紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

蜥蜴人と空飛ぶ船

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 その日、ンネグラ族の若者、空色の鱗の蜥蜴人リザードマン、オミノミは島の北端の崖の上で海の様子を眺めていた。
 その日は風も無く波も穏やかで船を出すには絶好の日和だった。
 しかし、彼が眺めていた水平線の先に奇妙な物が姿を見せる。

 その青黒い何かは陽光を反射させながら真っすぐにこちらへと向かって来る。



 鳥……では無い、村の語り部の話では世界には翼の大きさが小島程もある鳥の魔物や竜もいるそうだが、アレはそれでは無い筈だ。
 なぜなら遠目に見えるそれには翼など生えてはいなかったからだ。

 何だかわからんがアレはヤバいモノだ。

 オミノミは本能的にそう感じ取り、踵を返し村へと急いだ。
 オミノミの村は漁村で今いる崖からは走って五分とかからない。

 浜辺近くの森の中、木々を切り開いた空き地に作られた集落には建物が十数軒並んでいる。
 全速力で村に戻ったオミノミは、その建物の中でも一番大きな村長の家に駆け込むと声を張り上げた。

「北の空に何かデカい物が現れたッ!! そいつは真っすぐ村に向かってるッ!!」
「オミノミ、落ち着いて。何なのデカい物って? 魔物なの?」

 村長の家の娘、夕日色の鱗の蜥蜴人、クラッケが慌てるオミノミを宥める。

「竜や鳥の魔物じゃない事は確かだッ、だがとにかくデカい何かがこの村に向かってるッ!! クラッケ、お前は村長に伝えて、村の女子供を洞窟へ逃がす様に言ってくれッ!! 俺は男衆に武装して迎え撃つ準備をする様言って回るッ!!」
「わっ、分かったわ。父さんッ!!」

 家の奥へと走り込んだクラッケを見たオミノミは、村長の家を出て今度は漁の元締めの家へと飛び込んだ。
 元締めの家では仲間の漁師たちが網の準備を行っていた。

「ご苦労、オミノミ。それで海は外海も凪いでいたか?」
「それどころじゃないッ!! 北の空にデカい何かが、そいつは真っすぐこの村へ向かって来てるッ!?」
「デカい何か……? なんだ、ドラゴンか?」
「違う、でも島にいる森竜フォレストドラゴンよりも確実に大きいッ!! 村長にはクラッケが女子供を逃がすよう伝えに行ったッ、俺達は迎え撃つ準備を
ッ!!」
「迎え撃つって……森竜より大きい訳の分からん魔物をこの人数でどうにか出来る訳無いだろう?」
「じゃあ、何もせずに村を捨てるのかッ!?」

 そんな言い合いをしている間に、ゴウンゴウンと聞いた事の無い音が村の上空に鳴り響いた。

「……来た」
「……」

 元締めの緑の鱗の蜥蜴人、ランガサは無言で立ち上がると銛を片手に家を出た。
 オミノミも壁に立て掛けられた銛を手に取ると、ランガサに続く。
 それを見た仲間の漁師達も顔を見合わせ頷き合うと、銛を手に取りランガサとオミノミの後を追った。


■◇■◇■◇■


 フェンデアに辿り着いた宇宙戦艦モードの健太郎けんたろうは、その身を住民のいる集落近くの入江へと着水させた。
 VTOLモードに変形して集落に降りても良かったが、向こうも都合があるだろうし、ちょっと玄関先を借りる事にしたのだ。

「まずは住民と交渉しンネグラ族の族長に合わせて貰えるよう頼みましょう」
「了解だよ。じゃあミシマ、ハッチを開けて貰えるかい?」
「ゴウンゴウン!」

 了解だッ!

 健太郎が意識を艦橋の後部に設置された多重ハッチにやると、プシューと音を立ててハッチが開いた。
 そのハッチから顔を覗かせたミラルダがボソリと呟く。

「うーん、魔法を使わないと降りられないのは不便だねぇ……」
「ん? ミラルダ、何か光っているぞ」



 艦橋の制御用コンソールだと思われる物の前の座席に座っていたグリゼルダが、点滅し始めたコンソールに気付きミラルダに声を掛ける。

「なんだ、こりゃ? おいグリゼルダ、ちょっと押してみろよ」
「ゴウンゴウン……」

 あっ、安易に押さない方が……。

 そんな健太郎の言葉をミラルダが伝える前に、グリゼルダは「ふむ」と呟きコンソールに触れた。
 その瞬間、艦橋にいたミラルダ達の姿は足元から透ける様に消えた。

「ゴッ、ゴウンゴウンッ!?」

 えっ、みっ、みんな何処へッ!?

「シャアアアアアッ!?」

 突然の事に驚きの声を上げた健太郎の耳に浜辺から威嚇の声らしき物が聞こえてくる。
 外部カメラを向ければ、そこには直立する蜥蜴に銛を突き付けられたミラルダ達の姿があった。


■◇■◇■◇■


「シャアアアアアッ!?」



 銛を突き付けらたミラルダは目の前の緑の蜥蜴人に思わず両手を上げ、敵意の無い事を示した。

「ヴァ、ヴァーボォーラー(こっ、こんにちは)」

 その緑の蜥蜴人にギルド職員イレーネが引きつった笑みを浮かべながらドワーフ語で挨拶をする。

「シャッ、シャーシャー、プフッ!」
「プシャーッ!」

 緑の蜥蜴人が取り囲んだ一人に何か語り掛け目配せすると、その一人は森に向かって駆けだしていった。

 蜥蜴人達は鼻と喉を鳴らして会話をしている様だが、大陸に暮らす人種とは余りに違う言語の形に事前に情報を得ていたイレーネもかなり戸惑っている様子だ。

「どうする? ミラルダ?」

 囲まれ銛を突き付けられたギャガンは、ミラルダに問い掛けながら左手で鞘を握る。

「喧嘩しに来た訳じゃないんだ。取り敢えず様子見だよ」
「……了解だ」
「ふむ、先程のものは我々を船外へと出すスイッチだったようだな」
「はぁ……グリゼルダ、興味本位で何でも触るんじゃないよ。もしヤバいスイッチだったらどうするんだい?」
「ヤバいか……そうだな、軽率だった」
「シャアアアッ、プシュプシュッ!!」

 こちらに銛を向け、威嚇の声を上げる蜥蜴人達を見てミラルダはため息を吐いた。

「はぁ……イレーネさん、ンネグラ族は友好的だったんじゃないのかい?」
「これじゃ話が違うよぉ」
「わっ、私だって上司に文句言いたいわよッ!」
「シャアアッ、プシュッ!!」
「はいはい、だから何もしないよ」

 ヒソヒソと話していると蜥蜴人は再度、銛を突き付け威嚇の声を上げる。
 そうしている内、先程、森に走った蜥蜴人が背中の曲った恐らく老人だろう蜥蜴人を連れて浜辺に戻って来た。

「ヴァーボォーラー(こんにちは)」
「ふぅ、ようやく言葉の分かる人が現れたわね」
「……シャア……共通語が良いならそちらで話そう」

 イレーネの言葉を聞いたそのこげ茶色の鱗の蜥蜴人は多少聞取り難いがミラルダ達、大陸の人間がメインで使う共通語で答えた。

「んだよ。ドワーフ語じゃなくても通じるじゃねぇか」
「そっ、そんな……一生懸命勉強したのに……」

 道中、乗り物酔いで醜態をさらしたイレーネは汚名返上と張り切っていたが、一瞬でそのプランが崩れ顔をひくつかせていた。

「儂はプシュシュ……ノッフリ、この村の語り部じゃ。それでお前さん達はあの青く大きな何かと関係があるのか?」
「ああ、あたしはここから北東にある大陸にある国、ラーグ王国の冒険者のミラルダ。あの大きいのはあたし等の仲間、ミシマだよ」
「……ラーグ王国……冒険者……お主らはトラス様と同じラーグの民、それもあの方と同じ冒険者なのか……?」

 ノッフリと名乗った老蜥蜴人はフルフルと持ち上げた両手を震わせ、目を見開いた。

「たしかにあたし等は英雄トラスと同じラーグの冒険者だけど……」
「プシュー……有難い、これも神の導きかもしれん……」

 そう言うとノッフリはその持ち上げた両手でミラルダの手を握った。
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