【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

柴原 狂

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第二章

第23話 オレだけ見てて

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 ノーキと一緒に控え室で待機している間、俺はスマホで、あることを調べていた。

「あったぞノーキ……! やっぱりさっきのキルって名前の人! 今話題のプロゲーマーだ!」

 どこかで聞いたことのある名だと思っていたが……どうやら先程ぶつかった黒髪マッシュの男性は、今話題のプレゲーマー『キル』のことで間違いないらしい。


「えーっとなになに……年齢は二十歳! 好きな食べ物はオムライス! 俺と同じだ」


 意外なことに、あのキルという人物はオムライスが好きらしい。
 タバコを吸った怖い感じの男性だと思っていた俺は、意外な共通点に少し嬉しくなってしまう。

 それから俺は、キルさんの公式プロフィールをさらに覗いていくことにした。

「好きな色も俺と同じだ! あ、嫌いな食べ物も一緒! しかも……好きな漫画も同じだ! なあノーキこれ見てくれよ!」

 俺は横に座っているノーキに、キルのプロフィールが自分とほぼ同じであることを伝える。
 こんなことってあるんだな! っと無邪気に笑って伝えれば……ノーキはたちまち、怪訝な顔でキルのプロフィールを覗きだした。

「……へえ。全部オルと一緒なんだ」

「凄いよな! 初めは怖い人かと思ったけど、もしかしたら俺、キルさんと仲良くな──」

「だめ」

 そんな俺の言葉を、ノーキが遮る。
 いつもの優しい声とは裏腹に、短く放たれた彼の言葉には、怒りを含まれているようだった。

 すると突然、ぐいっと腕を引っ張られ、ノーキが俺の身体を抱きしめてきた。
 まるでキルの痕を上書きするかのように、強く強く抱きしめるノーキに、俺は思わず混乱してしまう。

「ちょっ……ノーキ!?」

「見なくていい。累はオレだけ見てて」

 耳元で聴こえる穏やかな声に、身体の奥底が震える。
 ドクドクと高鳴る互いの心臓。重なる視線。温かな肌。真剣な表情で俺を見つめるノーキの姿がかっこよすぎて、俺は正気じゃなかったと思う。

「オル、さっきの人とはあんまり仲良くしちゃダメだよ。分かった?」

 まるで小さな子供に教え込むように、ノーキは俺を見つめて言う。
 その目は明らかな執着を帯びているというのに……嬉しく感じてしまうから不思議だ。

「わ……分かった。仲良くしない」

 俺がそう言って頷くと、ノーキはまたいつものように優しく笑った。

* * *

 それから数分後。

「オルさん、ノーキさん、お待たせしました。選手の方たちのリハーサルが終了しましたので、最後に全体確認をお願いします」

 控え室にやってきたスタッフの人の言葉で、俺たちはゆっくりと立ち上がる。

「行こうか。オル」

「頑張ろうな! ノーキ!」

 いよいよ、プロゲーマーたちも交えた──最後のリハーサルが始まる。


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