紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第九章 錬金術師とパラサイト

もっと強い体を

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 空を舞うミラルダをベヒモスから伸びた触手が追う。
 アウルからすればミラルダの魔法は何の痛みももたらさない、無視すればいいだけの存在だった。
 しかし炎は恐怖を呼び起こし、それはやがて怒りに代わる。

 更に人が顔の周辺を飛ぶ小蠅を疎む様に、ちょろちょろと顔の周囲を飛び回るミラルダにアウラは苛立ちを募らせていった。

“この羽虫がッ!!”
「万能なる魔の力よ、竜の息吹を彼の者に、火球ファイアーボールッ!! 下はまだかかりそうかねぇ」

 襲い来る触手を焼き払いながらミラルダは大地に目を向ける。
 健太郎の変化した人工降雨装置からはまだ蒸気が噴き出しており、終わる様子はない。
 これまで回った各地での事を考えれば、あと十分ぐらいは掛かるだろう。

 ギャガン達に目を向ければ、破壊した大砲は三門。
 自分が囮になった事で意識がこちらに向いているのか、健太郎への攻撃は若干散発的になっていた。

「ふぅ……残り十分、気張るとするかねッ!」

 ミラルダは鞄から取り出した魔力回復薬を口に含み、巨獣の鼻先を翳める様に飛びながら雷撃を迫りくる触手に浴びせ掛けた。


■◇■◇■◇■


 一方、地上で大砲の破壊を任されたギャガン達は寄生された兵の対処に手間取っていた。
 完全に体を乗っ取られ脳まで根を伸ばされた状態であれば、ギャガンは躊躇なく兵を斬っただろう。
 しかし、操られている兵の多くは意識を残したままで体だけをアウルに操られている状態だった。

「すまない、俺達もこんな事したい訳じゃあ……」

 謝罪の言葉を告げながら兵士の一人が剣を抜いてギャガンに斬りかかる。
 その一撃を躱しながらギャガンは兵士の顎を真横から拳で打ち抜く。
 普通の人間であればそれで脳が揺さぶられ意識を失うのだろうが、兵士が白目を剥いても体は止まらずギャガンへの攻撃を止めない。

「チッ、面倒だぜ」
「魔力よ、我が敵に見えざる一撃を、衝撃フォースッ」

 上空からのグリゼルダの魔法も兵士を一旦吹き飛ばしはするが、すぐに起き上がり駆け戻って来てしまう。

「グリゼルダッ!! 大砲の周りの奴らを一気に吹き飛ばせッ!!」
「駄目だッ!! 砲弾に衝撃を与えたら暴発する可能性があるッ!!」
「クソッ、一気に無力化しねぇと丘が抉れちまうぜ」

 人工降雨装置モードの健太郎けんたろうは動く事が出来ない、その状態で地面が無くなればバランスを崩し倒れ、蒸気が止まる可能性がある。
 そうなれば雨は止み、アウルは勢いを取り戻してしまうだろう。

「一気に……そうだッ、これならッ!!」

 パムは背中の雑納に入れっぱなしになっていた黒い短杖ワンドを取り出した。
 魔石の散りばめられたそれを兵士達に向ける。

「えっと……ディノパラリシスッ!!」

 魔石が輝き、短杖の先から魔力が迸る。
 麻痺の力を帯びた魔力の放射は兵士達の神経に作用し彼らの動きを一時的に止めた。

「やったッ!!」
「アーデンでダナンから貰った奴かッ!?」
「うんッ!! 使ったのは麻痺だから殺さずに兵隊さんを止められるよッ!!」
「でかしたッパムッ!! グリゼルダッ!! 麻痺の魔法を使えっ!!」
「麻痺……そうか眠りが効かないから失念していた……了解だッ!!」

 ギャガンは動きの止まった兵達の間を縫い大砲に近づくと、竜の牙の剣で大砲の根元を切り落とした。

「よしッ!! これで四つ!! パムッ、次だッ!!」
「オッケーッ!! 次はこっちだようッ!!」

 加速の魔法で異常な速さで走るパムを追い、ギャガンとグリゼルダは混乱する戦場を駆け抜けた。


■◇■◇■◇■


 丘の上、飛来する砲弾を浴びながら、健太郎は戦列に加われないもどかしさに苛立ちを募らせていた。

 雲の発生が終了すればその身をすぐにでもDXに変えて参戦するのに……待てよ、ジャンプしか出来ないDXじゃ足元の兵士達を踏み潰してしまうかもしれない……ジェットか? いや、ジェットにもバルカンは装備されているだろうがあんな巨大な怪物は倒せないだろう……うぅ……どっちにしても早く雲を吐き出してくれ……。

 雲の生成が完了すれば暫く雨は降り続ける。そうなれば後はベヒモスを倒すだけ……。

 そんな事を考えながら空を見上げる。
 人工降雨装置に取り付けられたカメラが作動し健太郎の視界にミラルダが映し出された。
 ズームされたミラルダの顔は険しく、疲れがにじみ出ていた。



「シュゴーッ!!!!」

 クソッ!! 何でもいい、俺はどうなってもいいから急いでくれッ!!!!

 一際強く思った健太郎の心を反映したのか、体は唸りを上げ激しく蒸気を噴き出した。

「シュゴーッ!?」

 グッ!?

 それと同時にこの世界に来てから感じた事の無い痛みが健太郎の体に走った。
 人工降雨装置はその痛みと共に暴走気味に蒸気を吹き出し終える。

「シュゴー……シュゴーッ!!!!」

 ググッ……ともかく変形だ……飛べて接近戦が出来る……あいつを倒せる強い体を俺に寄越せッ!!!!

 健太郎の雄叫びと共にカシャカシャと体は変形を行い、その身を十五メートル程の巨人へと変えた。

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