レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
36 / 51

36

しおりを挟む
 ルシータに魔物討伐の手伝いをする許可をもらったが、レオナルドがそれに待ったをかけた。
 まずはシシルとの試合でシシルに完全勝利する事と、ルシータの特訓を受けて合格を貰う事を条件に加えられた。

 シシルには祝儀の際の恨みがあるので、全力でボコれる様になりたい。

 しかし色々と忙しくてシシルとの試合を行う事が出来ずにいた。ルドルフを愛でるのと、三人からの手紙の返信に、毎日の勉強に日々の鍛錬。家族との交流etc……。

 どれも手を抜けない事ばかりだから仕方がない。

 
 月日は流れ、ルドルフが誕生してそろそろ一年が経とうとしている。

 つまりユリアが魔術学園に通う日が迫っているのだ。

 最近までユリアの部屋に入り浸ることはなかったのだが、暫く会えない寂しさから再びユリアの部屋へ遊びに行く事が増えた。

 今日もユリアの部屋を訪ねると、ユリアはちょうど本棚の本を整理していた。

「ようこそ、レイ。今日も遊びに来てくれて嬉しいわ」
「ユリ...ユ、ユーリ姉様。学園に、家の本を持って行くの?」
「ええ。学園には貴重な書物が揃った図書館があるらしいけれど、慣れ親しんだ本も読みたくなるかも知れないから。念の為に数冊は持って行こうと思って」

 ユリアは本棚から一冊の本を取り出した。

「ねえレイ。この本を覚えてる?」

 ユリアに近づいてその本を覗き込んだ。
 少し古びた本の表紙を見て、レイルークは笑顔を浮かべた。

「あ、懐かしい! それ、魔術の基礎が書かれた指導書!」
「そう。私が引き取られて初めての誕生日に、お義父様とお義母様からのプレゼントで貰った指導書。
公爵の人間になるまでは、魔術の勉強なんてしたことが無かったから。……この本にはとてもお世話になったのよ」

 ユリアは懐かしそうに表紙を指でなぞる。

「僕も、一緒になって読んでたからよく覚えてるよ。十歳になって魔力操作を覚えるまで魔法の練習しちゃダメって言われてたのに、隠れて練習しようとしてたのがバレて。姉様、物凄く怒られてたよね?」

(僕は六歳から隠れて練習してたけどね!)

「……もうっそれは覚えてなくていいの。とにかく、この本には色々と思い出があるから持って行こうかと思って。それにこの本には、レイの落書きも沢山書かれてあるしね?」
「ええ? 嘘、そんな事僕したっけ?」
「ほら、こことか……と言うか殆どのページに書かれてるわよ」

 ユリアがページをペラペラ捲ると、何やら殴り書きの様な文字が余白のあちこちに散らばっていた。

「えぇ……これ僕が書いたんだっけ……」
「そうよ。書かれた内容のここはこうした方が良いとか、ここは間違ってるとか言って訂正までしてたし」

(……そう言えば、やっちゃってたかな……よく覚えてないや)

「最初は思い込みで言ってるのかと思ってたけど。十歳になっていざ魔術を使ってみると、レイが言っていたことが正しいって、良く分かったわ。この指導書は、レイの落書きで国宝級の価値に変わったわ」
「こっ国宝級? 嫌だな、おだて過ぎだって」
「本当よ。レイが教えてくれた事は、魔術の概念そのものを覆しているのよ。
思い浮かべる『想像』をするのではなくて、新たに魔法を『創造』するだなんて。……似ている様で全然違うわ」

(……あー、うん。最近まで『想像』を『創造』だと勘違いしてたんだよね……。全然違うって言ってるけど、未だに違いがよく分からないんだよな……)

「レイは魔術の天才なんだって、改めて思い知らされたわ。私は少しでもレイに追いつきたい。だから、魔術学園にも行くことにも前向きに考えるようになったの。……でも……」

 ユリアは本を閉じるとレイルークを見た。

「本当は。学園になんか行かずに、レイの傍に居たいの」

「……姉様?」
「レイ。レイは、魔術学園に行きたいわよね?」
「……うん。勿論」

「……それだと、私が卒業する年にレイが入学することになるわ。会えなくなるのは四年ではなくて八年になるのよ? レイと出会ってから過ごした年月と同じ……八年も……」

(八年……そうか。姉弟になってもうそんなに経つのか……。毎日一緒に居たのに、同じ年月会えないのは……かなり、辛いな……)

「で、でもユーリ姉様。年末年始だけは帰省しても大丈夫なんだよね? 全く会えないって事じゃないよね? それにさ、毎日手紙書くよ! ……って身元がバレる事はダメなんだった……」

 魔術学園はかなり規制が厳しい。
 まだ詳しくは聞いていないが、とにかく身元がバレる事に関しては特に厳しいらしいのだ。
 手紙のやり取りも禁止されている。

 年末年始の帰省も一筋縄にはいかないらしい。

 ユリアと会えないどころか、連絡すら取れない事にようやく気づいた。

「……寂しく…なるね……」
「私はね……レイを学園に行かせたくない」
「……姉様」
「大分前にお義母様が言ってた通り、魔術学園は若い貴族が蔓延る場所だから。当然、必然的な男女の交流もあるの。……何が言いたいか、分かる?」

(分かりません)

「魔術学園の表向きは、そのままに魔術を学べる学園。でも裏では、魔力の高い者達同士を婚姻関係にさせる為の、婚活の場でもあるの。
学園でお互いの人物認知が出来ないのは、貴族の階位を気にせずに婚姻させる為なのよ」

(え)

「えええ?!」
「……やっぱり、聞かされてなかったのね。皆、暗黙の了解で入学するのよ。まあ強制ではない、となってはいるけどね。
でも、相手探しの為に入学する者達が大半よ。だからも、姿を変えたレイを探すと思うわ。多分だけど、一つ年の違うライト公爵もレイと同じ年に入学する筈」

「えぇ……」

 公爵三人組と他のご令嬢達との、四年間という長期の婚活学園だと聞かされ、レイルークはげんなりした。

(婚約者を作るよりも、まずは友達を作りたいよ……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか
児童書・童話
過去のある出来事から、空手や合気道を習うようになった私。 そして、いつしか最強女子と言われるようになり、 男子が寄りつかなくなってしまった。 中学では恋がしたいと思い、自分を偽って 学校生活を送ることにしたのだけど。 ある日、ひったくり犯を撃退するところを クラスメイトの男子に見られてしまい……。 「お願い。このことは黙ってて」 「だったら、羽生さん。 俺のボディーガード兼カノジョになってよ」 「はい!?」 私に無茶な要求をしてきた、冴えないクラスメイトの 正体はなんと、大財閥のイケメン御曹司だった!? * * * 「ボディーガードなんて無理です!」 普通の学校生活を送りたい女子中学生 羽生 菜乃花 × 「君に拒否権なんてないと思うけど?」 訳あって自身を偽る隠れ御曹司 三池 彗 * * * 彗くんのボディーガード兼カノジョになった 私は、学校ではいつも彼と一緒。 彗くんは、私が彼のボディーガードだからそばにいるだけ。 そう思っていたのに。 「可愛いな」 「菜乃花は、俺だけを見てて」 彗くんは、時に甘くて。 「それ以上余計なこと言ったら、口塞ぐよ?」 私にだけ、少し意地悪で。 「俺の彼女を傷つける人は、 たとえ誰であろうと許さないから」 私を守ってくれようとする。 そんな彗くんと過ごすうちに私は、 彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていた──。 「私、何があっても彗くんのことは絶対に守るから」 最強女子と隠れ御曹司の、秘密の初恋ストーリー。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

処理中です...