紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第九章 錬金術師とパラサイト

ベヒモスの腹の中

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 無数の触手がミラルダを追う、それを掻い潜り魔法で焼き払っていたミラルダだったが触手の数は一向に減る事は無く、逆に度重なる魔法の行使でミラルダの魔力は底を尽きかけていた。

「クッ、はぁはぁ……飛ばし過ぎたかねぇ……あっ!?」

 最後の魔力回復薬マジックポーションを飲もうとしていたミラルダに触手が襲い掛かり、攻撃を躱したものの彼女は薬を取り落としてしまった。
 もはや魔法は使えず、後は飛翔を使い攻撃を避け続ける他、手は無いだろう。

「ミシマは……」

 ベヒモスから離れミラルダは健太郎けんたろうに視線を向けた。
 見れば健太郎が変化した人工降雨装置は今まで見た事のない勢いで蒸気を吐き出している。

「まさか、砲撃で壊れちまったんじゃあ……」

 常に無い状態の健太郎の様子にミラルダは我知らず動きを止めていた。
 その隙を見逃さず歩みを進めたベヒモスからアウラは触手を伸ばす。

“ちょこまかとうるさい羽虫め、これで終わりだッ!!”
「しまったッ!?」

 ベヒモスの顔から伸びた緑の触手はミラルダを繭の様に包み込む。

“貴様は同胞に加えずここまま絞め殺してくれる”
「ググッ……」

 全身を粘菌の触手が締め付けミラルダの体がギシッと軋みを上げる。
 体中の血管が収縮し意識に靄が掛かり、彼女は気を失い掛けた。
 その戒めが唐突に解かれ、流れ始めた血液が脳に流れ込み、再び眩暈を覚えたミラルダは飛翔を制御出来ず落下を始めた。

「う……飛翔……を……」

 杖を掲げもう一度魔法を唱えようとしたミラルダを、巨大な手が優しく受けとめる。

「パシュ―ッ?」

 大丈夫か、ミラルダ?

「……ミシマ?」
「パシュ―ッ!」

 ともかくどこか安全な場所へ!

 ミラルダを抱えた健太郎が周囲を見回している間にも、先程、引きちぎった触手が彼らに伸びて来る。

“青いゴーレム……そうか、この雨も貴様の仕業かッ!! あの時は逃げたが今度はそうはいかんぞッ!! このまま噛み砕き二度と私の邪魔が出来ない様にしてやるッ!!”

 アウラはベヒモスの巨体を健太郎に向かって駆けさせた。
 巨獣の疾走は地面を揺らし、草原の大地はまるで地震のようにその身を震わせた。
 ベヒモスの失踪はその巨躯から考えられない速さで、開かれた顎の奥の暗闇は避ける間も無く健太郎の前に迫った。

「パシュ―ッ!!」

 クソッ、このままじゃ食われる!! そうなったらミラルダはッ!!

 何とか彼女だけでも、そう考えた健太郎の気持ちに反応し、腹部のハッチが開いた。
 ハッチ内には操縦席らしき物が見える。



「パシュ―ッ!!」

 ミラルダ、乗るんだッ!!

 健太郎はミラルダを乗せた右手を腹部の操縦席の前に移動させた。

「わっ、分かったよッ!!」

 慌ててミラルダが操縦席に飛び乗り、ハッチが閉まった直後、ベヒモスの顎が打ち鳴らされた。


■◇■◇■◇■


 ベヒモスの突然の疾走で揺れた地上では大砲の砲弾が暴発、誘爆が至る所で起きていた。
 大砲を操作していた兵達が吹き飛ばされ苦痛の声を上げている。

「クソッ!! デカ物め、余計な仕事ばかり増やしやがるッ!! グリゼルダッ、兵に治癒魔法を掛けろッ!! パム、俺達は息がある奴らを安全な場所へ運ぶぞッ!!」
「了解だッ!!」
「分かったよッ!!」

 大砲を破壊しようと次の場所へ向かっていたギャガン達は、一転、負傷者の救出に行動をシフトさせた。

「ねぇ、ギャガン……ミシマとミラルダ、ベヒモスに食べられちゃったよ……」
「あのぐらいであいつ等がくたばる訳がねぇッ!! それより今は助けられる奴を助けるんだッ!!」
「そっ、そうだよねッ!!」

 ギャガンも揺れる地面の上、上空へ飛んだ健太郎がミラルダを庇う様な恰好でベヒモスに飲まれたのを見た。
 パムと同様、どうにかしたい気持はあった。
 しかし助けたくとも自分に翼は無く、仮に飛べたとしても剣であの巨体を倒す事は出来ないだろう。
 そんな思いを頭から追い出す為に、ギャガンは兵の救助に意識を集中させた。


■◇■◇■◇■


 ルダッ!! ミラルダッ、大丈夫かッ!?

「うぅ……」
「ピピピッ」

 大丈夫か? どこか痛む所は無いかい?

「あちこち打って痛いけど、骨は折れちゃいないみたいだ」
「ピピピッ……」

 そうか……出られたらグリゼルダに治して貰おう……。

「いてて……だね……ふぅ……それでここはどこなんだい?」
「ピピッ」

 ここはベヒモスの腹の中だよ。

「ベヒモスの……そうか、ミシマの腹に潜り込んで、その後すぐにあいつに飲まれて、それで……」

 健太郎を飲み込んだベヒモスはあの後、思い切り健太郎を咀嚼した。
 それで健太郎がどうにかなる事は無かったが、咀嚼により機体がグルグルと回転した事で、ミラルダはコックピット内で振り回される事になり意識を失ったのだった。

「ピピピッ」

 とにかく、コイツの腹から脱出する。ミラルダ、席についてベルトで体を固定してくれ。

「了解だよ……それにしても、今回は前にも増してゴチャゴチャしてるねぇ……」
「ピピッ……」

 多分、触らない方がいい……なにか変な武装が勝手に動くかもだから……。

「そっ、そうだねッ」

 健太郎の言葉を聞いたミラルダは身を竦めながら操縦席に座り、ベルトで体を固定した。

「ピピピッ……」

 さて、しかしどう脱出した物か……。

 ミラルダが操縦席に着いた事をコクピット内のカメラで確認した健太郎は、ベヒモスの胃だろう広大な空間を見廻した。

「あのさ、汚い話だけどこのまま進んでお尻から出るってのは……」
「ピピピッ!!」

 却下だッ!! それだけは絶対ないッ!!

 健太郎がいつになく強い口調で拒否したので、ミラルダはそれ以上言葉を続けるのは止めておいた。

「そっ、そうかい……じゃあ、口に戻って抜け出すかい?」
「ピピピッ……」

 そうだなぁ……内部に入ったついでに寄生生物、アウラだっけ? あいつもどうにかしたいけど……。

 健太郎の言葉と同時に、コックピット内の画面に何か表示され、コンソールの一部が点滅を始めた。

「ん? ミシマ、テレビに何か映ったよ。あと光ってるボタンがあるんだけど……」



 健太郎の視界にも操縦席の画面と同じ物が表示されていた。

「ピピピッ……ピピッ?」

 これは、ベヒモスの図解か……ミラルダ、そのボタン、押して貰っていい?

「押していいんだね? ……じゃ、じゃあ、押すよ」

 ミラルダはゴクリと唾を飲み込むと、点滅を続けるボタンを押し込んだ。
 それと同時に右腕上腕部の内側から金属の棒が飛び出し、右手がそれを握り締める。

「ピピピッ……」

 これは、まさか……。

「ミシマ、知ってるのかい?」
「ピピピッ!」

 ああ、こいつは多分、ビーム○ーベルだッ!

 健太郎の言葉を肯定する様に、右手が握り締めた金属の棒から青白い輝きを放つ光の刃がブーンという音と共に真っすぐに伸びた。
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