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78. 異世界1106日目 新たな旅立ち
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78. 異世界1106日目 新たな旅立ち
他の人達からも情報を聞いたり、いろいろと考えた結果、行くのはナンホウ大陸にすることにした。今回の大きな目的は遺跡の調査だ。古代遺跡についてちょっといろいろと気になっていることがあるからね。
そっちの大陸の中で道しるべの玉に登録されている転移先で見つかっていないと思われる遺跡が2つあり、現在見つかっている遺跡が1つある。この見つかっている遺跡にはかなりの壁画とかが残っているらしい。ただあまりちゃんと調査が行われていないのか資料がほとんど無い。
もちろん他にも遺跡があるのでそのあたりも見て回ろうと思っているので、結構時間がかかるかもしれない。
遺跡は放置されているところも多いけど、古代の遺物の確保や最近は古代文明の研究を始めたこともあって簡単には入れなくなっているところも増えてきているようだ。
そのようなところに調査に入るには、それぞれの国の許可をもらわないといけないみたい。とはいえ、特に別の国の国民が調査の許可をもらうのはかなり難しいというのが現状だ。
ジョニーファン様がやってきたときに色々話をした中で、遺跡調査について聞いたところ、ジョニーファン様は基本的にどこの国でも調査許可が出るらしい。まあそれは世界中で有名だからね。
「遺跡の調査をするつもりならあとで調査許可書依頼を出してやるぞ。」とあっさりとアルモニアの調査許可書依頼とジョニーファン様の紹介状をもらうことができた。これを出せば大抵の国で遺跡調査の許可書を発行してもらえるらしい。
ジョニーファン様が作った個人特定の付与魔法が使用されている調査許可書依頼となるので偽造は無理だろうし、もし偽造がばれたらかなりの重罪になってしまうので誰もやらないだろう。確認があるので許可証の発行は王都などの大きなところでしかできないらしいけど、それでも十分だ。もちろん調査結果についてはちゃんと報告するように言われたけどね。
でもこの許可証をもらったのはむちゃくちゃありがたい。ナンホウ大陸は貴族権限が強いので許可証をもらうのが大変みたいだからね。しかもヤーマンとハクセンの爵位を持っているのでおそらくすぐに許可がもらえると言うことだった。平民だったらたとえ許可証があってもすぐには発行してくれないかもしれないそうだ。
ナンホウ大陸に行くので頑張って言語の学習を行った。もともとそれなりには取り組んでいたけど、結構本格的に勉強して、日常会話程度はできるようになった。この大陸の言葉は大陸にある3つの国のモクニク語、サビオニア語、タイカン語でそれぞれの国が異なる言語を使っている。異なると言ってもある程度近い言語ではあるんだけどね。
もちろん地域によってなまりや異なる言語はあるようだけど、この3つを覚えれば基本的に意思疎通はできるようだ。
あとは車を買い換えることにした。まだ2年しか経っていないんだけど、やっぱり走行距離が半端ではなかったからだ。タイヤは結構な頻度で交換はしていたんだけど、さすがにこの後の移動のことを考えると、そろそろ乗り換えした方がいいと言われたからね。
チューリッヒ商会に行くと、すぐにクーロンさんがやってきた。最近は結構お客さんがついて忙しくなってきているようだ。事前に予約はしていたので良かったけどね。
「ジュンイチさんたちに買ってもらってから知り合いだという方が結構いらっしゃって実績が大分上がりました。ありがとうございます。特にクリストフ王爵がお客様になっていただけたのがとてもいい宣伝になりました。」
どうやら元王子殿下が買ったというのはいい宣伝となったらしい。一応そのことについては許可ももらっているみたいだしね。
今のところ使い勝手に問題なかったので、同じものをお願いすることにした。配線は元の状態に戻しておいたのでまたあとで改造しなければならなくなったがこれはしょうが無い。
ミラーやウインカーなどは今では標準で取り付けられているようだ。音楽などはオプションらしい。他の車メーカーもまねしてつけるようにしたようなんだけど、いろいろとやりとりがあったようだ。まあそのあたりはノータッチなので別にいいんだけどね。
他にも後部座席を可動式にしたり、ワイパーを1本から2本に変更してもらうなどの改造をしてもらった。他にはこの車のために飛んだときの制御用に羽をつけてもらったりもした。これである程度方向をハンドルで変えることができるようになるだろう。
車の代金はなんと改造費だけでいいと言われて驚いた。おそらく他メーカーへの使用料で結構な金額が動いたんだろう。まあそのあたりは好意に甘えることにした。
1年間色々と訓練したことでかなりスキルを手に入れることはできている。
まず戦闘学関係はレベル4まで上がっていた。やはりこのあたりは加護の影響が大きいのだろう。そして自分の片手剣と盾、ジェンの短剣と盾はレベル4に上がった。上がったのは最近なのでやっとかという感じだけど、普通に比べたら断然早いと思う。
予備の武器についてもレベルは3にあがり、それ以外の武器についても一通り習ってスキルを手に入れた。このせいもあってか、自分は戦士クラスが3まで上がっていた。
魔法については光と闇以外はレベル4まで上がっていた。魔素吸収などについてはジェンはすべて4になったせいか、次元魔法のレベルが上がり、収納の容量が一気に100キリルまで大きくなっていた。うらやましい・・・。自分はまだ2なので10キリルだ。
二人とも100キリルになったらもう収納バッグはいらないかもしれないね。とりあえずカサス商会に借りていた1キリルの収納バッグは返却したんだけどね。
ジョニーファン様も100キリルと言っていたけど、もう一つ上がったとしたら1000キリルとかになるんだろうか?
あとジェンが転移魔法を使えるようになったんだけど、正直使い方がわからなくて苦労している。自分はまだ使えないので、自分ができるようになったところでどんな風に使うか考えていこうという事になった。転移魔法についてはガイド本に簡単に書かれているだけだからね。
治癒魔法はレベル4までなっていたけど、回復魔法もやっと4まで上がっていた。わざわざ毒を受けて回復したことなども効果があったのだろう。まあ魔素の使い方にも慣れてきたことも大きいのだろうけどね。おかげで治癒士クラスのレベルも2に上がった。
肉体強化などの強化系は全体的に上がった感じだ。このあたりは魔素の扱いに慣れてくると上がっていくものだからね。
耐性についても少しずつ上がっていった。これも回復魔法の訓練の時にいろいろとやってみたからね。普通はお金もかかったりするので耐性を故意にあげようとする人はいないらしい。
芸術系の内容についてもある程度スキルがついたんだけど、こっちはそうそう上がるものではないのでしょうがない。自分も社交ダンスや楽器の演奏などをやって見たんだがなかなか上達はしなかった。ジェンも大分スキルは上がってきているんだけど、クラスがつくまでにはなっていないので自分はほんとにまだまだだろうな。
知識関係はさすがに4まで来ているのでこれ以上はなかなか上がってくれない。今は大学レベルの勉強はしているんだけど、どこまで行けば上がるのかわからないからねえ。
言語ではナンホウ大陸の言葉について大分話せるようになってきた。ジェンの習得能力には全く追いつかないけどね。それでも日常会話くらいはできるようになっているのでなんとかなるかな?あとは現地で実践していくしかないだろう。
鍛冶や調合などの学識的なレベルは大分上がってきているけど、技術の方はなかなか上がらない。まあ片手間にやっているので3まで上がっていれば十分なんだけどね。ここは地道にやっていくしかないんだけど、今のレベル以上はちょっと無理そうな気もする。
解体のスキルはやはりもっといろいろな種類を解体しないと上がりそうにない。まあレベル3まで上がっていれば十分だとは思うんだけどね。ただ解体魔法のレベルを上げるとさらに作業が早くなるみたいだから、もう一段階上げておきたいところだ。別の大陸に行ったら今までと違う魔獣もいるみたいだからそっちに期待しよう。良階位の魔獣も狩れるようになってきていると思うしね。
神の祝福は結婚式の時にカムヒ様の祝福をもらうことができたのでレベルは4まで上がっている。このおかげもあって能力の上昇も少し早くなっているのだろう。加護を受けている神様に関するスキル習得のスキルはレベル3みたいなものだからね。
とはいえよくあるチート能力みたいに習得スピードが数倍になっているという実感はないので上がっても1割とか言う感じかなあ?レベル3だと3割とか?5年かかるのが3年くらいで習得できるという感じくらいかな?このあたりは正直ステータスというものがないのでわからない。
ガイド本についてはかなり使っているんだけど、レベルは3から上がらない。もともと3までなのかもしれないし、今のところかなり十分なチートアイテムになっているので十分だけどね。これに関してはまったく情報が無いのでわからない。
装備については特に見直しは行っていない。訓練の時は一つ前の防具を使っていたこともあり、特に劣化はしていないので前のままだ。これ以上の装備となるとなかなか手に入らないし、金額的にも厳しいからね。
~ジュンイチとジェニファーのステータス~
名前:ジュンイチ(大岡純一郎)
生年月日:998年10月30日
年齢:20歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(良階位・アース) ハクセン下位爵 ヤーマン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章 ヤーマン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-3)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-2)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-3)、神の祝福(物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2)
婚姻:配偶者ジェニファー
スキル:
体術-3、片手剣-4、両手剣-2、短剣-3、槍-2、斧-1、杖-2、槌-3、弓-1、盾-4、刀剣-1
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-4、風魔法-4、水魔法-4、土魔法-4、氷魔法-4、雷魔法-4、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-2
治癒魔法-4、回復魔法-4
肉体硬化-3、筋力強化-3、持久力強化-3、俊敏強化-3、魔力強化-2、治癒力強化-2
毒耐性-4、麻痺耐性-4、睡眠耐性-4
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-2、舞踊-1、植栽-1、工作-3、料理-3、裁縫-2
日本語-5、英語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-3、サビオニア語-3、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2、スペイン語-2、タイカン語-2、古代ナンホウ語-2
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-3、罠解除-3、隠密-3
鍛冶-3、調合-2、錬金-3、付与-3、商人-3
採掘-2、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-4
魔法学-4、魔素吸収-4、魔素放出-3、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4-、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-4、鍛冶学-4、調合学-3、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
カムヒの祝福(魔術吸収上昇)
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
名前:ジェニファー(ジェニファー・クーコ)
生年月日:998年12月15日
年齢:20歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(良階位・アース) ハクセン下位爵 ヤーマン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章 ヤーマン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-2)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-2)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-3)、神の祝福(物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2)
婚姻:配偶者ジュンイチ
スキル:
体術-3、片手剣-2、両手剣-1、短剣-4、槍-1、斧-1、杖-3、槌-1、弓-2、盾-4
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-4、風魔法-4、水魔法-4、土魔法-4、氷魔法-4、雷魔法-4、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-3、転移魔法-1
治癒魔法-4、回復魔法-4
肉体硬化-3、筋力強化-3、持久力強化-3、俊敏強化-3、魔力強化-3、治癒力強化-3
毒耐性-4、麻痺耐性-4、睡眠耐性-4
演奏-3、歌唱-2、絵画-3、彫刻-1、舞踊-3、植栽-1、工作-1、料理-3、裁縫-2
英語-5、スペイン語-4、ドイツ語-3、フランス語-3、中国語-2、日本語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-4、サビオニア語-3、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2、タイカン語-3、古代ナンホウ語-2、古代トウセイ語-1、古代キクライ語-1
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-2、罠解除-2、隠密-3
鍛冶-3、調合-3、錬金-2、付与-3、商人-3
採掘-2、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-4
魔法学-4、魔素吸収-4、魔素放出-4、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-3、鍛冶学-4、調合学-4、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
カムヒの祝福(魔術吸収上昇)
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
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ナンホウ大陸に行くことにしたのでオカニウムから船で行くことになる。昨日までにクリスさんやコーランさんたちなどお世話になった人達には挨拶を済ませた。
カサス商会には出発前までにいつもの倍の量の魔符核を納めており、このあとオカニウムでもできる限り納品して行ってくれと言われている。ナンホウ大陸でも納品はできるんだけど、やっぱり時間やコストがかかってしまうからね。
おかげで普通に旅をするための資金としては十分という感じになった。あとは普通に依頼をこなしていけばなんとかなるだろう。防具関係も材料さえあればある程度の修理はできないことはないからね。
部屋の契約を解約したので残りの金額は若干返却してもらった。アパートの住人には数日前から挨拶を済ませていたし、荷物の引っ越しは収納魔法があるから全く問題は無い。
今年は雪が少ないらしいけど、山越えはやっぱり無理なので山を迂回していかなければならない。ぬかるみとかもまだ残っているようなので途中は飛行を使ったりして行く。魔法の能力も上がってきたのでコストはかなり抑えられるようになっているけどね。
車に取り付ける重量軽減の魔符核も頑張ってかなり小さくした。ただこれを作るだけでかなりの日数を費やしてしまったよ。集中力が続かないのでずっとやっているわけではないんだけど、正直もうやりたくない。
通る車も少ないせいか、魔獣が結構出てくるのが面倒なところだ。ある程度は無視していくんだけど、できるだけ倒すことが推奨されているので魔法で倒して収納していく感じだ。解体は後でまとめてやるつもり。
野営をしながらアーマトまで移動し、アーマトでは宿屋カイランに泊まる。結婚したことを伝えると話は聞いていたらしく、改めてお祝いを言われる。
このあと風の翼やクラーエルのメンバーと夕食を一緒にとることにした。風の翼のニックさんはもうすぐ結婚することになったらしく、なんとカサス商会がバックアップして結婚式をやるらしい。自分たちも招待したかったようだけど、時期的に厳しいことを伝えるとかなり残念そうにしていた。
自分たちの結婚式でみたイベントを色々とやろうと考えているようだ。宣伝を兼ねた結婚式みたいなので金額的にはほとんど負担がないようだ。
アーマトで2泊した後、再び南下していくと、このあたりから雪もなくなり、人の往来も多くなってきた。サクラを出発してから2週間ほどかかってやっとオカニウムに到着した。
到着してまずはメイルミの宿へ行くと、二人に歓迎される。しばらく話をしてから予約を済ませて、船の予約へと向かう。ナンホウ大陸行きはモクニク国行きしかないのでルートの選択肢はない。大型の魔獣が出るエリアを避けるため、航路が限定されているらしい。
ただ船の会社は二つあり、一つはヤーマンの会社スルートが運営しているもので、もう一つはモクニク国の会社マンザックが運営しているものだ。
事前に調べていた情報から、船の規模としては前にタイガ国から乗ったものと大きな差は無いみたい。出航と到着の日時はおおよそ決まっているけど、運行などのトラブルによってずれてくることも多いため、日時は確定ではないというのが普通だ。乗船口に行ってスケジュールを確認してみると、スルートの会社の船は12日後、マンザックの会社の船は6日後の出航予定となっていた。到着までの日数はおおよそ10日となっていてこれはどちらも変わりは無い。
金額についてはグレードによってかなりの差があるので一概には比較できないし、貴族用と平民用で別けられているのでさらに比較が難しい。
船内の案内を見る感じではマンザック社のは貴族がメインという感じで、船室の7割くらいが貴族用となっている。平民用のスペースは狭いがその分値段が安いという印象だ。平民用の高い部屋でも貴族用の下のクラスよりもランクは落ちる感じになっている。まあ貴族よりも高い設定に出来ないんだろうな。
スルート社のは4割くらいが貴族用で4割くらいが平民用、2割が共用と言う感じで貴族用のスペースは狭い分値段も若干抑えられている。部屋のランク的には平民用でもかなりいい部屋が用意されているようだ。
クリスさんに聞いたところ、どちらも使ったことがあるが、確かにマンザック社の方が部屋の質的にも上質ではあるが、スルート社の方が良かったと言っていた。特に平民であれば間違いなくスルート社の方がいいだろうと言うことだった。
残りの部屋を調べてみると、両者ともにまだ部屋は開いていたので大丈夫なんだが、さてどうするか・・・。
「貴族用でとることはできると思うけど、どうする?」
さすがにジェンも悩んでいるようだ。
「そうねえ。前にタイガ国から乗ったときは貴族用で確かに良かったけど、乗客でいやな感じの人も多かったのは事実なのよね。」
「でもそれを言うなら平民用でも同じような人はいそうだけどね。ただ今回はさらに貴族特権の強い国だから小説みたいな貴族がいないとは言えないんだよね。」
「そうなのよねえ・・・。」
まあ特に何があるとは思わないんだけど、せっかくの船旅でいやな気分になるのはできるだけ避けたいところだ。
「クリスさんたちもよく使っていたというスルート社の貴族エリアにするか?いくら悩んでもそのときの乗客によってどうとでも変わってくるからね。」
「わかったわ。それにしましょう。」
結局スルート社の貴族用の部屋にすることにして、部屋は上から3グレード目の10万の部屋にすることにした。部屋はダブルの部屋でお風呂もついている。
身分証明証を見せると、良階位の冒険者であれば何かの時に協力してくれる前提であれば料金から5%割引となるらしい。さらに実際に魔獣の退治に協力すればあとから追加で20%の返金があるようだ。せっかくなので協力に同意することにした。
出発は12日後となったのでそれまではオカニウムで過ごすことになる。ジェンはアキラとマラルと早速予定を調整していた。
出航までに拠点の整備や車の整備を済ませる。車は前と同じ型なので特に問題は無い。整備もちゃんとやってくれていたみたいでトラブルもなかったしね。
そのあとは訓練をしたり技術の鍛錬をしたりとそれなりに忙しくしていた。ジェンは2回ほど遊びに行っていたが、自分と二人でも出かけたりと息抜きもした。
せっかくなのでメイルミの宿でも少し手伝いをさせてもらったんだけど、ジェンを見かけた常連さんたちは久しぶりの姿に喜んでいた。ただ結婚したことを聞いてかなり落ち込んでいたらしい。
ルミナさんからはナンホウ大陸のことについて色々と情報を教えてもらった。やはり貴族という立場でないとかなり大変そうな国らしい。いろいろと生の情報が聞けたのはかなり助かった。
出航は朝早いので宿の二人は見送りに行けないと残念がっていたがさすがにそこまで迷惑はかけられない。二人にお礼を言ってから港へ行くと、アキラとマラルは見送りに来てくれていた。
船はすでに岸壁に停泊していて前にタイガ国から乗った船よりも一回り大きい感じだった。資料では全長220キヤルドとかなっていたからね。ただデッキ部分が広めに作られているみたいで、側壁にある窓もかなり小さい印象だ。
受付で乗船券を受け取ってから、乗船口へ。二人は出航まで見送ってくれるようだけどここでお別れだ。
「気をつけて行ってきてね。つらいと思ったら戻ってきたらいいからね。」
「体だけには気をつけてね。」
「二人もあまり無理しないようにね。」
ジェン達3人で抱き合って泣いていた。
乗船口はやはり二つに分かれており、入口で身分証明証と一緒に乗船券のチェックを受ける。乗船まではまだ時間があるせいかそこまで混んでいない。平民用の方は結構混んでいるんだけどね。ギリギリになってくる人が多いのだろうか?
階段を上ってから船内に入ると、係の人が部屋まで案内してくれた。途中からエレベーターで移動するので階段を上らなくて良かったのは助かった。結構上の方の階になっているので眺めはかなり良さそうだ。
部屋の鍵はカード式になっているのでここでカードを渡される。部屋に入ると右手にウォークインクローゼットのようなところがあり、荷物が置けるようになっているんだけど、もちろん荷物があるわけではないので正直いらないスペースではある。左手には洗面台とトイレが別々にあった。かなり広いトイレだし、洗面台もかなり大きい。
短い通路のようなところを進むと、その奥はかなり広い部屋となっていて大きめのソファーにテーブルセットとこれまた大きな机と椅子まで置かれている。部屋の奥は部屋が区切られており、寝室となっているみたいで大きなベッドと小さなベッドが並んでいた。
部屋の奥の窓際は半分はお風呂で半分がテラスのようになっている。テラスにもテーブルとイスが置かれているんだけど、壁には小さな窓がいくつかついているだけだ。このため室内はそれほど明るくないので照明をつけないといけないレベルだ。
お風呂には広い脱衣所と浴室があるんだけど、浴室には小さな窓があるだけなので、外を見ながらという感じにはなりそうにない。外洋航路なので危ないのかねえ?
残念ながら調理ができるようなところはないけど、これは仕方が無いか・・・。まあ食事は基本無料で食べられるからいいんだけどね。
部屋の中はやはり土足で入るようになっているので、浄化魔法で綺麗にしてからスリッパのようなものを出しておく。やはり室内で靴というのはいやだからなあ。
一通り部屋を確認した後、デッキに出てみると、眼下に見送りの人達が見えた。デッキは貴族用で人数も少ないので結構ゆっくりしているのはありがたい。見送りの中に二人の姿を発見して手を振ると向こうも気がついてくれたようだ。
ジェンはこの距離ならなんとかなるかもと風魔法を使って二人に声の回線をつなごうとしているみたいだ。
「この距離で届くの?」
「ちょっと無理かなあ?手伝ってよ。」
二人で位置を確認しながら空気の回線を伸ばしていく。
「マラル、アキラ聞こえる?」
「「え?え?ジェンの声?」」
「そうよ。魔法でこの距離だったらなんとか声が届くみたいなの。見送りありがとうね。」
「すごいわね。こうして話せるなんてちょっと驚きだわ。」
さすがに距離があるせいか、時々声が聞こえなくなるが十分に意思の疎通はできるレベルだ。しばらく話をしていると出航時間になったみたいで合図の鐘が鳴らされて徐々に船が動き出した。
「「それじゃあ、いってきます!!」」
「「いってらっしゃ・・・」」
残念ながらここまでが限界のようだ。手を振りながらお別れを言う。
二人が完全に見えなくなったところでいったん部屋に戻ってから船内を見て回ることにした。
貴族エリアには食堂が2つ、遊技場やダンスホールがあり、デッキにはプールなどが設置されている。そして共用のエリアには舞台と食堂が一つある。共用と言っても入れるのはある程度の価格の部屋に泊まっている人だけみたいなんだけどね。実質的に貴族エリア、高級エリア、普通エリアという感じに分かれているみたいだ。
自分たちが入れるのは共用のエリアまでで普通のエリアには入れないようだ。おそらくトラブル防止のためなんだろう。共用エリアに入るときも確認があるくらいだからね。
船内を一通り見て回っているとお昼になったので貴族エリアの食堂で食べることにした。ここでは常に音楽の演奏がされているのでちょっと贅沢な感じだ。
他に食事をしている人達はいかにも貴族というような服装をしている人がほとんどで、ラフな格好をしているのはほとんどいない。特にドレスコードということは聞いていないんだけど、あれでも普通の格好なんだろうなあ・・・。
ちなみにこちらの世界ではドレスコードというものは一応あるみたいだけど、結婚式や何かのイベントの時くらいで食事の時に服を規定することは普通は無いらしい。ただナンホウ大陸ではある程度規制があるようなことは言っていた。
ナンホウ大陸と思われる貴族達の服装はどちらかというと原色に近い色合いが多いような気がする。偏見かもしれないけど、このような服の人にはあまり近づかない方がいいかもしれないね。
食事の後は腹ごなしに少し訓練をする。デッキに周りを囲まれた訓練場のようなところがあったので良かったんだけど、さすがに訓練をしている人の姿はない。まあ貴族エリアだからなあ。冒険者をやっている貴族っているんだろうか?貴族の当主とかはいないだろうなあ・・・。
このあとシャワーを浴びてさっぱりしてから舞台を見に行く。夕食は音楽を聴きながらのんびりと食べることにした。今回も食事や飲み物はすべて無料となっている。というか、すべて込みの料金体系なんだろう。まあアルコール関係はある程度制限されるけどね。
最近は少しお酒も飲み出して少しずつだけど飲めるようになってきている。今のところ主に飲むのはワインと水割り位なんだけどね。店でカクテルも飲んでいるんだけどまだあまりよくわかっていないのでジェンにお任せ状態だ。
食事の後はのんびりとお風呂に入ってくつろぐ。お風呂はかなり広いのでありがたい。こういうときは魔法で水が供給できるというのはいいよね。地球だったら船なので水の制限がかかるだろうからね。
せっかくなのでバーのようなところに行って軽くお酒を飲む。ここはさすがに有料となっているんだけど、部屋の鍵を見せると後でまとめて精算となるので一回一回払う必要は無い。1時間ほどいろいろな話をしてから部屋に戻って寝ることにした。今はさすがに毎日ではなく1日おきくらいのペースだ。
出航してから3日ほど立つと、波も高くなってきたのか少し揺れを感じるようになってきた。朝食を食べてから今日は何をしようかと思っていると、船内に警報が鳴り響く。すぐに準備をしてからデッキへと移動する。
乗船の時に魔獣が出たときに協力するようにしていたのでこの警報が鳴ったときには準備をしてからデッキに移動するように言われていた。昨日から5日間はお酒などもできるだけ控えてくれと言われていたしね。この海域が襲ってくる可能性が高かったのだろう。
デッキの集合場所に着くと、すでに一般人の避難は終わっているのか、残っているのは船員と冒険者達だけだった。冒険者は自分たちの他に3グループだった。こっちは貴族エリアなので貴族の冒険者がこのくらいいたと言うことなんだろう。さすがに装備はいいものをつけているという印象だ。
船員達は船の縁に集まっていて必死に何かやっていた。話を聞くと、人食いヒトデと言われる魔獣が登ってきているらしい。見てみると確かに船の外壁を魔獣が登ってきているのがわかった。思ったよりも動きが速いのが驚きだ。
今は棒などでたたき落としているけど、次々にやってくるので手こずっているようだ。いったん海の中に落としてしまえば船を追いかけてこれないようなんだが、船底にしがみついているものが結構いるらしい。どうやら群れで行動する魔獣らしく、そこを横切ってしまってとりつかれてしまったようだ。
あとで聞いたところ魔獣の索敵はしているんだが、水の中にいるため索敵がうまくできない場合もあるらしい。
自分たちも縁に移動してから魔法を使って攻撃していく。船の外壁はある程度強度があるらしいけど、まともに魔法を当てることはできないので削り落とすように攻撃しなければならないのが難しいところだ。船が動いているので登ってくるのは船の後方に限定されているのが救いだ。
いろいろと魔法を使ってみると雷魔法が効果があるようだけど、射程を考えると風魔法が一番効果的なようだ。火魔法は使わないでくれと言われたからね。離れたところは風魔法、近いところは雷魔法で攻撃をしていく。
さすがに船の後方に寄っているとは言え、数が多いのでデッキまで上がってくるものもいる。デッキまで上がってくると、素早さがさらに増して結構大変だ。
人食いヒトデはヒトデの形の真ん中に大きな口があり、かなり鋭い牙があってかまれると指くらいは食いちぎられたりするらしい。しかも弱いとは言え麻痺毒を持っているようなので気をつけなければならない。
さすがにデッキの上を優先しないといけないんだけど、思った以上にすばしっこくて剣だとなかなか当たらない。雷攻撃が有効なので範囲を広げて攻撃すると、動きがかなり遅くなったので剣でとどめを刺していく。雷攻撃のおかげで倒すペースも上がっていき、登ってくる魔獣もほとんどいなくなった。
なんとかこれで一段落したかと思ったんだけど、反対側のデッキから大きな悲鳴が聞こえてきた。今までも叫び声や悲鳴は聞こえていたんだが、今回聞こえてきた悲鳴は今までよりもひどい。何かあったのだろうか?
「こっちは大丈夫だから向こうに加勢に行ってくれ!!向こうには雷魔法を使える人間がいないのかもしれない。」
船員達から声をかけられたので大急ぎで反対側のデッキへと向かうと、デッキの上には大きな魔獣の姿があった。冒険者達が取り囲んでいるが、少し離れたところで冒険者と思われる人が血を流していた。
そこにいたのは大人の人間くらいの大きさの蛸のような魔獣だった。これって牙大蛸?良階位中位の魔獣だったはず。
周りの冒険者に話しかけると、とりあえず遠距離からの攻撃をした方がいいだろうということになり攻撃を仕掛けてみるが、足にガードされる。足でガードされるとほとんど効いていないようだ。足に耐性があるのか?
「本体には雷魔法は効くんだが、足には耐性があるらしい。」
大柄の男性から声をかけられる。
「雷魔法で動きを止めてくれたらとどめは俺が突っ込む。ただ、その前に足を押さえないといかん。突っ込む自信のあるやつは何人いる?」
声を上げた男性の他に自分を含めて4人が声を上げる。
「それじゃあいくぞ、3、2、1、ゼロ!!」
かけ声とともに一斉に飛びかかると足の攻撃が四方に伸びてきた。盾で蛸の足を受けてから切りつけるとうまく足の先を切り落とすことができた。
足が伸びきったところでジェンが詠唱していた雷魔法で攻撃するが距離が遠いので時間をかけたとは言え威力が弱い。それでも動きが若干弱まったので近距離から雷魔法を打ち込むと動きがかなり鈍くなった。ここでかけ声をかけた大柄の男が胴体を一閃してとどめを刺すことができた。
大牙蛸はこれ一匹だけだったらしく、あとは側面にいる魔獣を退治してやっと一段落することができた。
「おつかれさん。雷魔法を使う魔法使いがいて助かったよ。」
先ほど号令をかけていた男性が声をかけてきた。
「いや、すぐに作戦を決めていなかったら危なかったよ。まさかこんな魔獣が出るとはね。出ても上階位くらいと聞いていたのにね。」
「おそらく最近進化したんじゃないかと思うぞ。」
「そうなんだ。油断したらあぶないね。」
先ほどの怪我をした冒険者は腕をやられたみたいで薬を振りかけて治療をしていた。とりあえず大きな怪我ではないみたいだほっとする。他にも怪我をしている人は多かったが、大きな怪我をした人は一人だけだったようだ。治癒魔法や治療薬で傷を治している。
「俺はモクニクの冒険者のカラストだ。よろしくな。」
先ほどの大柄の男性が声をかけてきた。
「こちらこそ。自分はヤーマン国の冒険者のジュンイチです。連れの女性はジェニファーでアースというパーティーを組んでいるんですよ。」
「二人のパーティーか。俺はカステルというパーティーを組んでいるんだが、メンバーは剣士のスルニト、魔法使いのテラス、格闘家兼治癒士のルビーナの4人だ。」
後で一緒に夕食を取ろうと言うことになった。ただせっかくだからと魔獣の解体を手伝わせてもらうことにした。この魔獣は初めてだからね。
人食いヒトデは残念ながら素材になるところはないようだが、大牙蛸は身を食べることができるらしい。ただ大半の冒険者は見た目でアウトみたい。おいしそうなのに・・・。解体を終えたところ、少しだけ身の部分をもらう。
部屋に戻ってもなんだか身体が落ち着かない。久しぶりの激しい戦闘だったせいかもしれないなあ。やはり興奮しているのだろうか。
「ねえ、大丈夫?」
「う、うん。なんか興奮しているのか身体が落ち着かないんだ。」
「もう、しょうがないわねえ。」
オカニウムに来てからジェンが色々とやってくれるようになった。もしかしたらあの二人に色々と教えられたのかもしれない。こっちは嬉しいことだけど、ちょっと恥ずかしい感じでもある。
結局お昼も食べないまま部屋でゆっくりしてから夕方になったところで共用の食堂へ。先ほど一緒に戦った冒険者達が2グループほどいた。
「まさかとは思ったが、爵位を持っていたのか・・・。」
自分たちがやってきたドアを見てちょっと驚いていた。
「まあ、形だけのものですけどね。色々あって褒賞をもらっただけの爵位なのであまり気にしないで下さい。」
最初はかなり遠慮していたんだが、少し話をすると大丈夫と思ったのかかなり打ち解けてきた。モクニク国のことについていろいろと聞いてみると、やはり差別がかなり激しいみたいだ。まあそういう国もあるんだろうな。生の声を聞けたのはかなりありがたかった。
~魔獣紹介~
人食いヒトデ:
上階位下位の魔獣。海に生息するヒトデ型の魔獣で、大人の手のひらほどの大きさ。海岸近くにではあまり姿は見られないが、外海の海面を集団で漂っていることが多い。通常は数十程度の群れだが、数百の群れになることもある。
身体の中心に大きな口があり、鋭い牙を持ち、獲物にかみついて食いちぎる力は強く、集団で大型の魚を襲うこともある。
沖合に行かなければ遭遇することはないが、船に乗っていても側壁にとりついて登ってくるため、大きな群れに遭遇してしまった場合は逃げるすべはない。
見た目以上に移動速度が速い上、麻痺毒を持っているので気をつけなければならない。集団で襲われた場合でも焦らずに一匹ずつとどめを刺していくしかない。雷魔法が有効で、弱い雷魔法でも動きを極端に遅くすることができる。
素材としての買い取り対象はなし。
大牙蛸
良階位中位の魔獣。海に生息する蛸型の魔獣で、大きい個体は成人男性程度の大きさとなる。8本の足を器用に使って歩くこともでき、陸上でも60分程度活動することができる。
足に強力な吸盤を持ち、獲物を足で押さえてから足の付け根の中央に牙のついた大きな口でかみついてくる。足には金属のような成分が含まれており、弱点である雷魔法も足には効かないし、中途半端な攻撃だと防がれてしまう。
目潰しに墨を吐いてくることもあるため注意が必要。かけられた墨が衣服につくとなかなか落とすことができないため、処分した方がいいだろう。
体の部分と足の付け根あたりを食べることができる。
他の人達からも情報を聞いたり、いろいろと考えた結果、行くのはナンホウ大陸にすることにした。今回の大きな目的は遺跡の調査だ。古代遺跡についてちょっといろいろと気になっていることがあるからね。
そっちの大陸の中で道しるべの玉に登録されている転移先で見つかっていないと思われる遺跡が2つあり、現在見つかっている遺跡が1つある。この見つかっている遺跡にはかなりの壁画とかが残っているらしい。ただあまりちゃんと調査が行われていないのか資料がほとんど無い。
もちろん他にも遺跡があるのでそのあたりも見て回ろうと思っているので、結構時間がかかるかもしれない。
遺跡は放置されているところも多いけど、古代の遺物の確保や最近は古代文明の研究を始めたこともあって簡単には入れなくなっているところも増えてきているようだ。
そのようなところに調査に入るには、それぞれの国の許可をもらわないといけないみたい。とはいえ、特に別の国の国民が調査の許可をもらうのはかなり難しいというのが現状だ。
ジョニーファン様がやってきたときに色々話をした中で、遺跡調査について聞いたところ、ジョニーファン様は基本的にどこの国でも調査許可が出るらしい。まあそれは世界中で有名だからね。
「遺跡の調査をするつもりならあとで調査許可書依頼を出してやるぞ。」とあっさりとアルモニアの調査許可書依頼とジョニーファン様の紹介状をもらうことができた。これを出せば大抵の国で遺跡調査の許可書を発行してもらえるらしい。
ジョニーファン様が作った個人特定の付与魔法が使用されている調査許可書依頼となるので偽造は無理だろうし、もし偽造がばれたらかなりの重罪になってしまうので誰もやらないだろう。確認があるので許可証の発行は王都などの大きなところでしかできないらしいけど、それでも十分だ。もちろん調査結果についてはちゃんと報告するように言われたけどね。
でもこの許可証をもらったのはむちゃくちゃありがたい。ナンホウ大陸は貴族権限が強いので許可証をもらうのが大変みたいだからね。しかもヤーマンとハクセンの爵位を持っているのでおそらくすぐに許可がもらえると言うことだった。平民だったらたとえ許可証があってもすぐには発行してくれないかもしれないそうだ。
ナンホウ大陸に行くので頑張って言語の学習を行った。もともとそれなりには取り組んでいたけど、結構本格的に勉強して、日常会話程度はできるようになった。この大陸の言葉は大陸にある3つの国のモクニク語、サビオニア語、タイカン語でそれぞれの国が異なる言語を使っている。異なると言ってもある程度近い言語ではあるんだけどね。
もちろん地域によってなまりや異なる言語はあるようだけど、この3つを覚えれば基本的に意思疎通はできるようだ。
あとは車を買い換えることにした。まだ2年しか経っていないんだけど、やっぱり走行距離が半端ではなかったからだ。タイヤは結構な頻度で交換はしていたんだけど、さすがにこの後の移動のことを考えると、そろそろ乗り換えした方がいいと言われたからね。
チューリッヒ商会に行くと、すぐにクーロンさんがやってきた。最近は結構お客さんがついて忙しくなってきているようだ。事前に予約はしていたので良かったけどね。
「ジュンイチさんたちに買ってもらってから知り合いだという方が結構いらっしゃって実績が大分上がりました。ありがとうございます。特にクリストフ王爵がお客様になっていただけたのがとてもいい宣伝になりました。」
どうやら元王子殿下が買ったというのはいい宣伝となったらしい。一応そのことについては許可ももらっているみたいだしね。
今のところ使い勝手に問題なかったので、同じものをお願いすることにした。配線は元の状態に戻しておいたのでまたあとで改造しなければならなくなったがこれはしょうが無い。
ミラーやウインカーなどは今では標準で取り付けられているようだ。音楽などはオプションらしい。他の車メーカーもまねしてつけるようにしたようなんだけど、いろいろとやりとりがあったようだ。まあそのあたりはノータッチなので別にいいんだけどね。
他にも後部座席を可動式にしたり、ワイパーを1本から2本に変更してもらうなどの改造をしてもらった。他にはこの車のために飛んだときの制御用に羽をつけてもらったりもした。これである程度方向をハンドルで変えることができるようになるだろう。
車の代金はなんと改造費だけでいいと言われて驚いた。おそらく他メーカーへの使用料で結構な金額が動いたんだろう。まあそのあたりは好意に甘えることにした。
1年間色々と訓練したことでかなりスキルを手に入れることはできている。
まず戦闘学関係はレベル4まで上がっていた。やはりこのあたりは加護の影響が大きいのだろう。そして自分の片手剣と盾、ジェンの短剣と盾はレベル4に上がった。上がったのは最近なのでやっとかという感じだけど、普通に比べたら断然早いと思う。
予備の武器についてもレベルは3にあがり、それ以外の武器についても一通り習ってスキルを手に入れた。このせいもあってか、自分は戦士クラスが3まで上がっていた。
魔法については光と闇以外はレベル4まで上がっていた。魔素吸収などについてはジェンはすべて4になったせいか、次元魔法のレベルが上がり、収納の容量が一気に100キリルまで大きくなっていた。うらやましい・・・。自分はまだ2なので10キリルだ。
二人とも100キリルになったらもう収納バッグはいらないかもしれないね。とりあえずカサス商会に借りていた1キリルの収納バッグは返却したんだけどね。
ジョニーファン様も100キリルと言っていたけど、もう一つ上がったとしたら1000キリルとかになるんだろうか?
あとジェンが転移魔法を使えるようになったんだけど、正直使い方がわからなくて苦労している。自分はまだ使えないので、自分ができるようになったところでどんな風に使うか考えていこうという事になった。転移魔法についてはガイド本に簡単に書かれているだけだからね。
治癒魔法はレベル4までなっていたけど、回復魔法もやっと4まで上がっていた。わざわざ毒を受けて回復したことなども効果があったのだろう。まあ魔素の使い方にも慣れてきたことも大きいのだろうけどね。おかげで治癒士クラスのレベルも2に上がった。
肉体強化などの強化系は全体的に上がった感じだ。このあたりは魔素の扱いに慣れてくると上がっていくものだからね。
耐性についても少しずつ上がっていった。これも回復魔法の訓練の時にいろいろとやってみたからね。普通はお金もかかったりするので耐性を故意にあげようとする人はいないらしい。
芸術系の内容についてもある程度スキルがついたんだけど、こっちはそうそう上がるものではないのでしょうがない。自分も社交ダンスや楽器の演奏などをやって見たんだがなかなか上達はしなかった。ジェンも大分スキルは上がってきているんだけど、クラスがつくまでにはなっていないので自分はほんとにまだまだだろうな。
知識関係はさすがに4まで来ているのでこれ以上はなかなか上がってくれない。今は大学レベルの勉強はしているんだけど、どこまで行けば上がるのかわからないからねえ。
言語ではナンホウ大陸の言葉について大分話せるようになってきた。ジェンの習得能力には全く追いつかないけどね。それでも日常会話くらいはできるようになっているのでなんとかなるかな?あとは現地で実践していくしかないだろう。
鍛冶や調合などの学識的なレベルは大分上がってきているけど、技術の方はなかなか上がらない。まあ片手間にやっているので3まで上がっていれば十分なんだけどね。ここは地道にやっていくしかないんだけど、今のレベル以上はちょっと無理そうな気もする。
解体のスキルはやはりもっといろいろな種類を解体しないと上がりそうにない。まあレベル3まで上がっていれば十分だとは思うんだけどね。ただ解体魔法のレベルを上げるとさらに作業が早くなるみたいだから、もう一段階上げておきたいところだ。別の大陸に行ったら今までと違う魔獣もいるみたいだからそっちに期待しよう。良階位の魔獣も狩れるようになってきていると思うしね。
神の祝福は結婚式の時にカムヒ様の祝福をもらうことができたのでレベルは4まで上がっている。このおかげもあって能力の上昇も少し早くなっているのだろう。加護を受けている神様に関するスキル習得のスキルはレベル3みたいなものだからね。
とはいえよくあるチート能力みたいに習得スピードが数倍になっているという実感はないので上がっても1割とか言う感じかなあ?レベル3だと3割とか?5年かかるのが3年くらいで習得できるという感じくらいかな?このあたりは正直ステータスというものがないのでわからない。
ガイド本についてはかなり使っているんだけど、レベルは3から上がらない。もともと3までなのかもしれないし、今のところかなり十分なチートアイテムになっているので十分だけどね。これに関してはまったく情報が無いのでわからない。
装備については特に見直しは行っていない。訓練の時は一つ前の防具を使っていたこともあり、特に劣化はしていないので前のままだ。これ以上の装備となるとなかなか手に入らないし、金額的にも厳しいからね。
~ジュンイチとジェニファーのステータス~
名前:ジュンイチ(大岡純一郎)
生年月日:998年10月30日
年齢:20歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(良階位・アース) ハクセン下位爵 ヤーマン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章 ヤーマン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-3)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-2)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-3)、神の祝福(物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2)
婚姻:配偶者ジェニファー
スキル:
体術-3、片手剣-4、両手剣-2、短剣-3、槍-2、斧-1、杖-2、槌-3、弓-1、盾-4、刀剣-1
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-4、風魔法-4、水魔法-4、土魔法-4、氷魔法-4、雷魔法-4、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-2
治癒魔法-4、回復魔法-4
肉体硬化-3、筋力強化-3、持久力強化-3、俊敏強化-3、魔力強化-2、治癒力強化-2
毒耐性-4、麻痺耐性-4、睡眠耐性-4
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-2、舞踊-1、植栽-1、工作-3、料理-3、裁縫-2
日本語-5、英語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-3、サビオニア語-3、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2、スペイン語-2、タイカン語-2、古代ナンホウ語-2
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-3、罠解除-3、隠密-3
鍛冶-3、調合-2、錬金-3、付与-3、商人-3
採掘-2、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-4
魔法学-4、魔素吸収-4、魔素放出-3、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4-、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-4、鍛冶学-4、調合学-3、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
カムヒの祝福(魔術吸収上昇)
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
名前:ジェニファー(ジェニファー・クーコ)
生年月日:998年12月15日
年齢:20歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(良階位・アース) ハクセン下位爵 ヤーマン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章 ヤーマン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-2)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-2)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-3)、神の祝福(物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2)
婚姻:配偶者ジュンイチ
スキル:
体術-3、片手剣-2、両手剣-1、短剣-4、槍-1、斧-1、杖-3、槌-1、弓-2、盾-4
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-4、風魔法-4、水魔法-4、土魔法-4、氷魔法-4、雷魔法-4、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-3、転移魔法-1
治癒魔法-4、回復魔法-4
肉体硬化-3、筋力強化-3、持久力強化-3、俊敏強化-3、魔力強化-3、治癒力強化-3
毒耐性-4、麻痺耐性-4、睡眠耐性-4
演奏-3、歌唱-2、絵画-3、彫刻-1、舞踊-3、植栽-1、工作-1、料理-3、裁縫-2
英語-5、スペイン語-4、ドイツ語-3、フランス語-3、中国語-2、日本語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-4、サビオニア語-3、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2、タイカン語-3、古代ナンホウ語-2、古代トウセイ語-1、古代キクライ語-1
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-2、罠解除-2、隠密-3
鍛冶-3、調合-3、錬金-2、付与-3、商人-3
採掘-2、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-4
魔法学-4、魔素吸収-4、魔素放出-4、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-3、鍛冶学-4、調合学-4、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
カムヒの祝福(魔術吸収上昇)
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
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ナンホウ大陸に行くことにしたのでオカニウムから船で行くことになる。昨日までにクリスさんやコーランさんたちなどお世話になった人達には挨拶を済ませた。
カサス商会には出発前までにいつもの倍の量の魔符核を納めており、このあとオカニウムでもできる限り納品して行ってくれと言われている。ナンホウ大陸でも納品はできるんだけど、やっぱり時間やコストがかかってしまうからね。
おかげで普通に旅をするための資金としては十分という感じになった。あとは普通に依頼をこなしていけばなんとかなるだろう。防具関係も材料さえあればある程度の修理はできないことはないからね。
部屋の契約を解約したので残りの金額は若干返却してもらった。アパートの住人には数日前から挨拶を済ませていたし、荷物の引っ越しは収納魔法があるから全く問題は無い。
今年は雪が少ないらしいけど、山越えはやっぱり無理なので山を迂回していかなければならない。ぬかるみとかもまだ残っているようなので途中は飛行を使ったりして行く。魔法の能力も上がってきたのでコストはかなり抑えられるようになっているけどね。
車に取り付ける重量軽減の魔符核も頑張ってかなり小さくした。ただこれを作るだけでかなりの日数を費やしてしまったよ。集中力が続かないのでずっとやっているわけではないんだけど、正直もうやりたくない。
通る車も少ないせいか、魔獣が結構出てくるのが面倒なところだ。ある程度は無視していくんだけど、できるだけ倒すことが推奨されているので魔法で倒して収納していく感じだ。解体は後でまとめてやるつもり。
野営をしながらアーマトまで移動し、アーマトでは宿屋カイランに泊まる。結婚したことを伝えると話は聞いていたらしく、改めてお祝いを言われる。
このあと風の翼やクラーエルのメンバーと夕食を一緒にとることにした。風の翼のニックさんはもうすぐ結婚することになったらしく、なんとカサス商会がバックアップして結婚式をやるらしい。自分たちも招待したかったようだけど、時期的に厳しいことを伝えるとかなり残念そうにしていた。
自分たちの結婚式でみたイベントを色々とやろうと考えているようだ。宣伝を兼ねた結婚式みたいなので金額的にはほとんど負担がないようだ。
アーマトで2泊した後、再び南下していくと、このあたりから雪もなくなり、人の往来も多くなってきた。サクラを出発してから2週間ほどかかってやっとオカニウムに到着した。
到着してまずはメイルミの宿へ行くと、二人に歓迎される。しばらく話をしてから予約を済ませて、船の予約へと向かう。ナンホウ大陸行きはモクニク国行きしかないのでルートの選択肢はない。大型の魔獣が出るエリアを避けるため、航路が限定されているらしい。
ただ船の会社は二つあり、一つはヤーマンの会社スルートが運営しているもので、もう一つはモクニク国の会社マンザックが運営しているものだ。
事前に調べていた情報から、船の規模としては前にタイガ国から乗ったものと大きな差は無いみたい。出航と到着の日時はおおよそ決まっているけど、運行などのトラブルによってずれてくることも多いため、日時は確定ではないというのが普通だ。乗船口に行ってスケジュールを確認してみると、スルートの会社の船は12日後、マンザックの会社の船は6日後の出航予定となっていた。到着までの日数はおおよそ10日となっていてこれはどちらも変わりは無い。
金額についてはグレードによってかなりの差があるので一概には比較できないし、貴族用と平民用で別けられているのでさらに比較が難しい。
船内の案内を見る感じではマンザック社のは貴族がメインという感じで、船室の7割くらいが貴族用となっている。平民用のスペースは狭いがその分値段が安いという印象だ。平民用の高い部屋でも貴族用の下のクラスよりもランクは落ちる感じになっている。まあ貴族よりも高い設定に出来ないんだろうな。
スルート社のは4割くらいが貴族用で4割くらいが平民用、2割が共用と言う感じで貴族用のスペースは狭い分値段も若干抑えられている。部屋のランク的には平民用でもかなりいい部屋が用意されているようだ。
クリスさんに聞いたところ、どちらも使ったことがあるが、確かにマンザック社の方が部屋の質的にも上質ではあるが、スルート社の方が良かったと言っていた。特に平民であれば間違いなくスルート社の方がいいだろうと言うことだった。
残りの部屋を調べてみると、両者ともにまだ部屋は開いていたので大丈夫なんだが、さてどうするか・・・。
「貴族用でとることはできると思うけど、どうする?」
さすがにジェンも悩んでいるようだ。
「そうねえ。前にタイガ国から乗ったときは貴族用で確かに良かったけど、乗客でいやな感じの人も多かったのは事実なのよね。」
「でもそれを言うなら平民用でも同じような人はいそうだけどね。ただ今回はさらに貴族特権の強い国だから小説みたいな貴族がいないとは言えないんだよね。」
「そうなのよねえ・・・。」
まあ特に何があるとは思わないんだけど、せっかくの船旅でいやな気分になるのはできるだけ避けたいところだ。
「クリスさんたちもよく使っていたというスルート社の貴族エリアにするか?いくら悩んでもそのときの乗客によってどうとでも変わってくるからね。」
「わかったわ。それにしましょう。」
結局スルート社の貴族用の部屋にすることにして、部屋は上から3グレード目の10万の部屋にすることにした。部屋はダブルの部屋でお風呂もついている。
身分証明証を見せると、良階位の冒険者であれば何かの時に協力してくれる前提であれば料金から5%割引となるらしい。さらに実際に魔獣の退治に協力すればあとから追加で20%の返金があるようだ。せっかくなので協力に同意することにした。
出発は12日後となったのでそれまではオカニウムで過ごすことになる。ジェンはアキラとマラルと早速予定を調整していた。
出航までに拠点の整備や車の整備を済ませる。車は前と同じ型なので特に問題は無い。整備もちゃんとやってくれていたみたいでトラブルもなかったしね。
そのあとは訓練をしたり技術の鍛錬をしたりとそれなりに忙しくしていた。ジェンは2回ほど遊びに行っていたが、自分と二人でも出かけたりと息抜きもした。
せっかくなのでメイルミの宿でも少し手伝いをさせてもらったんだけど、ジェンを見かけた常連さんたちは久しぶりの姿に喜んでいた。ただ結婚したことを聞いてかなり落ち込んでいたらしい。
ルミナさんからはナンホウ大陸のことについて色々と情報を教えてもらった。やはり貴族という立場でないとかなり大変そうな国らしい。いろいろと生の情報が聞けたのはかなり助かった。
出航は朝早いので宿の二人は見送りに行けないと残念がっていたがさすがにそこまで迷惑はかけられない。二人にお礼を言ってから港へ行くと、アキラとマラルは見送りに来てくれていた。
船はすでに岸壁に停泊していて前にタイガ国から乗った船よりも一回り大きい感じだった。資料では全長220キヤルドとかなっていたからね。ただデッキ部分が広めに作られているみたいで、側壁にある窓もかなり小さい印象だ。
受付で乗船券を受け取ってから、乗船口へ。二人は出航まで見送ってくれるようだけどここでお別れだ。
「気をつけて行ってきてね。つらいと思ったら戻ってきたらいいからね。」
「体だけには気をつけてね。」
「二人もあまり無理しないようにね。」
ジェン達3人で抱き合って泣いていた。
乗船口はやはり二つに分かれており、入口で身分証明証と一緒に乗船券のチェックを受ける。乗船まではまだ時間があるせいかそこまで混んでいない。平民用の方は結構混んでいるんだけどね。ギリギリになってくる人が多いのだろうか?
階段を上ってから船内に入ると、係の人が部屋まで案内してくれた。途中からエレベーターで移動するので階段を上らなくて良かったのは助かった。結構上の方の階になっているので眺めはかなり良さそうだ。
部屋の鍵はカード式になっているのでここでカードを渡される。部屋に入ると右手にウォークインクローゼットのようなところがあり、荷物が置けるようになっているんだけど、もちろん荷物があるわけではないので正直いらないスペースではある。左手には洗面台とトイレが別々にあった。かなり広いトイレだし、洗面台もかなり大きい。
短い通路のようなところを進むと、その奥はかなり広い部屋となっていて大きめのソファーにテーブルセットとこれまた大きな机と椅子まで置かれている。部屋の奥は部屋が区切られており、寝室となっているみたいで大きなベッドと小さなベッドが並んでいた。
部屋の奥の窓際は半分はお風呂で半分がテラスのようになっている。テラスにもテーブルとイスが置かれているんだけど、壁には小さな窓がいくつかついているだけだ。このため室内はそれほど明るくないので照明をつけないといけないレベルだ。
お風呂には広い脱衣所と浴室があるんだけど、浴室には小さな窓があるだけなので、外を見ながらという感じにはなりそうにない。外洋航路なので危ないのかねえ?
残念ながら調理ができるようなところはないけど、これは仕方が無いか・・・。まあ食事は基本無料で食べられるからいいんだけどね。
部屋の中はやはり土足で入るようになっているので、浄化魔法で綺麗にしてからスリッパのようなものを出しておく。やはり室内で靴というのはいやだからなあ。
一通り部屋を確認した後、デッキに出てみると、眼下に見送りの人達が見えた。デッキは貴族用で人数も少ないので結構ゆっくりしているのはありがたい。見送りの中に二人の姿を発見して手を振ると向こうも気がついてくれたようだ。
ジェンはこの距離ならなんとかなるかもと風魔法を使って二人に声の回線をつなごうとしているみたいだ。
「この距離で届くの?」
「ちょっと無理かなあ?手伝ってよ。」
二人で位置を確認しながら空気の回線を伸ばしていく。
「マラル、アキラ聞こえる?」
「「え?え?ジェンの声?」」
「そうよ。魔法でこの距離だったらなんとか声が届くみたいなの。見送りありがとうね。」
「すごいわね。こうして話せるなんてちょっと驚きだわ。」
さすがに距離があるせいか、時々声が聞こえなくなるが十分に意思の疎通はできるレベルだ。しばらく話をしていると出航時間になったみたいで合図の鐘が鳴らされて徐々に船が動き出した。
「「それじゃあ、いってきます!!」」
「「いってらっしゃ・・・」」
残念ながらここまでが限界のようだ。手を振りながらお別れを言う。
二人が完全に見えなくなったところでいったん部屋に戻ってから船内を見て回ることにした。
貴族エリアには食堂が2つ、遊技場やダンスホールがあり、デッキにはプールなどが設置されている。そして共用のエリアには舞台と食堂が一つある。共用と言っても入れるのはある程度の価格の部屋に泊まっている人だけみたいなんだけどね。実質的に貴族エリア、高級エリア、普通エリアという感じに分かれているみたいだ。
自分たちが入れるのは共用のエリアまでで普通のエリアには入れないようだ。おそらくトラブル防止のためなんだろう。共用エリアに入るときも確認があるくらいだからね。
船内を一通り見て回っているとお昼になったので貴族エリアの食堂で食べることにした。ここでは常に音楽の演奏がされているのでちょっと贅沢な感じだ。
他に食事をしている人達はいかにも貴族というような服装をしている人がほとんどで、ラフな格好をしているのはほとんどいない。特にドレスコードということは聞いていないんだけど、あれでも普通の格好なんだろうなあ・・・。
ちなみにこちらの世界ではドレスコードというものは一応あるみたいだけど、結婚式や何かのイベントの時くらいで食事の時に服を規定することは普通は無いらしい。ただナンホウ大陸ではある程度規制があるようなことは言っていた。
ナンホウ大陸と思われる貴族達の服装はどちらかというと原色に近い色合いが多いような気がする。偏見かもしれないけど、このような服の人にはあまり近づかない方がいいかもしれないね。
食事の後は腹ごなしに少し訓練をする。デッキに周りを囲まれた訓練場のようなところがあったので良かったんだけど、さすがに訓練をしている人の姿はない。まあ貴族エリアだからなあ。冒険者をやっている貴族っているんだろうか?貴族の当主とかはいないだろうなあ・・・。
このあとシャワーを浴びてさっぱりしてから舞台を見に行く。夕食は音楽を聴きながらのんびりと食べることにした。今回も食事や飲み物はすべて無料となっている。というか、すべて込みの料金体系なんだろう。まあアルコール関係はある程度制限されるけどね。
最近は少しお酒も飲み出して少しずつだけど飲めるようになってきている。今のところ主に飲むのはワインと水割り位なんだけどね。店でカクテルも飲んでいるんだけどまだあまりよくわかっていないのでジェンにお任せ状態だ。
食事の後はのんびりとお風呂に入ってくつろぐ。お風呂はかなり広いのでありがたい。こういうときは魔法で水が供給できるというのはいいよね。地球だったら船なので水の制限がかかるだろうからね。
せっかくなのでバーのようなところに行って軽くお酒を飲む。ここはさすがに有料となっているんだけど、部屋の鍵を見せると後でまとめて精算となるので一回一回払う必要は無い。1時間ほどいろいろな話をしてから部屋に戻って寝ることにした。今はさすがに毎日ではなく1日おきくらいのペースだ。
出航してから3日ほど立つと、波も高くなってきたのか少し揺れを感じるようになってきた。朝食を食べてから今日は何をしようかと思っていると、船内に警報が鳴り響く。すぐに準備をしてからデッキへと移動する。
乗船の時に魔獣が出たときに協力するようにしていたのでこの警報が鳴ったときには準備をしてからデッキに移動するように言われていた。昨日から5日間はお酒などもできるだけ控えてくれと言われていたしね。この海域が襲ってくる可能性が高かったのだろう。
デッキの集合場所に着くと、すでに一般人の避難は終わっているのか、残っているのは船員と冒険者達だけだった。冒険者は自分たちの他に3グループだった。こっちは貴族エリアなので貴族の冒険者がこのくらいいたと言うことなんだろう。さすがに装備はいいものをつけているという印象だ。
船員達は船の縁に集まっていて必死に何かやっていた。話を聞くと、人食いヒトデと言われる魔獣が登ってきているらしい。見てみると確かに船の外壁を魔獣が登ってきているのがわかった。思ったよりも動きが速いのが驚きだ。
今は棒などでたたき落としているけど、次々にやってくるので手こずっているようだ。いったん海の中に落としてしまえば船を追いかけてこれないようなんだが、船底にしがみついているものが結構いるらしい。どうやら群れで行動する魔獣らしく、そこを横切ってしまってとりつかれてしまったようだ。
あとで聞いたところ魔獣の索敵はしているんだが、水の中にいるため索敵がうまくできない場合もあるらしい。
自分たちも縁に移動してから魔法を使って攻撃していく。船の外壁はある程度強度があるらしいけど、まともに魔法を当てることはできないので削り落とすように攻撃しなければならないのが難しいところだ。船が動いているので登ってくるのは船の後方に限定されているのが救いだ。
いろいろと魔法を使ってみると雷魔法が効果があるようだけど、射程を考えると風魔法が一番効果的なようだ。火魔法は使わないでくれと言われたからね。離れたところは風魔法、近いところは雷魔法で攻撃をしていく。
さすがに船の後方に寄っているとは言え、数が多いのでデッキまで上がってくるものもいる。デッキまで上がってくると、素早さがさらに増して結構大変だ。
人食いヒトデはヒトデの形の真ん中に大きな口があり、かなり鋭い牙があってかまれると指くらいは食いちぎられたりするらしい。しかも弱いとは言え麻痺毒を持っているようなので気をつけなければならない。
さすがにデッキの上を優先しないといけないんだけど、思った以上にすばしっこくて剣だとなかなか当たらない。雷攻撃が有効なので範囲を広げて攻撃すると、動きがかなり遅くなったので剣でとどめを刺していく。雷攻撃のおかげで倒すペースも上がっていき、登ってくる魔獣もほとんどいなくなった。
なんとかこれで一段落したかと思ったんだけど、反対側のデッキから大きな悲鳴が聞こえてきた。今までも叫び声や悲鳴は聞こえていたんだが、今回聞こえてきた悲鳴は今までよりもひどい。何かあったのだろうか?
「こっちは大丈夫だから向こうに加勢に行ってくれ!!向こうには雷魔法を使える人間がいないのかもしれない。」
船員達から声をかけられたので大急ぎで反対側のデッキへと向かうと、デッキの上には大きな魔獣の姿があった。冒険者達が取り囲んでいるが、少し離れたところで冒険者と思われる人が血を流していた。
そこにいたのは大人の人間くらいの大きさの蛸のような魔獣だった。これって牙大蛸?良階位中位の魔獣だったはず。
周りの冒険者に話しかけると、とりあえず遠距離からの攻撃をした方がいいだろうということになり攻撃を仕掛けてみるが、足にガードされる。足でガードされるとほとんど効いていないようだ。足に耐性があるのか?
「本体には雷魔法は効くんだが、足には耐性があるらしい。」
大柄の男性から声をかけられる。
「雷魔法で動きを止めてくれたらとどめは俺が突っ込む。ただ、その前に足を押さえないといかん。突っ込む自信のあるやつは何人いる?」
声を上げた男性の他に自分を含めて4人が声を上げる。
「それじゃあいくぞ、3、2、1、ゼロ!!」
かけ声とともに一斉に飛びかかると足の攻撃が四方に伸びてきた。盾で蛸の足を受けてから切りつけるとうまく足の先を切り落とすことができた。
足が伸びきったところでジェンが詠唱していた雷魔法で攻撃するが距離が遠いので時間をかけたとは言え威力が弱い。それでも動きが若干弱まったので近距離から雷魔法を打ち込むと動きがかなり鈍くなった。ここでかけ声をかけた大柄の男が胴体を一閃してとどめを刺すことができた。
大牙蛸はこれ一匹だけだったらしく、あとは側面にいる魔獣を退治してやっと一段落することができた。
「おつかれさん。雷魔法を使う魔法使いがいて助かったよ。」
先ほど号令をかけていた男性が声をかけてきた。
「いや、すぐに作戦を決めていなかったら危なかったよ。まさかこんな魔獣が出るとはね。出ても上階位くらいと聞いていたのにね。」
「おそらく最近進化したんじゃないかと思うぞ。」
「そうなんだ。油断したらあぶないね。」
先ほどの怪我をした冒険者は腕をやられたみたいで薬を振りかけて治療をしていた。とりあえず大きな怪我ではないみたいだほっとする。他にも怪我をしている人は多かったが、大きな怪我をした人は一人だけだったようだ。治癒魔法や治療薬で傷を治している。
「俺はモクニクの冒険者のカラストだ。よろしくな。」
先ほどの大柄の男性が声をかけてきた。
「こちらこそ。自分はヤーマン国の冒険者のジュンイチです。連れの女性はジェニファーでアースというパーティーを組んでいるんですよ。」
「二人のパーティーか。俺はカステルというパーティーを組んでいるんだが、メンバーは剣士のスルニト、魔法使いのテラス、格闘家兼治癒士のルビーナの4人だ。」
後で一緒に夕食を取ろうと言うことになった。ただせっかくだからと魔獣の解体を手伝わせてもらうことにした。この魔獣は初めてだからね。
人食いヒトデは残念ながら素材になるところはないようだが、大牙蛸は身を食べることができるらしい。ただ大半の冒険者は見た目でアウトみたい。おいしそうなのに・・・。解体を終えたところ、少しだけ身の部分をもらう。
部屋に戻ってもなんだか身体が落ち着かない。久しぶりの激しい戦闘だったせいかもしれないなあ。やはり興奮しているのだろうか。
「ねえ、大丈夫?」
「う、うん。なんか興奮しているのか身体が落ち着かないんだ。」
「もう、しょうがないわねえ。」
オカニウムに来てからジェンが色々とやってくれるようになった。もしかしたらあの二人に色々と教えられたのかもしれない。こっちは嬉しいことだけど、ちょっと恥ずかしい感じでもある。
結局お昼も食べないまま部屋でゆっくりしてから夕方になったところで共用の食堂へ。先ほど一緒に戦った冒険者達が2グループほどいた。
「まさかとは思ったが、爵位を持っていたのか・・・。」
自分たちがやってきたドアを見てちょっと驚いていた。
「まあ、形だけのものですけどね。色々あって褒賞をもらっただけの爵位なのであまり気にしないで下さい。」
最初はかなり遠慮していたんだが、少し話をすると大丈夫と思ったのかかなり打ち解けてきた。モクニク国のことについていろいろと聞いてみると、やはり差別がかなり激しいみたいだ。まあそういう国もあるんだろうな。生の声を聞けたのはかなりありがたかった。
~魔獣紹介~
人食いヒトデ:
上階位下位の魔獣。海に生息するヒトデ型の魔獣で、大人の手のひらほどの大きさ。海岸近くにではあまり姿は見られないが、外海の海面を集団で漂っていることが多い。通常は数十程度の群れだが、数百の群れになることもある。
身体の中心に大きな口があり、鋭い牙を持ち、獲物にかみついて食いちぎる力は強く、集団で大型の魚を襲うこともある。
沖合に行かなければ遭遇することはないが、船に乗っていても側壁にとりついて登ってくるため、大きな群れに遭遇してしまった場合は逃げるすべはない。
見た目以上に移動速度が速い上、麻痺毒を持っているので気をつけなければならない。集団で襲われた場合でも焦らずに一匹ずつとどめを刺していくしかない。雷魔法が有効で、弱い雷魔法でも動きを極端に遅くすることができる。
素材としての買い取り対象はなし。
大牙蛸
良階位中位の魔獣。海に生息する蛸型の魔獣で、大きい個体は成人男性程度の大きさとなる。8本の足を器用に使って歩くこともでき、陸上でも60分程度活動することができる。
足に強力な吸盤を持ち、獲物を足で押さえてから足の付け根の中央に牙のついた大きな口でかみついてくる。足には金属のような成分が含まれており、弱点である雷魔法も足には効かないし、中途半端な攻撃だと防がれてしまう。
目潰しに墨を吐いてくることもあるため注意が必要。かけられた墨が衣服につくとなかなか落とすことができないため、処分した方がいいだろう。
体の部分と足の付け根あたりを食べることができる。
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