【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

柴原狂

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第三章

第17話 戻って来い

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「……累が好きだからした。おれのモノだって印ができるんだ、興奮するだろ?」

 キルさんは、俺と話していた時の爽やかな口調を捨て、素で話をしているようだった。

 笑みを浮かべ、光悦した表情で俺を見つめるキルさんの表情から察するに──もうこの時点で、彼は正常ではなかったと思う。

 どうやら『オルを手に入れたい』という欲望だけを膨らませ続けていた彼の心は、とっくに限界が来ていたようだ。

 だがノーキは、キルさんへの鋭い視線を留めることなく話を続けた。

「そんな理由で累を傷つけていいと思ってるんですか。第一、そんな事をして累が手に入るわけ──」

 ノーキが放ったその言葉は、どうやらキルさんの逆鱗に触れたらしい。
 男はたちまち眉をひそめると、ノーキの言葉を遮る形で言ったのだった。


「おれはずっと累を……オルを見てきた。お前よりもずっと昔からな。オルが大好きで、プロゲーマーになるきっかけも、生きようと思えたのも、全部オルのおかげだった。
 オルが居なかったら今のおれは居ない。とっくに生きる希望なんか見失ってた。
 お前に分かるか……? オルはおれにとっての唯一なんだよ!」


 キルさんの声と表情からは、ノーキに対する恨みと怒りが伺えた。

 今までキルさんが、ノーキにアンチコメントを送っていたのも……俺に無理やりキスしてきたのも──これが理由だったのか。
 彼の言葉を聞いた俺は、とうとうその場から動けなくなってしまう。

 しかしノーキは冷静だった。


「……それでも、貴方のしたことは間違ってます。自分のモノにするために、大切な人を傷つけるなんて行為が、許されるはず無い。累、帰ろう」


 ノーキはキルさんに淡々と言い放つと、俺の身体をそっと優しく抱き寄せてくれた。久しぶりのノーキを前に安心感が止まらない。
 強ばっていたはずの俺の身体は、嘘のように緩んでいった。

 キルさんは、そんな俺たちをそれを黙って見ていた。どうやらこの状況を覆す手立てを探っているようだった。

「累、早く行こう」

 それをいち早く察したのか。
 ノーキは俺の手を引くと、キルさんから離れようと動き出す。

「……」

 しかし俺は迷っていた──こんな終わり方でいいのだろうか、と。
 キルさんが自分を応援してくれていたという事実には、感謝すべきなのでは、と。

 三人がそれぞれ思考をする中。
 ノーキが俺を連れ帰るより先に、ひとりの人物が声を出した。

「オル」

 そう、声を上げたのはキルだった。男は何故か勝ち誇ったような笑みを浮かべると、オルをジッと見つめながら言ったのだった。


「おれとオルの間には、まだ『解決してない話』があるだろ。こっちに戻って来い」






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