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14.
一日の仕事が終わりセナが帰宅した後、入れ替わるように圭人が訪ねて来た。
「お疲れ様です志貴様」
「あぁ、どうした?」
「瀬名家のお坊ちゃんとこちらが紹介した方との縁談が上手く纏まりそうですよ」
「へー」
瀬名家のお坊ちゃん。実際に会うことはなかったが、他との縁談が上手くいったなら良かった。
あの日、結果的に見合いの場が台無しになったため、瀬名家からは改めて場を設けて欲しいと話があった。セナのこともあり見合いをしている暇はなかったため、自分の代わりに他のアルファとの見合いをセッティングしたのだ。上手く纏まりそうなら良かった。
「その代わり、他のオメガとの見合いをするように話が来ていますが」
「今は無理だ」
「セナのせいですか?」
「そういうわけじゃない」
「志貴様、セナに本気になることはないですよね?」
何を馬鹿なことを、そう思って圭人を見上げれば、思いの外真剣な顔付きをしていて驚く。
「何でそんな話になるんだよ」
「志貴様は由緒正しい連城家のお坊ちゃんです。捨て子で教養も一般常識もないオメガなんて志貴様にも連城家にも合いません。向こうも志貴様に本気になる前に距離を置いてください」
「あいつが俺を好きになることはないだろ。今も嫌がっているし」
一緒にいるようになって三月経つが、未だに警戒心を解かない。これだけ良くしているが笑顔さえ見せない。拗ねるか腹を立てるかのどちらかだ。
……セナの言動を思い出すと、何だか無性に腹が立つ。他のオメガなら無関心を装いながらも俺の言動に敏感でいるのに、隙あらば媚びを売ってこようとするのに、セナには全くその気配がない。
つい先程までオメガらしくないから良いと思ったばかりなのに、オメガらしさを見せないところにムッとする。相反する感情に余計腹が立つ。
「志貴様、もし、あいつが他のオメガのように擦り寄ってきたらどうするんですか?」
セナが、他のオメガのように擦り寄って来たら?
想像して、思わず笑ってしまう。
「何を想像したんですか?」
だって、あのセナが擦り寄って来たら笑ってしまうだろう。いつもツンツンしているのに、媚びを売って擦り寄ってくるなんて想像がつかない。本人だってその仕方は分からないだろうから、きっとぎこちなく拙いだろう。体を交えた時だってそうだったから。
「まさか擦り寄って来たら応えるんですか? いつもは吐いて捨てるのに?」
「そういうわけじゃないが、拒絶する理由もないだろ」
他のオメガとセナは違う。二度も体を交えて責任を取ると言っているのだから今更拒絶する方がおかしい。
「……とりあえず、あいつに紹介するオメガを選びました」
「……は?」
擦り寄るセナを思い浮かべていたが、圭人からその話を持ち出されると気分が悪くなる。
「あいつが言っていたでしょ。オメガと付き合いたいって。責任を取ると言ったんですから、全部叶えてあげましょうよ」
「あいつは自分の世話もまともに出来ないのに、恋人なんて早過ぎる。余計なことはしなくて良い」
「お相手のオメガ候補は何人かいます」
圭人が出した候補者は、俺が最初に指示してあった多少クズなオメガではなく、安心出来るオメガだった。
「あいつには勿体無いですが、きっとあいつも夢中になるでしょう。ヒート時用のアルファも見繕いますよ」
圭人には頑固なところがある。俺とセナを引き離すことしか今は頭にないのだろう。圭人を刺激して面倒な手を取られても困る。圭人は俺の幼馴染でもあるが、高嶋家は連城家に長年仕えている家系だ。連城グループの発展と連城家の人間の幸せを本気で願っている。セナを排除するために連城家に報告されることが一番面倒になる。
「分かったよ。アルファは置いておけ。オメガを紹介するのも好きにしろ」
「では」
「ただ、オメガは俺の言う奴にしろ」
「どなたですか?」
脳内に浮かぶ男の名前を言えば、圭人は一瞬不思議な顔をしたが、すぐに引っ込めて「分かりました」と一礼して出て行く。
一人になるとようやく静かになった。色々考えることは多いのに、セナからのメッセージを受信してしまい考えることは飛んでいく。
「ヒート中の仕事はどうなるかって? 休めば良いよ」
オメガになって三月、成人してオメガが発現するパターンもあるが、その場合は大体半年以内に発情期がくる。きっとセナも同じだろうから、今後三月以内にくるだろう。不安で仕方がないらしいセナを安心させるために、返信をせずに電話を掛けることにした。
「セナ? ヒートがきそうなのか?」
『違えよ。ただ、もういつきてもおかしくねえかなって思って』
「ヒートには必ず前兆がある。いつもと少しでも違うと思えば連絡しろ」
『分かってるけど』
「大丈夫だから、そう不安にならなくて良い。精神面が不安定だとフェロモンも影響されるから」
「お疲れ様です志貴様」
「あぁ、どうした?」
「瀬名家のお坊ちゃんとこちらが紹介した方との縁談が上手く纏まりそうですよ」
「へー」
瀬名家のお坊ちゃん。実際に会うことはなかったが、他との縁談が上手くいったなら良かった。
あの日、結果的に見合いの場が台無しになったため、瀬名家からは改めて場を設けて欲しいと話があった。セナのこともあり見合いをしている暇はなかったため、自分の代わりに他のアルファとの見合いをセッティングしたのだ。上手く纏まりそうなら良かった。
「その代わり、他のオメガとの見合いをするように話が来ていますが」
「今は無理だ」
「セナのせいですか?」
「そういうわけじゃない」
「志貴様、セナに本気になることはないですよね?」
何を馬鹿なことを、そう思って圭人を見上げれば、思いの外真剣な顔付きをしていて驚く。
「何でそんな話になるんだよ」
「志貴様は由緒正しい連城家のお坊ちゃんです。捨て子で教養も一般常識もないオメガなんて志貴様にも連城家にも合いません。向こうも志貴様に本気になる前に距離を置いてください」
「あいつが俺を好きになることはないだろ。今も嫌がっているし」
一緒にいるようになって三月経つが、未だに警戒心を解かない。これだけ良くしているが笑顔さえ見せない。拗ねるか腹を立てるかのどちらかだ。
……セナの言動を思い出すと、何だか無性に腹が立つ。他のオメガなら無関心を装いながらも俺の言動に敏感でいるのに、隙あらば媚びを売ってこようとするのに、セナには全くその気配がない。
つい先程までオメガらしくないから良いと思ったばかりなのに、オメガらしさを見せないところにムッとする。相反する感情に余計腹が立つ。
「志貴様、もし、あいつが他のオメガのように擦り寄ってきたらどうするんですか?」
セナが、他のオメガのように擦り寄って来たら?
想像して、思わず笑ってしまう。
「何を想像したんですか?」
だって、あのセナが擦り寄って来たら笑ってしまうだろう。いつもツンツンしているのに、媚びを売って擦り寄ってくるなんて想像がつかない。本人だってその仕方は分からないだろうから、きっとぎこちなく拙いだろう。体を交えた時だってそうだったから。
「まさか擦り寄って来たら応えるんですか? いつもは吐いて捨てるのに?」
「そういうわけじゃないが、拒絶する理由もないだろ」
他のオメガとセナは違う。二度も体を交えて責任を取ると言っているのだから今更拒絶する方がおかしい。
「……とりあえず、あいつに紹介するオメガを選びました」
「……は?」
擦り寄るセナを思い浮かべていたが、圭人からその話を持ち出されると気分が悪くなる。
「あいつが言っていたでしょ。オメガと付き合いたいって。責任を取ると言ったんですから、全部叶えてあげましょうよ」
「あいつは自分の世話もまともに出来ないのに、恋人なんて早過ぎる。余計なことはしなくて良い」
「お相手のオメガ候補は何人かいます」
圭人が出した候補者は、俺が最初に指示してあった多少クズなオメガではなく、安心出来るオメガだった。
「あいつには勿体無いですが、きっとあいつも夢中になるでしょう。ヒート時用のアルファも見繕いますよ」
圭人には頑固なところがある。俺とセナを引き離すことしか今は頭にないのだろう。圭人を刺激して面倒な手を取られても困る。圭人は俺の幼馴染でもあるが、高嶋家は連城家に長年仕えている家系だ。連城グループの発展と連城家の人間の幸せを本気で願っている。セナを排除するために連城家に報告されることが一番面倒になる。
「分かったよ。アルファは置いておけ。オメガを紹介するのも好きにしろ」
「では」
「ただ、オメガは俺の言う奴にしろ」
「どなたですか?」
脳内に浮かぶ男の名前を言えば、圭人は一瞬不思議な顔をしたが、すぐに引っ込めて「分かりました」と一礼して出て行く。
一人になるとようやく静かになった。色々考えることは多いのに、セナからのメッセージを受信してしまい考えることは飛んでいく。
「ヒート中の仕事はどうなるかって? 休めば良いよ」
オメガになって三月、成人してオメガが発現するパターンもあるが、その場合は大体半年以内に発情期がくる。きっとセナも同じだろうから、今後三月以内にくるだろう。不安で仕方がないらしいセナを安心させるために、返信をせずに電話を掛けることにした。
「セナ? ヒートがきそうなのか?」
『違えよ。ただ、もういつきてもおかしくねえかなって思って』
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