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美しい女神が降臨したかと思いきや、なんとユリアだった。
声も以前より落ち着いた感じがする。ユリアだと直ぐには気付かなかった事で、会えてなかった月日の長さを感じさせた。
「ユリア…姉さん……」
(この数年で、更に綺麗になったな……。もはや女神様みたいだ……)
「ねーね……?」
見知らぬ人物に少し警戒していた様だったが、レイルークの言葉で相手が自分の姉だと気付いたルドルフは、首を傾げてユリアに訪ねた。
「そうよ。ルディ、大きくなったわね。私の事は覚えてないと思うけど、ルディのお姉ちゃんよ?」
「ねーね!」
殆ど記憶に無いであろうユリアに対して、ルドルフは臆した様子もなく、小走りでユリアに近寄った。
「おかえりなさい! ねーねのこと、にーにから、いっぱいきいてた! ボクね、すごくあいたかった!」
「それは嬉しいわ。そうだルディ、レイは私のこと、なんて言ってたの?」
「えっとね、すごくキレイで、すごくやさしいって! あとね、あたまよくて、えがおがかわいくて、なんでもできるって、すごいねーねだって! うーんと、まだあるよ?」
(ちょちょっとルルー! 何言ってるんだ!? 兄ちゃんのLIFEもうゼロだよ!?)
「ル、ルルー! 折角姉さんに会えたんだから、一緒に遊んでもらおう!」
「もールルーちがう、ルディー!」
「ルルールルる、でぃー、ほらボール、今から浮かせるよー! 念動力」
丁度足元に転がっていたボールが、フワリとルドルフの頭の高さまで浮かび上がった。
「すごーい! ボールうかんでるー!」
「ほら、ボール捕まえる事が出来るかなー?」
「わー! ボールまてー!!」
ユリアから、ルドルフを引き剥がす事に成功したレイルークは、安堵の息を吐いた。が。
横にいたユリアがレイルークの側に近付いて、耳元にそっと声をかけてきた。
「嬉しい。あんな風に、思っていてくれて」
(うひゃぁ!! 耳元で美声、美声がーー!!)
「ね、姉さん。改めて、お、おかえり。その、学園生活大変みたいだけど、大丈夫だった?」
さりげなく身を引くと、ユリアはすんなりレイルークから離れた。
「ええ。ちょっと忙しいのよ。どうしてもクリアしなくてはいけない課題があってね。はっきり言うと、今のままでは時間が足りなくて。だから去年の年末年始も、レイに会えなくて凄く寂しかったわ」
「課題……。今回帰省して、大丈夫だった? ……もしかして僕が帰ってこいって書いたせいなんじゃ……?」
「違うわ。私が、如何してもレイに会いたかったから。でも、やっぱり忙しくてね。今日一日しか居られないのよ。夕方前には戻らないと」
「ええっ!? そ、そうなんだ……。今日だけ。それも夕方まで、なんだ……」
数日は一緒に過ごせると思っていたので、あからさまにガッカリした。
そんなレイルークを慰めるかのように、ユリアはレイルークの二の腕に手を置いた。
「……それにしても。会えない期間に、背がかなり伸びたのね。更にカッコ良くなったわ。素敵に成長したわね、レイ」
確かに、ユリアが魔術学園に入学する前は、ユリアの方が背が高かったが。今はほぼ同じ背丈だ。
だからだろうか。ユリアとの距離感が以前よりやけに近い気がする。
「あ、ありがとう。姉さんも更に綺麗になった、ね」
少し照れ臭くなったレイルークはユリアから視線を逸らした。
「……あ、聞きたかったんだけど、学園に通っててさ、魔法が更に成長した感じはする?」
「成長……そうね。知識が増えた事で、魔法の威力は上がった気はするわ。でも、私よりレイの方がやはり凄いと思うわよ?」
そう言うとユリアはレイルークから手を離して、ルドルフに視線を向けた。
「魔力でボールを浮かせて、今もルディを誘導してるあの魔法は凄いわ。私には、到底使えない」
「そうなの? じゃあ、いつか教えてあげるよ。……あ、教えると言えば。最近さ、母上に鍛錬してもらってるんだ。剣技も大分上達したんだよ?」
「シシルと特訓しているのは転写書に書いてあったけど、お義母様とまで? ……まあ、レイの事だから、そんな気はしていたけれど。……どの位上達したか、お義母様は何か言ってた?」
「えーと。母上が言うには、剣技だけで判断するなら上級冒険者位の実力はあるだろうって」
「そうなのね。……じゃあ、一度私と模擬戦してみる? 学園でも剣の鍛錬を積んでたのよ。剣術の実技授業も頑張っていたから、腕は衰えていないと思うわ」
「え? 魔術学園なのに、剣術の実技もあるの?」
「ええ。意外だと思うだろうけど、魔術以外にも結構力を入れているのよ。剣術の講義や訓練に、S級の冒険者が来たりするの。そういえば以前、お義母様が特別講師に来たこともあったわよ?」
「え、そうなの!?」
(聞いてないんだけど母上!?)
「そ、それって変装した姉さんと、母上が会ったって事だよね!? 母上は、姉さんに気付いた!?」
「どうかしら? 気付いた感じはしなかったわね。お義母様の周りは常に生徒が群がっていたから。多分、分からなかったと思うわ」
「生徒まで虜にするなんて、何て人たらしな……。流石母上」
「それで、どうしたいかしら? 模擬戦」
「あ、うん! 姉さんと戦ってみたい!! 自分の実力が、どの位通用するか知りたいし!」
「私も、レイの実力が知りたかったから、ちょうど良かった。じゃあ、昼食後に模擬戦しましょうか?」
「分かった! あ、そろそろ昼食の時間だね。ルルー! お昼ご飯行こうかー!」
「ハアハア、ルルー、違うっ、ル、ルディ! だよ!」
ボールを追いかけ過ぎて疲れている様だったので、さりげなくボールを操作して、ルドルフが捕まえやすくした。
やっとボールを捕獲出来てご満悦なルドルフと、そんなルドルフの功績を讃える様に、優しく頭を撫ぜるユリアと共に庭を歩き出した。
「そうだわ、レイ。折角だから、勝った方にご褒美を付けるのはどうかしら?」
「ご褒美?」
「例えば。負けた方に、一つ。お願い事を聞いてもらう、とか」
「願い事……? ユリア姉さんに」
(姉さんに願い事……。姉さんは何でも叶えてくれるから、変なこと言うと後が怖い気がする)
「うーん。僕は特に願い事は無いけど。姉さんは、僕に願い事があるの?」
「あるわ。どうしてもお願いしたい事が、ね」
言葉に、強い意思が含まれている気がしたのでユリアを見ると。
レイルークを見つめていたのか、直ぐに綺麗なアメジストの瞳と目が合った。
「レイルークにしか、叶えられない願いがあるの。私が勝ったら、そのご褒美を頂けないかしら?」
「う、うん。そこまで言うなら、別に良いよ。でも、僕が勝ったら願い事叶えてよ? 凄いの、考えておくから!」
「もちろん」
「ボクね、にーにのつくった、おかしたべたい!」
「良いよ!! 兄ちゃんとびっきり美味しいの、作ってあげるよ!!」
「ええ!? レ、レイの手作りお菓子!? ルディ、レイに作ってもらった事、あるの?」
「あるー! プリン、おいしかったー!」
「……レイ。レイがお菓子作れるなんて、私知らなかったわよ?」
「まあ、言ったことなかったしね。でもさ、作れるって言っても簡単な物しか作れないから。だから言わなかっただけだし」
(料理出来たらかっこいいかと思って、前世で母さんに教わってた時期があるんだよね。結構評判良かったんだよな)
「……ねえ、レイ。私も、食べたいわ」
「それが、願い事?」
「違うけれど、食べてみたいわ。私は食べた事が無いのに、ルディだけ狡い。凄く、凄く羨ましいわ」
本気で羨ましそうなユリアの子供じみた物言いに、レイルークは笑いを抑えられなかった。
「はははっ! わ、分かった。姉さんにも作ってあげるよ。時間的に簡単なものになってしまうけど、昼食のデザートに何か作るから、楽しみにしてて」
「無理を言ってごめんなさい。でもありがとう。レイの手作りだなんて、凄く嬉しいわ。時間停止機能付き魔法鞄に入れて、永久保存したい位よ」
「……そんな魔導具に保存せずとも、いつかまた作ってあげるって……」
楽しく会話しながら歩いていたら、気が付けばダイニングに到着していた。
レオナルドとルシータはまだ来てなかったので、二人にもサプライズでデザートを食べてもらおうと考え、給仕にデザートを作りたい旨と、少し多めに材料を伝えて厨房に用意するよう指示を出した。
コートをシシルに預けると、時間も無いのでこのまま厨房へ足を運んだ。
厨房は昼食の準備で慌しく料理人が動いていたが、レイルークが姿を現した瞬間、皆が一斉に最敬礼をした。
「デュメーヌ料理長、邪魔するね。皆は、気にせずに準備を進めて」
「レイルーク様。お待ちしておりました」
レイルークを出迎えたのは、鋭い眼光で体格の良いデュメーヌ料理長。
以前勤めていた料理長の息子さんだ。
ここの厨房で若い頃から修行を積んでいたが、最近になって漸く前料理長に認められ、新しい料理長に就任した。
レイルークが以前、ルドルフの為にプリンを作ろうとした時、次期公爵当主が料理をする事に難色を示したデュメーヌだったが、今ではレイルークが料理をする事に口を挟む事は無い。それどころか、レイルークの腕前に感服している様だった。
前世でデザート作りにハマっていたレイルークは、手際良くプリンを作り上げ、その後もあらゆるお菓子を難なく作り上げてきた。今までの実績の賜物だ。
「こら、お前達! 手が止まっているぞ! 見惚れてないで、作業に集中!!」
料理人達は、場違いの容姿端麗なレイルークに見惚れていたが、料理長の声で我に返った様に慌ただしく作業に戻った。
「忙しいのに、悪いね」
「いえ、とんでもない。レイルーク様ならいつでも大歓迎です。お聞きした材料は、既にご用意しております。今回は、どの様なお菓子をお作りに?」
「ユリア姉さんが、食後に食べたいらしいから。今からでも簡単に作れるフルーツグラタンを作ろうかと思ってさ。カスタードクリームは僕が作るから、フルーツを切るのを手伝ってくれる?」
「はい。かしこまりました」
レイルークは早速手を洗い、鍋をコンロに置く。そこに牛乳、グラニュー糖の半分を入れ、沸騰直前まで温める。
ボウルに卵黄、残りのグラニュー糖を入れて白くなるまでよく混ぜ、薄力粉、コーンスターチも加える。そのボウルに先程温めた牛乳を入れ、よく混ぜたらもう一度鍋に戻して、とろみがつくまで火を入れる。
そしてバットに移して粗熱をとるのだが、そこは時短の為に魔法で冷ました。
別のボウルで、よく混ぜてホイップした卵黄と生クリームを、冷ましたカスタードクリームに少しずつ混ぜ合わせて、生地の完成だ。
「レイルーク様。フルーツを切り終えました」
「ありがとう。後、僕達が食べ終わるタイミングを見計らって、焼いておいてもらえるかな? 今から生地と混ぜると、フルーツの水分が出てしまうから、このまま置いておくよ」
「はい。後はお任せ下さい。先程、レオナルド様とルシータ様がダイニングに到着された様です。どうぞお戻り下さい」
「ああ、ありがとう。後は宜しく頼むね」
レイルークが厨房から戻ると、家族は楽しそうに談笑していた。
「レイ、おかえりなさい。私の為に、ごめんなさいね」
「全然問題ないよ。仕上げは料理長に頼んだし、大丈夫」
「レイ! 何か作っていたのかい?」
「うん。食後のデザート。後で母上達も食べてくれるかな?」
「レイの手作りか。それは楽しみだ」
「たのしみー!」
「本当、楽しみだわ」
「はは、簡単なデザートなんだから、そんなに期待しないでよ!」
笑顔溢れる楽しい昼食を、レイルークは大いに楽しんだ。
声も以前より落ち着いた感じがする。ユリアだと直ぐには気付かなかった事で、会えてなかった月日の長さを感じさせた。
「ユリア…姉さん……」
(この数年で、更に綺麗になったな……。もはや女神様みたいだ……)
「ねーね……?」
見知らぬ人物に少し警戒していた様だったが、レイルークの言葉で相手が自分の姉だと気付いたルドルフは、首を傾げてユリアに訪ねた。
「そうよ。ルディ、大きくなったわね。私の事は覚えてないと思うけど、ルディのお姉ちゃんよ?」
「ねーね!」
殆ど記憶に無いであろうユリアに対して、ルドルフは臆した様子もなく、小走りでユリアに近寄った。
「おかえりなさい! ねーねのこと、にーにから、いっぱいきいてた! ボクね、すごくあいたかった!」
「それは嬉しいわ。そうだルディ、レイは私のこと、なんて言ってたの?」
「えっとね、すごくキレイで、すごくやさしいって! あとね、あたまよくて、えがおがかわいくて、なんでもできるって、すごいねーねだって! うーんと、まだあるよ?」
(ちょちょっとルルー! 何言ってるんだ!? 兄ちゃんのLIFEもうゼロだよ!?)
「ル、ルルー! 折角姉さんに会えたんだから、一緒に遊んでもらおう!」
「もールルーちがう、ルディー!」
「ルルールルる、でぃー、ほらボール、今から浮かせるよー! 念動力」
丁度足元に転がっていたボールが、フワリとルドルフの頭の高さまで浮かび上がった。
「すごーい! ボールうかんでるー!」
「ほら、ボール捕まえる事が出来るかなー?」
「わー! ボールまてー!!」
ユリアから、ルドルフを引き剥がす事に成功したレイルークは、安堵の息を吐いた。が。
横にいたユリアがレイルークの側に近付いて、耳元にそっと声をかけてきた。
「嬉しい。あんな風に、思っていてくれて」
(うひゃぁ!! 耳元で美声、美声がーー!!)
「ね、姉さん。改めて、お、おかえり。その、学園生活大変みたいだけど、大丈夫だった?」
さりげなく身を引くと、ユリアはすんなりレイルークから離れた。
「ええ。ちょっと忙しいのよ。どうしてもクリアしなくてはいけない課題があってね。はっきり言うと、今のままでは時間が足りなくて。だから去年の年末年始も、レイに会えなくて凄く寂しかったわ」
「課題……。今回帰省して、大丈夫だった? ……もしかして僕が帰ってこいって書いたせいなんじゃ……?」
「違うわ。私が、如何してもレイに会いたかったから。でも、やっぱり忙しくてね。今日一日しか居られないのよ。夕方前には戻らないと」
「ええっ!? そ、そうなんだ……。今日だけ。それも夕方まで、なんだ……」
数日は一緒に過ごせると思っていたので、あからさまにガッカリした。
そんなレイルークを慰めるかのように、ユリアはレイルークの二の腕に手を置いた。
「……それにしても。会えない期間に、背がかなり伸びたのね。更にカッコ良くなったわ。素敵に成長したわね、レイ」
確かに、ユリアが魔術学園に入学する前は、ユリアの方が背が高かったが。今はほぼ同じ背丈だ。
だからだろうか。ユリアとの距離感が以前よりやけに近い気がする。
「あ、ありがとう。姉さんも更に綺麗になった、ね」
少し照れ臭くなったレイルークはユリアから視線を逸らした。
「……あ、聞きたかったんだけど、学園に通っててさ、魔法が更に成長した感じはする?」
「成長……そうね。知識が増えた事で、魔法の威力は上がった気はするわ。でも、私よりレイの方がやはり凄いと思うわよ?」
そう言うとユリアはレイルークから手を離して、ルドルフに視線を向けた。
「魔力でボールを浮かせて、今もルディを誘導してるあの魔法は凄いわ。私には、到底使えない」
「そうなの? じゃあ、いつか教えてあげるよ。……あ、教えると言えば。最近さ、母上に鍛錬してもらってるんだ。剣技も大分上達したんだよ?」
「シシルと特訓しているのは転写書に書いてあったけど、お義母様とまで? ……まあ、レイの事だから、そんな気はしていたけれど。……どの位上達したか、お義母様は何か言ってた?」
「えーと。母上が言うには、剣技だけで判断するなら上級冒険者位の実力はあるだろうって」
「そうなのね。……じゃあ、一度私と模擬戦してみる? 学園でも剣の鍛錬を積んでたのよ。剣術の実技授業も頑張っていたから、腕は衰えていないと思うわ」
「え? 魔術学園なのに、剣術の実技もあるの?」
「ええ。意外だと思うだろうけど、魔術以外にも結構力を入れているのよ。剣術の講義や訓練に、S級の冒険者が来たりするの。そういえば以前、お義母様が特別講師に来たこともあったわよ?」
「え、そうなの!?」
(聞いてないんだけど母上!?)
「そ、それって変装した姉さんと、母上が会ったって事だよね!? 母上は、姉さんに気付いた!?」
「どうかしら? 気付いた感じはしなかったわね。お義母様の周りは常に生徒が群がっていたから。多分、分からなかったと思うわ」
「生徒まで虜にするなんて、何て人たらしな……。流石母上」
「それで、どうしたいかしら? 模擬戦」
「あ、うん! 姉さんと戦ってみたい!! 自分の実力が、どの位通用するか知りたいし!」
「私も、レイの実力が知りたかったから、ちょうど良かった。じゃあ、昼食後に模擬戦しましょうか?」
「分かった! あ、そろそろ昼食の時間だね。ルルー! お昼ご飯行こうかー!」
「ハアハア、ルルー、違うっ、ル、ルディ! だよ!」
ボールを追いかけ過ぎて疲れている様だったので、さりげなくボールを操作して、ルドルフが捕まえやすくした。
やっとボールを捕獲出来てご満悦なルドルフと、そんなルドルフの功績を讃える様に、優しく頭を撫ぜるユリアと共に庭を歩き出した。
「そうだわ、レイ。折角だから、勝った方にご褒美を付けるのはどうかしら?」
「ご褒美?」
「例えば。負けた方に、一つ。お願い事を聞いてもらう、とか」
「願い事……? ユリア姉さんに」
(姉さんに願い事……。姉さんは何でも叶えてくれるから、変なこと言うと後が怖い気がする)
「うーん。僕は特に願い事は無いけど。姉さんは、僕に願い事があるの?」
「あるわ。どうしてもお願いしたい事が、ね」
言葉に、強い意思が含まれている気がしたのでユリアを見ると。
レイルークを見つめていたのか、直ぐに綺麗なアメジストの瞳と目が合った。
「レイルークにしか、叶えられない願いがあるの。私が勝ったら、そのご褒美を頂けないかしら?」
「う、うん。そこまで言うなら、別に良いよ。でも、僕が勝ったら願い事叶えてよ? 凄いの、考えておくから!」
「もちろん」
「ボクね、にーにのつくった、おかしたべたい!」
「良いよ!! 兄ちゃんとびっきり美味しいの、作ってあげるよ!!」
「ええ!? レ、レイの手作りお菓子!? ルディ、レイに作ってもらった事、あるの?」
「あるー! プリン、おいしかったー!」
「……レイ。レイがお菓子作れるなんて、私知らなかったわよ?」
「まあ、言ったことなかったしね。でもさ、作れるって言っても簡単な物しか作れないから。だから言わなかっただけだし」
(料理出来たらかっこいいかと思って、前世で母さんに教わってた時期があるんだよね。結構評判良かったんだよな)
「……ねえ、レイ。私も、食べたいわ」
「それが、願い事?」
「違うけれど、食べてみたいわ。私は食べた事が無いのに、ルディだけ狡い。凄く、凄く羨ましいわ」
本気で羨ましそうなユリアの子供じみた物言いに、レイルークは笑いを抑えられなかった。
「はははっ! わ、分かった。姉さんにも作ってあげるよ。時間的に簡単なものになってしまうけど、昼食のデザートに何か作るから、楽しみにしてて」
「無理を言ってごめんなさい。でもありがとう。レイの手作りだなんて、凄く嬉しいわ。時間停止機能付き魔法鞄に入れて、永久保存したい位よ」
「……そんな魔導具に保存せずとも、いつかまた作ってあげるって……」
楽しく会話しながら歩いていたら、気が付けばダイニングに到着していた。
レオナルドとルシータはまだ来てなかったので、二人にもサプライズでデザートを食べてもらおうと考え、給仕にデザートを作りたい旨と、少し多めに材料を伝えて厨房に用意するよう指示を出した。
コートをシシルに預けると、時間も無いのでこのまま厨房へ足を運んだ。
厨房は昼食の準備で慌しく料理人が動いていたが、レイルークが姿を現した瞬間、皆が一斉に最敬礼をした。
「デュメーヌ料理長、邪魔するね。皆は、気にせずに準備を進めて」
「レイルーク様。お待ちしておりました」
レイルークを出迎えたのは、鋭い眼光で体格の良いデュメーヌ料理長。
以前勤めていた料理長の息子さんだ。
ここの厨房で若い頃から修行を積んでいたが、最近になって漸く前料理長に認められ、新しい料理長に就任した。
レイルークが以前、ルドルフの為にプリンを作ろうとした時、次期公爵当主が料理をする事に難色を示したデュメーヌだったが、今ではレイルークが料理をする事に口を挟む事は無い。それどころか、レイルークの腕前に感服している様だった。
前世でデザート作りにハマっていたレイルークは、手際良くプリンを作り上げ、その後もあらゆるお菓子を難なく作り上げてきた。今までの実績の賜物だ。
「こら、お前達! 手が止まっているぞ! 見惚れてないで、作業に集中!!」
料理人達は、場違いの容姿端麗なレイルークに見惚れていたが、料理長の声で我に返った様に慌ただしく作業に戻った。
「忙しいのに、悪いね」
「いえ、とんでもない。レイルーク様ならいつでも大歓迎です。お聞きした材料は、既にご用意しております。今回は、どの様なお菓子をお作りに?」
「ユリア姉さんが、食後に食べたいらしいから。今からでも簡単に作れるフルーツグラタンを作ろうかと思ってさ。カスタードクリームは僕が作るから、フルーツを切るのを手伝ってくれる?」
「はい。かしこまりました」
レイルークは早速手を洗い、鍋をコンロに置く。そこに牛乳、グラニュー糖の半分を入れ、沸騰直前まで温める。
ボウルに卵黄、残りのグラニュー糖を入れて白くなるまでよく混ぜ、薄力粉、コーンスターチも加える。そのボウルに先程温めた牛乳を入れ、よく混ぜたらもう一度鍋に戻して、とろみがつくまで火を入れる。
そしてバットに移して粗熱をとるのだが、そこは時短の為に魔法で冷ました。
別のボウルで、よく混ぜてホイップした卵黄と生クリームを、冷ましたカスタードクリームに少しずつ混ぜ合わせて、生地の完成だ。
「レイルーク様。フルーツを切り終えました」
「ありがとう。後、僕達が食べ終わるタイミングを見計らって、焼いておいてもらえるかな? 今から生地と混ぜると、フルーツの水分が出てしまうから、このまま置いておくよ」
「はい。後はお任せ下さい。先程、レオナルド様とルシータ様がダイニングに到着された様です。どうぞお戻り下さい」
「ああ、ありがとう。後は宜しく頼むね」
レイルークが厨房から戻ると、家族は楽しそうに談笑していた。
「レイ、おかえりなさい。私の為に、ごめんなさいね」
「全然問題ないよ。仕上げは料理長に頼んだし、大丈夫」
「レイ! 何か作っていたのかい?」
「うん。食後のデザート。後で母上達も食べてくれるかな?」
「レイの手作りか。それは楽しみだ」
「たのしみー!」
「本当、楽しみだわ」
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