紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

文字の大きさ
42 / 94
第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

折れた魔人の角

しおりを挟む
 VTOLモードの健太郎けんたろうが破壊されたンネグラ族の中央集落に降り立つと、森の中から逃げ延びていた蜥蜴人リザードマン達が姿を見せた。
 開いたハッチから飛び出した族長のテダハがその蜥蜴人達に駆け寄り鼻と喉を鳴らす。

「……ヒドラを引き連れた女の魔物が集落を襲ったようです」

 テダハと蜥蜴人達の会話を聞いたラデメヒが、VTOLモードの健太郎から降りたミラルダ達に何が起きたか説明してくれた。

「魔物に襲われたんなら、留守番してたグリゼルダが動いた筈だぜ。それにパムやイレーネは?」
「…………集落の人達はヒドラを刺激したからこんな事が起きたと族長を責めています。あと…………異国人達は女の魔物に攫われた。あいつ等を集落に入れた事がそもそもの間違いだと……」
「攫われたッ!? 三人ともかいッ!?」
「……ミシマ、聖地とやらに乗り込むぞ。きっとそこにいる筈だ」

 ギャガンは乗員を下ろし人型モードに変形した健太郎に、低くドスの聞いた声で告げる。

「ちょいと待ちなギャガン」
「ああ!? 仲間が攫われたのにちんたらやってられるかよッ!!」
「きっとグリゼルダはヒドラを迎え撃った筈だよ。あの子の魔法の才能はあんたも認めてるだろ? そのグリゼルダが敵わなかった相手だ。情報を集めて立ち向かわないとやられるのはこっちだよ。それに攫ったならきっと生きてる筈さ」
「なんでそんな事が分かんだよッ!?」
「殺すつもりなら、この場でやってる。きっとあたし達に対する人質に使うつもりさ」

 ミラルダの言葉を聞いたギャガンは鼻に皺をよせつつも、彼女に視線を向け、話を聞く体制になった。

「……分かったよ。だが情報を集めるつっても、ラデメヒの話じゃ俺達も疫病神にされてるみたいだぜ」
「すみません……集落の人も誰かに怒りをぶつけないと収まらないみたいです……悪いのはミラルダさん達じゃなくてヒドラなのに……」
「ふぅ……気にしなくても嫌われるのには慣れてるさ。それよりラデメヒちゃん、集落の人達からその女の魔物とヒドラについて話を聞いて来てくれるかい?」
「プシュ……分かりました」

 ラデメヒは護衛のオミノミと共に森から出て来た蜥蜴人達に歩み寄った。
 蜥蜴人の中には健太郎達を群れに連れ込んだと怒りをあらわにする者もいたが、比較的冷静な者達から話を聞く事が出来たようだ。

「コホー……」

 子供を殺された報復か……グリゼルダ、パム、イレーネ……三人とも無事だといいが……。

 彼女達の事を思い浮かべた事で健太郎の視界に映像が表示された。
 青竜の子供、タニアが攫われた時に打ち上げた衛星からの映像だろう。ギャガンが予想した様にグリゼルダ達は島の中央、蜥蜴人達の聖地カガネ山にいる様だ。
 黒い岩の大地の中央に建物、恐らく蜥蜴人達が作った社だろう、が映されている。その横に表示された広域マップでも表示は島の中心を指している。

 三人は山頂に作られた社の中にいるらしく、状態はうかがい知る事は出来なかった。
 社の周囲には健太郎達が倒したヒドラよりも二回りほど大きな深紅の鱗のヒドラが数体、社を守る様に徘徊していた。

「コホー……」

 衛星で確認したんだけど、三人の居場所はギャガンの言う通りカガネ山の山頂。龍穴のある聖地近くの社の中みたい。周りには俺達が倒したヒドラより大きな奴が……えっと……六体いるよ。

「大きなヒドラが六体……それプラス女の魔物……そいつら全部を相手にしながらグリゼルダ達を救出する……難しい作戦になりそうだね」
「……コホー……」

 ……ミラルダ、俺、ちょっと試してみたい事が……。

 健太郎が何か言い掛けた時、情報を仕入れたラデメヒが息を切らせて駆け戻って来た。

「プシュープシュー……ングッ……襲って来たヒドラは皆さんが倒したモノより大きく、数は六体。あと女の魔物は背中に羽根が生えていて、上半身は角の生えた人族の女で腹から下は蛇だったと……」
「ありがとね、ラデメヒちゃん……翼に角、腹から下は蛇……多分、エキドナだね」
「何だよそりゃ?」
「エキドナは全ての魔獣を生んだ母親とされてる伝説的な魔物さ。あたしの読んだ文献だと殆どの魔法が効かず、周囲の魔物を配下にして力を高める事が出来るって話だ」
「力を高める……それでヒドラが大きくなってたのか……んで、どう攻める?」
「ミシマ、ヒドラの配置を書き出せるかい?」
「コホーッ」

 動き回ってるから大体だけど。

 健太郎はそう言いつつ、地面に社とその周囲をうろつくヒドラの配置図を描いた。

「六匹が社の周りをグルグル回ってる感じか……ミシマの光の剣を使えば一体は確実にやれるだろうが……」
「多分、気付かれてグリゼルダ達を盾にされちまうだろうねぇ……大規模魔法は危険だろうし……」
「コホーッ」

 あの、さっき言いかけたけど試してみたい事があるんだ。

「何だい、試したい事って? なんかこの状況を打開できる新機能でも見つけたのかい?」
「コホーッ!」

 ああ、これが使えればヒドラを一網打尽に出来る筈だッ!

 親指を立てた健太郎にミラルダとギャガンは期待に満ちた視線を向けた。


■◇■◇■◇■


 フェンデア中央、休火山カガネ山山頂に作られた社の中、ロバートは集落から奪った酒を飲みながら、満足気に社の柱に繋いだ三人の女を眺めていた。
 その中の一人、グリゼルダは角を折られ顔を青ざめさせている。

「反抗しなければそこまでする気は無かったのだがな」



「ググッ……魔法さえ効けば貴様など……」
「グリゼルダ、駄目だよ。今度はもっと酷い目に……」

 パムの言葉を聞いたロバートは楽しそうに笑みを浮かべる。

「もっと酷い……そうだな舌でも抜くか、口汚く罵られるのも不愉快だしな」
「もう止めてッ!! 私達は人質なんでしょうッ!?」
「多少、傷付いても生きてさえいれば人質として成立するだろう。それに黒豹を殺したらお前達は用済みだ」

 叫んだイレーネを冷たく見返しながら、ロバートは静かにそう告げた。

 ロバートが危険視しているのは、あくまでヒドラを一撃で葬ったギャガンのみで、魔法が主体のグリゼルダやついでに連れて来たパムやイレーネには人質としての価値しか認めていなかった。
 イレーネという女は生前のロバートの好みに近かったが、エキドナになり女の体、それも魔物となった為かイレーネに対して性的興奮を覚える事は無かった。

 だからといって精神的に男なロバートは、男に抱かれたいという気持ちも持ち合わせてはいなかったが……。

「ふぅ……とにかく大人しくしていろ。黙っているならこれ以上の危害は加えん。今、死なれても面倒だしな」
「クッ……」
「グリゼルダ、我慢だよ。きっとミシマ達が助けに来てくれる。その角もクルベストに帰れば治せる人がいるよ」
「そうよ、グリゼルダさん。なんだったら中央ギルド所属の高ランクの僧侶を紹介するわ」
「……二人ともすまないな。私がふがいないせいで……」

 ヒソヒソと話す三人を見ながらロバートは馬鹿々々しいと鼻を鳴らした。

 この三人はまだ生きて帰れると思っているらしい。イレーネと名乗った女の話ではこの世界には冒険者、確かテレビゲームに登場するヒーローやユウシャ的な者がいて、イレーネ以外の二人はその冒険者らしい。
 冒険者は依頼を受けて危険な魔物を討伐するそうだ。

 そんな面倒な連中を生かして帰す訳がない。脅威となる黒豹を排除したらこの三人の口も封じて……そういえばミシマという正体不明の敵もいるのだったな……まぁ、そのミシマ……妙に日本人めいた名前だな……まぁいい、ともかくそいつも消して……。

 ボンヤリとそんな事を考えていたロバートだったが、手にした木の器を取り落とし驚愕に目を見開いた。

「馬鹿なッ!? 六体のヒドラクイーンを同時に倒しただとッ!?」

 突然、クイーンたちとの繋がりが絶たれた事で、ロバートは思わず叫びを上げ社から飛び出し周囲に視線を送った。
 社の周辺を徘徊させていたヒドラクイーンは、一匹残らず全ての首を引きちぎられ大地に突っ伏していた。
 そのクイーンたちの亡骸の先、青黒いゴーレム……いやロボットがロバートに緑に輝く目を向けている。

「貴様、一体なにを……」

 下半身の蛇体をくねらせつつ、ロバートが問いかけた直後、社の中から何かが倒れる音が響いた。
 思わず振り返ったロバートの瞳に女達を抱えた黒豹の姿が映る。
 黒豹の後ろには切り裂かれた社の壁、足元には女達を繋いでいた柱が転がっていた。

「こいつ等は返してもらうぜ……よくもグリゼルダの角を……お前の首は必ず俺が貰うからな」

 折れた魔人の角を懐に入れてロバートを睨み、女三人を抱えた黒豹の姿は社の中から掻き消えた。

「何ッ!?」

 エキドナに進化した事でロバートの動体視力はクイーンだった頃と比べて格段に上がっていた。
 そのエキドナの目をもってしてもギャガンの動きを捉える事が出来なかった。

「何なのだ……どうなっている? 私は賭けに勝った筈だ……エキドナは最強の……グフッ!?」

 呆然と社に開いた穴を見つめていたロバートの体に衝撃が走り、十メートル以上の蛇体を持つ体を吹き飛ばす。

「コホーッ!!」

 最強だか何だか知らないけど、仲間を傷付ける奴は容赦しないよっ!!

 健太郎はそう叫ぶと、吹き飛ばされ社に突っ込んだロバートに握った金属の拳を構えてみせた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

処理中です...