、最近の情報ではないのでなんとも言えないらしい。このあたりは王家の剣やクリスさんたちが詳しいんだけど、あまり詳しくしゃべることはできないというのが残念なところだ。
夕方からはカサス商会にも顔を出していく。カサス商会の店としてのパーティーではなく、ごくごく身内だけのパーティーなのでこっちもそこまで気を遣う必要が無い。少し商売の話もしてからおいとまする。
どっちにしろ動くことができるのは雪がなくなってからだからまだ先の話だ。ナンホウ大陸かタイガ国に行くならオカニウムからの船旅になるし、トウセイ大陸に渡るならルイサレムからの船旅だ。アルモニアだと雪がなくなるのが遅くなるのでもっと後になるからね。
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【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
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本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
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