レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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 案内されて到着したのは重厚で立派な扉の前。

 立派な扉だが客間の扉の様な華やかさはない。どうやら執務室か書斎のようだ。

 初めての場所にちょっと興奮しているレイルークに気付くことなく、シンリーは扉をノックした。

「失礼致します。レイルーク様をお連れ致しました」
「入れ」

 低音のハスキーボイスが部屋の中から聞こえた。その声を聞いてシンリーが扉を開けるのをちゃんと待ってから入った。


 部屋の中は落ち着いた雰囲気のザ・書斎な場所だった。窓がなく壁一面に本棚が並んでいる。
 中央にソファーとテーブルがあり、その奥にはどこぞの社長が使いそうな重厚な机があった。

 レイルークの父は中央のソファーに座ってこちらを見ていた。
 その後ろには執事のセバスが佇んでいる。

 セバスはグレーの長い髪を一つ括りにして、紺の目に 片眼鏡モノクルを掛けた六十歳位のとてもダンディーな執事さん。
 レオナルドの子供の頃からの爺やさんだ。優しい眼差しでレイルークを見ている。

「おかえりなたい、とーたま!」
「ああ。ただいま、レイ」

 レイルークの父である、レオナルド・アームストロング公爵。
 柔らかいダークグリーンの髪にレティシアの右眼と同じエメラルドグリーンの瞳。百九十センチはありそうな高身長、高位な貴族の服が良く似合う美丈夫だ。

 レイルークは笑顔で父に駆け寄った。

 レオナルドはソファーから立ち上がりレイルークの方に近寄ると、レイルークの頭を優しく撫でた。

「誕生日おめでとう、レイ。プレゼントは気に入ってくれたか?」
「うんっ! かっこいいイヤーカヒュあいがと! みて、にあうかな?」

 サイドの髪を掻き上げて、早速着けてますよーと言いたげにアピールした。

「ああ、とても良く似合う」

 いつもは鋭い眼光を放っている瞳が優しく細められる。

 領主としていつも忙しいだろうに、レイルークを邪険に扱う事なく常に大切に扱ってくれる。レイルークはそんな父親が大好きだ。

(父様はいつ見てもかっこいいな。この人が自分の父親だと思うと、誇らしくさえ感じる……)

「そうだ。とーたま、かーたまは?」
「その事なのだが。ああ、待てシンリー。君も聞いてくれて良い」

 退室しようとしていたシンリーを呼び止めた。

「結婚前からルシータの専属侍女をしていた君なら、聞くべき話だ。先日、ルシータの妹君が亡くなった」
「ルシア、お嬢様が......」

 シンリーは僅かに目を見開いた。

「ああ。その為にルシータは実家の辺境伯に今も滞在中だ」
「......かーたまの、いもーと?」

(あれ? 確か母様の兄弟は兄一人だった筈......)

「かーたまに、いもーといたの?」
「......まだ幼いレイには理解が難しいと思うが、ルシータの妹君はレイが生まれるずっと前に市井に下った方だ。なのでラシュリアータ辺境伯から除名されている」

(市井に下るって、確か平民になったって意味だよなね.....。という事はひょっとして)

「へいみんのひととけっこんしたから?」

 その言葉にレオナルドは目を見張ってレイを見た。

「……三歳なのに分かるのか。聡明な子だとは思っていたが、これ程までとは。……流石ルシータの子だ」

 嬉しそうなレオナルドを見て、やってしまったと冷や汗が出た。

(しまった。今のは三歳らしくなかったかな......)

「ルシータと妹君は昔から仲が良かったと聞いている。病弱な妹君を心配し、最初は市井に下る事に反対だったが、頑なに相手を想う妹君にいつしか応援する側になったと。
そして辺境伯卿に勘当される形で平民となった妹君とは内密に交流を続けていたらしい。……妹君の夫が事故で帰らぬ人となった後、心労で病に倒れるまでは」

「......びょーきでなくなたの?」
「ああ。もっと気に掛けていればと、ルシータは自分を責めていたよ」

 レオナルドはレイルークをソファーに座らせると、やや厳しい眼差しで隣に座った。

「それでだ、ここからが本題となる。実は妹君には一人、子供がいた。今は七歳だそうだ」
「こども……」
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