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17.願う奇跡
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そんな中、ハイリッヒ先輩とクラージュ先輩が二人で話す姿を目にし、思わず立ち止まってしまった。
人の出入りが少ない時間帯の図書室。人目を避けるような場所で話をしていた。
あまりにも凝視してしまっていたからか、二人がこちらに気付く。慌ててその場を離れようとしたが「アイントロイヤー」と呼ばれてしまう。
「こんにちは」
「あぁ。突然呼び止めて悪い。……顔色が悪いな」
「はは、大丈夫です」
視覚情報だけで判断するなら、二人は元気そうだった。顔色も悪くない。
「アイントロイヤーはリリカと仲良くしてくれていたからな。こんな状況では心も休まらないだろう」
「……リリオン先輩は生きていると、信じています」
「どうして?」
「あの人は妖精の生まれ変わりです。魔力暴走を起こしたなら、それはきっと必然です」
支離滅裂な思考はまたも荒唐無稽な答えを出した。よく考えて出したそれではない。ただ、強い願望だった。
二人は僕の答えに笑うことなく、「やっぱりそう思うよな」とクラージュ先輩は同調してくれた。
「俺もそう思う。あいつは簡単には死なない。死ぬならそれさえも面白くさせるだろ。本当にあいつは妖精そのもの過ぎるし」
「それはそれで怖いけどね。リリカが魔力暴走を起こしてまでしたい何かがあったとしたら」
「学園全体を巻き込んでいるもんな。先輩、相当面倒な後始末をさせられることになるんじゃないか?」
「……今のうちに父上にも報告しておこうかな」
二人の会話から、二人ともリリオン先輩の死を信じていないようと知る。
「ただ、魔力暴走を起こしたことは事実なんだよね。魂も弱っていた。奇跡を起こさないと……」
ハイリッヒ先輩はその先は言わなかった。
リリオン先輩を魔力暴走に追い詰めたのはノービレ先輩だという噂は、今のところ一番真実に近かった。学園側は否定したが、本人が否定しない。そのせいでノービレ先輩が原因だと多くの生徒が本気にしている。
ノービレ先輩を非難する者もおり、同じ人間族を目の敵にする者も出てきている。
特にリリオン先輩を心酔する層が酷い。
「昔からリリカは人の感情を刺激するんだ。リリカに強く惹かれる者とリリカを嫌悪する者との差がはっきりしている。昔も、リリカに毒を盛った輩がいたし」
「だからあいつも周りと一定の距離を保っているんだろ。自分の存在感が影響あり過ぎるからって。人によってはすごい自信過剰だけど、リリカの場合は笑えないよな」
「あの容貌は本当に危ない。本人はそれを分かっているから余計に」
二人の会話を聞きながら、僕は思い切って現状について問うことにした。
「リリオン先輩とマリグノ先輩は、どうなっているんですか?」
「外側からでは全く分からない。結界魔法も解読しているがどのくらい掛かるか。今のところ解読は不可能らしい」
答えたのはハイリッヒ先輩だ。
「現状が変わらないようであれば、そろそろ魔法機関へ通報をすることになる。あそこが一番魔法への造詣が深い」
「まぁ魔法に関わる研究や犯罪対策とか、秩序と管理をする公的機関だからな」
「ルディの思惑が分かればいいんだが。はぐらかしてばかりだ」
「あいつも何考えているか分からないタイプじゃん。素直に答えてくれないって」
「待ってくださいハイリッヒ先輩」
再び二人の会話に戻りそうになったところで、僕は聞き捨てならない言葉を聞いた気がして待ったを掛ける。
二人が同じタイミングでこちらに視線を向けた。
「はぐらかしてばかりって、マリグノ先輩と話せたんですか?」
「あぁ。中には入れないが会話はできた」
「リリオン先輩のことは聞いたんですか?」
「何も教えてくれなかったよ。はぐらかされて終わった」
「……そうですか」
結局、何の進展もない。
あからさまにガッカリしてしまった僕に、ハイリッヒ先輩は真剣な表情で続けた。
「アイントロイヤー、あまりリリカに囚われるな」
「……そんなことは、ないですが」
「リリカに囚われ過ぎると後悔するぞ」
困惑してしまう。囚われているつもりはない。交流のある相手の生死が分からなければ誰だって心配になるだろう。
「先輩方は、心配していないんですか?」
二人は顔を見合わせてそれぞれ答える。
「私の知るリリカは心配するだけ無駄だから」
「今は何も分からない状態だからな」
僕は二人と別れ、自室へと戻った。
人の出入りが少ない時間帯の図書室。人目を避けるような場所で話をしていた。
あまりにも凝視してしまっていたからか、二人がこちらに気付く。慌ててその場を離れようとしたが「アイントロイヤー」と呼ばれてしまう。
「こんにちは」
「あぁ。突然呼び止めて悪い。……顔色が悪いな」
「はは、大丈夫です」
視覚情報だけで判断するなら、二人は元気そうだった。顔色も悪くない。
「アイントロイヤーはリリカと仲良くしてくれていたからな。こんな状況では心も休まらないだろう」
「……リリオン先輩は生きていると、信じています」
「どうして?」
「あの人は妖精の生まれ変わりです。魔力暴走を起こしたなら、それはきっと必然です」
支離滅裂な思考はまたも荒唐無稽な答えを出した。よく考えて出したそれではない。ただ、強い願望だった。
二人は僕の答えに笑うことなく、「やっぱりそう思うよな」とクラージュ先輩は同調してくれた。
「俺もそう思う。あいつは簡単には死なない。死ぬならそれさえも面白くさせるだろ。本当にあいつは妖精そのもの過ぎるし」
「それはそれで怖いけどね。リリカが魔力暴走を起こしてまでしたい何かがあったとしたら」
「学園全体を巻き込んでいるもんな。先輩、相当面倒な後始末をさせられることになるんじゃないか?」
「……今のうちに父上にも報告しておこうかな」
二人の会話から、二人ともリリオン先輩の死を信じていないようと知る。
「ただ、魔力暴走を起こしたことは事実なんだよね。魂も弱っていた。奇跡を起こさないと……」
ハイリッヒ先輩はその先は言わなかった。
リリオン先輩を魔力暴走に追い詰めたのはノービレ先輩だという噂は、今のところ一番真実に近かった。学園側は否定したが、本人が否定しない。そのせいでノービレ先輩が原因だと多くの生徒が本気にしている。
ノービレ先輩を非難する者もおり、同じ人間族を目の敵にする者も出てきている。
特にリリオン先輩を心酔する層が酷い。
「昔からリリカは人の感情を刺激するんだ。リリカに強く惹かれる者とリリカを嫌悪する者との差がはっきりしている。昔も、リリカに毒を盛った輩がいたし」
「だからあいつも周りと一定の距離を保っているんだろ。自分の存在感が影響あり過ぎるからって。人によってはすごい自信過剰だけど、リリカの場合は笑えないよな」
「あの容貌は本当に危ない。本人はそれを分かっているから余計に」
二人の会話を聞きながら、僕は思い切って現状について問うことにした。
「リリオン先輩とマリグノ先輩は、どうなっているんですか?」
「外側からでは全く分からない。結界魔法も解読しているがどのくらい掛かるか。今のところ解読は不可能らしい」
答えたのはハイリッヒ先輩だ。
「現状が変わらないようであれば、そろそろ魔法機関へ通報をすることになる。あそこが一番魔法への造詣が深い」
「まぁ魔法に関わる研究や犯罪対策とか、秩序と管理をする公的機関だからな」
「ルディの思惑が分かればいいんだが。はぐらかしてばかりだ」
「あいつも何考えているか分からないタイプじゃん。素直に答えてくれないって」
「待ってくださいハイリッヒ先輩」
再び二人の会話に戻りそうになったところで、僕は聞き捨てならない言葉を聞いた気がして待ったを掛ける。
二人が同じタイミングでこちらに視線を向けた。
「はぐらかしてばかりって、マリグノ先輩と話せたんですか?」
「あぁ。中には入れないが会話はできた」
「リリオン先輩のことは聞いたんですか?」
「何も教えてくれなかったよ。はぐらかされて終わった」
「……そうですか」
結局、何の進展もない。
あからさまにガッカリしてしまった僕に、ハイリッヒ先輩は真剣な表情で続けた。
「アイントロイヤー、あまりリリカに囚われるな」
「……そんなことは、ないですが」
「リリカに囚われ過ぎると後悔するぞ」
困惑してしまう。囚われているつもりはない。交流のある相手の生死が分からなければ誰だって心配になるだろう。
「先輩方は、心配していないんですか?」
二人は顔を見合わせてそれぞれ答える。
「私の知るリリカは心配するだけ無駄だから」
「今は何も分からない状態だからな」
僕は二人と別れ、自室へと戻った。
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