沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんと夏の始まり

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「あーあ。花火終わっちゃったな」

 そう言いながら唐突に森島くんが振り向いたから、私は慌てて沢田くんから離れた。間一髪、私たちがくっついていたことは誰にも気づかれなかったみたい。

「でもこれから夏休みが始まるね。今度はみんなで海行かない?【水着女子と海辺でパーリナイ(((o(*゚▽゚*)o)))ヒャッハーーー♡】」
 森島くんは相変わらずだ。

「いいねえ、海! 泊まりがけで行きたいなあ【森島くんを夜這いしたい♡】」
 麻由香ちゃんも煩悩を爆発させる。

「ねえねえ、誰かみんなで泊まれるようないい場所知らない?」
 ざわざわとみんなの雑談が始まる。
 その時だ。


「あ……」

 
 発言したのは、なんと沢田くんだった。

「なんだよ、沢田」
「あ……うん【どうしよう、みんながこっち見てる!((((;゚Д゚)))))))俺の祖父じいちゃんが島ごと別荘持ってるって言いそうになったけど、もう恥ずかしくて言えないっ……】」


 ええええええっ⁉︎ 島ごと別荘持ってるなんて、沢田くんのおじいちゃんって何者なの⁉︎


「沢田くん、どうしたの?」
「早く言えよ沢田」

 みんなのプレッシャーに耐えきれず、沢田くんは震えている。

【どうしよう、こんなに見つめられたのはあの時以来だよ! そう、あれは俺が小四の時……】

 えっ⁉︎ 今このタイミングで回想入るの⁉︎ みんな待ってるんだけど!

【あれ? 三年だったっけ。二年だっけ? ま、どうでもいいけど──】
 
 うん、そこどうでもいい!

【クラスメイトの武井くんのレアカードを誰かが盗んだって朝の会で裁判になって……そんな時に、お腹が痛くなっちゃった俺は、手を挙げてこう言ったんだ……。『せんせー。漏れそうなんでトイレ行っていいですか?:(;゙゚'ω゚'):』】


 あっ、その話知ってる! って、今頃それ思い出すの?


【あれは恥ずかしかったな~。みんなが俺の発言に期待しちゃって……ただトイレに行きたかっただけなのに。……って、あ、あああああああ!! 思い出した!! あの顔の怖い人、小野田くんって、そういえばあの時の犯人だったよね!!((((;゚Д゚)))))))同じクラスだったのかーーっ!!】


 ええええええええ⁉︎ 小野田くんのこと、いま思い出したーーっ!!
 っていうかその犯人は小野田くんじゃなかったんだよ、沢田くん!!
 

「もう、なんなんだよ沢田。はっきり言えよ」
「あっ。ごめん。うちの島に別荘ある【あっ。言っちゃった((((;゚Д゚)))))))】」


 えええええええええ⁉︎ とみんなが大騒ぎし始めた。


「島に別荘ってすげえ! お前んち、金持ちなの⁉︎」
「そんなことないけど……【ど、どうしよう((((;゚Д゚)))))))みんながはしゃいでる⁉︎】」
「じゃあ夏休みにみんなで沢田の別荘行こうぜ!」
【えええええっ⁉︎ 勝手に決めたら母ちゃんに怒られる((((;゚Д゚)))))))】



 なんだか、この夏もまだまだ大変なことが起こりそうだね、沢田くん。
 私が見つめると、沢田くんも無表情に振り返る。

【佐藤さんも来てくれるかな……?】

 私はにっこり笑って言う。

「どんな水着を持っていこうかな」
「み……【水着⁉︎ Σ(゚д゚lll)佐藤さん、なんて大胆なっ!!(*´Д`*)】


 ついに沢田くんの顔が退化した。私はそれを見て笑いながら、どこからか流れてきたわたあめの甘い匂いを胸に吸い込む。
 祭りの夜は騒がしい夏の始まりを連れて、にぎやかに更けていった。





《沢田くんはおしゃべり 完》





 あ。ちょっと待って。
 何か忘れているような……。
 

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