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「愛妾の子、はたまたルシータ夫人の連れ子、など……ハハハハ! 全くどれもコレも下らない噂ばかり! さぞかし迷惑しているだろうが、まあ気にしない事だな!」
グレイスを連れてライト家の銅像がある部屋を通り、ホールに戻ろうとレイルークが扉を開けた瞬間、大声で笑うアトラスの声が聞こえた。
目をやるとソファーにユリアしか居ないのに驚いた。
何故レオナルドが居ないのかは分からないが、アトラスに一方的に言い捲られているユリアを目の当たりにして、レイルークはキレた。
(……このオヤジ、ムカつくマジむかつく超ムカツク!! 心優しいユリア姉様になんて事を言うんだ! 女神に言う内容じゃねーだろ!! 許すまじこのイカれじじい!!)
グレイスの許しを得てエスコートの手を離すと、レイルークは早足にユリアの元へ急いだ。
「……ただいま戻りました、皆様。私の父が見当たりませんが、どうしたのでしょう?」
そう言いながらユリアに目配せすると、ユリアは「問題ない」と言いたげにレイルークに微笑んだ。
「実はね、つい先程火急の連絡が届いたのよ。お義母様が、産気を催したみたい」
「! 母様が。だから、父様が居ないのですね」
「そう。レイルークが戻ったら直ぐに帰る様に。と念押しをしてね」
そう言ったユリアにアトラスは焦った様に立ち上がった。
「いやいや。レオナルドが帰ったのだから、君達迄帰る必要もないだろう? そうそうレイルーク君。娘と話をしてどうだった? そう言えばルミナスの手当をしてくれたと聞いた。感謝するよ」
帰らせまいと先延ばしを図っているのは重々承知しているが、敢えてレイルークはその言葉に答えた。
「いえ、当然の事をしたまでです。それに、ルミナス嬢と楽しい時間を過ごさせていただきました」
「そうかそうか! で、どうだろう! どうやらルミナスはレイルーク君の事を気に入った様子! 是非娘との婚約を……」
「アトラス! 何を抜け駆けしようとしているのです!? ねえレイルークさん? キャサリンもレイルークさんはとても博識で、話が弾んで仲良くなれたと申してましたよ? 是非キャサリンと婚約したら良いと思うのだけれど!」
「二人共黙れ。グレイスの様子だとレイルーク殿を気に入ったようだ。グレイスと婚約するのが妥当だ」
予想通りの展開に内心鼻で笑いながらも、一切おくびにも出さずニッコリと笑顔を見せた。
「婚約ですか、そうですね。私の父様と母様はそれはもう相思相愛です。私はそんな両親に育てられましたものですから、結婚に憧れはあります。
将来、両親の様にお互いを思い遣り支え合える……そんな素敵な間柄で居られる方に出会えれば。と、いつもそう思っております」
「おおっそうかそうか! ならば」
「ですから。例えば政略結婚、など……。そんなくだらないものは、到底受け容れる事は出来ません。
私は年月をかけて、お相手を見定めたいと思っております。この場でお答えするのは、出来ません」
レイルークのはっきりとした自己主張に、公爵の親達は一瞬息を呑んだ。
「……レイルーク君はまだ幼いながらに、しっかりしてるようだ」
「皆様。私も母が心配です。姉共々、これにて失礼したいと思います。とても有意義な時間をありがとうございました」
(アンタらの相手なんか、これ以上してられない!!)
有無を言わさない様に優雅な礼を披露した。
すかさずユリアは立ち上がると、公爵に向けてカーテシーを披露する。
「私もとても有意義な時間を過ごせました。とても為になるお話を聞けました。ありがとうございました」
ユリアはレイルークの横に付くと手を差し出した。レイルークが素早くその手を取る。
レイルークはやや冷ややかに公爵達に微笑んだ。
「では、失礼致します」
「レイルーク様、待って」
歩み出したレイルーク達を、声を上げてルミナスは引き止めた。
ソファーから立ち上がり、少し早足でレイルークの前に歩み寄った。
「レイルーク様。今日は本当に、楽しかったです。……先程申しました様に、いつでも良いので私の屋敷に遊びに来て下さいね。……後、出会えた記念に、渡したい物があります」
従者に目配せすると、ディスティニーの従者が、棘を丁寧に処置した美しい一本の赤い薔薇を手に持ってきた。
ルミナスは薔薇を受け取ると、両手で持ってレイルークに差し出した。
「私……は、レイルーク様との婚約を望みます。……どうか、覚えておいて」
(へ)
呆然としている間に、気が付けば薔薇を受け取っていた。
「レイルーク様。私もご挨拶を」
いつの間にかキャサリンも、レイルークの側に立っていた。
「レイルーク様、とても有意義な時間をありがとうございました。魔術のお話、とても楽しかったです。また一緒に有意義な時間を過ごしましょう。……それから、私もレイルーク様との婚約を望みます。……覚えておいてね、レイルーク様?」
(え)
「レイルーク様」
グレイスもまた、レイルークに近づいて来ていた。
「今日は……会えて良かった。また会えると嬉しい。……私もレイルーク様との婚約を望みたい。要件はそれだけ。また、いつか一緒にお昼寝しよう?」
(は)
三人の突然の告白に頭が真っ白になった。
ユリアの指先に力が入ったのが指先から伝わって、我に返った。
「……失礼します」
何とかそれだけ返事を返すと、ユリアに少し引っ張られる様に歩き出した。
(み、皆んな揃って、何を言い出すんだよーー?!)
グレイスを連れてライト家の銅像がある部屋を通り、ホールに戻ろうとレイルークが扉を開けた瞬間、大声で笑うアトラスの声が聞こえた。
目をやるとソファーにユリアしか居ないのに驚いた。
何故レオナルドが居ないのかは分からないが、アトラスに一方的に言い捲られているユリアを目の当たりにして、レイルークはキレた。
(……このオヤジ、ムカつくマジむかつく超ムカツク!! 心優しいユリア姉様になんて事を言うんだ! 女神に言う内容じゃねーだろ!! 許すまじこのイカれじじい!!)
グレイスの許しを得てエスコートの手を離すと、レイルークは早足にユリアの元へ急いだ。
「……ただいま戻りました、皆様。私の父が見当たりませんが、どうしたのでしょう?」
そう言いながらユリアに目配せすると、ユリアは「問題ない」と言いたげにレイルークに微笑んだ。
「実はね、つい先程火急の連絡が届いたのよ。お義母様が、産気を催したみたい」
「! 母様が。だから、父様が居ないのですね」
「そう。レイルークが戻ったら直ぐに帰る様に。と念押しをしてね」
そう言ったユリアにアトラスは焦った様に立ち上がった。
「いやいや。レオナルドが帰ったのだから、君達迄帰る必要もないだろう? そうそうレイルーク君。娘と話をしてどうだった? そう言えばルミナスの手当をしてくれたと聞いた。感謝するよ」
帰らせまいと先延ばしを図っているのは重々承知しているが、敢えてレイルークはその言葉に答えた。
「いえ、当然の事をしたまでです。それに、ルミナス嬢と楽しい時間を過ごさせていただきました」
「そうかそうか! で、どうだろう! どうやらルミナスはレイルーク君の事を気に入った様子! 是非娘との婚約を……」
「アトラス! 何を抜け駆けしようとしているのです!? ねえレイルークさん? キャサリンもレイルークさんはとても博識で、話が弾んで仲良くなれたと申してましたよ? 是非キャサリンと婚約したら良いと思うのだけれど!」
「二人共黙れ。グレイスの様子だとレイルーク殿を気に入ったようだ。グレイスと婚約するのが妥当だ」
予想通りの展開に内心鼻で笑いながらも、一切おくびにも出さずニッコリと笑顔を見せた。
「婚約ですか、そうですね。私の父様と母様はそれはもう相思相愛です。私はそんな両親に育てられましたものですから、結婚に憧れはあります。
将来、両親の様にお互いを思い遣り支え合える……そんな素敵な間柄で居られる方に出会えれば。と、いつもそう思っております」
「おおっそうかそうか! ならば」
「ですから。例えば政略結婚、など……。そんなくだらないものは、到底受け容れる事は出来ません。
私は年月をかけて、お相手を見定めたいと思っております。この場でお答えするのは、出来ません」
レイルークのはっきりとした自己主張に、公爵の親達は一瞬息を呑んだ。
「……レイルーク君はまだ幼いながらに、しっかりしてるようだ」
「皆様。私も母が心配です。姉共々、これにて失礼したいと思います。とても有意義な時間をありがとうございました」
(アンタらの相手なんか、これ以上してられない!!)
有無を言わさない様に優雅な礼を披露した。
すかさずユリアは立ち上がると、公爵に向けてカーテシーを披露する。
「私もとても有意義な時間を過ごせました。とても為になるお話を聞けました。ありがとうございました」
ユリアはレイルークの横に付くと手を差し出した。レイルークが素早くその手を取る。
レイルークはやや冷ややかに公爵達に微笑んだ。
「では、失礼致します」
「レイルーク様、待って」
歩み出したレイルーク達を、声を上げてルミナスは引き止めた。
ソファーから立ち上がり、少し早足でレイルークの前に歩み寄った。
「レイルーク様。今日は本当に、楽しかったです。……先程申しました様に、いつでも良いので私の屋敷に遊びに来て下さいね。……後、出会えた記念に、渡したい物があります」
従者に目配せすると、ディスティニーの従者が、棘を丁寧に処置した美しい一本の赤い薔薇を手に持ってきた。
ルミナスは薔薇を受け取ると、両手で持ってレイルークに差し出した。
「私……は、レイルーク様との婚約を望みます。……どうか、覚えておいて」
(へ)
呆然としている間に、気が付けば薔薇を受け取っていた。
「レイルーク様。私もご挨拶を」
いつの間にかキャサリンも、レイルークの側に立っていた。
「レイルーク様、とても有意義な時間をありがとうございました。魔術のお話、とても楽しかったです。また一緒に有意義な時間を過ごしましょう。……それから、私もレイルーク様との婚約を望みます。……覚えておいてね、レイルーク様?」
(え)
「レイルーク様」
グレイスもまた、レイルークに近づいて来ていた。
「今日は……会えて良かった。また会えると嬉しい。……私もレイルーク様との婚約を望みたい。要件はそれだけ。また、いつか一緒にお昼寝しよう?」
(は)
三人の突然の告白に頭が真っ白になった。
ユリアの指先に力が入ったのが指先から伝わって、我に返った。
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