紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

閉塞感を貫く何か

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 足の下を森の木々が流れていく。もし落とされたら死は免れないだろう。

 そんな事を考えたイレーネは顔を青ざめさせて同じく、エキドナの蛇体に絡め取られたパムに視線を向ける。
 現在、グリゼルダはエキドナの左腕に抱えられ、パム達はエキドナの長く伸びた胴体に撒かれる形で夜空の下を飛んでいた。

「……ねぇ、パムさん……私達助かるのかしら」
「助かるに決まってるッ!! ミラルダとミシマは私達を絶対見捨てないし、ギャガンもなんだかんだ言って助けに来てくれるよッ!!」

 声を荒げたパムにイレーネは落ち着いてと両手を上げる。

「私もそれは疑っていないわ。お人好しだものね、ミラルダさん達は……問題は助けに来ても勝てるのかって事よ」
「それは……」

 パムも眩い光がエキドナを焼く所を見た。そしてその光を浴びて無傷だった事も目撃している。
 魔法の事に詳しい訳ではないが、魔法のエキスパートのグリゼルダが下手な魔法を使うとは思えない。
 恐らくアレは彼女が使える最上級の魔法の一つに違いない。

「……大丈夫だよ。ミシマがいるんだから……きっと何とかしてくれる」
「そうね、ミシマさんなら……」
「クククッ、随分と仲間を信頼しているんだな?」
「あんたはミシマを知らないから、そんな風に余裕を持ってられるだけだよッ!!」



 パムはニヤニヤと笑うエキドナを見上げて、その顔をキッと睨む。

「ククッ、確かに私はそのミシマという奴の事は知らん。だが、あの黒豹が光の剣を持っていても絶対に勝てる。そう確信したからトカゲ共の集落を襲ったのだ」

 翼をはためかせながら転生者、ロバート(エキドナ)はニヤッと牙を光らせ笑う。

「……何で……何でこんな事するのさ……話せるなら迷惑かけずに共存しあう方法だってあるんじゃないの?」

 眉根を寄せ呟いたパムをロバートは鼻で笑った。

「共存? 弱い者達の都合に合わせてどうして私が生きねばならん。この世は弱肉強食、弱い者は淘汰され強い者が生き残る。それが自然の摂理だ」
「……じゃあ、あんたもミシマに負けて淘汰されるんだね」
「フンッ、馬鹿馬鹿しい。仲間の強さを信じるのも結構だが、それは妄信だ。私がその気になれば、この島ぐらいであればひと月かからず荒れ野に変える事が出来る。そのミシマにそんな事が出来るかね?」
「ミシマはそんな事しないよ……」

 悔しそうに俯き唇を噛んだパムを見てロバートは気を良くしたのか、クハハッと笑い声を上げながら夜空に翼をはためかせた。


■◇■◇■◇■


 ロバートの襲撃から二日後、西南東のそれぞれの部族の長と会い、聖地に足を踏み入れる許可を貰った健太郎けんたろう達は、意気揚々とンネグラ族の中央集落へと帰途についていた。

「しかしなんだねぇ。蜥蜴人といっても色んな形の人がいるんだねぇ」

 VTOLモードの操縦席に座ったミラルダが、出会った蜥蜴人を思い浮かべながら口を開く。

「だな。性格も全然違ったしよぉ。確かにアレは纏める奴がいねぇとぶつかるわ」

 ギャガンの言葉が示す通り、東のリルガ族は疑り深く慎重な性格の者が多かった。
 南のソブルン族は体が大きく、棘の付いた鱗を全身に生やした見た目通り、乱暴で喧嘩っ早い者が多い印象を受けた。
 そして東、カメレオンの様な見た目をしたジガーラ族は陰湿で一筋縄ではいかない、策謀を好む一族のようだった。

「……私も窮地に陥った時、すぐに団結出来ない今の体勢が良いとは思っていません。でも四つを纏める強いリーダーシップを持つリーダーはそうそう生まれる訳では……」

 ラデメヒは操縦席と後部座席を仕切る壁の端から顔を覗かせ沈みがちに呟いた。

「やっぱり、立派な王様が生まれるのを待つよりは、グリゼルダの言ってた議会政治って奴がいいのかもねぇ」
「かもな。ロガエストじゃ貴族の話合いで次の王を選ぶ。ランザは穏健派だが、先代は力に傾倒してた。あの頃は犬共みたいな体の小さな奴らはきつかった筈だぜ」
「あんたも最初はステフ達の事を見下してたもんねぇ」
「あの頃は力のねぇ奴は強い奴の言う事聞いてりゃいいと思ってたんだよ。色々自棄になってたしな……」

 ギャガンは自身の過去を思い出し、自嘲気味にボソリと呟いた。

 広がり続ける砂漠、それに手を打たず、いや打てず遊牧を続けるランザ。
 未来の無い国に縋りついてどうする。だったらいっそ全て砂に飲み込まれ、獣人は国を持たない流浪の民になればいい。

 ジャルガの陰謀に加担したのもそんな苛立ちがあったからだ。
 だが、その未来の無い国を青黒いゴーレムは一撃で変えてしまった。
 砂漠からあふれ出た水は大地を潤し、魔人が作った用水路と畑は不毛の砂の大地を肥沃な農地へと変えているという。

「大丈夫だぜ、ラデメヒ。ミシマが絡めばこの島もきっと変わる」
「ミシマさんが絡めば? どういう事です? 確かにミシマさんは色んな物になれてお強いですが……」
「強さや変形は関係ねぇ。ミシマにゃあ、閉塞感を貫く何かがある」
「閉塞感……」
「確かにねぇ……あたしもミシマと出会ってから、生きていくのが息苦しいと思った事はないねぇ」
「バッ、バババババッ!?」

 どっ、どうしたの二人とも急にッ!?

「フフッ、あたしもギャガンもあんたには感謝してるって話さ」
「べっ、別に俺はミシマに感謝なんぞしてねぇぞッ!!」
「素直じゃないねぇ…………何だい、集落の様子が……ミシマッ、スピードを上げておくれッ!!」

 操縦席で苦笑を浮かべていたミラルダの顔が、一瞬で張り詰める。
 彼女の声を聞いて後部座席にいたラデメヒやテダハ達、蜥蜴人も立ち上がり操縦席に詰めかけた。

「シャアアア………」
「村が……」

 ミラルダ達の視界の先に映った物。それはロバートの引き連れたヒドラクイーンによって瓦礫の山にされた中央集落の姿だった。
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