沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
149 / 160
第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんと夏の始まり

しおりを挟む



「あーあ。花火終わっちゃったな」

 そう言いながら唐突に森島くんが振り向いたから、私は慌てて沢田くんから離れた。間一髪、私たちがくっついていたことは誰にも気づかれなかったみたい。

「でもこれから夏休みが始まるね。今度はみんなで海行かない?【水着女子と海辺でパーリナイ(((o(*゚▽゚*)o)))ヒャッハーーー♡】」
 森島くんは相変わらずだ。

「いいねえ、海! 泊まりがけで行きたいなあ【森島くんを夜這いしたい♡】」
 麻由香ちゃんも煩悩を爆発させる。

「ねえねえ、誰かみんなで泊まれるようないい場所知らない?」
 ざわざわとみんなの雑談が始まる。
 その時だ。


「あ……」

 
 発言したのは、なんと沢田くんだった。

「なんだよ、沢田」
「あ……うん【どうしよう、みんながこっち見てる!((((;゚Д゚)))))))俺の祖父じいちゃんが島ごと別荘持ってるって言いそうになったけど、もう恥ずかしくて言えないっ……】」


 ええええええっ⁉︎ 島ごと別荘持ってるなんて、沢田くんのおじいちゃんって何者なの⁉︎


「沢田くん、どうしたの?」
「早く言えよ沢田」

 みんなのプレッシャーに耐えきれず、沢田くんは震えている。

【どうしよう、こんなに見つめられたのはあの時以来だよ! そう、あれは俺が小四の時……】

 えっ⁉︎ 今このタイミングで回想入るの⁉︎ みんな待ってるんだけど!

【あれ? 三年だったっけ。二年だっけ? ま、どうでもいいけど──】
 
 うん、そこどうでもいい!

【クラスメイトの武井くんのレアカードを誰かが盗んだって朝の会で裁判になって……そんな時に、お腹が痛くなっちゃった俺は、手を挙げてこう言ったんだ……。『せんせー。漏れそうなんでトイレ行っていいですか?:(;゙゚'ω゚'):』】


 あっ、その話知ってる! って、今頃それ思い出すの?


【あれは恥ずかしかったな~。みんなが俺の発言に期待しちゃって……ただトイレに行きたかっただけなのに。……って、あ、あああああああ!! 思い出した!! あの顔の怖い人、小野田くんって、そういえばあの時の犯人だったよね!!((((;゚Д゚)))))))同じクラスだったのかーーっ!!】


 ええええええええ⁉︎ 小野田くんのこと、いま思い出したーーっ!!
 っていうかその犯人は小野田くんじゃなかったんだよ、沢田くん!!
 

「もう、なんなんだよ沢田。はっきり言えよ」
「あっ。ごめん。うちの島に別荘ある【あっ。言っちゃった((((;゚Д゚)))))))】」


 えええええええええ⁉︎ とみんなが大騒ぎし始めた。


「島に別荘ってすげえ! お前んち、金持ちなの⁉︎」
「そんなことないけど……【ど、どうしよう((((;゚Д゚)))))))みんながはしゃいでる⁉︎】」
「じゃあ夏休みにみんなで沢田の別荘行こうぜ!」
【えええええっ⁉︎ 勝手に決めたら母ちゃんに怒られる((((;゚Д゚)))))))】



 なんだか、この夏もまだまだ大変なことが起こりそうだね、沢田くん。
 私が見つめると、沢田くんも無表情に振り返る。

【佐藤さんも来てくれるかな……?】

 私はにっこり笑って言う。

「どんな水着を持っていこうかな」
「み……【水着⁉︎ Σ(゚д゚lll)佐藤さん、なんて大胆なっ!!(*´Д`*)】


 ついに沢田くんの顔が退化した。私はそれを見て笑いながら、どこからか流れてきたわたあめの甘い匂いを胸に吸い込む。
 祭りの夜は騒がしい夏の始まりを連れて、にぎやかに更けていった。





《沢田くんはおしゃべり 完》





 あ。ちょっと待って。
 何か忘れているような……。
 

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...