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しおりを挟む「ごめん」
「大丈夫だって」
「思った以上に酔っ払ってた」
「だと思った」
ふふ、と笑いながら返すと、省吾はぎゅーっと僕を背中から抱きしめた。今朝僕はセックスで初めて腰を抜かすという経験をして、それから省吾はずっと誤りっぱなしだった。
朝ご飯の準備から洗い物から部屋の掃除まで、罪滅ぼしとしてやってくれる省吾がしおらしくて、その姿を目で追いながら頬が緩む。
昼前には体も動くようになり、というより、省吾が心配しすぎて横になっておくように言われていただけなんだけど、流石にゴロゴロし続けるわけにも行かず、昼食を作りながら出かける準備をし始めた。
お出かけの目的が流行りの過ぎたパンケーキカフェということもあり、昼食は具だくさんチャーハンと中華スープのみと少なめに。
全盛期は二時間待ちなんてザラだったし、甘いものが好きな僕だけならいいけど、興味のない省吾を連れてそんな行列に並ぶなんて申し訳なくてできなかった。だから、普通のカフェと同じように待ち時間なしで入店できるようになってきた今がチャンス、と計画していたのだ。
「ホントに入るの?」
「大丈夫、サラダのパンケーキもあるから」
「え、それって軽食じゃないの? 昼飯食べてきたばっか――」
「細かいこと言わないの」
「ハーイ」
メニューをみて眉を顰める省吾の背中を押して店内に入る。やっぱり女子の割合が多いけど気にしない。注文する予定だったものを席に座って即座に店員に伝えると、省吾はぶふと吹き出した。
「なっ、二年待ったんだよ? ずっと来たかったんだからいいでしょ!」
「何も言ってないだろ。ほんと甘いの好きなんだなーって一希の好物を再確認してたのよ」
「ふーん?」
「ふんふん」
疑いの眼差しを向けるけど、省吾はにこにこ嬉しそうにしている。こういう顔してる時は本当に僕のこと観察してるだけなんだ。長くはないけれど密に過ごした時間で知った癖。わかるからこそ無性に恥ずかしい。
省吾は結局アイスコーヒーだけを頼んで、僕のを一口分けてもらうという作戦にしたらしい。確かに大ぶりのパンケーキが三段とその上にあふれるほどのソースがかかっていてボリュームがすごい。省吾が無言で顔を引きつらせてるのを見て、取り皿に十分の一ほど切り分けて差し出した。
僕はこのぐらいならぺろりと食べれてしまうし、省吾も慣れたものでコーヒー飲みながら寛いでくれている。
「食べ終わったらどうする? 他に行きたい所ある?」
最後の一口を口に入れた時、省吾がスマホを弄りながら聞いてきた。すると、テーブルに置いていた僕のスマホが振動し着信を告げた。画面を見ると、昨夜かかってきていた番号。
「あ……」
「どうした?」
「んー、昨日も電話あったんだよね、同じところから」
「……知り合い?」
「それがわからないんだ。営業とかの電話ではなさそうなんだけど」
「調べたの?」
「うん」
「次かかってきたら出たら? 連続して掛けてきてるわけじゃないから急ぎじゃなさそうだし、変な電話だったらすぐ切ればいいから」
省吾の提案に頷く。電話越しなら特に怖いことはない。しつこく鳴るわけでもなく五回ほど振動したあと静かになり、ホッと息を吐いた。
実際気になったのはその場だけで電話のことはすぐ忘れ、店から出たあとは省吾との休日のデートを楽しんだ。
その時、翌日電話に出たことを後悔することになるなんて、僕は思ってもみなかったんだ。
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