レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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 ルミナスをエスコートして連れて来られた薔薇園には、沢山の綺麗な薔薇が咲き誇っていた。
 美しい薔薇のアーチがあり、見事綺麗に咲き誇っている。

「わあ、すごく綺麗な薔薇園だね」
「でしょう? 私の母が薔薇好きなの。ここのアトランス宮殿の庭にも植えたいって、ディスティニーが管理している場所ココに、勝手に植えてしまったらしいわ」
「はは、お茶目なお母さんなんだね」
「ふふ、でしょう?」

 暫く薔薇園をたわいもない話をしながら散策する。

「あ、そうだわ。せっかくだし、レイルーク様にここの薔薇をプレゼントするわ!」

 そう言うと、真っ赤に咲き誇った薔薇の茎をいきなり素手で触れようとした。

(あ、駄目だって! 薔薇をそのまま掴んだら!)

「痛っ!」
「ルミナス嬢!」

 レイルークはルミナスが茎を触った右手を見た。やはり棘を触ったのか、内側の指に少し血が流れていた。

 ルミナスは、顔を赤らめて恥ずかしそうに俯いた。

「もう、またやっちゃった。……私って慌てん坊なのよね。しょっちゅう棘で怪我しちゃうのよ……。それでよく兄に揶揄われるの。あ、直ぐに血は止まるだろうから気にしないで」
「そんな、駄目だよ! ちゃんと手当てしないと!」

 レイルークは指輪にハンカチを収納していたことを思い出し、『ハンカチ出てこい』と念じると、ハンカチが指輪から出てきた。
 すかさずルミナスの手を取って傷口にハンカチを押し当てた。

「レ、レイルーク様っ、ただの擦り傷だから気にしないで! レイルーク様のハンカチが……!」
「ダメ。雑菌が入ってしまっては大変だよ。取り敢えずハンカチで押さえてて。
……そうだ、綺麗な水で洗い流した方が良いよね。……水の球ウォーターボール

 綺麗な水で出来たボールを思い浮かべてると、ハンドボール位の小さな水ボールが現れたのでその中にルミナスの手先をゆっくりと入れた。

 傷口が綺麗に洗えたのを確認して、魔法を解除する。すると水の球は形を崩して地面に流れ落ちた。

 ルミナスが呆然としている内に、傷口を覆う様にハンカチで巻き付けて、軽く先を縛った。

「……はい、これで大丈夫。血が止まるまで、暫く押さえておいてね」
「え、ええ。あ、ありがとう……」

 ハンカチで包帯の様に巻かれた手を、左手で押さえたルミナスはゆっくりとレイルークを見た。

「……ここは、魔法が使えない様に結界が張っている筈なのにレイルーク様は使えるのね。……とても凄い魔力を、持っているのね」

「!!」

(やばい、やっちゃった!!)


「あの、ええとそれは……」

 何か上手い言い訳を考えようと冷や汗を流して黙っていると、ルミナスはレイルークの顔を覗き込んだ。

「大丈夫、誰にも言わないわ。だから……。私達だけの、秘密……ね?」

(あどけない笑顔! か、可愛い!!)

 レイルークは咄嗟に横を向いて、赤くなった顔を隠した。

「あ、ありがとう。助かるよ……」

 横を向きながら感謝を告げる。

「ふふふ。……もしかして、照れているの?」
「ち、違うって……」

レイルークの顔を見ようと笑顔で近づいてくるので、更に横を向く。再び近づくのでまた横を向いて。
こうして攻防戦が暫く続いた。


「ふふ。あの、レイルーク様……。あ、あの良ければ、だけど。 その……私の事を、ルミナスって呼んでは貰えないかしら。折角、仲良くなれたのだし。あの、その……友好の証、として……ね?」

 少し顔を赤らめながら、恥ずかしそうに聞いてくる。

 美少女の恥じらいながらの懇願に、レイルークは「勿論っ」と元気に答えてしまっていた。

 このやり取りをきっかけに、一気に仲良くなれた気がする。

 そう思える位、ルミナスは親しげに話しかけてくるので、レイルークも笑顔でそれに応えた。



「あら二人共、随分と仲良くなったのね?」


 一通り薔薇園を見て回った所で、突然後ろから声を掛けられた。


 その声にレイルークとルミナスは振り返り、相手を見たルミナスは不満げに声を上げた。

「なによ、キャサリンじゃない。……母親に言われて、様子を見に来たの?」
「ご名答よ。それに、レオナルド様やレイルーク様のお姉様も、気が気じゃないご様子でね。……レイルーク様はとても愛されておいでですね」

 にこりと優しそうに笑った。

 ルミナスは少し尖った口調で、子供っぽく訪ねた。

「……交代しろってこと?」

「そうね。私も、母上にせっつかれてしまったし。ルミナスは早く戻って、レオナルド様方のご機嫌をとって来たらどう?」

 そう言われて、ルミナスは溜息を吐くと、残念そうにレイルークを見た。

「名残惜しいけど、今日はここまでね。……とても楽しかったわ、レイルーク様」

 ハンカチに包まれた右手でレイルークの手を取ると、握手するように両手でぎゅっと握った。

(え、な、なに?!)

「今度は是非、私の屋敷に遊びに来て? 屋敷の薔薇園はもっと凄いの。きっとレイルーク様も気に入ると思うわ。……キャサリン、早く話を終わらせて、さっさと戻って来なさいよね!」

 そう言うとルミナスはレイルークの手を離す。すると、ルミナスの顔つきが一瞬で変わる。

 どうやらご令嬢モードに切り替わったようだ。


「……それでは、レイルーク様。私は先に宮殿に戻りますので、御前失礼致します」

 レイルークに見事なカーテシーをすると、少し不機嫌そうに神殿に戻って行った。


「驚いたわ……。ルミナスはこの短時間で、レイルーク様のことを随分と気に入ったようですわね」

「そ、そう、ですか……?」

(特に何かした訳ではない筈なんだけど?! そう、だよね……?)

 内心困惑しながらも答えた。


「……では。ここからは私、キャサリンにお付き合い願えますか? レイルーク様」

 キャサリンはレイルークに手を差し出してきた。

 エスコートを促すサインだ。
 レイルークは落ち着きを取り戻して、笑顔でキャサリンの手を取った。

「はい、こちらこそ宜しくお願いします。キャサリン嬢」
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