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2.愛するふりなら Side ポール
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「黙れ!お気楽な女が……。いつまでもガキのままだな……。」
ポールは顔をゆがめながら、ドアを指さした。マティアの目にうっすらと涙が浮かんでいる。本当は、彼女の涙をそっとぬぐって、頭を撫でてあげたかった。
「ポール……。」
だがポールは、怒りの表情を崩さなかった。
(今、マティアを突き放さなければ……一生後悔するから。)
ドントール国はリックストン国を裏切るに違いないとポールは考えていた。戦いが起こったとき、マティアは"人質"となってしまう。
(僕の妻にならないでくれ、マティア。)
ポールはマティアがこの国からドントールに帰り、穏やかに暮らすことを望んでいる。
「今すぐこの部屋から出ていき、ドントール国に帰れ!」
ポールは結婚してしまう前に、彼女をドントール国に帰したかった。どんなにマティアを傷つけたとしても。
「残念だけど、それはできないわ。それを理由に父は戦いを始めてしまうだろうから。」
ドントール国王は恐ろしい男だ。野心家で策略家。もしもポールが無理やりマティアを国に帰せば、難癖をつけてリックストン国を攻めるに違いない。
”夫婦円満”であるように見せかけることが、ドントール国王に対する最大の防御策……かもしれない。
「ポール、貴方も私を愛するふりをしてくれなきゃ困るのよ。」
マティアはまっすぐにポールを見つめる。彼女の瞳を見ていられなくてポールは俯いた。
(愛するふりだなんて……そんな悲しいことを言わないでくれ。)
「そんなもの、意味のない時間稼ぎだ……。」
確かにリックストン国にとって、この結婚には意味はある。もし、ドントール国が侵攻してきたら、マティアを人質にとることができるから。
(だが、マティアにとっては……良いことなど1つもない。)
自分を愛そうとしない男の妻として、危機に晒され続ける日々。リックストン国の人間は皆、彼女に冷たく接するだろう。
「やってみなくちゃわからないでしょ?」
前髪から覗くマティア青い瞳はキラキラと輝いている。ポールにとっても、幼いころの記憶は大切で、マティアは特別な存在だった。彼女の泣く姿を見たくはないのだ。
「馬鹿が……。」
(馬鹿がつくほど優しいマティア。)
愛するふりなんてしてほしくない。ただ笑っていてほしかった。
「知ってるわ。」
微笑みを絶やさず胸を張って、マティアは答える。
マティアは自分よりも他人を優先して、自分が傷ついていることに気が付かない。無鉄砲だが泣き虫だということもポールはちゃんと知っている。
(僕だけは……君を幸せにしてあげられないのに。)
ポールはマティアになんと言ったらいいかわからない。結婚式は明日に迫っている。夜が明けたら、彼女はポールの妻になる。
「もう眠るわ。明日は結婚式よ。」
皆、表面上はポールとマティアの結婚を祝福するだろう。だが……心の内では皆、ドントール国を恨み、恐れている。マティアの父親であるドントール国王が、リックストンを裏切るに違いないと考えている。
(なんで君は知らないふりをするんだい?)
「……やめてくれ。」
(僕らが結婚して幸せになれると思っているのか?)
所詮、ポールとマティアは敵国の王子と姫。どうせ失ってしまうのなら、最初から手に入れるべきではないのに。
「安心して、私はソファーで眠るわ。」
マティアは毛布を一枚手に取り、再びソファーに腰掛けた。
「勝手にしろ!」
そう吐き捨てて、ポールがベットルームに戻った。生粋のお姫様であるマティア。ソファーで眠ったことなどないだろうに。
(それなら僕は……君が”愛するふり”すらできないように、君を傷つけるだけだ。)
ポールは顔をゆがめながら、ドアを指さした。マティアの目にうっすらと涙が浮かんでいる。本当は、彼女の涙をそっとぬぐって、頭を撫でてあげたかった。
「ポール……。」
だがポールは、怒りの表情を崩さなかった。
(今、マティアを突き放さなければ……一生後悔するから。)
ドントール国はリックストン国を裏切るに違いないとポールは考えていた。戦いが起こったとき、マティアは"人質"となってしまう。
(僕の妻にならないでくれ、マティア。)
ポールはマティアがこの国からドントールに帰り、穏やかに暮らすことを望んでいる。
「今すぐこの部屋から出ていき、ドントール国に帰れ!」
ポールは結婚してしまう前に、彼女をドントール国に帰したかった。どんなにマティアを傷つけたとしても。
「残念だけど、それはできないわ。それを理由に父は戦いを始めてしまうだろうから。」
ドントール国王は恐ろしい男だ。野心家で策略家。もしもポールが無理やりマティアを国に帰せば、難癖をつけてリックストン国を攻めるに違いない。
”夫婦円満”であるように見せかけることが、ドントール国王に対する最大の防御策……かもしれない。
「ポール、貴方も私を愛するふりをしてくれなきゃ困るのよ。」
マティアはまっすぐにポールを見つめる。彼女の瞳を見ていられなくてポールは俯いた。
(愛するふりだなんて……そんな悲しいことを言わないでくれ。)
「そんなもの、意味のない時間稼ぎだ……。」
確かにリックストン国にとって、この結婚には意味はある。もし、ドントール国が侵攻してきたら、マティアを人質にとることができるから。
(だが、マティアにとっては……良いことなど1つもない。)
自分を愛そうとしない男の妻として、危機に晒され続ける日々。リックストン国の人間は皆、彼女に冷たく接するだろう。
「やってみなくちゃわからないでしょ?」
前髪から覗くマティア青い瞳はキラキラと輝いている。ポールにとっても、幼いころの記憶は大切で、マティアは特別な存在だった。彼女の泣く姿を見たくはないのだ。
「馬鹿が……。」
(馬鹿がつくほど優しいマティア。)
愛するふりなんてしてほしくない。ただ笑っていてほしかった。
「知ってるわ。」
微笑みを絶やさず胸を張って、マティアは答える。
マティアは自分よりも他人を優先して、自分が傷ついていることに気が付かない。無鉄砲だが泣き虫だということもポールはちゃんと知っている。
(僕だけは……君を幸せにしてあげられないのに。)
ポールはマティアになんと言ったらいいかわからない。結婚式は明日に迫っている。夜が明けたら、彼女はポールの妻になる。
「もう眠るわ。明日は結婚式よ。」
皆、表面上はポールとマティアの結婚を祝福するだろう。だが……心の内では皆、ドントール国を恨み、恐れている。マティアの父親であるドントール国王が、リックストンを裏切るに違いないと考えている。
(なんで君は知らないふりをするんだい?)
「……やめてくれ。」
(僕らが結婚して幸せになれると思っているのか?)
所詮、ポールとマティアは敵国の王子と姫。どうせ失ってしまうのなら、最初から手に入れるべきではないのに。
「安心して、私はソファーで眠るわ。」
マティアは毛布を一枚手に取り、再びソファーに腰掛けた。
「勝手にしろ!」
そう吐き捨てて、ポールがベットルームに戻った。生粋のお姫様であるマティア。ソファーで眠ったことなどないだろうに。
(それなら僕は……君が”愛するふり”すらできないように、君を傷つけるだけだ。)
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