沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
150 / 160
第6章 沢田くんと夏の恋花火

【番外編】小野田くんと小林くん

しおりを挟む



 人々から忘れられた男・小野田は、本編が終わったことも知らずにまだ前工の小林の家にいた。

【今頃、沢田たちはうまくやってるかな……】

 小林から挑まれたすーぱーぷよぷよ2で2プレイ対戦しながら、小野田はいつの間にか消えていた沢田空のことを思い出していた。

【これで小四の朝の会の時の礼を返すことができたかな。フッ。沢田のために体を張ってやる俺。これぞ縁の下の力持ちだぜ!】

 小野田は自分の行動に満足していたが、実際はどうだったのか──。
 特別に空の心の声とともに回想をしてみよう。


 ***


 佐藤さんが怪しいやつにさらわれた! と聞いて、いてもたってもいられずに家を飛び出した空は、佐藤さんの居場所に心当たりがあると言った小野田を信じて小林の家に行った。ところが──。
 

「おう、よく来たな小野田……。歓迎するぜ」
【だれ……このゆでたまごみたいな頭の人:(;゙゚'ω゚'):】
「まさか二日連続で来るとはお前もいい度胸だな。友達ダチまで連れてきやがって。二人ともオレンジジュースでいいか?」
友達ダチじゃないよ。゚(゚´ω`゚)゚。なんかすごい勘違いしてるし、顔が怖いよ~!! よく見るとこの人、前歯がないよ~~!!】

 玄関から出てきた小林の面相に、空はいきなりびびっていた。すると、

「勘違いすんな。こいつはただの友達ダチじゃねえ。俺の親友マブダチだ!!」

 小野田が突然思いもよらないことを言い出し、さらに空はびびった。

親友マブダチってなに⁉︎ 友達でもないのに、何言ってるのこの人Σ(゚д゚lll)どうしよう、逃げたい!!】

「……コーラにしてくれ」
「分かった。オレンジな」
「コーラで」
「果汁100%だぞコラア!」
 
 小林と小野田が額を突き合わせてメンチを切る背後で、空はブルブルと拳を震わせて叫んだ。

「コーラもオレンジもいらないから……佐藤さんを出してください!!【本当にどうでもいいんですけどーっ!!\\\٩(๑`^´๑)۶////】」

「ああん? なんだとコラア。果汁はいらねえから砂糖を出せってどういうことだコラア! 太りてえのかコラア! 将来糖尿で泣くぞコラア!」

「いいから、佐藤さんを早く出してくださいって言ってるんですよゆでたまご頭の人!!【あっ……思わず】」

 
 あたりが一瞬シーンと静まり返った。
 小林の瞳から溢れた涙が、つぅと彼の頬を伝い落ちる。


【な、泣いたーーーー!!!Σ(゚д゚lll)】


「さ、沢田……! ゆでたまごはさすがに言い過ぎだぞ?」
 小野田に言われ、空はちょっと反省した。

「すみませんちょっと言い過ぎました。ごめんなさい、たまご頭の人」
 空はペコリと頭を下げた。

「いや、ゆでてあるかの問題じゃなくね⁉︎」
【えっ⁉︎ ゆですぎの問題じゃなかったの?Σ(゚д゚lll)】

「お前ら……完全に俺を怒らせたようだなコラア」

 小林から立ち登る怒りのオーラに、空はびびってすぐさま『おんみつ』を発動させた。

「今日はすーぱーぷよぷよ2で勝負じゃコラア!」
「よし! 受けて立つ!」

 小野田は空に背を向けたまま、小声で言った。
「沢田、こいつは俺が引きつける! 今のうちに佐藤さんを助け出して逃げるんだ! わかった……な? あれ? どこ行った? 沢田?」

 小野田が振り向いた時には、空はもう小林の家を抜け出ていた。

【あんなところに佐藤さんがいるわけない。だって玄関に佐藤さんのくつがなかったもん。ああ~時間を無駄にしちゃったよ!。゚(゚´Д`゚)゚。 なんなのあの人たち。俺の邪魔ばっかりして、何がしたかったのかさっぱり分かんないよ~~!!】


 その後、母からの電話で佐藤さんは沢田家に来てすぐ出て行ったことを聞いた空は、今度こそまっすぐ白鳥橋に向かったのであった。
 今夜は家族で水入らずよ! と張り切っていた母が何故か「やっぱり今夜はお父さんと二人っきりでイチャイチャしたくなったから花火が終わるまで帰ってこなくていいわよ♡」と言い出したのも、空の足を軽くした要因の一つである。


 ***


「うりゃああ! 三連ぷよくらえーー!!【うまくやれよ、沢田……! 俺の屍を越えていけ!】」
「やるな小野田。だが俺は……四連ぷよでお返しだコラア!」


 小野田くんと小林くんはこうして朝までぷよぷよし続けましたとさ。
 おしまい。


 
 【えっ、こんな終わり方?Σ(゚д゚lll)ガーン】


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...