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39.火祭り④
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そのときだった。
「ピィー!」
上空にいたグレードサラマンダーが、悲痛な叫びをあげる。
「アンバーッ!?」
見れば、幻獣の体は上空から投げられた網に捕らえられていた。小さな炎を吐いて抵抗するものの、太い網が燃える兆しはない。
「ピィーッ! ピィーッ!」
暴れるたび身体に網が巻き付きかえってがんじがらめになって、見る見るうちに身動きできなくなってしまった。火に打ち勝つのは土。地魔法を使える誰かが燃えない網を作り、風魔法を使える者が網を操っているようだ。
「そこにいろっ、何もするなよ! キャロル!」
隣に立っていたグラシアンが駆け出した。とんでもない。アンバーが捕らわれたのに、ただ待っているなんてできるはずがない。
わたしは両手を合わせマナを集中させる。円を包むように両腕を広げ、そのなかに光輝く水球を出現させた。自分専用の移動保管庫で、なかには長さ六十センチほどの弓と矢筒が入っている。わたしはそれを掴むや、軽く足を開いて手の甲を顎に着けて弓を構えた。照準を定めたところで、右手から矢を離す。ヒュンッと風を切って土の網にあたった。しかし。
――水矢が効かない!?
部分的に網の目が切れて綻んだものの、アンバーを解放するまではいかない。わたしの攻撃が効かないなんて、網を作ったのは相当な土魔法の使い手らしい。そうこうしているうちに、アンバーが網ごと川岸の高台まで引き寄せられていく。高台は都でも有数の大橋を渡ったところにあり、川の流れは緩やかだ。
夕闇のせいか、周囲の人たちはまだ騒ぎに気が付いた様子はない。わたしは広場に向かう人をかき分け、高台まで駆け上がる。日ごろ鍛えていないので息が切れて、膝に手をついて肩で息をした。半円を描くような坂道を登った高台には頭巾を被った人間が二人、あとは武器を携えた五人の男たちがいた。
グラシアンはすでに五人の男たちに囲まれて刃を交えている。右手に構えた剣で切りかかってきた敵を一閃し、左手に灯した火球を丁度斧を振り下ろそうとした男の顔に投げつけた。
「うわああっ!」
男は斧を放り投げて、地面を転がりのたうち回る。グラシアンは振り返りもせず、無駄のない動作で次に向かってきた男の脇腹を剣で払った。激しい動きなのに受ける印象は明け方の湖を思わせる『静』だ。思えば、グラシアンが戦っているところを初めて見る。
わたしは転がった男たちの無残な姿に一度は足がすくんでしまったものの、気を奮い起こしてあたりを見回した。
「アンバー!」
「ピィーッ!」
悲壮な鳴き声。小さな幻獣は頭巾を被った人間――背格好からおそらく二人とも男性だ――のうち細い方に網ごと掴まれていた。今は小さな火を吐きながらじたばたしていて、男たちを困らせているが、風と地の精霊魔法があれば抑え込まれるのも時間の問題だ。
「アンバーを離しなさい!」
背中の筒から矢を抜きながら、その男に向かって三本連射する。だが、大きい方の頭巾男がマントのなかから大きな剣を抜きながら前に立ち、すべての矢をはたき落とした。慣れた様子から歴戦の勇士であることが見て取れ、精霊魔法も使えるから確固たる貴族に違いない。しかし、頭巾は深くかぶられ、誰かまでは分からなかった。
わたしは弓を肩にかけると、両手から冷気を生みだし氷柱を何本も出現させる。宙に浮いた氷柱の尖った先を細い頭巾男にむかって一斉に飛ばした。
「ピィー!」
上空にいたグレードサラマンダーが、悲痛な叫びをあげる。
「アンバーッ!?」
見れば、幻獣の体は上空から投げられた網に捕らえられていた。小さな炎を吐いて抵抗するものの、太い網が燃える兆しはない。
「ピィーッ! ピィーッ!」
暴れるたび身体に網が巻き付きかえってがんじがらめになって、見る見るうちに身動きできなくなってしまった。火に打ち勝つのは土。地魔法を使える誰かが燃えない網を作り、風魔法を使える者が網を操っているようだ。
「そこにいろっ、何もするなよ! キャロル!」
隣に立っていたグラシアンが駆け出した。とんでもない。アンバーが捕らわれたのに、ただ待っているなんてできるはずがない。
わたしは両手を合わせマナを集中させる。円を包むように両腕を広げ、そのなかに光輝く水球を出現させた。自分専用の移動保管庫で、なかには長さ六十センチほどの弓と矢筒が入っている。わたしはそれを掴むや、軽く足を開いて手の甲を顎に着けて弓を構えた。照準を定めたところで、右手から矢を離す。ヒュンッと風を切って土の網にあたった。しかし。
――水矢が効かない!?
部分的に網の目が切れて綻んだものの、アンバーを解放するまではいかない。わたしの攻撃が効かないなんて、網を作ったのは相当な土魔法の使い手らしい。そうこうしているうちに、アンバーが網ごと川岸の高台まで引き寄せられていく。高台は都でも有数の大橋を渡ったところにあり、川の流れは緩やかだ。
夕闇のせいか、周囲の人たちはまだ騒ぎに気が付いた様子はない。わたしは広場に向かう人をかき分け、高台まで駆け上がる。日ごろ鍛えていないので息が切れて、膝に手をついて肩で息をした。半円を描くような坂道を登った高台には頭巾を被った人間が二人、あとは武器を携えた五人の男たちがいた。
グラシアンはすでに五人の男たちに囲まれて刃を交えている。右手に構えた剣で切りかかってきた敵を一閃し、左手に灯した火球を丁度斧を振り下ろそうとした男の顔に投げつけた。
「うわああっ!」
男は斧を放り投げて、地面を転がりのたうち回る。グラシアンは振り返りもせず、無駄のない動作で次に向かってきた男の脇腹を剣で払った。激しい動きなのに受ける印象は明け方の湖を思わせる『静』だ。思えば、グラシアンが戦っているところを初めて見る。
わたしは転がった男たちの無残な姿に一度は足がすくんでしまったものの、気を奮い起こしてあたりを見回した。
「アンバー!」
「ピィーッ!」
悲壮な鳴き声。小さな幻獣は頭巾を被った人間――背格好からおそらく二人とも男性だ――のうち細い方に網ごと掴まれていた。今は小さな火を吐きながらじたばたしていて、男たちを困らせているが、風と地の精霊魔法があれば抑え込まれるのも時間の問題だ。
「アンバーを離しなさい!」
背中の筒から矢を抜きながら、その男に向かって三本連射する。だが、大きい方の頭巾男がマントのなかから大きな剣を抜きながら前に立ち、すべての矢をはたき落とした。慣れた様子から歴戦の勇士であることが見て取れ、精霊魔法も使えるから確固たる貴族に違いない。しかし、頭巾は深くかぶられ、誰かまでは分からなかった。
わたしは弓を肩にかけると、両手から冷気を生みだし氷柱を何本も出現させる。宙に浮いた氷柱の尖った先を細い頭巾男にむかって一斉に飛ばした。
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