愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない

かんだ

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 志貴が! オメガを紹介してくれた!
 名前は真宮煌さん。二十歳になったばかりの可愛いオメガだ。身長も俺と変わらず、とにかく可愛いが詰まった男のオメガ。
 テレビで見るオメガアイドルにも負けないくらい真宮さんは可愛い。
「今日は真宮とデートだったか?」
「うん」
「上手くやってるのか?」
「やってるよ」
 真宮さんとは週に二、三回会っている。お茶をしたり遊びに行ったりと、友達と変わらない内容だけど、可愛い真宮さんといるだけでテンションが上がるので問題ない。
 早く掃除を終わらせてデートに行きたい。
「真宮はどうだ?」
「すげえ可愛い」
「見た目を重要視するのか?」
「良い方が良いじゃん」
「楽しいか?」
「楽しいよ」
 顔を見るだけでも楽しい。
「ワガママは言われていないか? 困らされたりとか」
「大丈夫だって」
「あいつは浪費癖があるし」
 色々真宮さんからの要望は多いけど、可愛いから許せる。それに俺が困っていないからワガママには当たらない。
「アルファなら何でも受け入れてあげるもんだろ」
「お前はオメガだろ」
「オメガが相手の時は俺はアルファだもん」
「馬鹿馬鹿しい」
「うるせえ。おい、掃除終わったぞ」
「早いな」
「今日デートだもん」
「旅行はいつ行く? その計画も立てないとだな」
「旅行か、真宮さんと行く」
「あ?」
 ムッとした声を出される。ダイニングテーブルでパソコンと向き合っていた志貴は、立ち上がって俺の目の前に来た。
「なんで真宮と行くことになるんだ? 俺と約束しただろ」
「真宮さんも旅行行きたいって言ってたから」
「旅行は行くな。まだいつヒートがくるか分からないんだから。オメガと二人きりの時に、遠いところでヒートになったらどうするんだ」
 正論だ。
「すぐ脅すなよ!」
「脅していない、事実だ。遠出は許可出来ない」
「なんでお前の許可が必要なんだよ」
「俺がお前の責任を取ると言っただろ。勝手なことをされて予測不能なことになったら困る」
 威圧的に見下ろしてくる志貴に腹が立つ。睨めばビビると思っているのだろうか。
「大人しくしていろ」
「やだ」
「セナ、これはお前のために言っていることだ。意地悪で言っているわけじゃない。分かるだろ?」
 今度は溜め息混じりに顔を覗き込んでくる。真正面で視線が合う。
「お前が行きたいところは俺がどこでも連れて行くから、俺以外と遠出は我慢しろ」
「……嫌だ」
「……俺に助けてもらえなくても、最悪の事態になったとしても、真宮と出掛けたいか?」
 そこまでではない。軽い気持ちで「行きたいね~」と話していただけだ。俺だって発情期が怖いから遠出するつもりはなかった。都内で日帰りで、少しだけ旅行気分を味わえたら良いと思っていたくらいだ。
「そこまでじゃないだろ? 行きたいところは俺が連れて行く。だから安心しろ」
 志貴の腕が背中に回り、優しく撫でられる。
「うるせえ馬鹿!」
「あっ!? 痛っ!?」
 腹が立つまま志貴の足を踏み付けその場から逃げる。
「デート行く!」
「っこら! 俺の言うことは聞くんだぞ!」
 悶絶する志貴に「ばーか!」と最後に残し、家を出た。
 せっかくのデートなのに志貴のせいで気分が台無しだ。
 待ち合わせまで時間があったので適当に潰てからカフェへ向かえば、真宮さんはすでに待っていた。
「あ、真宮さん! すみません」
「ん? 大丈夫だよ。この辺に用事があったから早めに来ただけだし」
「そうだったんですね」
 真宮さんは可愛い。周りのお客さんも店員も皆が真宮さんを見ているくらいだ。
「ちょっとお喋りしよっか~」
「はい。今日はどこ行きたいですか?」
「お買い物したいかな?」
 基本、デート先は真宮さんが行きたいところだ。俺はどこが良いか知らないから本人が楽しいところを本人に決めてもらっている。真宮さんはおしゃれだから買い物デートはたまにしている。
「秋服欲しいんだよね。最近ちょーっと寒くなってきたでしょ?」
「確かに」
「セナ君も買わない?」
「俺は大丈夫です。真宮さんの見てるの楽しいので」
 元々ファッションに興味はないし、志貴のせいで着る物はたくさんある。
 ――セナ、この前お前の服をめちゃくちゃにしちゃっただろ? 新しいのを買ってきた。どういうのが好きか分からなかったから適当に。
 そう言って寄越されたのは大量の服。自分の家に収まり切らず、志貴の空いた部屋にも置かせてもらっている。
 それだけ大量にあるのだから、わざわざ自分の金で買うつもりはない。
「セナ君の服もいつも可愛いよね。すごい似合ってる」
「本当ですか? 嬉しいです」
「志貴さんにお世話になっているんでしょ? すごいな~」
 また志貴の話か。志貴に紹介されたのだから二人が知り合いなのは当たり前だけど、志貴の褒め言葉は聞きたくない。俺の知る志貴と違い過ぎるし。
「そんなすごくないですよ。自分勝手だし」
「優性アルファだからね~。自分勝手が許される立場だもん。でもあの人に振り回されるなら嬉しくない?」
「全然」
「セナ君はアルファよりもオメガの方が好きなんだっけ?」
 頷く。
「どうして? オメガなら自然とアルファに惹かれない? オメガの幸せは、アルファに愛されることなんだし。これは本能的なことだからどうしようもないでしょ?」
 それが嫌なのだ。
 オメガはアルファに愛されることが幸せ。
 昔から変わらないオメガの本能。だからアルファを誘惑するフェロモンを出す。
 それは嫌と言うほど分かる。
 最初は気付かなかったけど、志貴といるうちにどこか安心している自分がいる。撫でられることが嫌じゃなくなって、もっと撫でて欲しいと思っている。志貴のフェロモンが感じられる場所から離れ難くなっている。
 自分を好き勝手するような最低な奴なのに、アルファというだけで、縋り付きそうになる。
「……アルファは嫌いです。俺は、愛されるのは好きじゃないです」
「えー? そうなの?」
 初めて言う本音に真宮さんが驚く。オメガの本能とは真逆だから当たり前だろう。
「だから真宮さんみたいな可愛い人が好きです」
「嬉しい、ありがとう」
 お互い飲み物を飲み終わったところで、俺たちは買い物へと出掛けた。真宮さんが欲しいものは俺が買ってあげたいので多めにお金を持ってきたが、帰る頃には殆ど残っていなかった。
 バイト代がデート費用に消えるが、楽しいので何の問題もない。
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