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17、挽回したい
お返し
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(お姫様、意外に大物?それとも、鈍いだけ?)
ゾラがハラハラと事態の推移を見守るうちに、恭親王はアデライードの細い足首に金鎖のアンクレットを巻き付ける。ちょうど、足の甲あたりに、透かし張りの花模様の翡翠が垂れるのが、透きとおるように白く美しい足に映えて、息を飲むほどの艶めかしさだ。
(うわっ、殿下、なんつーか、エロい、エロいよっ)
ゾラとゾーイが何となく見てはいけないものを見たような気がして、目を背けようとした時。恭親王が再びアデライードの足の甲に顔を近づけ、その翡翠を口に含んだ。
「!!!!」
全員が息を飲んで見守ること、一分ほど。
恭親王が口から唾液塗れの翡翠を出して、アデライードを妖艶な眼差しで見上げる。
「これに、私の魔力を含ませたから。魔力の循環が悪くなった時に、ここから私の魔力を取り入れれば、改善されるはずだ。魔力がなくなっても、次に来た時にまた含ませればいいから」
アデライードがぱちぱちと瞬きして恭親王を見下して、言った。
「……ありがとうございます。とても、助かります」
そうして身を屈めて、もらったアンクレットを見るフリをして、姫君が手に持った手巾でさりげなく涎を拭きとったのを見たアリナの頬がぴくりと震えたのを、ゾラは見逃さなった。
(お姫様、頭弱いなんて言ってごめん! めっちゃさりげねぇ! そうだよね、涎は嫌だよねぇ!)
ゾラ自身も唇の端がぴるぴる震えるのを懸命に堪えなければならなかった。
「こんなにしていただいて、本当に心苦しいのです。わたしには殿下に差し上げるものが、何もありませんのに。殿下のお誕生日は、いつですの?」
先ほどの足に口づけた行動で、周囲の侍女たちの位置が乱れたその隙に、まんまとアデライードの隣を確保した恭親王に対し、アデライードはやや距離を取るようにしながら尋ねる。逃すまいとしてアデライードの腰に手を回した恭親王が、やはり唇に笑みをたたえ、言う。
「誕生日は……憶えてないんだ」
「ええっ?」
それにはアンジェリカもリリアも驚いて恭親王の顔を見る。
「昔……落馬してそれ以前の記憶が全部ないんだ。東では個人の誕生日を祝ったりはしないし、書類に書き入れることもないから、そのままなんだ。八月だとか聞いたことはあるけれど、詳しくは知らない」
あまりの衝撃の告白に、アデライードは翡翠色の瞳を見開いてじっと恭親王を見つめる。
「でも、代わりに一つお願いを聞いてもらえるかな?」
「わたしにできることでしたら」
周囲は、また何かいかがわしい行為を要求するのではないかと、再び緊張が高まる。恭親王はゾラに命じて別の小さな箱を持って来させる。中に入っていたのは、片方だけの小さな翡翠のピアス。
「男性が片耳だけ耳飾りをするのは、『心に決めた女性がいる』という証だとか。私もそれを着けて、あなたに対する愛を周囲に知らしめようと思う。ついては、これにあなたの魔力を付加してもらえないだろうか」
掌の上に乗せて、アデライードに向けて差し出されたピアスを見て、ゾラは目を見開いた。
(まじか! お姫様の口の中でくちゅくちゅしてもらって涎塗れになったやつを耳につけたいって、殿下、俺の知っている殿下はそんな変態じゃねぇ! 殿下、目を覚ましてくれぇ!)
ちらりと横を見ると、やはり彫像のように仁王立ちしたゾーイの顔も蒼ざめている。ゾーイの変態耐性が相当に低いことを知っているゾラは、この後どうなるんだと、もう気が気でない。
アデライードは差し出された翡翠を手に取ると、「そんなことでしたら」とにっこりほほ笑んだ。そして、片手に取ったまま顔の前にかざし、何やら口の中で呟くと、指先に摘ままれた翡翠が銀色の光に包まれた。時間にして数秒。
「はい。どうぞ」
輝くような微笑みとともに手渡されたそれには、確かにアデライードの魔力が込められていた。
そう、西の王族は体外に魔力を放出できるから、口に含む必要がないのだ。
当てが外れてあからさまにがっかりしている恭親王の姿に、何を期待していたのか察して、呆れたような白々しい視線を送る一同の中で、ゾラはとうとう堪えきれなくなって腹を抱えて大爆笑してしまった。
アデライードが一人、何がそんなに面白いのかしら?と不思議そうに首を傾げていた。
ゾラがハラハラと事態の推移を見守るうちに、恭親王はアデライードの細い足首に金鎖のアンクレットを巻き付ける。ちょうど、足の甲あたりに、透かし張りの花模様の翡翠が垂れるのが、透きとおるように白く美しい足に映えて、息を飲むほどの艶めかしさだ。
(うわっ、殿下、なんつーか、エロい、エロいよっ)
ゾラとゾーイが何となく見てはいけないものを見たような気がして、目を背けようとした時。恭親王が再びアデライードの足の甲に顔を近づけ、その翡翠を口に含んだ。
「!!!!」
全員が息を飲んで見守ること、一分ほど。
恭親王が口から唾液塗れの翡翠を出して、アデライードを妖艶な眼差しで見上げる。
「これに、私の魔力を含ませたから。魔力の循環が悪くなった時に、ここから私の魔力を取り入れれば、改善されるはずだ。魔力がなくなっても、次に来た時にまた含ませればいいから」
アデライードがぱちぱちと瞬きして恭親王を見下して、言った。
「……ありがとうございます。とても、助かります」
そうして身を屈めて、もらったアンクレットを見るフリをして、姫君が手に持った手巾でさりげなく涎を拭きとったのを見たアリナの頬がぴくりと震えたのを、ゾラは見逃さなった。
(お姫様、頭弱いなんて言ってごめん! めっちゃさりげねぇ! そうだよね、涎は嫌だよねぇ!)
ゾラ自身も唇の端がぴるぴる震えるのを懸命に堪えなければならなかった。
「こんなにしていただいて、本当に心苦しいのです。わたしには殿下に差し上げるものが、何もありませんのに。殿下のお誕生日は、いつですの?」
先ほどの足に口づけた行動で、周囲の侍女たちの位置が乱れたその隙に、まんまとアデライードの隣を確保した恭親王に対し、アデライードはやや距離を取るようにしながら尋ねる。逃すまいとしてアデライードの腰に手を回した恭親王が、やはり唇に笑みをたたえ、言う。
「誕生日は……憶えてないんだ」
「ええっ?」
それにはアンジェリカもリリアも驚いて恭親王の顔を見る。
「昔……落馬してそれ以前の記憶が全部ないんだ。東では個人の誕生日を祝ったりはしないし、書類に書き入れることもないから、そのままなんだ。八月だとか聞いたことはあるけれど、詳しくは知らない」
あまりの衝撃の告白に、アデライードは翡翠色の瞳を見開いてじっと恭親王を見つめる。
「でも、代わりに一つお願いを聞いてもらえるかな?」
「わたしにできることでしたら」
周囲は、また何かいかがわしい行為を要求するのではないかと、再び緊張が高まる。恭親王はゾラに命じて別の小さな箱を持って来させる。中に入っていたのは、片方だけの小さな翡翠のピアス。
「男性が片耳だけ耳飾りをするのは、『心に決めた女性がいる』という証だとか。私もそれを着けて、あなたに対する愛を周囲に知らしめようと思う。ついては、これにあなたの魔力を付加してもらえないだろうか」
掌の上に乗せて、アデライードに向けて差し出されたピアスを見て、ゾラは目を見開いた。
(まじか! お姫様の口の中でくちゅくちゅしてもらって涎塗れになったやつを耳につけたいって、殿下、俺の知っている殿下はそんな変態じゃねぇ! 殿下、目を覚ましてくれぇ!)
ちらりと横を見ると、やはり彫像のように仁王立ちしたゾーイの顔も蒼ざめている。ゾーイの変態耐性が相当に低いことを知っているゾラは、この後どうなるんだと、もう気が気でない。
アデライードは差し出された翡翠を手に取ると、「そんなことでしたら」とにっこりほほ笑んだ。そして、片手に取ったまま顔の前にかざし、何やら口の中で呟くと、指先に摘ままれた翡翠が銀色の光に包まれた。時間にして数秒。
「はい。どうぞ」
輝くような微笑みとともに手渡されたそれには、確かにアデライードの魔力が込められていた。
そう、西の王族は体外に魔力を放出できるから、口に含む必要がないのだ。
当てが外れてあからさまにがっかりしている恭親王の姿に、何を期待していたのか察して、呆れたような白々しい視線を送る一同の中で、ゾラはとうとう堪えきれなくなって腹を抱えて大爆笑してしまった。
アデライードが一人、何がそんなに面白いのかしら?と不思議そうに首を傾げていた。
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