紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十一章 名誉騎士と宝石の角

主砲

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 ゴウンゴウン、そんな音を響かせ青黒い金属の船が南東へ向かって空をゆく。



 その金属の船の艦橋では変装の為に髪を切り、髯を剃ってサッパリしたラーグ王国の現国王、クルストゲッバーミン三世が見たこともない機械の船に歓喜の声を上げていた。

「凄いのぢゃッ!! 鉄の鳥よりも大きな船が空を飛ぶとは、信じられんのぢゃッ!!」
「お爺様、少し落ち着いて下さい」
「落ち着いてなどおられんのぢゃッ!! リグナリオッ、早速探検じゃッ!!」
「あっ、お爺様、待って下さいッ!!」

 老人とは思えぬ素早さで艦橋から飛び出したクルストを追って、孫のリグナリオも艦橋から駆け出していく。

「……騒がしい爺さんだぜ」

 アドルフが絵図を描いた計画に基づき、健太郎けんたろう達は国王クルストとその孫リグナリオを連れ、グリゼルダの故郷、ラーグ南東の魔人の国、エルダガンドを目指し飛んでいた。
 以前、竜の背に乗って移動した行程を今度は宇宙戦艦モードの健太郎で辿っている。

「……興奮した事でより強く子供の面が出たのかもな」
「ミシマ、この船の中にあるモノは触っても大丈夫なのかい?」
「ゴウンゴウン……」

 王様は今、遊戯室にいるみたい。ゲームで遊んでいる間は問題ないと思うけど……。

「ゲームねぇ……あたしもちょっと見て来ようかねぇ」
「じゃあ、わたしも行く」
「ゴウンゴウン」

 行ってらっしゃい。

 ミラルダとパムもクルストを追って環境を後にした。
 残された艦橋の椅子に並んで座っていたギャガンとグリゼルダは、チラリと視線を交わし同時に口を開く。

「「なぁ」」

「……なんだよ?」
「……お前が先に言え」
「……パムやイレーネが言ってたんだが……お前は俺が好きなのか?」
「そっ、それは、その……お前は頼りになるし、何度も守ってくれているし……その、こっ、好感は抱いている」
「そうか……」
「そっ、そういうお前はどうなんだッ!?」

 浅黒い肌を赤く染めてグリゼルダは声を上げる。

「あー、正直いうとお前には相棒以上の感情は持ってなかった」
「……」
「けど、お前が俺を好きだってんなら、拒む理由はねぇよ」
「どういう事だ? 来る女は拒まないという事かッ!?」

 グリゼルダは少しムッとしながらギャガンを睨みつける。

「違ぇよ……前に話しただろう。嫁に貰うなら、俺が強いと認めた奴が良いってよぉ」
「私はお前に認められている?」
「認めて無きゃ、剣になるとは言わねぇよ」
「じゃあ……」
「俺で良けりゃあ、ずっと一緒にいてやるぜ」
「ギャガンッ!!」

 グリゼルダは少し涙ぐんでギャガンの胸に飛び込んだ。

「へへ、泣き虫な奴だ」



 ギャガンは驚きつつも彼女を受け止め、そっとグリゼルダの瞳に浮かんだ涙を拭い、優しくその頭を撫でた。

 そんな二人の様子を船内カメラで覗き見していた健太郎は、キュンキュンする胸の高鳴りで妙にテンションが上がってしまった。

 フィィィィーーーーン!! そんな健太郎の心に反応してか船体が常に無い音を発生させる。

「なんだこの音はッ!?」
「なんか艦首、甲板あたりが動いてねぇか……?」

 思わず立ち上がりギャガンは艦橋の前方へと駆け出した。
 見下ろした先では船体の前半分、流線型のそれが四つに分かれ、艦橋下の戦艦内部が露出していた。



「一体何が起きてやがる……」

 艦橋前方の強化ガラスにへばり付き、四分割した船体に目を落としていたギャガンにグリゼルダが声を掛ける。

「ギャガン、これを見てくれ!」

 グリゼルダは艦橋に備えられた無数のディスプレイの一つ、船体前方を映している物の前でギャガンを呼んだ。
 彼女の後ろに駆け寄ったギャガンは顔を顰める。
 画面には健太郎のランチャーモードで見覚えのある円グラフと照準、そして恐らくだが、決定とキャンセルの二つのボタンが表示されていた。
 円グラフの方は百パーセントを超え、チャージが終了している。

「……ミシマ、予想だがこりゃ射撃武器だろう? 何で敵もいねぇのにこんなもん出した?」
「……ゴウン……ゴウン」

 ……あの……二人のイチャイチャを見てたら、なんだか楽しくなっちゃって……そしたら体が勝手に……。

「チッ、ミラルダがいねぇと何言ってるか分かんねぇな」
「どうするギャガン? 恐らく、左の赤い点滅している方が実行、右の緑の方が取り止めだと思うが……」

 ギャガンは気持ち的には発射を選択したかった。
 彼は見てみたかったのだ、恐らく何度か使ったバリスタ (キャノンモード)を超えるだろう砲撃を。
 しかし、今回エルダガンドに向かっているのはグリゼルダの角や国王の頭の治療の為である。
 そんな馬鹿デカい射撃武器をぶちかませば面倒な事になるのは必至だろう。

「……射撃は見てみてぇが、今回は無しだ」
「分かった」
「あっ、それはなんぢゃッ!?」

 艦橋に駆け込んで来たクルストは、グリゼルダの座っている座席の前のディスプレイに気付くと彼女の下に駆け寄った。

「恐らく強力な砲撃の発射スイッチだ」
「強力な砲撃ぢゃとッ!?」
「ああ、多分、この感じだと山脈程度なら余裕で吹き飛ばせそうだぜ」
「凄いのぢゃッ!! これを押せばいいのぢゃな?」
「「あっ!?」」

 クルストは話した瞬間にはディスプレイに表示された、赤く点滅するボタンに触れていた。

「ゴウンゴウン……」

 はわわわわ……。

 四つに分離した船体前方部分に稲妻が走り、光の輪の連なりが船の前方へ長く伸びる。

『電子バレル展開、重力及び大気、地磁気干渉によるズレを修正、荷電粒子加速開始、チャンバー内の圧力正常加圧中。主砲発射まで10秒』
「グリゼルダ、止めろッ!!」
「やってるが反応しないッ!!」
『5、4』
『「3、2」』

 クルストは焦るギャガン達の横で手を叩きながらカウントダウンを真似ている。

『1、発射』

 艦首はエルダガンドの首都、クーリエに向いていた。
 高高度を航行中だった事、照準は真っすぐ水平に設定されていた事で街に被害が出る事は無かった。
 だが、首都上空を駆け抜けた光は多くの住民に目撃され、クーリエに駐留する王直属の親衛隊を含むエルダガンド中央軍が、無意味に警戒を強める結果を生んだのだった。
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