レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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 手紙をやり取りする約束をして、待望のお友達を三人ゲットする事に成功した。

(ちょっと信者っぽい気はするけど、友達が出来たのは普通に嬉しいな)


 その日の夜、友達が出来たことを転写書に書いたら、おめでとうといった内容が直ぐに返ってきた。

 ユリアは魔術学園の契約魔法の縛りのある中、学園に関することを書いてくれていた。
 しかし最近はレイルークに会えなくて辛い、寂しい等の内容が綴られる事が増えてきた。

 手紙と言えば、例の公爵令嬢達との手紙は結局ずっと続いている。

 ルミナスからの手紙の内容が、いつも兄の意地悪に憤慨している。といった苦労話が多くなったので、『多分愛情の裏返しな行動だから、許せる事は許してあげて。でも、嫌な事をされたら嫌だとはっきり言っていいと思う』と自分なりの意見を書いて返送した。

 キャサリンからの手紙は、やはり魔法に関しての内容が多かったが、魔術学園で何を学ぶか最近迷ってるとあったので、無難に『一番興味が持てそうなものを選べば良いと思うよ。』と手紙に書いた。

 グレイスからの手紙には、勉強尽くめで嫌になると愚痴が多くなってきた。
 『勉強は将来役に立つはずだからコツコツ頑張って。辛くなったらとにかく休んで』と応援や慰めの手紙を送った。


 ……何だか人生相談されている気がしてきた。


 前世の記憶がある為か、どうしても年下や妹の様に思えてしまい、手紙でのやり取りでお兄ちゃん気質が発揮してしまう様だった。

(でも僕、前世では一人っ子だったけどね)

 魔術学園の入学を一時期迷っていたが、個人の悩みを相談されていたら何だか親近感が湧いてきてしまい、学園生活を見守ってあげたくなってきた。
 それに折角友達になれた、ファンクラブの子達も同じ学年になる。

(どうなるか分からないけど、やっぱり魔術学園行きたい。僕は……高校生活を送ることなく転生しちゃったし……。学校生活、今世はちゃんと満喫してみたい!)


 友達三人を含め全員への手紙を書き終えたら、自分の気持ちに整理がついた。

(婚活はちょっと嫌だけど、そこは何とかするとして! 僕は魔術学園で学園生活を謳歌するぞ!!)

 今後の方針が決まった。

 後は、学園に入学する迄にやっておきたい事をやるだけだ。

 となれば、やはりルシータとの特訓を始めたい。魔物退治を手伝うには必要不可欠。
 しかしまだ条件を満たしていない。レイルークはレオナルドとの約束を忘れてはいなかった。

(まずは、シシルとの試合に勝つこと!!)


「おーい、シシルー?」

「はーい、何かごよーですかー?」

 物陰から、忽然と姿を見せた。

(忍者か! ってシシルは忍者だった!!)

「あのさ、早速で悪いけどシシルとの試合を今すぐにでもやろう! 早く母様の訓練受けたいんだ! 今から鍛錬場使えるか確認して来て!」
「ウゲッ!! マ、マジっすかー……。あ、あの、レイルーク様。もう十分俺より強いんですからー、不戦勝、で何とかなりませんかねー? じゃないと俺、マジで死んじゃいますぅ……」
「何言ってるのさ。シシルが本気出してないだけでしょ? それに、父様と約束しているし。破る訳にはいかないんだから。ほら、さっさと確認して来て!」

「グスンッ……わかりました……」

 瞬間にシシリーの姿が消えた。流石忍者。是非その技を教えて欲しいものだ。


 シシルの忍術に感心しつつ、レイルークは窓から見える景色を何気に眺めた。


 座談会を開いた時は、立夏の頃だった。

 アームストロング領は比較的、過ごしやすい気候が長い。しかし四季と同じような、気候変化がある。

 今は風に揺れる木々が、うっすら紅く色付いている。

 暑かった夏がいつの間にか終わり、気が付けばもう秋。
 冬、年末にはユリアと会える。そこで、ルシータの特訓を受けてると自慢したい。


「……鍛錬場、直ぐに使えるそうです……」

 シシルはレイルークの前に忽然と現れた。もはや、シシルに部屋の扉は意味を成さないかもしれない。

「ありがとう。でもね、シシル。ちゃんと扉を使って、出入りしなさい」

「……今日は俺の命日かな……」(ブツブツ)

(もはや聞いてもいない)

 レイルークは溜息を吐きつつ立ち上がり、テーブルに置かれていたベルを鳴らしてメイドを呼んだ。

「鍛錬着、用意してくれる?」




 ***




 結果としては、レイルークの圧勝で試合は終わった。

 シシルは終始、自身の得意属性である闇魔法を使って影に隠れて攻撃してきたので、レイルークは光魔法で影を全て消し、そのまま光魔法で拘束して試合終了。
 実に呆気なかった。

 取り敢えず、試合には勝ったのだ。早速シシルにルシータに報告を頼んでおいたら、レイルークが着替え終えると同時にシシルは帰ってきた。

「レイルーク様ー。ルシータ様が、今からお話があるそうですよー?」

 ルシータから自室に来るように言付けを受けたらしい。

「分かった。じゃあ行こうか」



 辿り着いたのは、ルシータのプライベートルームだ。

 シシルはノックをして、応答をもらってから部屋の扉を開けていた。

(シシルが応答を待って扉を開けるの、初めて見た気がするよ)

「母様、失礼します」
「どうぞ!!」

 ルシータのプライベートルームには、数える程しか来たことがない。

 壁紙はベビーピンク。窓には花柄のレースカーテン。チェストの上にはやや気持ち悪……お高そうなビスクドールが、ちょこんと座っている。

 以外にも乙女チックな部屋なのだ。

 ルシータ曰く。自分には似合わないので着飾るのは好きでは無いが、可愛い物を愛でるのは大好きなのだそうだ。

 因みにレオナルドの事も、可愛いらしい。……気にしないでおこう。

 シシルが部屋を出ていくと、レイルークはルシータと向かい合う様に対面のソファーに座った。
 因みに、ソファーに置かれたクッションはうさぎ型だ。

 歌劇団の俳優の様な出で立ちで優雅にソファーで寛ぐルシータの姿は、乙女チックな部屋は心底不釣り合いだった。


「無事シシルに勝利したようだな! おめでとう!! さて! 約束通り次は私の訓練を始める訳だが! 訓練の前に、何か聞いておきたい事、言いたい事が有れば聞いておこう!!」

 ルシータの言葉に、レイルークは以前から気になっていた事を訪ねてみる事にした。

「母様、前から聞きたかったんだ。母様は公爵夫人なのに、どうして冒険者の様に、魔物討伐に積極的なのか」
「! ……それ、は……」
「多分だけど、何か事情があるんだよね? 言えない内容なら答えなくて良いよ。無理に聞きたい訳じゃないんだ。
……ただ。僕もさ、生半可な気持ちで特訓を受けたいって言ったんじゃないって事だけは、知っていて欲しいんだ」

 僅かに揺れ動くルシータの瞳を、レイルークはしっかりと見つめた。

「僕は出来る事は可能な限り頑張りたい。だって、大人になった後、後悔したくないから。『あの時、頑張っておけばよかった』なんて、思いたくない。絶対に」
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