レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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 腕輪が砕け散り、封印の効力がなくなったが、封じられていた自身の魔力を無理矢理引き出した反動なのか。

 レイルークがゆらりと立ち上がったと同時に、ダムが決壊した洪水の様に、身体から膨大な魔力が一気に溢れ出した。

 一瞬で鍛錬場が一面、魔力の光で眩く輝いた。

(っ?! ……ま、まずい! このままじゃ魔力が、暴走する……!!)

 溢れて出す底無しの魔力をどうにかして抑えようと、体内に魔力を戻すイメージで両手で両腕を抱き締めると、身体を押さえ付けるように俯き強く歯を食い縛った。
 震える身体を押さえ付ける様に、力の限り腕を握り締め、暴走しようと暴れる魔力を懸命に抑えようとするが、一度溢れた魔力は一向に収まらない。

 上手く魔力をコントロール出来ない事態に、本気で泣きそうになった。

 もし、このまま暴走すれば。鍛錬場どころか、アームストロング屋敷が確実に吹っ飛ぶ。
 多分、領土内にも多大な影響が及ぶだろう。

 ならばいっそ被害の出ない上空に魔力を撃ち放とうかと思ったが、それだと大勢の人達に目撃されてのちに更に面倒になる事は目に見えている。

(だ、駄目だ、抑えきれない……! 考えろ僕! どうすれば暴走しないで魔力をコントロール出来るか、落ち着いてよく考えろ!!)

 このまま抑え込んでいるだけでは暴走は避けられない。

 なら、この収まらない魔力を、いっそこの場に事が出来れば、と咄嗟に考えた。

(そ、そうだ! のではなく、イメージで身体に定着させれば……!!)


「「レイルーク!!」」


 レオナルドとルシータの緊迫した声が、遠くから聞こえた。レイルークの魔力に気付いた二人が、駆けつけて来てくれたようだ。

 これ以上心配させる訳にはいかない。

 レイルークは気合いを入れ直し、焦らずゆっくりと、自分の身体に魔力を纏わせていく。
 身体の隅々まで。髪の毛に至るまで。

 全身に自身の魔力を纏わせていった。

 暫くして、漸く全ての魔力を纏わせると、どうにか魔力を安定させる事に成功した。

 自身を抱き締めていた両手をゆっくり解きながら、張り詰めた糸を切る様に深く長い溜息をついた。

「ハアァァーー。……何とか、なった……」


「レイルーク……」

 すぐ側で、戸惑う様なレオナルドの声が聞こえた。

 閉じていた眼を開いて、声のする方へ顔を向けて安心させる様に微笑んだ。

「心配させて、ごめんなさい。もう、大丈夫です」

 レイルークを呆然と見つめたレオナルドとルシータは、目を開いたレイルークの顔を見て、更に驚いた様に目を見開いた。

「? どうかした? 二人揃って、そんなに驚いた顔をして……?」

「……レイルーク……。身体は……何ともない、のだな?」

 レオナルドは唖然としながら、っといった感じで尋ねてくる。何だか様子がおかしい。

「?? は、はい。何ともない、ですけど……?」
「……レイ……。今の、自分の姿に……気付いて、いないのか?」
「えっ?」

 ルシータの呟く様な声の、その言葉の意味が分からず、首を傾げた。

 するとその時。

 背後からの冷たい風に、レイルークの髪が靡いた。
 そして、美しく自分のサイドの髪が、サラリと風に乗って見えた。


「……は?」


 自分の髪を勢いよく掴むと、マジマジと凝視した。

 髪の毛は、一本一本綺麗に発光していた。


 なるほど。夜なのに、道理でやけに明るいはずだ。


「って、なにこれ?! 髪の毛が光ってる!!」


「レイ、両瞳も色が変わっている。髪と、同じだ」


(ええぇーー?! 目も!?)


 レイルークは自分の姿を想像した。


(まるでスーパー○イヤ人?! アマ◯ンプライムで見たことあるよ!!)

 いや、だがしかし。発光しただけで髪は逆立ってはいない。

 もし逆立ってたら、流石にもう目も当てられない。


(……大丈夫。多分今の僕は、ただ神々しいだけだ)

 レイルークは落ち着きを取り戻した。

「えっと、……多分、暴走しそうになった全魔力を、全身に纏わせてたから、だと、思う。時間が経てば元に戻る、と思います。……多分」


 それを聞いたレオナルドとルシータは、同時に大きな溜息をはいた。

「……兵を向かわせず、我々が来て良かったな。このようなレイルークの姿を見られたら、大変な騒動になるところだった」
「レイ!! 膨大なレイルークの魔力を感じて来てみれば、妖精どころか、精霊王が降臨していたと思ったぞ!? 少しはこちらの身にもなってくれ!!」

「はい……。父上、母上。面目次第も、ございません……」


 ひたすら謝り続けていたら、何とか元の姿に戻った。

 ドナドナの様に二人に連れられ、騒がしくレイルークを心配する従者達の居る屋敷へと大人しく戻るのだった。
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