【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

柴原狂

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第二章

第22話 限界なキル

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「おおーやっと来たか。キル、ナギ。そろそろリハーサル行くから支度しろ」

 控え室に戻ってきた二人を見て、平塚は安堵のため息を吐く。
 至っていつも通りを装う平塚マネージャーだが……やはり心のどこかでは、先程見せたキルの様子が気になっているようだった

 ブンブンと首を振り回し、平塚は室内の様子を確認する。どうやら全員、リハーサルの準備で忙しいらしい。
 今がチャンスだ! そう思った平塚は、そっとキルの元まで歩みを進めると──ぽりぽりと頬をかいて、バツが悪そうに口を開いた。

「……キル、その、さっきは」

「平塚さん」

「ん……?」

 平塚の言葉を遮る形で、キルは声を震わせる。突然の呼び出しに、平塚は目を丸くしてキルの言葉を待った。
 すると男は、至って淡々と述べたのだった。


「トイレ行って来ていいですか」


「……は??」

 予想していなかった言葉に、混乱が隠せないらしい。平塚は大きく目を剥いたあと、すぐに呆れた様子で首を振った。

「ったく、何バカなこと言ってんだ。後にしろ、もうリハーサルの時間だぞ」

 腕時計を確認し、平塚はため息を零す。昔からとは言え、キルのマイペースさには困ったものだと、瞳の奥が嘆いている。

 平塚の言葉通り、リハーサルまでそう時間はない。周りの人間は「急げ急げ」と支度しているのに……なぜかキルだけは、その場で停止したままだった。

「平塚さん」

「……なんだ? 我儘なら聞かないぞ。トイレなら後にしろって言っただろ」

 また名前を呼ばれ、平塚は困惑した様子でキルを見つめる。するとキルは表情も声色も至って冷静に──しかし、蚊の鳴くような小さな声で言ったのだった。

「……ました」

「えっ? なんだって?」

 何に対してもハッキリ言葉を述べるキルが、かつてここまで小さい声を出したことがあっただろうか? 
 あまりに珍しすぎるキルの行動に、平塚は動揺したようすで聞き返す。

「……ちました」

「聞こえないぞ??」


「勃ちました」


 瞬間、平塚の身体がぴしゃりと固まる。

「……行ってこい」

「ありがとうございます」

 平塚の、大きな大きなため息が聞こえると同時に、キルは静かに控え室を後にした。

「…………」

 その様子を、白髪の美形少年は、ただじーっと見つめていた。


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