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3. 初恋の人 Side マティア
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バンッッ
乱暴にドアの閉まる音が部屋に響く。
マティアはソファーに体を横たえ、目を閉じた。
(ダメだなぁ……。)
じんわりと、枕に涙がにじむ。
わかっていたはずでしょう、と自分に言い聞かせた。誰よりも強くなりたい。だけど実際には弱い自分に嫌気がさす。
『一生、愛する気はない。』
と、ポールは言った。昔から彼は一度言った言葉を覆すことは殆どない。
(ポールは私を……絶対に認めないと決めたんだわ。)
『ねぇ、マティア、大きくなったらさ、僕たち――。』
小さいとき、お花畑でポールは花の冠を手に何かを言いかけた。だがその言葉の続きは結局聞けずじまいで……。
あの日の言葉の続きを聞けていたのなら、ポールはマティアを受入れてくれたんだろうか?
(ポールは……わかっているのかしら……。)
懐から、小さな小瓶を取り出し、ぼんやりと眺める。その小瓶は父親から託されたもので……中には毒が入っていた。
明日、結婚式が無事に終わるとマティアはポールの妻になる。
『一生妻を愛さない』と誓った新郎と、新郎を弱らせるための毒を懐に忍ばせる新婦。
(最低ね……。)
マティアは毛布をぎゅっと握り締めて、全てを忘れようと試みた。だが、自分に課せられた役目も、裏切りも、初恋の人の言葉も全てが重たくて忘れられるはずがなかった。
◇◇◇
本来ならマティアの妹がポールと結婚するはずだった。
だが、マティアの妹がポールに嫁ぐ前、マティアは恐ろしい真実を知ってしまったのである。
「この中身を少しずつ、ポールの食べ物に混ぜなさい。あの男を徐々に弱らせるのだ...」
ドントール国の国王であるマティアの父親は、マティアの妹リリーに小瓶を手渡し、冷徹な口調で告げた。
(嘘……。)
部屋の前で、マティアは偶然彼らの会話を聞いてしまった。
(ポールがリリーに殺されちゃう……?)
マティアの妹リリーはおとなしい性格であり、父親に逆らうことは決してできない子。
「かし……こまりました。」
リリーは消え入りそうな声で、毒の入った小瓶を受け取る。
優しい心を持つ妹に、マティアは恐ろしい役目を受け入れてほしくなかった。
(お姉ちゃんが守ってあげるから!)
和平の為の結婚だなんて真っ赤な嘘。父はポールを油断させる為に、この婚約を仕組んだのだ。
「私にお任せください、お父様!妹の代わりに私が……その役目を成し遂げてみせます。」
考えるよりも先に体が動くマティア。正義感の強い彼女にポールを殺せるのかドントール国王は疑問に思ったが、最終的にはマティアをポールの婚約者にすると決めた。
「マティアのほうが、ポールは油断するかもしれんな……。」
ドントール国王はマティアとポールが小さいころからの友人であることを知っていた。
「このことを誰にも知られるでないぞ。」
ドントール国王はマティアに手渡したのは、ポールを殺すための毒が入った小瓶。
ドントール国王は続けた。
「1か月後...ドントール国はリックストン国に攻め込む。ポール王子を毒で弱らせ、さらに……我が国がリックストン国を攻め込む理由を見つけるのだ!」
ドントール国王にとって、優秀な騎士団長であるポールの存在は邪魔だ。
「理由……ですか?」
「何でもいいが...そうだな、ポール王子の浮気を見つけたら、すぐに報告せよ。」
マティアは驚きを隠せなかった。なぜ、ポールの浮気を見つける必要があるのか。そもそも優しいポールが浮気するとは思えない。
「浮気ですか...?」
ドントール国王は冷酷な笑みを浮かべた。
「そうだ。リックストン国がドントール国を裏切ったという事実を作り出す。それらしく仕上げられるなら、理由は何でもよいのだ。」
マティアは黙って父親を見つめた。どんなにマティアが反対したとしても、父は止まらないだろう。
「かしこまりました。」
大人しくマティアは頷く。
マティアは父親が望むとおりに動くつもりはない。初恋の人ポールへの想いは、彼女を強くさせていた。
(ポールも、リックストン国も私が救ってみせる。)
◇◇◇
乱暴にドアの閉まる音が部屋に響く。
マティアはソファーに体を横たえ、目を閉じた。
(ダメだなぁ……。)
じんわりと、枕に涙がにじむ。
わかっていたはずでしょう、と自分に言い聞かせた。誰よりも強くなりたい。だけど実際には弱い自分に嫌気がさす。
『一生、愛する気はない。』
と、ポールは言った。昔から彼は一度言った言葉を覆すことは殆どない。
(ポールは私を……絶対に認めないと決めたんだわ。)
『ねぇ、マティア、大きくなったらさ、僕たち――。』
小さいとき、お花畑でポールは花の冠を手に何かを言いかけた。だがその言葉の続きは結局聞けずじまいで……。
あの日の言葉の続きを聞けていたのなら、ポールはマティアを受入れてくれたんだろうか?
(ポールは……わかっているのかしら……。)
懐から、小さな小瓶を取り出し、ぼんやりと眺める。その小瓶は父親から託されたもので……中には毒が入っていた。
明日、結婚式が無事に終わるとマティアはポールの妻になる。
『一生妻を愛さない』と誓った新郎と、新郎を弱らせるための毒を懐に忍ばせる新婦。
(最低ね……。)
マティアは毛布をぎゅっと握り締めて、全てを忘れようと試みた。だが、自分に課せられた役目も、裏切りも、初恋の人の言葉も全てが重たくて忘れられるはずがなかった。
◇◇◇
本来ならマティアの妹がポールと結婚するはずだった。
だが、マティアの妹がポールに嫁ぐ前、マティアは恐ろしい真実を知ってしまったのである。
「この中身を少しずつ、ポールの食べ物に混ぜなさい。あの男を徐々に弱らせるのだ...」
ドントール国の国王であるマティアの父親は、マティアの妹リリーに小瓶を手渡し、冷徹な口調で告げた。
(嘘……。)
部屋の前で、マティアは偶然彼らの会話を聞いてしまった。
(ポールがリリーに殺されちゃう……?)
マティアの妹リリーはおとなしい性格であり、父親に逆らうことは決してできない子。
「かし……こまりました。」
リリーは消え入りそうな声で、毒の入った小瓶を受け取る。
優しい心を持つ妹に、マティアは恐ろしい役目を受け入れてほしくなかった。
(お姉ちゃんが守ってあげるから!)
和平の為の結婚だなんて真っ赤な嘘。父はポールを油断させる為に、この婚約を仕組んだのだ。
「私にお任せください、お父様!妹の代わりに私が……その役目を成し遂げてみせます。」
考えるよりも先に体が動くマティア。正義感の強い彼女にポールを殺せるのかドントール国王は疑問に思ったが、最終的にはマティアをポールの婚約者にすると決めた。
「マティアのほうが、ポールは油断するかもしれんな……。」
ドントール国王はマティアとポールが小さいころからの友人であることを知っていた。
「このことを誰にも知られるでないぞ。」
ドントール国王はマティアに手渡したのは、ポールを殺すための毒が入った小瓶。
ドントール国王は続けた。
「1か月後...ドントール国はリックストン国に攻め込む。ポール王子を毒で弱らせ、さらに……我が国がリックストン国を攻め込む理由を見つけるのだ!」
ドントール国王にとって、優秀な騎士団長であるポールの存在は邪魔だ。
「理由……ですか?」
「何でもいいが...そうだな、ポール王子の浮気を見つけたら、すぐに報告せよ。」
マティアは驚きを隠せなかった。なぜ、ポールの浮気を見つける必要があるのか。そもそも優しいポールが浮気するとは思えない。
「浮気ですか...?」
ドントール国王は冷酷な笑みを浮かべた。
「そうだ。リックストン国がドントール国を裏切ったという事実を作り出す。それらしく仕上げられるなら、理由は何でもよいのだ。」
マティアは黙って父親を見つめた。どんなにマティアが反対したとしても、父は止まらないだろう。
「かしこまりました。」
大人しくマティアは頷く。
マティアは父親が望むとおりに動くつもりはない。初恋の人ポールへの想いは、彼女を強くさせていた。
(ポールも、リックストン国も私が救ってみせる。)
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