テイルウィンド

双子烏丸

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第二章 ティーブレイク・タイム

兄弟の家族

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 ホワイトムーンの向った先、それはアリュノ星系で唯一、人類が居住可能な第四惑星ギャザーロード。
 そこは銀河中の各星系・惑星からやって来る貨物船・客船の中継地点として、大きく栄えた星だ。
 惑星の赤道には八つの大都市が並んで存在しており、その都市から大気圏上空にまで伸びる宇宙エレベーターの先に位置する、蜘蛛のような宇宙ステーションが、各都市の宇宙港となっている。
 そこで様々な場所から訪れる宇宙船が、物や人を星へと降ろし、また別の場所へと運んで行く。
 その都市の一つ、通称トレーダーシックスの遥か上空の宇宙空間に浮かぶ、宇宙ステーションへとホワイトムーンは停泊した。
 宇宙ステーションから伸びる蜘蛛の足のような連結部分に、他にも大小さまざまな宇宙船がそこに繋がれ、停泊している。その中には、星の重力下では飛行不可能な程に、巨大な宇宙船も存在した。規格・設計上により地上へと降りられない宇宙船にとって、宇宙空間にある港は都合がいいのだ。
 シロノ、そしてアインの二人はホワイトムーンを降りると、宇宙エレベーターから地上へと降りる。
 やがてエレベーターが地上に降りると、辺りは高層建造物が立ち並び人々が賑わう、都市部の中心地であった。また、宇宙エレベーターの基部は、各都市へと向う列車の駅にもなっており、基部から一直線に貫いて、真っ直ぐなレールが伸びていた。
 地上の大都市トレーダーシックスは、娯楽・食事・サービス業を中心とした施設が多い都市だ。これは全ての都市でも同じであり、ギャザーロードの経済は、こうした外部からの客商売により成り立っている。そして、各都市は惑星の赤道を通る、長いレールによって結ばれ、そこを走る高速列車により都市間の物流を効率化させていた。



 だが、このトレーダーシックスには他の都市に無い、惑星唯一のある施設が存在する。
 シロノ達は街中を歩き、都市の郊外へと向う。
 中心地から離れるにつれて、街並みの賑わいは薄れ、建物も高層ビルよりも、アパートや住宅が多くなる。主な商業施設は、客が地上へと降りる宇宙エレベーターを中心として集中し、中心から離れるに従い疎らになるのだ。
 そしてようやく、街外れにまで辿り着くと、そこには大きな建物が存在していた。
 建物は数百人が軽く住み込めるほどに大きいが、決して豪華とは言えず、むしろ古びた感じである。
 その敷地内に二人が入ると、建物の窓から小さな頭が覗いた。そして中に向って言った。
「みんな! シロノとアインが帰って来たよ!」
 すると一分も経たないうちに、玄関から大勢の子供達がわらわらと出てきて、二人を迎えた。年齢は五、六歳から十四、五歳までまちまちだが、全員子供と呼べる年齢だった。
「おかえりっ、待ってたんだ」
「お土産はー」
「ねえねえ、後で一緒に遊ぼう」
「レース、とても格好良かったよ。次も頑張ってね」
 随分と懐かれているのか、シロノ達は多くの子供に慕われていた。
 この子供達は全員、身寄りの無い孤児である。それも、その殆どは他の星からの孤児だ。
 惑星ギャザーロードは様々な宇宙船の中継地点として、無数の星から人々がやって来る。
 中には、戦争や大災害によって住む星を追われた難民や、途中で資金が尽きこの星から動けなくなった貧乏人も存在した。
 それにより困窮した親から捨てられたり、親をなくしたりなどした子供が、この孤児院へと預けられるのだ。
「ほら、みんな嬉しいのは分かるけど、あまりシロノ達を困らせないであげて」
 二人が子供達に囲まれていると、玄関から一人の女性が現れた。
 すらりと背の高い初老の女性であり、さながら修道女のような清楚さと優しさが感じられた。
 女性はシロノ達に、満面の笑顔を見せる。
「お帰りなさい、シロノ、それにアインも。アーグリム・ハウスへようこそ、また会えて良かったわ」



 三人は、建物内の長い廊下を歩いている。
 建物の中には、どこを向いても多くの子供達がおり、楽しそうに遊びまわる声が辺りに響く。
「この雰囲気…………やっぱり、何度訪れても良いですね。……あの頃を思い出します」
 懐かしそうな表情で、シロノは辺りを見回す。
 ふふっと笑い、ミス・グレイストンは呟く。
「昔よりも、大分賑やかになりました。それに…………みんな、とても幸せそうでしょ?
 これも貴方達のおかげよ、感謝しているわ」
「そうだね。僕達がここに居た時は、もっと貧乏で、生活が苦しかったからね。それでも、グレイストンさんは親切に面倒を見てくれた。だから、僕達も同じように出来ればと思ったんだ」
 アインはそう言い、ちょっと得意げな様子を見せる。
 この二人も、かつては孤児として、アーグリム・ハウスで暮らしていた。
 ずっと小さい子供の頃に捨てられ、誰の子供か、何処で生まれたのか、彼らは覚えていなかった。
 居場所が無かった二人にとっては、ここが故郷、帰る家であるのだ。
 そしてレースで手にした賞金を、いつも孤児院の寄付として送り、こうして時々、様子を見に来ていた。
「ところで、今度はどれくらい、貴方達はここに居れるのかしら?」
 ミス・グレイストンは、そうシロノに尋ねた。
「会社の方には長い休暇を取っているので、三週間は大丈夫です。一ヵ月後のレースには色々と準備がありますから、その一週間前にはここを出発します」
 すると彼女は、手を叩いて喜ぶ。
「それは良かった。きっと良い遊び相手が出来て、子供達も喜ぶわ。向こうでの思い出話も、楽しみにしているわね」
「ふふっ、私もです」
 アインも、シロノに同意して頷く。
「部屋もちゃんと用意をしているわ。ここにいる間は昔のように、二人とも、我が家と思ってゆっくりしてくださいね」
 そう言ってミス・グレイストンは、シロノとアインに微笑んだ。

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