レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
27 / 51

27

しおりを挟む
「ロゴスの庭園は、自然美の造形が自慢の庭なのです。是非レイルーク様に一目ご披露したいのです。
此処から真っ直ぐ庭を歩けばロゴスの庭に行けます。本来なら公爵個々の結界で通れないのですが、今日は解除されていますので、どうかお連れ頂けないでしょうか」

「もちろん。喜んで」

 キャサリンをエスコートしてロゴス領の庭に向かって歩き出す。

 暫く歩きながらルミナスの時と同じような、たわいも無い話をしていたのだが。


 ふと魔術の話になり、魔術に関することを二人で話していると。

 段々と魔力の根源や魔法の想像力など。どんどん魔術の高度な内容となり。
 やがて、どうすれば高度な魔法を上手く発動出来るか、二人で悩み出すまでになった。


「レイルーク様。やはり想像した魔法に見合った名を唱えないと、上手く想像通りの魔法は発動しないのでは無いのでしょうか?」
「いえ、一番大事なのは力の緻密さだと思います。どれだけリアルに、どの様な効果をもたらすのか。そこまで出来れば、名はそれ程重要では無いように思いますが」

 段々議論は熱を帯び、とうとう立ち止まって討論会の様になった。

「……分かりました。そこまで仰るのであれば、力が凄ければ、どれだけ緻密な魔法を発動出来るか検証してみましょうか。キャサリン嬢。何か力のいる魔法を一つ仰ってもらえませんか?」

「……そうですね。では、造形魔法はどうでしょう?」

「造形魔法……ですか?」
「はい。造形魔法で形造られた……そうですね。美しい蝶を見せ合うのはどうでしょう? ふふ、面白そうですね」

 キャサリンは楽しそうに微笑んだ。

「魔術の中でも、今は造形魔法に夢中なんです。誰も見たこともない位、美しい魔法を作って見たくて。最近は造形魔法の研究に没頭しているのです。
でもレイルーク様、ここでは魔法の行使は不可能です。いつか一緒に検証を……」

「成程、造形魔法……。見たこともない位美しい蝶……ですね。分かりました。では今から簡単な名を唱えて、発動してみせますね」
「え? いえ、ですから此処で魔法は……」

(綺麗な蝶と言えば、やっぱり切り絵アートだよね!)

 レイルークは前世の図書館で見た事のある、美しい模様の切り絵で作られた蝶をする。

 人差し指を立てて魔法の名を唱えた。

バタフライ

 するとレイルークの人差し指から、白く輝く、この世には存在しない蝶が現れた。

 その美しい複雑な模様の羽根を動かし、蝶は宙を綺麗に飛んだ。


「……どうですか? 魔法の名が簡単でも、大丈夫でしょう?」

 少しドヤ顔でキャサリンに微笑みかける。キャサリンは呆然と魂が抜けた様に蝶を見ていた。

「……レイルーク様は……結界の中でも、こんな素晴らしい魔法が……使えるのですね……」


(しまった!! まっ、またやってしまった!!)

 またしてもやらかしてしまい狼狽していると、何故かいきなり手を握られた。

(え、ええ!?)

 キャサリンは酷く興奮したのか、顔が赤く上気している。瞳をキラキラ輝かせながらレイルークに詰め寄った。

「レイルーク様! 凄い、凄いわ! こんな綺麗な蝶、私、初めて見るわ! なんて素敵な魔法なんでしょう!! 貴方は本当に凄い魔法使いなのね!!」

(すっごく眩しい笑顔! か、可愛い!!)

 可愛らしい笑顔で褒められて、レイルークは顔が火照る。赤面した顔を見られたくなくて、手を握られたまま咄嗟に横を向いた。

「あ、ありがとう、キャサリン嬢……。あ、あの。この事は。その、秘密にしておいてもらえると嬉しいんだけど……」

 赤くなった顔を隠しながら懸命に懇願すると、キャサリンは嬉しそうな声で応えた。

「クスっ。分かったわ。私とレイルーク様の秘密、ね。……じゃあ、秘密にする代わりに……私の事をキャサリンって呼んで頂けないかしら?」

レイルークは「秘密を守ってくれるなら喜んで!」とあっさり承諾してしまった。

 こうして更に仲良くなれたようだった。


 レイルークとキャサリンは一旦魔術の話を終わりにして、見事な噴水が目を引く綺麗に整備された美しい庭園を散策した。



「ねえ」


 散策が終わりに差し掛かった時、後ろから声を掛けられた。

 レイルークとキャサリンが振り向くと、不機嫌そうなグレイスが漆黒の髪を靡かせて、こちらに向かって歩いて来ていた。

「キャサリン、いつまで散歩しているの。さっさと戻ってあいつらの相手をして。この人の親、本気で暴れそうよ」

 とんでもない修羅場のようです。

「それは大変ね。でも、私が戻ってもどうしようも無い気がするけれど」
「戻って」

「……仕方ないわね。交代しましょうか。グレイスも、レイルーク様と交流しないと父君に怒られてしまうものね? ……では、レイルーク様」

 キャサリンはレイルークに向き直ると上品なカーテシーをした。

「とても楽しい時間でした。今度は是非、私の屋敷に遊びに来て下さい。……また一緒に、魔術の話をしましょうね? ……グレイス、レイルーク様に失礼の無い様にね?」

 そう言うと笑顔で神殿に戻って行った。


「……驚いた。キャサリンはレイルーク様のことを随分と気に入ったようね」
「そ、そう、ですか……?」

(まあちょっとだけ、やらかしたかもしれないけどね?! ……はあ。失敗続きで何だかカッコ悪いな、僕……)

 レイルークは内心落ち込んだ。

「……まあどうでもいいけど。取り敢えず、ライト家の庭まで行きましょう」

 そう言うと、そのままレイルークのエスコートも受けずにさっさと歩き出したグレイス。

「……はい」

 あまりのそっけない態度に、『父親似なんだな』と一気に冷静になったレイルークは、先に歩くグレイスに置いて行かれないよう、少し足早について行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか
児童書・童話
過去のある出来事から、空手や合気道を習うようになった私。 そして、いつしか最強女子と言われるようになり、 男子が寄りつかなくなってしまった。 中学では恋がしたいと思い、自分を偽って 学校生活を送ることにしたのだけど。 ある日、ひったくり犯を撃退するところを クラスメイトの男子に見られてしまい……。 「お願い。このことは黙ってて」 「だったら、羽生さん。 俺のボディーガード兼カノジョになってよ」 「はい!?」 私に無茶な要求をしてきた、冴えないクラスメイトの 正体はなんと、大財閥のイケメン御曹司だった!? * * * 「ボディーガードなんて無理です!」 普通の学校生活を送りたい女子中学生 羽生 菜乃花 × 「君に拒否権なんてないと思うけど?」 訳あって自身を偽る隠れ御曹司 三池 彗 * * * 彗くんのボディーガード兼カノジョになった 私は、学校ではいつも彼と一緒。 彗くんは、私が彼のボディーガードだからそばにいるだけ。 そう思っていたのに。 「可愛いな」 「菜乃花は、俺だけを見てて」 彗くんは、時に甘くて。 「それ以上余計なこと言ったら、口塞ぐよ?」 私にだけ、少し意地悪で。 「俺の彼女を傷つける人は、 たとえ誰であろうと許さないから」 私を守ってくれようとする。 そんな彗くんと過ごすうちに私は、 彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていた──。 「私、何があっても彗くんのことは絶対に守るから」 最強女子と隠れ御曹司の、秘密の初恋ストーリー。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

処理中です...