鬼嫁と呼ばれ婚約破棄された私は魔王と強制結婚させられました。腹が立つので人間界滅ぼそうと思います。

景華

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ついてない、私

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 朝だというのに相変わらずこの魔界に日は当たらない。
 門一つ隔てた同じ世界のことなのに、それをくぐるだけで一歩進めば魔界となる不思議。

 私は一人、薄暗く鬱蒼とした森の中を歩き続ける。

「それにしても静かね」

 ラザミリ城で聞いた話では、魔界の森の中には魔物がウヨウヨしていて、足を踏み入れたら最後、たちまち奴らに囲まれる。だから王家の専用の馬車を使わなければ危険なんだ、って教わったのだけれど……。

 森の中には魔王城内と同じく、何もいない。
 気配すら感じない。

「魔界って過疎化してるの?」

 私の呟きが、しんと静まり返った森の中に響く。

 にしても、鳥の鳴き声ひとつしないのは、何だか不気味だ。
 あの美人さんはこっちに行けって言ってたけれど、一体何があるんだろう?
 早く行って早く帰ろう。

 木々の間の一本道を進んで行くと、ようやく見えてきたのはぴっしりと閉じられた黒い門。

 これ、城側の出入り口のものと同じ……。

 まるでここから出ることを禁ずるとでも言わんばかりの、大きく重厚な門が威圧感を放つ。

「魔法石とか中和がどうのとか言ってたけど……これのこと?」

 私が確かめるように、そっと門の中央にくっついている黒い宝石に触れた、瞬間──。
「っ!?」

 宝石がが淡く白い光を放ち始め、そして──「消えた……」

 まるで景色に溶けるようにして、忽然と消えてしまった門に、私は思わずその場に尻餅をついて呆然とその跡を見つめた。

 さっきまであった……のよね?
 え、待って、何で?

「アァー!!」
「っ!?」
 突然何かくぐもったような大きな鳴き声が森に響き渡り、私は肩をびくりと跳ね上がらせて辺りを見渡す。

「か……帰らなきゃ……!!」
 これ以上ここにいるのは──怖い。
 私は震える足を無理やり立たせると、元来た道を全速力で駆けた。

「はぁっはぁっ──っはぁっ、はっ、キャァッ!!」
 ズサッ!!
 恐怖と不安で一心不乱に走り続けた私は、道の真ん中に飛び出た握り拳ほどの石につまづいて、勢いよく滑りこけてしまった。

「ったぁ~……」
 地面に擦り付けた両膝から流れる赤い血。
 暑く、ジンジン痛む。
 暗雲立ち込める空からはぽつりぽつりと雫が落ち始めた。
「やばっ、雨!?」
 痛む足を引きずりながらとりあえず近くの木の下へと移動すると私はその木の根元へと腰を下ろした。

 ついてない。
 本当についてない。ここのところの私。

 私は泣きそうになるのを堪えるように、威力を増した雨を生み出す空をじっと見上げるのだった。
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