紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

加○装置

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 健太郎けんたろう達がロバート(エキドナ)のいる社に襲撃を仕掛ける数時間前。
 蜥蜴人、ンネグラ族の中央集落でラデメヒに情報を集めて貰った健太郎達は、その後、健太郎が試したいと言った新機能のテストを行った。
 健太郎が試したかったモノ、それは漁村の村長、リゴリガとギャガンとの試合で感じた時が止まった様な感覚だった。

 恐らくアレは加○装置。アクセレーター等とも呼ばれる脳のクロック数を上げ時間の流れをゆっくりに感じる物だろう。
 あの機能が自在に使えれば社の周囲を徘徊するヒドラを一度に倒す事も可能な筈だしグリゼルダ達を救う事も……。

 その事をミラルダ達に伝えると二人は微妙な表情を浮かべた。

「ミシマ、あんたは何でも出来るけど時間を止めて、その中を動けるなんてのはちょっとねぇ……」
「そうだぜ。んな事が出来たらこの世界でお前に勝てる奴なんていねぇじゃねぇか」
「コホーッ」

 ともかく試してみたいんだ。もし出来たらグリゼルダ達を無事助けるのに大きな力になる。

「そりゃ、ホントに出来りゃあ、凄いけど……」
「はぁ……まあやってみろよ」
「コホーッ!!」

 わかった。それじゃ加○装置ッ、ザ・ワー○ドッ!!

 叫びと共に健太郎は奥歯を強く噛みしめるイメージと金髪の吸血鬼を脳裏に思い描いた。
 瞬間、先ほど前話していたミラルダ達の動きがピタリと止まり、視界に何やら体力バー的な表示が現れる。

 やったっ!! 成功したっ!!

 健太郎が喜び手を振り上げると体力バー的な表示は少し減少していた。
 加○装置の使用には成功したが、どうやらこの能力には時間制限がある様だ。何にしても取り敢えずギャガンを……もしかしてDI○様もポル○レフにこういう事をしてたのかな……。

 健太郎は止まっているギャガンの体を持ち上げ反転させると元の位置に戻った。
 その時点でバーは十分の一程減少していた。それを考えると余り動ける時間は長くない様だ。
 健太郎はその後、能力の有効時間を知る為、動き回り、バーがゼロになるのに合わせて少し奇妙なポーズを取りながら再び奥歯を噛みしめるイメージを浮かべた。



「コホーッ」

 そして時は動き出す。

 動き始めた時間の中、視界の体力バーはゆっくりと回復していく。
 止まった時の中で動ける時間は二分程、クールタイムはこの感じだと一時間以上は掛かり、連続使用は出来無さそうだ。

「うぉッ、ミシマが消えたッ!?」
「えっ!? ギャガン、なんでいきなり後ろ向いてんだい!?」
「あん? 後ろ……お前がやったのか、ミシマ……?」
「コホーッ!!」

 うんッ!! この能力を使えばヒドラを一瞬で倒せるッ!! あとは社からグリゼルダ達を救いだせば……。

 うんうんと頷いた健太郎にミラルダが問いかける。

「どのぐらい動けるんだい?」
「コホーッ」

 多分、二分ぐらいは動けそうだったから、ヒドラを倒すのは問題ないと思う。グリゼルダ達を助けるのは難しいかもだけど……。

「二分……グリゼルダ達を優先してもいいけど……」
「コホーッ」

 この能力、連続では使えないからヒドラを倒すか、グリゼルダ達を助けるかどっちかになるね。

 健太郎の言葉をミラルダが通訳すると、ギャガンは少し考えた後、おもむろに口を開いた。

「グリゼルダ達を選べば当然敵は警戒するだろう……ミラルダ、お前ぇは今回の作戦で攻撃にはまわれねぇんだよな?」
「ああ、龍穴の近くで魔法を使うのは危ないみたいだからね。出来るのは二人に補助魔法を使うぐらいだよ」
「……加速の魔法があったろう? あれをありったけの魔力で俺に掛けてくれ。それでミシマと同時に俺がグリゼルダ達を助ける」
加速アクセラを? そんな事したら制御出来なくて逆に動けなくなるよ?」
「乗りこなしてみせるぜ……ミシマが時間を止めて一気にヒドラを全滅させれば、流石に敵も驚く筈だ。その隙を突く」
「……そうだね……救出を優先して、ミシマの能力が使える様になるまで一旦撤退してもいいけど、人質を失った相手がどう動くか分からないもんね」

 ミラルダは健太郎にグリゼルダ達を安全な場所まで運んでもらうと、エキドナは代わりに他の者、蜥蜴人達を捕まえようとするかもしれないと考えた。
 ラデメヒや族長、集落の蜥蜴人達がこれ以上犠牲になるのは何としても避けたい。
 そのためにはなるべく短期決戦で挑むべきだろう。

「それじゃあ、ミシマがヒドラを、ギャガンがグリゼルダ達を助ける。あたしはギャガンに加速を掛けて少し離れた場所で待機……それでいいかね?」
「だな。グリゼルダ達を救助したら、俺は三人を抱えてミラルダのとこに一旦戻る。ミシマ、その間お前はエキドナを押さえていてくれ」
「コホー」

 了解だ。

 こうしてヒドラの排除と同時に仲間の救出を行う作戦は実行される事となった。


■◇■◇■◇■


「グヌヌ……何なのだ貴様は!? なぜファンタジーの世界にロボットが存在しているッ!?」

 吹き飛ばされ社に突っ込んだロバートは、余りに世界観に合わない理不尽な存在に憤りの叫びを上げつつ社から飛び出して来た。

「コホー……コホー?」

 そんな事、言われても……俺の方がどうしてこうなったのか聞きたいよ。てか、ロボットとか言ってるって事はコイツも転生者かな? だったら……。

 健太郎は拳で胸を叩き胸部装甲を開いた。

『お前、転生者だなッ!!!?』
「グオッ!?」

 大音量の人口音声にロバートは思わず耳を押さえる。

『どうなんだッ!!!?』
「ググッ……たしかに私は転生者だ……それがどうした?」
『俺も転生者だッ!!!! そのよしみで蜥蜴人に謝罪して、彼らの為に働くなら命だけは助けて貰えるよう交渉してやるッ!!!! ただし、グリゼルダの角を折った事は絶対に許さないッ!!!! 彼女に謝って角を治す方法を探して貰うからなッ!!!!』
「グオォオオ……はぁ、はぁ……謝罪だと? 誰がするかそんな事。大体、弱者は強者の糧になる為に存在しているのだ」
『……本気で言っているのか!!?』
「グッ……俺はこの世界に転生してからずっとそうやって生きて来た……貴様もその糧の一つにしてやるッ!!」

 ロバートは翼を広げて健太郎に襲い掛かった。
 エキドナの体は人部分は人間の1.5倍ほど、腹から下の蛇体は十メートル程で翼は両翼を広げれば五メートルにはなるだろうか。
 そんな巨体にも関わらず、動きはギャガンや加速スキルを持つ将吾並みに速い。

 現在、絶賛クールタイム中の健太郎には対応できない速さだった。
 それならと胸部装甲を閉じた健太郎は防御に主体を置き、攻撃をいなす事に集中した。
 振るわれる爪を両腕を上げガードしながら、反撃の隙を伺う。

「クソッ、なんて硬さだッ!!」

 全く攻撃の通じない健太郎に憤りを感じたロバートは、口を開きブレスを浴びせかけた。
 青黒い装甲に水滴が浮き、流れ落ちた雫はシュウシュウと岩の大地を溶かしていく。

「どうだ、王水のシャワーの味は?」

 健太郎の体からも煙が立ち昇るが、やがてそれも消え、中和されたのか何の反応もなくなった。

「コホーッ」

 風呂には入ってたけど、ジャングルを歩いてちょっと汚れてたからなぁ。

 どうやら王水のブレスは健太郎の体に付いたゴミを溶かすに止まったらしい。
 そんな平然とした様子で拳を構える健太郎を見て、ロバートは苛立ちで顔を歪める。

「馬鹿な!? なぜ溶けんッ!! その体一体何で出来ているッ!!」
「コホーッ!!」

 知るかそんな事ッ!!

 健太郎は怒りに任せたロバートの右手の大振りの一撃をわい最拳を使い絡め取った。
 その絡め取った腕を、流れのまま肩に乗せへし折る。

「グオオオオッ!? おのれ、よくもッ!!」

 叫びを上げ健太郎を振り払い距離を置いたロバートの右腕はその瞬間にはもとに戻っていた。
 ヒドラが持つ超回復能力をエキドナの肉体も備えているようだ。

「コホー……」

 このままじゃ、負けはしないけど倒し切れないな……。

 そんな事を考え、ロバートと対峙していた健太郎の横に音もなく黒い影が現れる。

「…………ミシマ、頼みがある。光の剣になってくれ」
「……コホーッ?」

 ……殺すつもりか?

 親指で首を掻き切る仕草をした健太郎にギャガンは頷きを返す。

「ああ……グリゼルダ達から話を聞いた。こいつは他人を自分の餌としか思っていない。それにグリゼルダの角を……俺は奴が許せねぇ……」

 ギャガンは懐から取り出した折られた角を見つめると、ギリッと奥歯を軋らせた。
 その様子を見た健太郎は再度、胸を叩き胸部装甲を開いた。
 また何か言うつもりかと、ギャガンとロバートは慌てて耳を押さえる。

『最後の忠告だッ!!!! 今、投降するなら命だけは助かる様に仲間を説得するッ!!!!』
「おいミシマッ!! 俺はコイツを許すつもりはねぇぞッ!!」
『分かっているッ!!!! 俺だって仲間を傷付けたコイツが憎いさッ!!!! だけど憎しみのまま刃を振るったら……!!!』
「何を下らん事を言っている!! 投降なんぞ誰がするかッ!! 私はお前達を倒し、思うままにこの世界で生きるのだッ!!」
『………………そうか!!!』

 健太郎はそっと胸部装甲を閉じると、その身を青黒い円筒に変えた。

 ギャガンは自分が変形した光の剣を使ってエキドナを殺すだろう。
 その事に迷いは感じていたが放置すれば、奴は別の場所で誰かを自分の欲望の為に殺す筈だ。
 俺はアイツを殺す事を認めたんだ……その事を忘れず考え続けよう……。

 そんな事を思っている健太郎をギャガンは拾い上げ、ボタンを押し込み光の刃を発生させた。
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