沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第3章 沢田くんと炎のドッジボール

沢田くんと試合結果

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 気がついたら、私はベッドの上にいた。
 白い天井からぶら下がっている仕切り用の青いカーテンに見覚えがある。ここはきっと保健室だ。

 まさか、沢田くんに抱きしめられて気絶しちゃうなんて。
 気を失う直前の出来事を思い出して、握りしめた布団の端をおでこが隠れるまで引き上げた。

 ああああ、沢田くん、カッコ良かった。
 
 ニヤニヤ、ニタニタ。布団の下に隠れて散々笑ったあとで、ハッと気づいた。

 そういえば、試合は⁉︎

 飛び起きると、カーテンの裏で人影が動いた。
【あ。佐藤さん、起きた?】

 この声は……沢田くんだ! ずっとそこにいたの⁉︎ 恥ずかしい!

「さ、佐藤さん……【入ってもいい?】」
「どっ、どうぞ!」
 短い髪の毛をささっと手ぐしで直していると、沢田くんがカーテンを開けて入ってきた。

「……【佐藤さん、大丈夫?】」
「心配してくれてありがとう。もう大丈夫だよ」

 っていうか、沢田くんがトドメ刺したんだけどね。

「それより、試合はどうなったの? 勝った?」
 たしか、私が気を失う前までは沢田くんの活躍で圧倒的優位に立っていたはずだ。
 ところが、沢田くんは無表情のまま首を横に振った。


「……ごめん【実は、負けちゃったんだ……】」


 私は驚いて何度もまばたきをした。
「どうして? 何があったの、沢田くん」
 沢田くんは申し訳なさそうに少しうつむいた。


【佐藤さんがやられちゃった後、頑張って仇を討とうとしたんだけど……どうしても『おんみつ』ができなかったんだ。俺はひとりぼっちじゃないって佐藤さんが言ってくれたことが頭に残って……そうしたら、技が出せなくなっちゃって──】


 コートの上で棒立ちになっていた沢田くんは、森島くんにけしかけられたAチームの女子に襲われたらしい。
 でも、そんな沢田くんをBチームのみんなが守ってくれたのだという。


【俺、役立たずになっちゃったのに、みんなが盾になって守ってくれたんだよ。本当に嬉しかった。試合には結局負けちゃったけど、みんなは楽しかったねって笑ってくれて……。゚(゚´ω`゚)゚。】


 そうだったんだ。
 沢田くんは、みんなの輪に入れたんだね。
 みんなの笑顔の中心にいる沢田くんを思い描いて、私は微笑みを浮かべた。


「よかったね、沢田くん」

 沢田くんは驚いたように顔を上げて、私を見つめた。
「怒ってない……?」
「うん。沢田くんがひとりぼっちじゃなくなったことの方が、勝負に勝つより嬉しいよ。本当に良かったね」


「佐藤さん……」


 沢田くんの瞳が艶やかな黒い真珠のように輝いた。
 次の瞬間、沢田くんが真顔で私に近づいてきた。
 沢田くんが手をついたベッドが軋んで、私は少しバランスを崩して──。
 コツン、とおでこが沢田くんの肩にぶつかって止まった。


 ドキッと心臓が跳ねたその時、沢田くんの心の声が私の耳に届いた。
 



【俺……佐藤さんが好きだ】


 
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