レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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「レイルーク様、三歳のお誕生日、誠におめでとうございます」

「「「おめでとうございます、レイルーク様」」」

「あいがと。シンリー。それにみんなも、あいがと」

 気がつけば三歳になっていた。

 赤ん坊の身体に前世の記憶を処理する程、脳が発達していなかった弊害なのか。
 微睡む様に月日が流れ、あっという間に三歳の誕生日を迎えていた。

 ......オムツという排泄方法や母乳という名のご飯に、羞恥心の限界を迎え記憶が飛んだ訳ではない。

 決して、ない。


 過去の黒歴史を振り払う様に広い応接間を見回してみる。

 フワフワのソファーに座るレティシアの前のテーブルには大量のプレゼントの山。置き切れないプレゼントはサイドテーブルに置かれている。

 ソファーの横には、綺麗に一列に並んで誕生日を祝ってくれる使用人達の笑顔。
 そう言えば今日は両親の姿を見ていない。

「とーたまとかーたまは?」

 この世界で初めて出会った第一異世界人のメイドさん。
 母様の専属メイドだったが今はレイルークの乳母役のシンリーに、少し舌足らずな言葉で訪ねた。

「......旦那様と奥様は、急遽奥様のご実家であるラシュリアータ辺境伯のお屋敷にいらっしゃっています。......詳しいことは帰ってきてから伝えると」
「しょっか......」

 よく考えれば、昨日から見かけていない。

(……子供の誕生日なのに、二人で出掛けるなんて……)

 だが、直ぐにその考えを改めた。

 レイルークの両親は忙しい中、一緒に朝食が取れるようにレイルークが起きてくるまで待ってくれたりする、優しい両親なのだ。

 生まれてまだ三年ではあるが、自分が両親に愛されているのはよく分かっていた。

(僕が転生者としての記憶があるせいかもしれないけど、父様と母様は公爵としての立場なのに、いつも僕を気に掛けてくれている。きっと、何か急な事が起こったんだ)

 転生したレイルークという子供はアームストロング公爵の一人息子という立場だった。レイルーク・アームストロング公爵嫡子だ。

(初めてアームストロングという苗字を聞いた時は、何故かマッチョでダンディーなおじさんを思い浮かべてしまったけど。公爵と知って流石に驚いたよ。完全に中世ヨーロッパ風な世界観だよね.....)

 異世界転生特典は言語理解だけな様で、この世界の文字は全く読めなかったが。
 メイド達の絵本の読み聞かせなどで大体のことは理解した。

 ここはアトランス公国。この世界で一番広大な大陸を治める国。

 公国なので皇帝や王様などはいない。大陸を丁度四等分する様に東西南北に四つの公爵が存在し、各領土を統治している。その一つがアームストロング公爵だ。

 公爵という最高位の爵位を持ったレイルークの誕生日会。
 貴族達を招いてそれは大層なパーティになるだろうと思っていたが、実際はそうならなかった。

 誕生日を祝うプレゼントは各貴族から大量に届けられてはいるが、お披露目の様な誕生日パーティーは行われていないのだ。
 
 不思議に思い、シンリーに訪ねてみる。

「それじゃ、プレゼントくれたひとたちは? ここにきていわってくれにゃいの?」

 レイルークのあどけない言葉に、シンリーは少し困った様に微笑んだ。

「レイルーク様はアームストロング公爵にとっての大切な至宝。おいそれと下級の貴族に御姿を見せる事は出来ません」

 他の使用人も当然だとばかりにうなずいている。

「し、しほう?」

 至宝。いや至宝の意味は何となく分かるが、何故自分が至宝と言われ、それが理由で他の貴族に会わせないのか。意味が分からない。

「レイルーク様の御姿はこの世のものとは思えない程に生きた宝石のようにお美しく...オホンッ、いえ、とても神々しいという意味です。それに加え、とても高い魔力をお持ちでございます。レイルーク様はまだ三歳と幼い。警備の万全な公爵家と言えども、他所の者を屋敷に招くのは大変危険なのでございます」

「こうごうしくて、まりょくがたかくて、きけん......」

 聞いた言葉を並べても全然意味が分からない。

 この世界は科学の代わりに魔術によって作られた魔導具があり、魔力や魔力が込められた魔法石が原動力なのは最近覚えた。生活様式は住んでいた地球とほぼ同じ。


 この世界には魔力や魔法が存在する。


 絵本やメイド達の話を聞いてそれを知った時は、それはもう興奮した。前世の小さい頃の夢は魔法使いだったから。

『異世界転生あるある』を信じ、意気込んで「ステータスオープン!」と叫んだが、何も起きなかった。

 何とも言えない気恥ずかしさに加え、何の恩恵なしという事実にその日は少し涙が出た。


 それにしても。魔力など感じた事が無かった為、魔力が高いなんて知らなかった。

 かなりテンションの上がる話だけれど、この世とは思えない程神々しいとは......?

 首を傾げるレイルークを見つめる使用人達の瞳は、いつも宝を見るかの様に輝いて見える。

(ん? そう言えばこの世界の自分の顔、見た事が無かった......かも)
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