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第十一章 名誉騎士と宝石の角
カーバンクル
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かつてミラルダの師匠レベッカの仲間だったという魔人族の老婦人、カルディナ。
彼女の家の庭にはパラソル付きのテーブルに椅子の他、手すりの側にベンチが置かれていた。
庭の地面には芝生が敷かれ、高台を駆け抜ける風が庭の木々を揺らしている。
それぞれ自己紹介を終えた健太郎達は、早速、カルディナに話を聞く事にした。
テーブルにはグリゼルダとミラルダが座り、ギャガンはベンチに、パムは手すりに腰かけグリゼルダ達の話に耳を傾けている。
クルストは手すりから乗り出し街を見てはしゃぎ、リグナリオはそのクルストが落ちないように彼の服を掴み踏ん張っていた。
健太郎はパムの隣で手すりに寄りかかりカルディナとグリゼルダ達の話を黙って聞いていた。
「ミラルダ、あなたの事はレベッカから手紙で色々聞いているわ。お転婆だって聞いてたけど、アレはもうずいぶん前だったから……今は立派なレディね」
そう言うとカルディナは自身が入れたお茶を一口、口に含んだ。
「そっ、そうですかッ? ……あの、それで仲間の……グリゼルダの角についてなんですが……」
「レベッカから私の事を聞いたの?」
「はい、実は師匠、あたしが心配で幽霊になってずっと見守ってくれていたんです……あたしは全然気付いてなかったんですけど、そこのミシマが幽霊の姿が見えて、声を聞けるみたいで……」
「幽霊に……面倒見のいいレベッカらしいわ……」
そう言ってクスクスと笑うと、カルディナはチラリと健太郎に目をやり、おやっと眉を動かした。
「あら、ゴーレムかと思ったけど、違うのね」
「ミシマは精神は異界人だ。体も恐らく異界の技術で作られた物だと思う」
「異界の……それで、そのミシマさんを介して私が角を治す方法を探していたと知ったと?」
「はい、グリゼルダはパーティーの要なんです。なんとか角を治せないでしょうか?」
「……魔人の角の治療に必要な物が、カーバンクルの角だって事は聞いてる?」
「はい聞いています」
「そう……」
カルディナはグリゼルダの角に目をやっておもむろに口を開く。
「カーバンクルはクーリエから南のロビー山脈の中腹、常春の洞って名付けた洞窟に以前は生息していたわ……ただ、私達が見つけた時から何十年も経っているし、今もそこで暮らしているかは分からない」
「常春の洞だな。詳しい場所を教えてくれ」
ベンチに座ったギャガンは顔を上げ、カルディナに金の瞳を向けた。
「言ったでしょう? 今もそこにいるかは分からないって。ロビー山脈の地下にはマグマだまりが幾つもあって、その熱で洞窟の中は暖かく、水晶を通して太陽の光が洞窟内に届くから植物が繁茂してるの」
「それで常春の洞ですか?」
「ええ、そんな洞窟が何百とあるのよ」
「その中のどれかにカーバンクルがいるってのか?」
「そうよ。あの子達は定期的に住処を変えているらしいから、今、どの洞窟にいるかは分からないの」
そう言って眉根をよせたカルディナにギャガンは食い下がる。
「だが、あんたは見つけた。探す方法はあるんだろう?」
「正確にはあった、ね。あの時はトラスに見つけて貰ったのよ」
「トラスに?」
トラスと聞いてグリゼルダは顔を顰めた。
以前、レベッカから聞いた彼のひととなりを思い出したのだろう。
「ええ、トラスには不思議な力があった。転生者だったからそういうスキルだったのかもしれないけど……彼、求めている物が向こうから飛び込んでくる様な事が度々あったのよ。あの時も吹雪から逃れる為に非難した洞窟にカーバンクルがいて……」
「コホー……コホー?」
運の力か……ねぇ、ミラルダ、カルディナさんにカーバンクルについて詳しく聞いてくれない?
「カーバンクルについて……あのカルディナさん、ミシマがカーバンクルについて詳しく教えて欲しいって言ってるんですが……」
「ミシマさんが?」
「コホーッ」
俺、空に飛ばした星で探し物する事が出来るんだ。カーバンクルの事を詳しく聞けば場所を絞り込めるかもしれない。
健太郎は右手の人差し指で空を指しながら自分の考えを話した。
「なるほど、星の目で……カルディナさん、ミシマは空に打ち上げた星で人や物を追えるんです。ただそれには対象について詳しく知らないと駄目みたいなんです」
「そうか、タニアが攫われた時のアレか」
「そうアレ」
「星の目……よく分からないけど、カーバンクルについて説明すればいいのね……カーバンクルは大きさは小型犬程、大きな耳と額にルビーの角を持つ緑色の毛並みの獣よ。主食は主に木の実や昆虫とか。警戒心が強く人の存在を察知すると角の魔力を使って姿を隠してしまうわ」
カルディナの説明は続き、顔は狐に似ているが毛並みは全体に長毛で基本、数匹の群れで生活しているそうだ。
「姿を隠す……それで目撃例が少ないのか……」
「ええ、定期的に住処を変えると言いったけど、人が接近した場合はすぐにでも別の場所に身を移すみたい」
「……あんた、随分詳しいが……」
「直接、彼らに聞いたから」
「カーバンクルと話したのかッ!?」
「ええ、角を使って交渉したわ。家族が苦しんでいるから角を貰えないかって、代わりに困っている事があれば解決すると持ち掛けてね」
「それで角は貰えたんだよね?」
石の手すりに腰かけたパムが足を揺らしながらカルディナに問う。
「ええ。彼らの角は年に一回、生え変わるそうなの。丁度、その生え変わりの時期だったから、洞の近くに住むウェンディゴを追い払う事と引き換えに角を貰ったわ」
「……場所の特定と角の生え変わる時期……それに困り事の存在……あまりにも都合が良すぎるな」
「だから言ったでしょう、トラスがいたからだって」
「それで、生え変わりの時期ってのはいつなんだ?」
「秋の終わり、ちょうど今頃よ」
■◇■◇■◇■
カルディナはカーバンクルについて一通り語り終えると、かつての仲間の弟子であるミラルダの話を聞きたがった。
それに応え、ミラルダはこれまでの冒険について子供達に話す様に物語調で語って聞かせた。
その話をカルディナと子供に戻ったクルストは興味深そうに聞いていた。
健太郎はその後、グリゼルダの提案で角を使ってカルディナからカーバンクルの姿を直接伝えられた。
それにより、口頭で伝えられる以上にカーバンクルについて詳しく知る事が出来た。
「コホーッ!!」
これなら位置の特定も出来る筈ッ!! しもべの星よッ、俺にカーバンクルの位置を教えてくれっ!!
両手を天に向かって広げ叫んだ健太郎だったが、いつものように打ち上げた衛星が受け答えする事はなく、淡々と視界にマップが表示されただけだった。
マップのカーソルが示した場所はカルディナが言った通り、クーリエの南、ロビー山脈。
そのロビー山脈の南壁面、西側にカーバンクルはいる様だ。
「コホー……コホーッ!!」
つれない奴だぜ。たまには何か言ってきてもいいのにさ……ミラルダ、場所の特定は出来たよッ!!
「そうかい……カルディナさん、ミシマが位置の特定が出来たそうなのでそろそろ……」
「本当について行かなくていいの?」
「はい、流石にそこまで甘えられません」
眉根をよせたカルディナにミラルダは微笑みを返した。
「今の角の状態でも、動物との意思疎通ぐらいはギリギリ何とかなるしな」
「そう……本来ならあの時、洞窟に足を踏み入れた時点でカーバンクルは逃げてもおかしくなかった。でも逃げなかったのはトラスのおかげかもしれない……あと、この時期でもロビー山脈は吹雪の多発する危険な山よ。行くならしっかり装備を整えてね」
「ありがとよ。カルディナ」
「フフッ……転生者に魔法使いに獣人、それと魔人、盗賊さんはいなかったけど、まるで昔の私達みたいね」
立ち上がり庭に並んだ健太郎達を見てカルディナは微笑む。
「フフッ、そうですね。ミシマもトラスさんと同じで運を持ってる気がします」
「ミシマさんについて色々お話を聞かせてもらったけど、確かにトラスに似たモノを感じたわ……角を手に入れたらまたいらっしゃい。綺麗につなげてあげる」
カルディナはグリゼルダに優しい微笑みを向けながら、静かにそう告げた。
彼女の家の庭にはパラソル付きのテーブルに椅子の他、手すりの側にベンチが置かれていた。
庭の地面には芝生が敷かれ、高台を駆け抜ける風が庭の木々を揺らしている。
それぞれ自己紹介を終えた健太郎達は、早速、カルディナに話を聞く事にした。
テーブルにはグリゼルダとミラルダが座り、ギャガンはベンチに、パムは手すりに腰かけグリゼルダ達の話に耳を傾けている。
クルストは手すりから乗り出し街を見てはしゃぎ、リグナリオはそのクルストが落ちないように彼の服を掴み踏ん張っていた。
健太郎はパムの隣で手すりに寄りかかりカルディナとグリゼルダ達の話を黙って聞いていた。
「ミラルダ、あなたの事はレベッカから手紙で色々聞いているわ。お転婆だって聞いてたけど、アレはもうずいぶん前だったから……今は立派なレディね」
そう言うとカルディナは自身が入れたお茶を一口、口に含んだ。
「そっ、そうですかッ? ……あの、それで仲間の……グリゼルダの角についてなんですが……」
「レベッカから私の事を聞いたの?」
「はい、実は師匠、あたしが心配で幽霊になってずっと見守ってくれていたんです……あたしは全然気付いてなかったんですけど、そこのミシマが幽霊の姿が見えて、声を聞けるみたいで……」
「幽霊に……面倒見のいいレベッカらしいわ……」
そう言ってクスクスと笑うと、カルディナはチラリと健太郎に目をやり、おやっと眉を動かした。
「あら、ゴーレムかと思ったけど、違うのね」
「ミシマは精神は異界人だ。体も恐らく異界の技術で作られた物だと思う」
「異界の……それで、そのミシマさんを介して私が角を治す方法を探していたと知ったと?」
「はい、グリゼルダはパーティーの要なんです。なんとか角を治せないでしょうか?」
「……魔人の角の治療に必要な物が、カーバンクルの角だって事は聞いてる?」
「はい聞いています」
「そう……」
カルディナはグリゼルダの角に目をやっておもむろに口を開く。
「カーバンクルはクーリエから南のロビー山脈の中腹、常春の洞って名付けた洞窟に以前は生息していたわ……ただ、私達が見つけた時から何十年も経っているし、今もそこで暮らしているかは分からない」
「常春の洞だな。詳しい場所を教えてくれ」
ベンチに座ったギャガンは顔を上げ、カルディナに金の瞳を向けた。
「言ったでしょう? 今もそこにいるかは分からないって。ロビー山脈の地下にはマグマだまりが幾つもあって、その熱で洞窟の中は暖かく、水晶を通して太陽の光が洞窟内に届くから植物が繁茂してるの」
「それで常春の洞ですか?」
「ええ、そんな洞窟が何百とあるのよ」
「その中のどれかにカーバンクルがいるってのか?」
「そうよ。あの子達は定期的に住処を変えているらしいから、今、どの洞窟にいるかは分からないの」
そう言って眉根をよせたカルディナにギャガンは食い下がる。
「だが、あんたは見つけた。探す方法はあるんだろう?」
「正確にはあった、ね。あの時はトラスに見つけて貰ったのよ」
「トラスに?」
トラスと聞いてグリゼルダは顔を顰めた。
以前、レベッカから聞いた彼のひととなりを思い出したのだろう。
「ええ、トラスには不思議な力があった。転生者だったからそういうスキルだったのかもしれないけど……彼、求めている物が向こうから飛び込んでくる様な事が度々あったのよ。あの時も吹雪から逃れる為に非難した洞窟にカーバンクルがいて……」
「コホー……コホー?」
運の力か……ねぇ、ミラルダ、カルディナさんにカーバンクルについて詳しく聞いてくれない?
「カーバンクルについて……あのカルディナさん、ミシマがカーバンクルについて詳しく教えて欲しいって言ってるんですが……」
「ミシマさんが?」
「コホーッ」
俺、空に飛ばした星で探し物する事が出来るんだ。カーバンクルの事を詳しく聞けば場所を絞り込めるかもしれない。
健太郎は右手の人差し指で空を指しながら自分の考えを話した。
「なるほど、星の目で……カルディナさん、ミシマは空に打ち上げた星で人や物を追えるんです。ただそれには対象について詳しく知らないと駄目みたいなんです」
「そうか、タニアが攫われた時のアレか」
「そうアレ」
「星の目……よく分からないけど、カーバンクルについて説明すればいいのね……カーバンクルは大きさは小型犬程、大きな耳と額にルビーの角を持つ緑色の毛並みの獣よ。主食は主に木の実や昆虫とか。警戒心が強く人の存在を察知すると角の魔力を使って姿を隠してしまうわ」
カルディナの説明は続き、顔は狐に似ているが毛並みは全体に長毛で基本、数匹の群れで生活しているそうだ。
「姿を隠す……それで目撃例が少ないのか……」
「ええ、定期的に住処を変えると言いったけど、人が接近した場合はすぐにでも別の場所に身を移すみたい」
「……あんた、随分詳しいが……」
「直接、彼らに聞いたから」
「カーバンクルと話したのかッ!?」
「ええ、角を使って交渉したわ。家族が苦しんでいるから角を貰えないかって、代わりに困っている事があれば解決すると持ち掛けてね」
「それで角は貰えたんだよね?」
石の手すりに腰かけたパムが足を揺らしながらカルディナに問う。
「ええ。彼らの角は年に一回、生え変わるそうなの。丁度、その生え変わりの時期だったから、洞の近くに住むウェンディゴを追い払う事と引き換えに角を貰ったわ」
「……場所の特定と角の生え変わる時期……それに困り事の存在……あまりにも都合が良すぎるな」
「だから言ったでしょう、トラスがいたからだって」
「それで、生え変わりの時期ってのはいつなんだ?」
「秋の終わり、ちょうど今頃よ」
■◇■◇■◇■
カルディナはカーバンクルについて一通り語り終えると、かつての仲間の弟子であるミラルダの話を聞きたがった。
それに応え、ミラルダはこれまでの冒険について子供達に話す様に物語調で語って聞かせた。
その話をカルディナと子供に戻ったクルストは興味深そうに聞いていた。
健太郎はその後、グリゼルダの提案で角を使ってカルディナからカーバンクルの姿を直接伝えられた。
それにより、口頭で伝えられる以上にカーバンクルについて詳しく知る事が出来た。
「コホーッ!!」
これなら位置の特定も出来る筈ッ!! しもべの星よッ、俺にカーバンクルの位置を教えてくれっ!!
両手を天に向かって広げ叫んだ健太郎だったが、いつものように打ち上げた衛星が受け答えする事はなく、淡々と視界にマップが表示されただけだった。
マップのカーソルが示した場所はカルディナが言った通り、クーリエの南、ロビー山脈。
そのロビー山脈の南壁面、西側にカーバンクルはいる様だ。
「コホー……コホーッ!!」
つれない奴だぜ。たまには何か言ってきてもいいのにさ……ミラルダ、場所の特定は出来たよッ!!
「そうかい……カルディナさん、ミシマが位置の特定が出来たそうなのでそろそろ……」
「本当について行かなくていいの?」
「はい、流石にそこまで甘えられません」
眉根をよせたカルディナにミラルダは微笑みを返した。
「今の角の状態でも、動物との意思疎通ぐらいはギリギリ何とかなるしな」
「そう……本来ならあの時、洞窟に足を踏み入れた時点でカーバンクルは逃げてもおかしくなかった。でも逃げなかったのはトラスのおかげかもしれない……あと、この時期でもロビー山脈は吹雪の多発する危険な山よ。行くならしっかり装備を整えてね」
「ありがとよ。カルディナ」
「フフッ……転生者に魔法使いに獣人、それと魔人、盗賊さんはいなかったけど、まるで昔の私達みたいね」
立ち上がり庭に並んだ健太郎達を見てカルディナは微笑む。
「フフッ、そうですね。ミシマもトラスさんと同じで運を持ってる気がします」
「ミシマさんについて色々お話を聞かせてもらったけど、確かにトラスに似たモノを感じたわ……角を手に入れたらまたいらっしゃい。綺麗につなげてあげる」
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