紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

文字の大きさ
28 / 94
第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

昆布とタコと健太郎

しおりを挟む
 蜥蜴人リザードマンに囲まれ銛を突き付けられたミラルダ達を、宇宙戦艦モードの健太郎けんたろうはジリジリしながら見守った。
 ここで自分が何かすれば蜥蜴人達はミラルダ達に銛を突き刺すかもしれない。
 それを考えれば下手に動く事は出来なかったのだ。

 やがて彼らの一人が連れて来たこげ茶色の鱗を持つ蜥蜴人がミラルダの手を取った事で、健太郎は自分でも意識しない内に人型モードへ変形、背中のスラスターから推進剤を吹き出し一気にミラルダの下へと飛んだ。

「コホーッ!!」

 ミラルダに何する気だッ!!

「あ、あの巨体が一瞬で人にッ!?」
「プシーッ!?」
「シャシャッ!!」

 宇宙戦艦から人型に変形した健太郎を見て、こげ茶色の鱗の蜥蜴人、ノッフリの他、周囲の蜥蜴人からもどよめきが上がる。

「ミシマ!? 止めるんだッ!! この人は何か頼みが……」
「コッ、コホーッ!?」

 えっ、そっ、そうなのッ!? クッ、上がれぇッ!!

 ノッフリを弾き飛ばそうとしていた健太郎は、ミラルダの制止を聞いて体を反らし何とか軌道を変える。

「コホー……コホーッ!?」

 ふぅ……危なかったぜ……あっ!?

 ホッとため息を吐いた健太郎だったが、スラスターダッシュの勢いは消えておらず、ミラルダ達、仲間とそれを取り囲んでいた蜥蜴人の上を飛び越え、浜辺の奥に生えていたヤシの林に突っ込み、木に弾かれて再び海に飛ばされた。



「コホーーーーッ………………」

 わああぁぁぁぁ………………。

 ジャプン。

「はぁ……何やってんだい……」

 ヤシの木の反動で飛ばされ海に落ちた健太郎を見て、ミラルダは顔に右手を当てため息を吐きつつ首を振った。

「アレが君達の仲間……確かミシマだったか?」
「ああ、ミシマは異界人で体も異界のゴーレムなんだ」
「先程、見た通り、色んな物に変形出来る」

 ミラルダの説明をグリゼルダが引き継ぐ。

「さっきは多分だけど、あんたがあたしの手を握ったから、なんかされるって勘違いしたんだと思うよ」
「そうか……すまん、島の大事にかつてこの島を救ったトラス様と同じラーグの冒険者が現れた……運命だと年甲斐もなく興奮してな」
「島の大事……何が起きているんだい?」
「聞いてもらえるのか?」

 困り事があるらしいと知ったイレーネが割り込み、微笑みを浮かべてノッフリに話しかける。

「ええ、勿論!! その代わり、ンネグラ族の族長と面会を……」

 そのイレーネの前にミラルダはスッと左腕を持ち上げた。

「何よ? 困り事を解消して族長に許可を貰うんでしょう?」
「その前にこの人達が何に困っているのか聞いて、それを解決する方が先だよ」
「何でよ? その後、どうせ頼むんなら交換条件にした方がいいじゃないッ?」
「会わせてくれる、くれないに関わらず困り事は解決する。その上で頼んでみてダメなら別の方法を考えるさ……この人達にも都合ってもんがあるだろうしねぇ」

 ミラルダがそう言って笑うとイレーネは不満そうに眉根を寄せた。

「まどろっこしいわね……あなた達はそれでいいの?」

 イレーネはギャガン達を振り返り尋ねる。

「ミラルダがお人好しなのは最初っからだ。そのお人好しで私はここにいるからな」
「だな。ミシマとミラルダに付き合うなら、この程度の事は折りこみ済みだぜ」
「確かにね。迷宮でもメルディスの願いを叶えたりしたし……」
「……非効率だわ」

 呆れかえったイレーネが首を振っていると、ザバザバと音を立てて健太郎が海から上がって来た。



 その首には昆布が巻き付き、頭には何故かタコが乗っている。

「コホー……」

 ふぅ……ひどい目にあったぜ。

「ミシマ、大丈夫かい? って、なんだいその頭の奴は……?」

 健太郎に駆け寄ったミラルダは、健太郎の頭にへばり付くタコにを見て顔を顰めた。
 ノッフリのミラルダへの対応と、巨大戦艦から人サイズになった健太郎を警戒したのか、蜥蜴人達は包囲を解き、遠巻きにミラルダと健太郎を眺めている。

「コホー……」

 何故だか知らないけど、何度はがしても頭にくっついて来て……もしかしてコイツも竜と同じで俺に美味そうな匂いを感じてるのかも……。

「美味しそうな匂いねぇ……ふぅ……とにかく、その頭のは海に帰して、ノッフリさんの話を聞こうじゃないか」
「コホー……コホーッ!!」

 分かった。ほら、海にお帰り……ってしつこいな君ッ!! いい加減にしないといくら俺でも怒るよッ!!

 健太郎はそう言いながら頭にへばり付いたタコを引き剥がそうとするが、体表のぬめりで滑る事とタコが必死でしがみ付いている事で引き剥がせない。

「……コホー?」

 ……すまん、ミラルダ。コイツ取ってくれる?

「えっ、そいつをかい……?」

 ラーグには海が無い為、当然、ミラルダもタコを見た事が無い。
 ウネウネと足をうごめかせるその姿は、彼女にはとてもグロテスクに見えていた。

「ええっと……ギャガン、こいつをミシマから引き剥がしてくれないかねぇ」
「ああん? ……そんな気味の悪いもん触りたくねぇ」
「グリゼルダは……」
「ミシマが引っ張っても剥せない物を私が剥せる訳ないだろう?」
「パムは……」
「やってもいいけど、グリゼルダと同じで無理だと思うよ」

 ミラルダはイレーネに目をやったが、彼女は引きつった顔でフルフルと首を振っていた。
 そんな一行を見かねたのか、青い鱗の蜥蜴人がスタスタと健太郎に近づき、プシュと鼻を鳴らして健太郎の頭にへばり付いたタコを一瞬で引き剥がした。

「コッ、コホーッ」

 あっ、ありがとう。

「プシュシュ、シャアアアア」
「それは今夜の夕食にするそうだ」
「えっ、コイツを食べるのかい!?」
「プシュシュッ、トラス様の仲間も同じ様に驚いていたよ……心配ない、トラス様もお仲間も全員美味いと食べていた。ラーグの民の口にも合う筈だ」

 青い鱗の蜥蜴人、オミノミの言葉を通訳したノッフリはミラルダの反応を見て楽しそうに笑った。

「プシュプシュ、プシャーッ」
「シャアシャア、プシュ」
「取り敢えず、村に行って腰を落ち着けて話すとしよう。老いた身で立ち話は辛いでな」

 ノッフリはオミノミに何事が伝え、そう言って一行を村へといざなった。
 他の蜥蜴人も銛を肩に担ぎ、村へ続く道へと歩みを進めている。
 どうやら健太郎の間の抜けた姿に蜥蜴人達は警戒を解いたようだ。

「コホーッ!!」

 へへッ、結果オーライだぜッ!!

 そんな蜥蜴人たちの姿を見た健太郎がギュッと親指を立てた手を突き出すと、ミラルダ達はやれやれと苦笑を浮かべたのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...